TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
衝撃と共に、痛みが走り……壁に叩きつけられた一瞬、意識が飛びました。
次に意識を取り戻した時には、視界は真っ暗闇で上半身は全く動けません……拘束されているのでしょうか?
……あのラストターン、実の所ジュンくんに動かれる前に【
そのまま、何も出来ない彼のライフを削り取る……譲れない戦いならば、私も容赦なく使っていました。ですが……やっぱりそれは
「ところで……誰か、今の私はどういう状態なのですか?」
「
足をパタパタと動かせば、何かに当たった感覚があり、その方向に足を伸ばしますと……誰かに掴まれた感覚があります。
そのまま、力いっぱいに引っ張られ……顔や肩、腕が色んな物にぶつかってとても痛いです。
「痛った!!?」
「私もお前に蹴られて痛かったんだが!?」
……どうやら、私は壁に埋まっていたようです。
それを助けてくれたのが、その埋まる原因となったジュンくんなのが中々に複雑ですね……
土埃や石の欠片、ついでに引きずられた時に付いた傷による出血で中々に酷いことになっているので、起き上がり……手で払ってそれらの痕跡を無くしていきます。
「えっと……それはごめんなさい。でも、埋まった原因は貴方ですよね……?喧嘩両成敗では?」
「お前が神のくせに簡単に吹っ飛ぶのが悪い!私は悪くない!!!」
胸を張り、鼻を鳴らして正当性を主張するジュンくんは……調子を取り戻したようで、見慣れたその様子に口元が緩みます。
「神と言っても、私には固有の権能とかは有りませんからね……そういう特別な能力に心当たりが全くありません」
「……その、異常な耐久力と回復能力は違うのか?」
「いいえ、これは昔からですね」
私が
……そう考えると、私のこの能力の
誘黒神としての権能に……心当たりはやっぱりありません。
「まあ、私はそのままでも充分にすごい存在なので……そういう能力が無くても良いのですよ」
「……まあ、お前がそれで良いなら良い。私は知らん」
そうして話し込んでいますと、不意に空気が揺らぐ感覚を覚えます。
ジュンくんの隣に、モルガナ氏が立ちます。
「やるべき事は終わりました……この異界を閉じます」
パチンと、指が鳴らされ……胃の裏が引っ張られるような感覚と共に浮遊感が全身を襲います。
瞬きよりも短い時間でその感覚は消え失せ……私たちは、ミラージュの店内へと戻りました。
「っ!?戻ってきたのか……?」
「
「ユギトサマ!!」
軽い衝撃と共に私の体を抱き締めてくるタクミくん。
足を引きずりながら、その後に続いてレイカ嬢もこちらへと歩いてこようとしますが……流石に、見ていられません。
「無理をしなくて良いのですよ、レイカ嬢。足を大事にして下さい……ご覧のように、私は無事です」
「……壁に埋まっていたがな」
ポツリと余計な一言を添えるジュンくんに、レイカ嬢が火を噴きます。
「てめぇの仕業かジュン!!つうか、良くもアタシたちをあんな所にぶち込みやがったな!!一発殴らせな!!ケジメつけてやるよ!!」
「ハッ!あの異界を作ったのはこの女だ、ぶち込んだのは私ではないから殴られる筋合いは無いな!!」
「ジュン、アナタが一緒に入れるように言ったのでしょう?原因はアナタなので、殴られるのはアナタです」
「モルガナ!!お前、私を売ったな!!?何故言った!!!?」
「殴られたくありませんから」
「もう面倒臭いから二人とも殴らせろ!!」
「あの……穏便にしましょう?レイカ嬢、抑えて抑えて」
混沌としてきた場を収めようと、二人と一人の間に入りますが……どうしましょう。
そこに、空気を読まず……私としては、とてもナイスなタイミングで声が掛かります。
「やあ、みんなおかえり!取り敢えず、コーヒーブレイクと行こうか」
ーーーーー
「…………よし、取り敢えずこの章はここまでとしよう」
ペンを置き、同じ姿勢を取り続けて凝り固まった筋肉を解すように肩を動かせば、骨が折れているのではないかと思う程の異音が響く。
「テラちゃん、お疲れ様♡
「ん、流石はアドリブの神の俺……モル太郎もこれなら満足するだろ」
俺好みの、たっぷりとジャムを横に添えられた暖かな紅茶を差し出してくるのは、少し疲れた様子のマリ助だ。
