TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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( ˇωˇ )この娘は考えるよりも先に行動させた方が良いと思いました。何が何だか分からないけど食らえの精神で進ませます


終章ノ二 命短シ進メヨ乙女

遥か遠い記憶は常に淀んだ空気から始まった。

昼間でも、空は常に曇天(どんてん)で辺りは薄暗く……時折、他所(よそ)交易(こうえき)に向かった時にしか太陽という物を見る機会が無かった。

腐った水の臭いは、我らが同胞を育む生命の水の臭い。常に足元を濡らし、絡みついてくるようなぬかるんだ地面は我らが同胞の揺籃(ゆりかご)

ごく稀に、この衰退の沼を訪れる旅人は皆、異口同音(いくどうおん)で尋ねてくる。

 

 

──こんな所に住んでいて、辛くはないのか?

 

 

それに対して、我輩の答えはいつも同じだ。

 

 

──いいえ!この沼地こそが我ら菌類(ファンガス)の楽園ですので!!!

 

 

笑みを貼り付け、心にもない言葉を吐き、その旅人を招き……そして、()()()()()とする。

増えていく同胞(キノコ)、しかし……我輩と同じ姿の者は存在しない。

 

 

■■■■

 

 

時折、顔を覗かせるその感情から目を逸らす。

そして、今日もまた我輩は旅人を騙そうとするが……その青年が我らに(かざ)したのは憐憫(れんびん)ではなく、殺戮(さつりく)であった。

 

 

ーーーーー

 

『さあ、主様のターンですよ!カードを引いてくださいなー!』

 

 

鬼丸(オニマル) 第四ターン

手札:5

ライフ:2 ターンカウンター:6 残りデッキ枚数:35

 

 

ふらりと、カードを引く鬼丸(オニマル)が倒れそうになるのを【オニテング】が支えてる。

その際に、引いたカードを覗き込んだ【オニテング】の表情がいやらしくニヤける。

 

 

『さあ、参りましょう!!我らが最新の同胞にして、衰退の沼の最高傑作!!おいでくださいませ【無限湖の繁殖(グラーキ)】殿!!』

 

 

じわりと、地面がぬかるみ……少しづつ水が染み出てくる。

空に浮かんでいたニヤケ(づら)の太陽は姿を隠し、代わりに分厚い灰色の雲と冷たい空気が辺りを支配する。

 

 

『【無限湖の繁殖(グラーキ)】殿の力により、主様の場の我らが同胞は更なる繁殖を行います!衰退なのに、すっごい、繁栄してますぞー!!』

 

 

その言葉の通りに、赤やら白やらのキノコが大量発生し始め……アタシたちの近くにまで生えてきたそれらを【シンコウ】と【ショコウ】が必死に追い払っている。

 

 

「出やがったね、インチキアーティファクトめ」

 

『インチキ?ノンノン、これは神の威光という奴ですぞ。【無限湖の繁殖(グラーキ)】殿の力で、墓地より【猛毒菌類(ポイファンガス)イボテングタケ】を復活!同じコストの【衰退因子(ディケイド):畜生道】をデッキより場へ!さあ、獣共よ喰らい尽くせ!!』

 

 

恐れていたカードがついに来てしまった。

イボだらけの気色悪いキノコと共に地面にばら撒かれる動物の骨……それらが衰退の理に従い【シンコウ】と【ショコウ】へと襲い掛かる。

 

 

『【無限湖の繁殖(グラーキ)】殿の力で数を増やした【畜生道】、場の衰退カウンターは二個ですから、併せて二倍でB(バイタル):四以下のモンスターは全て墓地送りですぞー!ざまぁでありますな!!』

 

「腹立つ動きすんな、蹴るよ!!!」

 

 

指を二本立てて、二倍を強調しながら煽り散らかす【オニテング】

 

 

『おお、怖い怖い。怖いので、念には念を入れましょうか!我輩、出陣!!!』

 

 

誓約(コントラクト)サモンされ、場に歩みでる【オニテング】……これで【地獄の舗装工事(レッドテープ)】によるアーティファクトの一斉破棄は封じられた。

従来の【菌類(ファンガス)】によるデッキ破壊と【衰退因子(ディケイド)】によるロックの複合……言うなれば、完全封鎖公開処刑(ロックデッキデス)

諦めが心を覆いそうになる……でも、ここで諦めればアタシは、鬼丸(オニマル)を助けてやれない。

 

 

『我輩の効果により、お嬢さんのデッキの上を主様の場のアーティファクトの数だけ破棄しますぞ!数は……15ですな!【イボテングタケ】二枚の効果により、併せて17枚破棄ですぞ!』

 

 

ゴッソリと持っていかれるアタシのデッキ(可能性)。ニヤケ(づら)の向こう……風にあおられて、顔面に貼られているお札が一瞬めくれ上がる。その下から見えた、こちらを見ているようで見ていない……硝子玉(ガラスだま)の緑色の瞳と視線が重なる。

ああ、くそ……らしくない。らしくないんだよ!

アタシもアイツもらしくない事ばっかさせられて!あの文字通りに天狗になってる奴やチビ女に手玉に取られまくって!ああ、そうだこのイラつきの本当の矛先は……()()()()()だ!!

考える前に動け、過程なんて知らない、結果だけだ……最速で、結果をもぎ取るのがアタシの"ギアスファイト(やり方)"だろうが!!

たった一枚のカードに怯えて、戦術が縮こまってた!先のターンだって、後先考えずにいつも通りに殴ってりゃ倒し切れてた!!

