TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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閑話 全てはシナリオ通り

「戻りました……ジュン、何時まで拗ねているのですか。次の機会がありますよ」

 

「………ふん」

 

 

モルガナの奴の転移により、マリリン達のアジトに戻った私たち……今のやり取りは、モルガナの奴との()()()()()()()()()()()

これから私は奴らの情報や動向を流す、所謂(いわゆる)スパイとなる。無論、バレたら流石に無事では済まないだろうが……私が今、誘黒神たち(アイツら)に対して見せられる謝意としてはこれぐらいしか思いつかない。

……口で謝るだけでは、私の気が済まんからな。

 

 

「あらあら、モルちゃんにジュンちゃんおかえりなさい♡ちょうど、お紅茶を入れてたのだけど二人もどう?」

 

「要らん」

 

「私は頂きましょう……ジュン、人の好意を無碍(むげ)にしてはいけませんよ」

 

(やかま)しい!!貴様は私の母親かっ!!?」

 

 

女性的な動きを過剰に模した……なよなよとした動きでこちらに近づく銀髪の偉丈夫──マリリン・アヴァロニアを手で払えば、モルガナが素で私を(たしな)めてくるのが、酷く腹立たしい……本当に演技抜きでうっとおしいぞ、その対応は。

 

 

「帰ったか、モル太郎」

 

 

テーブルに着く基青神がモルガナを見て、意味深に目を細めるが……直ぐに視線を外して、ティーカップに口を付ける……まさか、バレてるのか?

 

 

「心配ありません……彼のシナリオ通りですから全ては」

 

「どういう事だ」

 

「私とアナタが裏切るのも()()()()()()()()()()()()()()()。故に、彼は分かっていても干渉してきません……面倒くさがりですし」

 

 

小声で私たちがそうやり取りをしてる間にも、鼻を鳴らす基青神……全て奴の想定(シナリオ)通りか。気に食わないが、動かないのならそれでいい……対処するべき相手が減るからな。

 

 

「ジュンちゃんボロボロねぇ……大丈夫?次に行く時はお兄さんも着いて行ってあげましょうか?」

 

「要らん、それよりも優義徒(ユギト)はどこだ」

 

優義徒(ユギト)ちゃんなら、お部屋で寝ているわ。ヤォちゃんも早々にお出かけしちゃったから、誰も入ってない筈よ」

 

「……そうか」

 

 

妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)……あの娘は、苦手な類だ。

好き勝手に暴れ回り、周りを散々振り回した挙句に後始末をせずに帰る……傍迷惑の化身だ。

……あの娘の手によって、神牙(ジンガ)()()()()()()()()

そして、その肉体と魂を仙人としての術で縛って操り人形として(もてあそ)んでいる……この事を伝えた直後の誘黒神(アイツ)の怒りようは凄かった。だが、何時かは知ることになる……正直、八つ当たりで殺されるかと思ったな、天神(テンジン)アポロとあのIGPの捜査官が居なければ死んでいたかもしれない。優義徒(ユギト)、私頑張ったぞ……何とか生き抜いたぞ。

 

 

「ただいま〜……」

 

 

考えていたらその本人が帰ってきたが……様子がおかしいな。

妙に真新しい衣服、それと対称的にツンと臭う悪臭……言葉に疲れが隠せていない事から、何かがあった事が察せられる。

その後ろを無言で着いてくるのは神牙(ジンガ)だが……妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)の趣味で黒の長袍(チャンパオ)を着ているが、その服の所々が破れ(ほつ)れている。握っている拳の傷からは赤い血ではなく、緑色の何かが見えていて……顔面に貼られた札だけが変わっていない。

 

 

「やだ、ちょっとヤォちゃんどうしたの!?」

 

「マリちゃーん、聞いてよぉ……ジンちゃんがねぇ、寝盗られかけたのー」

 

 

寝盗っているのはお前だろうと、突っ込みそうになったが……今の私は、優義徒(ユギト)以外に興味が無い頭が若干おかしい状態のフリをしなければいけない。

しかし、かなりあの娘の現状は気になる。

 

 

「寝盗られかけたとは、不穏な響きですね。衣服を術で治したのも、それが関わっているのですか?」

 

 

よし、ナイスだモルガナ!!

私の代わりによく聞きに行った!!

 

 

「あ、モルモルもいたんだー……なんかねぇ、いけ好かない女の子に水掛けられて、ジンちゃんのお札が剥がされたのー!そしたらさ、ジンちゃんのコントロール出来なくなってね、思いっきりお腹殴られたの!!いっぱい、血とか吐いた!!」

 

「いけ好かない女の子……いえ、それよりも怪我は大丈夫なのですか?」

 

「へーき。ヤォ、仙人だもん」

 

 

いけ好かない女の子と言われて脳裏に浮かぶのはあのリボンを付けた少女……確か、五月雨(サミダレ)水兎(ミト)とか言ったか?