自分の方も大変だろうに、それでも他人を気遣うのがコイツの美徳と言える。
「お前の方は……難航しているようだな」
「ええ……眠りがキーとなる能力には幾つか心当たりはあるわ。でも、あたしの知る瑞神級の存在でそういう状態にする能力を持つ者はいないわ……彼女、多分黒系だとは思うのだけれどもそっち方面は【
「ふむ……なら、この俺が直々にレクチャーしてやろう」
ティースプーンでジャムを
「先ず、黒の瑞神と誘黒神の特徴は不死性だ。お前の知る黒の瑞神である【
「ええ、時間経過と共に黒曜石が全身を覆い……やがて、黒曜石の塊となってしまう。砕いて、中の人間を助けようとしても無駄……砕いた端から復活するし、下手したら砕いた粉末を吸い込んだこちらも汚染されるわ」
「そうだ、その外見上の特徴からこの娘が【
ここで一口、紅茶を含む。
……美味い。渋みが少なく、それでいて紅茶自体の味の主張はきっちりとある。控えめに甘酸っぱさを出す
「……さて、ここから難しい奴らだ。【
「なら、この子は生きているから【
「違う、
「……でも【
「まあな……あのデカブツがいなければ判断がつかなかったが、十中八九【
「だいぶ状況がすっきりしてきたわ、さっすがテラちゃん♡長生きしてるだけあるわ〜ちゅっちゅしてあげちゃう♡」
身を乗り出して、こちらに近づこうとするマリ助の前に、ティースプーンを剣のように指し向け……その動きを牽制する。
「マジでやめろ……俺は清廉潔白な童貞を維持しているのを誇りにしているからな。キスだってした事ない」
「それ、自慢出来るの?」
「童貞舐めんなよ、性行為を知らんからとびっきりのを妄想で書けるのが特権だ」
再び紅茶に口を付け、イラつき逆立った心を平常に戻していく。
「四柱目の【
「しかも、現状持ち主がいない……完全にフリーだからその権能が彼女に向けられていても誰も分からないわね」
「そうだな」
「なんだか、変な反応ね……テラちゃん、何か懸念でもあるの?」
自分でも分かるくらいに眉間に皺を寄せているのを、指でマリ助に指摘されるが……仕方ないだろう。何せ……
「
俺の言葉に目を見開き、顎に手を添えるマリ助だが……少しの時間、考えるだけで俺と同じ結論に至ったようだ。
「…………【
「そうだ、やはり頭の回転が早いなお前」
「テラちゃんにヒント貰ったからよ〜……白から黒、つまりは元々は白だったのでしょ?黒に行っても、物事に理由を付けないと動かない白のモンスターのよくいる性格がそのままって訳でしょ?」
「ああ、一度だけ【
丁寧に菓子折りを持ってきて、さらにはより良い土地を探してきたから許してやったが……思い出したら、ムカついてきたな。おのれクソ虫。
「でも待って、それだと黒の瑞神は全て候補から外れるわ」
「いや、まだ後
ティーカップの底に溜まった、
「まさか……【
「正確にはその前身だ。ところでマリ助、寄生虫が最も気をつけることはなんだと思う?」
「藪から棒に何を……?そうね…………死なないこと、かしら?」
「半分は当たりだ。
席を立ち、ペンを手に取る。
そのまま、眠り続ける少女の枕元に立ち……その腕に、ペンを振り下ろした。
「テラちゃん!?」
「よく見ろ」
ペン先は少女の肉に突き刺さるが……直ぐにその傷は消える。少女の表情には
「傷が治った……これって」
「クソ虫の不死性、それは回復能力の高さだ。これで決まりだな。
【
その名を口にしたと同時に、少女の影が少し揺らめく……動揺しているな分かりやすい奴め。
「【
「クソ虫は一度滅びかけた、それにアイツは元々は個であり群れだ……完全に滅びる前に、群れを分けてもおかしくは無い」
「なら、眠り続ける理由は?」
「…………クソ虫もまた、眠り続けているからだろう」
マリ助には教えられん……これを知るのは俺と後は影緑神ぐらいだ。
恐怖を司る神である俺達だけが知る秘密……この事は墓場まで持っていくつもりだ。
「虫下しの術式が有効になるだろう、マリ助」
「そういう生活に密接した魔術は取り扱ってないのよ……あたし、戦闘系だから♡」
「なら……ヤォ坊にでも借りてきたら良いだろ、仙人だったろアレ」
「ヤォちゃん、朝からお出かけしてるのよ……お気に入りの彼を連れて」
なんで必要な時にいないんだアイツ……嫌な予感しかしないな。
ユギトにまた変なフラグが立ちました