TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
「
「大丈夫だっぺ、おっかあ!わたすももう中学生だっぺ。一人で行けるっぺな!」
ぺしっと自信満々に胸を叩けば、ぽよんと体が揺れる。
遠いと言っても、バスを乗り継いで行ける距離で……何よりも、久しぶりにおばあちゃんに会えるのがとても嬉しいっぺ。おばあちゃんから届いた手紙は……久しぶりに会いたいという内容。でも、おっとうもおっかあも、お仕事が忙しくて行けないからと……わたすが一人で行くことになったっぺ。
『ミドリコ、妾が
「
「もう、心配し過ぎだっぺ!行ってきまーす!」
これ以上いたら、おばあちゃんの家に行くのを止められそうなので……申し訳ないけども、リュックを背負ってそのまま家を飛び出すっぺ。
ぴょんと肩に乗ってくる子狐サイズの【タマモノマエ】がしっぽでほっぺたをくすぐってくるっぺ。
『コレッ、妾を忘れるでない』
「ごめんっぺ、でもあのままだとおっかあに止められそうだから……」
この小さな狐の姿をした【タマモノマエ】は、言われなければ普通の狐としか思われないっぺ。
【タマモノマエ】によると、緑のモンスターは昔からこうして小さな獣に化けて人間の世界に出てきて、色々としてきたらしいっぺ。
妖怪とか、そういうのはもしかして化けて出てきた緑のモンスターたちのことなのかもしれないっぺな。
「もうすぐバス停だっぺ、流石にバスの中だと【タマモノマエ】がいたらダメだから……ちょっと、カードの中に戻っていて欲しいっぺ」
『人の世の
ひゅるりと、デッキの中に戻っていく【タマモノマエ】……これで、正真正銘一人になったっぺ。
手首に付けた虫除けリングは、まだまだ効果はあるし……虫除けスプレーもいっぱい掛けた。一人でも、怖くないっぺ。
ーーーーー
バスを乗り継いで……見慣れた山道の前のバス停に着いたっぺ。
「ひゃあ……懐かしいっぺなぁ」
おばあちゃんと会うのはいつ以来だろう……小学校の二年生くらいの時だっぺかな。
山道は人の手が入っていて、歩く分には問題は無いっぺ。ただ、どうしても木々が生い茂っていて……
「やだなぁ……」
ポケットに入れた虫除けスプレーをギュッと握り……意を決して、歩き始める。
昼間でも薄暗い森の中、聞こえるのはわたすの歩く音と木々のざわめき……虫の鳴き声。
嫌だ、嫌だ、嫌だ……あの大会の時以来、わたすは虫がダメになったっぺ。
時々思い出してしまうあの気持ち悪さ……暗闇で、無数の小さな何かが皮膚の上を這い、ソレを手で払っているのにそこにいる感覚が消えない。すぐにわたすは気づいた……
夢だったのかもしれない……でも、いつまでもあの時の感覚が消えてくれない。気持ち悪い……虫が、嫌いだ。
「うう……おばあちゃん、もっと都会に引っ越してくれないっぺかなぁ」
ぽつりと呟いた直後に、近くの木の葉が妙な舞い方をした……違う、葉じゃなくてアレは……蛾だ。
それが、わたすが近づいてきたから驚いて飛んで……わたすの所に飛んでくる。
「ひぃっ、や」
あまりにも急で……虫除けのスプレーを向ける時間も無い。
喉の奥で引き攣る恐怖の声、茶色の大きな羽がこっちに近づいてきて……
「わふっ」
黒くて、丸い何かが……蛾を捕まえた。
「だ……?」
黒くて丸いその生き物は、地面に伏せて何かをしているようで……何故か、わたすはその生き物に近づいてしまったっぺ。
「助けて……くれたっぺ?」
「わふん」
妙に愛嬌のある鳴き声のその生き物は……真っ黒な毛並みの、ポメラニアンだったっぺ。胸の所に弧が下を向いているお月様みたいな真っ白な模様があって……くりくりのお目目がとってもめんこいっぺ。