彼女とは相性が良くない……性格が合わん。

 

 

「でね、森の中で追いかけっこしてたんだけどぉ、途中でジンちゃんの中の【無限湖の繁殖(グラーキ)】の力が強くなって……もう少しで、ジンちゃん取られかけたの。その前に、ヤォがまた術掛けて取り戻したけどね!」

 

 

えへんと体型の割に大きな胸を張る妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)……あの札が、奴の術の起点という事らしいな。

そして、それは水分に弱い……だが、それを取り除いたとしても【無限湖の繁殖(グラーキ)】が神牙(ジンガ)の体に巣食っている……あの、手の傷から見えた緑がその片鱗か?

……神牙(ジンガ)の尊厳を取り戻すには、妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)の術と【無限湖の繁殖(グラーキ)】の二つを乗り越えなければならないという事か……

私一人……いや、モルガナを含めても手に余りすぎる。優義徒(ユギト)を守る事にも注力しなければならない……誘黒神たち(アイツら)神牙(ジンガ)の事は任せるしかないか。

 

 

「んー……?ねぇ、ジュンジュンさーなんでユギユギの所にいないの?何時もなら、何も無ければユギユギの枕元にずっと立ってるじゃん」

 

「今から向かう所だが?」

 

「ほんとにぃー?ジュンジュン、なーんか、良い子ちゃんになってない?どうする?一発、理性消し飛ばそっか?」

 

 

ニタニタと笑いながら、札を持つ妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)に背筋を冷や汗が伝う。

バレてはいないと思う、つまりはカマかけ……というか、憂さ晴らしがしたいだけだろう。

 

 

「ハッ!私を疑う暇があるなら、優義徒(ユギト)の為に何かしてみたらどうだ?あの子が好きそうなぬいぐるみの一つや二つや百でも作ってみせろ!」

 

「ハァ〜?負け続けで逃げ帰ってきた人になんて、ヤォ言われたくなーい!ジュンジュンきらーい!!」

 

「二人とも、落ち着いて下さい。妖娘(ヤォニャン)は言い過ぎですし、ジュンは妖娘(ヤォニャン)を煽らないで下さい」

 

 

見かねたモルガナが仲裁に入るが、妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)はその彼女を睨み、舌打ちまでする……完全に苛立ってるな、あの娘。

微妙な空気が流れる中、深いため息と共に基青神が重い口を開けた。

 

 

「ヤォ坊、緑の瑞神はどうした?」

 

「っ…………多分、暴走してるよ?」

 

「多分?その目で確認してないんだな?……修正は、しなくていいか」

 

 

再び、深々とため息を吐く基青神を見て、苛立ちが頂点に達したのであろう妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)がテーブルを叩いて基青神へと詰め寄る。

 

 

「もう!ヤォ頑張ったのにテラちゃん酷い!!もっと労わってよ!!」

 

「ヤォ坊、キンキン喚くんじゃない。後、テーブルを叩くな」

 

「なんでそんな酷い事言うの!!ねぇ、テラちゃん!!」

 

 

全くもって基青神の言うことを聞かない妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)一瞥(いちべつ)をくれた基青神が……その目を細め、感情を落とした声を紡ぐ。

 

 

「『そうやって、基青神に対して逆切れにも似た感情の発露(はつろ)を向ける妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)……だが、彼女はその振る舞いとは裏腹に聡明(そうめい)である。自らの行いを振り返り、妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)は直ぐに非を認めて、基青神の(めい)に素直に従った』」

 

 

物語のナレーションのような言葉を一息で言い切る基青神……驚くべき事に、先程まで荒れていた妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)の様子が一変する。

 

 

「……まあ、確かにさ。ちゃんと確認してないヤォも悪いとは思うけどさ…………ごめんなさい、テラちゃん。マリちゃんも、テーブル叩いちゃってごめんなさい」

 

「……良いのよ、ヤォちゃん。少し休んでから、お願い聞いてもらってもいいかしら?」

 

「お願い?」

 

「マリ助があの眠ってる少女を起こす手伝いをしてやれ、ヤォ坊」

 

「んー……良いよぉ、マリちゃん何して欲しいの?」

 

 

基青神の言った通りに動く妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)の姿に、怖気(おぞけ)が走る。

本人は全く気づいていない内に、行動を決められてその通りに動く……これでは奴の方こそ、人形じゃないか。

 

 

「アレが基青神の権能……全ては彼のシナリオ通りなのですよ、ジュン」

 

「……巫山戯(ふざけ)た力だな、神というのはどいつもこいつも」

 

 

今度こそ、(きびす)を返して優義徒(ユギト)の眠る部屋へと帰る私……誘黒神(どいつ)基青神(こいつ)も本当に、厄介だ。

……それでも、私は彼を守り切る。今度こそ、絶対にだ。

 

 

 

 

 

 

 




文字という物は偉大な発明だ。
意味さえ伝わるのならば、時間も空間も無視して自らの物語を他者へ伝えられる。
だから、自分の意に沿わぬ文字は捻じ曲げてしまおうか。
残酷な真実を甘ったるい蜜で溶かし尽くし、耳触りの良い完全無欠な大円団に堕としてやろう。
さあ、頁をめくれ親愛なる読者共!この俺こそが偉大なる童話作家■■■■■■■■だ!!!


──フレーバーテキスト【完全無欠のハッピーエンド(クルエルトゥルース)】より抜粋

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