TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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終章 三条戦は暗き淵の絵空事

「で、虫下しでいいの?虫殺しじゃなくて」

 

「良いのよ♡出してしまえば、後はあたしがちょちょいとやっちゃえるからね♡」

 

 

夜も更けて、煌々と青白い月が輝く中で……土に刻まれた魔法陣の上で寝かされているのは【這いよる混沌(ナイアルラト)】に脅かされている少女──黒鉄(クロガネ)鏡花(キョウカ)

魔法陣の上にいてもらう必要があるとはいえ、女性を地べたにそのまま寝かせているのはしのびない……手早く済ませよう。

この土地……旧神聖制約教団(ホーリーギアス)鏡富市支部は最も【這いよる混沌(ナイアルラト)】と相性が良いが……奴が分裂する原因となった事件が起きた為に、この地には()()()()()()が危機に陥るという因果が刻まれている。

故に、かの瑞神を引きずり出して討滅するにはここが適している。

 

 

「じゃあ、始めちゃうわよ。いざとなったら、フォローよろしくねヤォちゃん♡」

 

「まっかせてよ、マリちゃん!!」

 

 

背後に微動だにせずに立ち尽くす人形を置き、やる気十分に胸を張る妖娘(ヤォニャン)……その行動が基青神によって縛られているなんて、気づいている素振りもない。

……哀れな娘だ。ろくでもない存在にばかり目を付けられて、その在り方を大きく歪まされている……まあ、それは私も同じか。

自嘲の笑みを浮かべ、陣に"サモンエナジー"を込めて起動させる寸前……視界の隅に、()()()()()()()()()()()()()()()を感じた。

 

 

「っ!?マリちゃん!!」

 

 

 

 

 

──あーそびーましょ

 

 

 

 

 

世界が一変する。

咄嗟に、眠る少女に触れたのが功を奏したようで眠り姫(キョウカ)とは分かれずに済んだが……妖娘(ヤォニャン)とは完全にはぐれてしまった。

その異界に受けた最初の印象は……()()()()()()()()

空に浮かぶのはニヤケ顔が描かれた三日月、地面に生えている花にも笑顔、木にも笑顔……しかも、デフォルメされていない生々しい老若男女様々な人間の笑顔だ。

なんて……

 

 

「「「趣味悪……」」」

 

 

──酷くないですか、全員揃って!!?

 

 

思わず呟いた言葉に追従するのは男女の声……どうやら、私をこの異界で相手取るのはこの二人らしい。

 

 

「あらぁん?ソコロワちゃんにキョーマくんじゃなぁい♡」

 

「マリリン・アヴァロニア……今度こそ、倒させてもらうであります!!」

 

鏡花(キョウカ)を返してもらうぞ……!!」

 

 

"ギアスディスク"を構えるソコロワ……横の恐馬(キョウマ)は手を出すつもりはないようで、私の近くで眠り続ける鏡花(キョウカ)に視線を向け続けている……流石に、"ギアスファイト"をしている最中は彼女に注視は出来ないな。

 

 

「うふふ、おいたはダメよ♡鏡花(キョウカ)ちゃんを返して欲しかったら"ギアスファイト"であたしを倒す事ね」

 

「……黒鉄(クロガネ)恐馬(キョウマ)、マリリン・アヴァロニアは小官が倒さなければならないであります」

 

「好きにしろ、俺は鏡花(キョウカ)さえ取り戻せればそれでいい」

 

「ふぅん?お兄さんは二人同時でも構わないけれども……いいわ、先ずはソコロワちゃんからね♡」

 

 

"ギアスディスク"を起動し、デッキを装填する……今回は【完全無欠のハッピーエンド(クルエルトゥルース)】は入っていない。アレは既に()()している。

 

 

 

ーーーーー

 

 

「そんなに趣味悪いですか……?」

 

白掟(ハクジョウ)様、気にすること無いっすよ……個性的だとは思うっすよ?」

 

「レイカ嬢ですら肯定してくれない……」

 

ガクりと膝を着いて項垂れている白掟(ハクジョウ)様の肩に、慰めるように手を置くけども……正直、否定は出来ない。

アタシと白掟(ハクジョウ)様……そして、妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)鬼丸(オニマル)の奴を取り囲むように二足歩行する様々な動物たちが踊り狂っている……楽しそうにしているけれども、何の音も聞こえないのが不気味すぎる。

 

 

「ヤォもこれは引くわぁ〜何なの?メルヘンホラー目指してるの??」

 

「ホラーは目指していません、純度百%のメルヘンですよこれは」

 

「ふーん……てことは、アンタが作ってるんだこの異界」

 

 

目を細め、懐から取り出した赤い扇子を広げて口元を隠す妖娘(ヤォニャン)の野郎……今すぐにでもあの顔面を殴りつけてやりてぇが、今回は我慢だ。

 

 

白掟(ハクジョウ)様……アタシを、鬼丸(オニマル)の奴と二人にさせて下さい」

 

「……倒せるのですか?今の彼を」

 

 

立ち上がった白掟(ハクジョウ)様が真赤な目でアタシを見つめる……あのアーティファクト【衰退因子(ディケイド):畜生道】を出された時点でアタシのデッキは機能不全に陥る。

アーティファクト破壊カードをソイツに叩き込めば言いけども、そうしたら他の厄介なアーティファクトに手が回らなくなるし……何よりも【無限湖の繁殖(グラーキ)】によるコピーや墓地からの回収がある。

元から相性は最悪、言うのも情けないがアイツとの"ギアスファイト"の勝率なんて良くて二割程度だ。

それでも

 

