TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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出オチと恋模様と


彼は光に撃ち抜かれたから

「なんで、なんでよ……!?」

 

「私のターン開始時に【強壮なる使者(暗黒のファラオ)】に、C(コントラクト)カウンターが八個載っていますので……その真の姿を解放します」

 

 

淡々と言葉を紡ぐ誘黒神の口の端には、吐き散らした中身の残滓(ざんし)が残っている。

何度も、幾度も、十を超えて百を超えて……叩き込み続けたのはヤォが丹念に練り上げて、呪いを込めた虫殺しと虫下しの術式。

対象を(・・・)虫だけに(・・・・)絞り込んだ(・・・・・)事によって、神にすら通用する筈なのに……憎たらしい微笑みを浮かべたまま、奴は未だに健在だった。

 

 

約定(クレスト)履行(コンプリート)。契約に基づき、第六の恐怖はここに顕現する」

 

 

マズイマズイマズイマズイ!!!

誘黒神の言霊(ことだま)により、地面に吐き散らされていた虫の残骸が集まって、人の形を取り始める。

真赤な光を頭部らしき所に収め、(そび)え立つのは真っ黒なマネキン人形めいた虫の集合体。

耳の奥をこそげるように鳴り続ける、ザワザワという不快な音から逃れたくて手で耳を抑えるけれども……何故か、寧ろ音が強くなる。

不意に瘙痒(そうよう)感に襲われ、衝動のままに腕を()(むし)れば……じわりと(にじ)むのは赤い血(・・・)()黒い粒(・・・)──否、黒い虫たち。

喉の奥が引き()るように悲鳴が漏れる。

 

 

「いつの間に、なんで……!?やだ、ヤォの中から出ていってよ!!」

 

「散々、人を傷つけておいて何も反撃をされていないと?随分と……優しい世界で生きてこられたのですね」

 

 

赤い瞳が嘲笑(あざわら)う為に細められる。

誘黒神が見せつけるように、ゆっくりと腕を天に向かって伸ばす。

 

 

「【誘黒神(ナイアルラト)】が場に出た時の効果により、このカードに乗せられたC(コントラクト)カウンターを全て取り除き……その数である八枚のカードをそちらの場と墓地からゲーム外へと取り除きます。この時にカードを八枚以上取り除いているならば……お前はゲームに敗北します」

 

 

()(むし)れば()(むし)る程に血と共に、虫が溢れ出る。

気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い……ああ、でもこんな酷い状態になってるヤォってなんて

 

 

「なんて、可哀想(可愛い)んだろぉね」

 

 

 

ーーーーー

 

 

誘黒神(わたし)】に叩き潰された妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)は最後に、奇妙なことを呟きながら意識を失ったようですね。

"ギアスファイト"が終わったと同時に、私の足を締め付けていた拘束(こうそく)が解かれ……フラりと、その場に座り込んでしまいます。

何度もいたる所を、そこそこの太さの針に貫かれた足は赤い血と共に黒い塊を垂れ流していて、無惨(むざん)な有様となっています。早い段階で(・・・・・)痛覚が失せたのは良かったですね……絶対にこれ、痛いですもん。

出血と共に、虫の群れが体内からかなりの数を流出したので……全身が酷く(だる)いです。

 

 

「虫下し……私のメタとしては、合ってますけども合わせた虫殺しの強度が足りてませんね……私を殺し尽くしたいなら、統白神か占赤神を連れて来てください」

 

 

『まあ、聞こえてはいなさそうですが』と付け足し、完全に目を回している妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)から目を逸らして作り物の空を見上げます。

……鬼丸(オニマル)くんを(しば)る術者である妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)を倒したことで、彼を(いまし)める術はその力を弱めている筈です。

後は、彼が自力で術を打ち破るか……外から──レイカ嬢が彼を助けるかの二択ですね。

……後は、任せましょう。私は疲れたので少し休みます。

 

 

ーーーーー

 

 

「──鬼丸(オニマル)!!!」

 

 

覚悟していた苦痛は訪れず……軽く押されたような衝撃と共に、尻餅をつく形で座り込んだ俺のもとに走り寄ってくる駆魔(カルマ)

"ギアスファイト"が終わったというのに【カイエン】はその場に残ったままで……一歩離れた場所で駆魔(カルマ)を見守っていた。

 

 

「……駆魔(カルマ)

 

「なんでかは分かんねぇけど、元に戻ったんだよな!?良かったぁ……」

 

 

破顔し、嬉しそうに話してくる彼女の笑顔が眩しくて……目を逸らしてしまう。

 

 

「どうしたんだよ?どっか痛いのか……?」

 

「いや、痛くはない……無い、が………」

 

 

胸の奥がまたザワついて……いつものように(・・・・・・・)、気が付かないフリをする。

話してしまえば、この関係が変わる。駆魔(カルマ)は俺が、彼女を異性として見ているとは思っていないだろう。

彼女は……俺のことを喋るのが苦手で図体はデカいが、気性は穏やかな手のかかる弟分として扱ってくる。

それでいい。

 

──ほんとうに?

 

自分でも女々しいと思うが……彼女が楽しそうに笑っている姿、敵対者に獰猛な牙を見せつける姿、憧れの相手を語る姿……それを近くで見られるだけでいい。

 

 

──ほんとうに?