自分の頬を両手で叩き、ヒリヒリとした痛みに衝動を乗せてアタシは吼えた。

 

 

鬼丸(オニマル)ぅぅぅ!!!その目をかっぴろげて見てやがれ!!アタシが、この状況を、ひっくり返してやる所を!!!」

 

『無駄無駄!!次のターンにはB(バイタル):6以下のモンスターは場に出しても直ぐに破棄されるようになり、アーティファクトは我輩の効果で守られている!!バーンによるライフ削りも【畜生道】で対策済み!!お嬢さんは手足をもがれたも同然ですぞ、そのような状況でひっくり返すと?どうやって!!?』

 

「うるせぇぞ、くそ鳥野郎!!!考えなんてないね!!アタシは、ただ真っ直ぐに!アンタらのタマをぶち抜くだけさ!!!」

 

 

ギラついた視線を向け、鬼丸(オニマル)に指を指せば……目の錯覚だろうか、アイツの指先が一瞬だけおかしな動きをする。

 

 

「………ぁ……」

 

『主様……?いえ、気のせいでしょうな。ターン終了でございますね?(かしこ)まりました』

 

 

そして回ってくるアタシのターン……デッキは次のターンまで間違いなく持たない。これが、アタシのラストターンだ。

デッキの一番上に手を掛ければ……湿った空気の中だというのに、妙に喉が渇いた。

 

 

「アタシの……タァァァン!!!!」

 

 

レイカ 第五ターン

ライフ:18

手札:4 ターンカウンター:5 残りデッキ枚数:9

 

 

引き当てたのは……白掟(ハクジョウ)様から渡された、カードの()()()()()

 

 

『【無限湖の繁殖(グラーキ)】殿の力で主様はライフを1消費しますが、それも【畜生道】が受け止めて更なる(かて)としますぞ!さらに、ターンカウンターが増えたので【ベニテングタケ】たちの効果が発動!!全てに【イボテングタケ】の効果が乗るので合計で破棄枚数は6!!』

 

「知ったこっちゃないね!!スペルカード【再蘇生(リターン)】発動!!アタシのカードが破棄されたターン、アタシの墓地からコスト最大のモンスター一体を効果を無効にして場に出すよ!!来な、妬みに犯された魔性の蛇竜(だりゅう)!!【邪聖天の嫉妬(デモリエル・ヴァーチェ)レヴィアタン】!!!」

 

 

地面に大穴を空けてそこから飛び出すのは全身が血に濡れ、頭部から一本の刀が飛び出している大蛇──【レヴィアタン】が"ギアスモンスター"の【カイエン】と対になるようにアタシの横に留まる。

その身を喰らい尽くそうと噛みついてくる動物の骨を(わずら)わしそうに身を(ひね)って振り落とす。

 

 

『【邪聖天(デモリエル)】……!なるほど、隠し球ですか……ですが、幾ら強力無比なその方でも、たった一枚でどうするおつもりで!?』

 

()()()()!!!スペルカード【懐炎(バックドラフト)】!!」

 

 

懐炎(バックドラフト)

赤 コスト:3 スペル・炎

 

相手の場のカードを一枚破棄する。その後、自分は一ダメージを受ける。

D(デュアル)R(レゾナンス):【カイエン】モンスター一体×赤のモンスター一体を行う。

 

 

最早、使えるカードを片っ端から叩きつけることしかアタシには出来ない。

それでも、足掻(あが)けるならば……最後まで足掻(あが)いてやる!

 

 

「コイツの効果で【オニテング】!!アンタを破棄して、アタシは一ダメージを受ける!!」

 

『ダメージを受ける……それはマズイ!主様!スペルカード【天狗の奥の手】を使って下さいな!!!』

 

 

【天狗の奥の手】

緑 コスト:4 スペル・天狗

 

相手がスペルカードを発動した時に発動出来る。相手が発動したスペルのコスト以上の数のアーティファクトが自分の場に存在するならば、そのスペルの効果を無効にする。

 

 

【オニテング】の手に握られたのは葉っぱで作られた団扇(うちわ)、それがアタシのカードから放たれた炎をかき消す。

 

 

『スペルカードが発動されたので【天道】に衰退カウンターを一つ乗せますぞ!これで【畜生道】の効果範囲がその【邪聖天(デモリエル)】にも届きますぞ、結構危なかったですな!!』

 

 

その言葉と共に再び襲いかかる【畜生道】

【レヴィアタン】の全身が食い破られ、アタシの場はまた空となる。

何か、まだ何か無いか……!!

残りの手札は使えない、となったら残るは大量にカードが落とされた墓地だ。

そして、唯一使用可能なそのカードに触れた。

 

 

「【懐炎(バックドラフト)】のもう一つの効果だ!!D(デュアル)R(レゾナンス)を行う!!」

 

 

何だか、もうよく分からなくなってきたけど知るもんか!!とにかく、使えるものは使っちまえ!!!

 

 

「墓地の【獄炎総長(ヘルズバーン・ヘッド)カイエン】と【邪聖天の嫉妬(デモリエル・ヴァーチェ)レヴィアタン】を取り除くよ!!!」

 

 

とぐろを巻き、大人しく頭を垂れる【レヴィアタン】

その頭部に刺さった刀剣を【カイエン】が引き抜き……紫炎が二体を包み込む。

残ったのは一本の(つるぎ)

無骨で、装飾の一つもない無愛想な剣だったけども……綺麗だと思えた。

 

 

「来な、神魔断ち切る豪剣【天羽々斬(アマノハバキリ)】!!」

 

 

 

 

 

 

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