 

「アイツはアタシの舎弟なんすよ……アタシが、アイツを助けてやらなくてどうするんすか」

 

 

顔面に札を貼られ、一言も発せずに文字通りの人形としてこの場に立ち尽くす鬼丸(オニマル)の姿を見ていられない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

自信が無くても、やるしかない。

まっすぐに鬼丸(オニマル)の奴を見つめながらそう宣言すれば……視界の隅で、白掟(ハクジョウ)様が笑みを浮かべる。

 

 

「なら、この子たちを連れて行ってください……今のこの子たちは、きっと貴女の力になってくれます」

 

 

そう言って、差し出されるのは()()のカード……前にも、白掟(ハクジョウ)様からカードを貰ったことはある。

その時は、頭がボーッとして……正直、自分でも何やってんだか分からなくなってた。

 

 

「……()()()、何の細工もしていませんよ。信じて、くれますか?」

 

 

眉尻を下げ、恐る恐るといった様子の白掟(ハクジョウ)様は……怒られるのを怖がる子供みたいだった。

返事は……カードを受け取って、デッキの中に入れる行動で済ませる。

あの大会の時から、アタシにとって白掟(ハクジョウ)様は憧れの人というか……危なっかしい弟のような感じになった。

アタシなんかよりもずっと強いし、その正体からしてずっと歳上なのも分かってるけど……ふとした行動が幼くて、そのくせ自分が傷つくのに無頓着(むとんちゃく)だ。

この異界を開くのもぶっつけ本番だし、結構な負担がある筈なのにそれを欠片も見せない……こうやって、色んなことで体を張るのは贖罪(しょくざい)のつもりなのかもしれない。

……そんな姿をずっと見せられたら、信じないわけにはいかねぇだろ?

 

 

「レイカ嬢……ありがとう」

 

「礼は良いっす。それより、早くアイツと二人にさせて下さい」

 

「カルマちゃんが、ジンちゃんとまた戦うの?手も足も出ずにボッコボコにされたのにぃ〜?あっは♡カルマちゃんってば、ど♡エ♡ム♡」

 

 

ムカつく喋りをする妖娘(ヤォニャン)の野郎が指を動かせば、ビクリと鬼丸(オニマル)の肩が跳ねる。

その次の瞬間、景色が変わる。

周りを踊り狂っていた動物たちは消え、代わりに空に浮かぶのは生々しい笑顔を浮かべた太陽。

見渡す限りの草原、そこを吹き抜ける風はどこまでも爽やかで気持ちがいい……あの太陽を除けば、良い空間なんだけどな。

 

 

鬼丸(オニマル)、リベンジマッチと行こうぜ」

 

「…………」

 

 

分かっていたけども、返事は無い。

"ギアスディスク"をアタシが構えれば、アイツもまたぎこちなくだけども"ギアスディスク"を起動させて構えた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

「本当に飛ばしたんだ〜?何のカードを渡したのか知んないけどぉ……それだけでカルマちゃんがジンちゃんに勝てると思ってるの?」

 

()()()()

 

 

真っ直ぐにヤォを見てくる誘黒神の鮮血のような目がひたすらに気持ち悪い……アイツの正体は既にテラちゃんから聞いてるから尚のこと、嫌悪感しか湧かない。

 

 

「キモイ目で見ないでよ、人に取り憑く寄生虫如きが」

 

「その寄生虫如きよりも格下なのが貴女です、妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)……こうして自分の目で見て、その正体が分かりましたよ【()()()】」

 

 

口角が上がる。

抑えていた力を解放すれば、かあ様譲りの真っ白な尾が露出する。

肉体も愛らしい少女の頃のものから、瑞々しい色気を放つ熟成された歳の頃のものに成長し……纏っていた服もチャイナドレスから白無垢(しろむく)へと変わる。

 

 

「あっは♡ちょうどいいわ、お前を痛めつけてやるのにあの姿だと力不足だったのよねぇ」

 

「見慣れた姿に戻ったようですね……そちらの方が、私としても好都合です。子供を(なぶ)るのは趣味ではありませんので」

 

「ふぅん?異界にいるとはいえ、この土地はお前にとって最悪の場所よ?そんな場所で一人でヤォと戦うの?カルマちゃん呼び戻して加勢してもらったら?一人じゃなーんにも出来ない寄生虫さん♡」

 

「一人だから、良いのですよ」

 

 

──お前を潰す所を、他の子に見せたら怖がらせるもん

 

 

血のような緋色の目と形の整った唇が弧を描く。

カサカサと小さい何かが(うごめ)く音が周りからひっきりなしに聞こえてきたけども、問題は無い。

元々【這いよる混沌(ナイアルラト)】の対策で虫下しと虫殺しの術式は山ほど(こしら)えてきたから……ソレから強化されたであろう誘黒神でも十分に相手取れる。

 

 

 

「「「「「"ギアスファイト"レディセット!!」」」」」

 

 

 

レジーナ・K=ソコロワ 【進撃!撥条(スプリング)機兵団!!】

VS

マリリン・アヴァロニア 【楽園の帰還者】

 

 

 

駆魔(カルマ) レイカ 【斬羅射不(サンライズ)煉獄炎(フルヘルズバーン)!!】

VS

神牙(ジンガ) 鬼丸(オニマル) 【衰退と増殖の輪廻】

 

 

ユギト 【亡き神に捧げる双奏】

VS

妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン) 【無限苦行〜針千本〜】

 

 

 

「「「「「スタートアップ!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

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