 

彼女を、駆魔(カルマ)を幸せにするのは……俺じゃなくてもいい筈だから。

 

 

──うそつき

 

 

時計の針が動くような音が響き……直後に、ピシリとヒビが入る音が聞こえた。

それは、振動を伴っていて……危険を感じて、逃げようとしても体には力が入らない。

 

 

「カル」

 

 

俺が彼女を逃がそうとしたのと同時に……地面が崩れ落ちる。

視界に広がるのは(よど)んだ、酷く不快な臭いを放つ(にご)り水。

酷く(ねば)ついて、体にまとわりつく重い水がこの水の底へと落とそうとするように、体を引っ張ってくる感じがしていた。そして……近くに落ちてきた赤い色に、駆魔(カルマ)もまた俺と同じように引きずり込まれようとしていた。

 

 

──おいで、おいで、ぬまのそこ

 

 

駆魔(カルマ)の体に触れる……温もりが、少しづつ失われていく。

苦しげに、表情を歪める彼女。

 

 

──みんないっしょ、うれしいね

 

 

口の端が歪む……誰かに渡すくらいなら、俺と共に心中させてしまおうか。

俺の光、温もり、宝物。誰にも触れられないように……壊してしまおうか?

手に力が()もる。

痛みに、驚いたように見開かれる彼女の瞳……金色と、目が合った。

俺は、何を考えていた?

 

 

──おいで、あたらしいなかまたち

 

 

水の勢いが強くなる。それと共に悪臭が強くなり、吐き気すら(もよお)す。

彼女の口から、吐き出された酸素が泡となって水面に向かって登る。

彼女は、このままだと死ぬ。

俺と同じように(・・・・・・・)

 

 

──おんなじ、おんなじ、うれしいね

 

 

歯を食いしばる。

意識を失ったのか、ぐったりとした駆魔(カルマ)の体を抱え……水を蹴った。

重い水は最早、半分固体のようになっていて……それでも足掻(あが)いて足掻(あが)いて、水の中をかき分けていく。

 

 

──なんで?すすもうとするの?そちらはくるしいだけだよ

 

 

そうだろうな、棺桶(かんおけ)に両足を突っ込んでいる俺は……駆魔(カルマ)と共に居続けられないだろう。

彼女の隣にいるという願いも、やがて叶えられなくなるだろう。

 

 

──なら、なんで?

 

 

……ここだと、彼女は笑えないだろう?

水は駆魔(カルマ)には似合わない。駆魔(カルマ)に似合うのは、何よりも(はや)い風と一途に燃え続ける炎だ。

ぼんやりと、進む先……遠くが明るく見えてくる。

 

 

──じぶんがむくわれないと、しっていても?

 

 

十分に報われている。

色んな人に迷惑を掛けた、傷つけた、そんなろくでなしの俺を助けてくれた人たちがいて笑ってくれている……十分だ。

水面から、腕が伸ばされる。

駆魔(カルマ)をすくい上げたその腕を見届ければ……緊張が途切れたのか、力が抜けていく。

 

 

──うそつき

 

視界の端から暗くなる……妲己(ダジ)という少女と"ギアスファイト"をした時にも似た感覚を覚えた。

……でも、あの時と違って不思議と満足感がある。苦しくもない、ただひたすらに眠い。

 

──うそつきたちめ(・・・・・・・)

 

何かが強く背を押した。

俺の体が水面へと押し上げられる……そして、二本の腕が俺を捕まえて引き上げていく。

引き上げられる寸前、振り返ろうとした俺を鴉羽(からすば)が遮った。

 

 

ーーーーー

 

貯めに貯めた"サモンエナジー"……それにより、実体化したことで最後の一押しが出来た。

 

 

──あーあ、いっちゃった

 

 

沼の底の汚泥(おでい)から残念そうな声が響く。

獲物が消えた沼は静かで、舞い上がっていた泥は落ちていき……若干だが、水が透き通る。

 

 

──あたらしい、なかまがふえたとおもったのにね。なんで、にがしたの?

 

「主様は存外、欲深い方ですからな……このような沼では彼を留めることは出来ないでしょう」

 

──てんぐのおまえより?

 

「ええ!その欲を抑え、愛に(じゅん)ずる姿は実に健気(けなげ)!!……もう少し、小柄だったら色々と(・・・)()えていたのでしょうなぁー」

 

──りかいできないね、あのこもおまえも。ほんとうはひとりでさびしいくせに

 

「何のことでしょう?ほら、侵食を抑えて抑えて!黒の神が怒っちゃいますぞ【無限湖の繁殖(グラーキ)】殿!」

 

──はぁい

 

 

徐々に水気が引く。

それと共に、"サモンエナジー"で作り上げた仮初(かりそめ)の肉体が(ほど)けていくのを感じた……

らしくない。見ず知らずの人間を落とし続けていたのに……今更、片方は自分のサモナーとはいえ、獲物を二人も見逃すなんて……本当にらしくない。

自嘲(じちょう)の笑みを浮かべ、我輩は今度こそ……自らの世界へと帰っていく。

 

 

 

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