「わぁ……わんこさん、めんこいっぺなぁ」
「わふわふ」
わたすの言葉が分かっているのか、嬉しそうな鳴き声をあげながら、わたすの足に
とても人懐っこいし……どこかで飼われている子なのかもしれないっぺな。
「わんこさん、一人だっぺ?飼い主さんはいないっぺか?」
「わふ」
……わんこさんに話し掛けても、分かんないっぺ。
でも、心細さは薄れてるっぺな。
恐る恐る手を伸ばせば、わんこさんは逃げずに撫でさせてくれる……ふわふわな毛並みで、とても暖かい。
「もし良かったら……おばあちゃんのお家まで、一緒に着いて来てもらっても良いっぺ?【タマモノマエ】、中々起きないし……ちょっと、寂しいっぺ」
「わふ!」
元気な声と共に、わんこさんがわたすの胸の中に飛び込んでくる……やっぱり、暖かくてふわふわで……【タマモノマエ】のしっぽとはまた違う気持ちよさだっぺ。
「えへへ……ありがとうだっぺな、わんこさん」
「わふん」
それから……わたすはわんこさんを抱っこしたまま歩き続けたっぺ。
わんこさんの温かさが安心に繋がって、虫の声もあまり気にならなくなっていた。
てくてくと、曲がりくねった山道を歩いて……曲がり角を超えた先に、大きな影を見たっぺ。
「あれって……」
肩に、白いチャイナドレスを着た少女を乗せているのは……対象的な黒い中華風の服を着ている男性。その後ろ姿だけども、知り合いのお兄さんにすごく似ていたっぺ。
「
わたすが思わず、そう声を掛けたら……男性──
何か、ミミズがのたくったような文字が書かれた御札を顔の真ん中に貼り付けられていて……様子が変だっぺ。
「あれれ〜?こんな所に女の子が一人でいちゃっていいのぉ〜?こわぁい鬼さんに食べられちゃうぞぉ〜?あっははは」
「ど、どちらさんだっぺ……なんで、
大きな声で笑っているその女の子は、赤い扇子で口元を隠しながらこちらを見下ろす。
「あら、アナタもジンちゃんのお友達?でも……アナタ、なんかやな雰囲気してるわ。ヤォ、アナタのこと
そのまま扇子で
「人の頭を叩いたら、ダメだっぺ……
「ジンちゃんはヤォのお人形さんだからいいの!ねぇ〜ジンちゃん♡」
されるがままに、ほっぺたを扇子で突かれても
「
「ヤォはジンちゃんに、良いことしてあげただけよ。ずっとずーっと悩んでたみたいだからぁ……何も考えなくて良いようにしてあげたの♡」
ニタリという音が聞こえるような笑みを浮かべる女の子……
「わぎゅ……」
「あ、わんこさんごめんだっぺ」
「何一人でぶつぶつ言ってるのよ、気持ち悪い子ね……それとも、おつむがかわいそうな子かしらぁ?アナタはかわいそうでもぉ……ヤォ、やっぱり好きじゃなーい!」
わんこさんが苦しそうな声を上げて、それに謝っていたら……女の子がそんな酷いことを言ってくる。初対面なのに、なんでここまで言われなきゃいけないっぺか。
「っと、こんなやな子に付き合ってる場合じゃなかった!ヤォはお仕事しなきゃいけないんだった!」
「お仕事……?」
「そ、お仕事!ヤォはなんだって出来る子なんだから!アナタみたいなやな子はこのまま、ここで永遠に迷ってたらいいのよ。行こ、ジンちゃん♡」
「待って!
二股の道を曲がったのを追って走ったけれども……二人の姿は影も形も無いっぺ。
「いない…………あれ?」
おばあちゃんの家は、あの道の逆だから……二人の事は気になるけども、おばあちゃんの所に行くのを優先しようとしたら……
まだ時間は昼間なのに、辺りは薄暗くなってきて……遠くから、笑い声が聞こえた気がしたっぺ。