TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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脚本家と演者は両立するか否か?

滑らかに動かし続けていた最も愛用している羽根ペン。それが、想定(シナリオ)終止符(ピリオド)を打ったと同時に……俺は舌打ちを漏らしてしまう。

俺の書いた(・・・・・)想定(シナリオ)通りなら……生き急いでる女はあの場で死に、デカイのは【無限湖の繁殖(グラーキ)】に取り込まれて骸の王になる筈だった。

ルシなんたらの嘘を真実にする能力は、既に死んでいる者には届かない。

正確には、あの能力(ちから)は魂自体を弄っているのだろう……死した直後ならば、まだ魂が肉体に残っているだろうが時間が経てば魂はその場を離れていくだろうし、魂自体を別の魂で覆い尽くして隠してしまえば……流石に能力の範疇から外れる。

黒虫──誘黒神が白の器の遺体に取り憑き、魂を呑み込んだのはファインプレーだった。お陰で、俺の仮説の一つを確認する為の手掛かりが残ったのだから……

 

閑話休題(思考がズレたな)

 

ルシなんたらの能力(ちから)の対策として、死人を最低でも二人は配置しておきたかった……後の伏線の為に。

だが、そうはならなかった。

俺の想定(シナリオ)を、ただの人間が覆したというのか……?

 

 

「いや、違うな……黒虫がヤォ坊を潰して術を壊したから、展開がズレたのか」

 

 

想定(シナリオ)では、水中に叩き込んだ段階ではまだデカイのはヤォ坊の支配下だった。霊符(れいふ)が濡れて効力を失い、直後に【無限湖の繁殖(グラーキ)】がその肉体を完全に掌握(しょうあく)……生き急いでる女を沼の底に引きずり込んで終わりだった。

だが、水中に叩き込む前に既にデカイのは術から逃れていた……【無限湖の繁殖(グラーキ)】が肉体の制御を得る前に、奴の自我が帰ってきた……再生は誘黒神の十八番(おはこ)。奴自身の作り出した異界の中でならば、自らの再生能力を気に入った相手に分け与えることが出来る……無意識に、だろうがな。

 

 

「もう想定(シナリオ)は進んでしまった……あーくそ、修正がめんどくさい!!」

 

 

俺の周りでカチカチと規則正しく針の動く無数の懐中時計……その内の一つを消し去ると同時に、羽根ペンを放り投げた。

……神が関わるとロクなことにならん。

俺は最終的に(・・・・)全てを大円団(ハッピーエンド)に終わらせてやりたいだけなのに、アイツらが横から手を出して台無しにしてくる。

どこぞの国の悲劇(黒曜のグランギニョル)も、暑苦しい奴の英雄譚(炎熱のバーレスク)も、途中で他の神が関わってきた。

どのような(・・・・・)過程になろうが(・・・・・・・)、最終的に大円団(ハッピーエンド)に終わればいいだろうが……何故、理解しないんだ。

苛立つ心に水を差すように、懐中時計の一つから鈴を鳴らすような高音が響く。

 

 

「……時間か。やれやれ」

 

 

肉の体が、数時間ぶりに動いた拍子にボキりと音を出す。

この時間だと……ジュン蔵がモル太郎と共に白の器を連れて逃げ出した頃合か。

……さて、俺もこの想定(シナリオ)の役者としてそろそろ働くか。

 

 

ーーーーー

 

 

眠り続ける優義徒(ユギト)を抱え、森の中を走り続ける。

マリリン・アヴァロニア、妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)の二人がアジトから出たのを見計らって、優義徒(ユギト)を助け出すという策……それは思いの外すんなりと、成功した。

マリリン・アヴァロニアの異界から出ても追っ手はおらず、そのまま裁刃徒(サバト)さんとの合流地点に向かっていけば……私の役割は終わりだ。

 

 

「【モルガーン】!後、どれくらいだ!!?」

 

「このまま真っ直ぐ行けば、すぐの筈です……っ!ジュン、止まって!!」

 

 

私の先を先導する為に走る【モルガーン】から鋭い声が届く。

優義徒(ユギト)を抱えている為に、急に止まった際に前に倒れそうになるが……すんでのところで踏み(とど)まる。

雲間(くもま)から差す月光に照らされ、暗がりから基青神が歩みでる。

 

 

想定(シナリオ)通りだ、お前たちは素直に動くからやりやすい……って、うおっ!!?」

 

 

意味深(いみしん)げに笑う基青神目掛け、モンスターとしての姿を(さら)した【モルガーン】が黒曜石の(つぶて)を放つ。

情けない声と共に地面に転がり、ソレを避ける基青神に再度の攻撃を加えようと【モルガーン】が杖を振りかぶる。

 

 

「待て待て待て!!話し合う前に暴力を振るうな!!暴力反対!!」

 

「ジュン、彼の相手は私が務めますので……どうか、行ってください」

 

「務めなくていい!!」

 

「──そうだな、私たちがここにいるからな」

 

 

低い、しかし不思議とよく通る声が響いたと同時に風を切り裂く音が走る。

基青神を取り囲むように現れるのは戦闘機を模した機械天使──【焦土天機(カラミティ)】モンスターたち。

そして、その(おさ)である【神聖なる(エンジェリル)焦土天機(カラミティ)メタトロン】の前に……裁刃徒(サバト)さんと惹琴(マネゴト)が立つ。

 

 

「騎士サマたちが来るの遅いから、迎えに来たデシ!」

 

「何者かは知らないが……完全に包囲している。諦めて投降しろ」

 

 

焦土天機(カラミティ)】モンスターたちの銃口が全て基青神へと向けられ続け、さらには【メタトロン】がその手に握る炎の槍の切っ先を向ける……【モルガーン】の奴は【メタトロン】に厳しい表情を向けているが、なんなんだ?

……だがまあ、いくら神とはいえこの状況だ。

基青神の方も観念したのか両の手を上げるが……その右手には、いつの間にか懐中時計が握られている。

 

 

「なんだそれは」

 

「見ての通りの時計だ。もうすぐ時間だからな……」

 

 

そう言って5からカウントをし始める基青神に、嫌な予感が()ぎる。

 

 

「【モルガーン】奴を止めろ!!」

 

「2……1……0」

 

 

最後の数字が言われると同時に、爆発音が森の奥から響く。その直後、月明かりを隠すように黒い小さな何かの群れ──虫の群れが天に向かって登る。

 

 

「ハハハ!!さあ、登場人物は揃ったぞ!!最後の一幕……神殺しの時間だ!!!!舞台の幕よ、開くがいい!!!!」

 

 

基青神の声と共に、へその裏が引っ張られるような奇妙な感覚を覚え……世界が変わる。

 

 

ーーーーー

 

「……そろそろ、この異界を閉じても良い頃合いですね」

 

 

少し体を休めたお陰で、気分は楽になりました。

気を失ったままの妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)処遇(しょぐう)もありますし……一度、皆さんと合流した方が良いでしょう。

 

 

「えっと、逆のことをしたら閉じるから……こう、ですかね?」

 

 

首を傾げながらも、腕を大きく動かせば……パチンと風船が弾けるような音と共に景色が変わります。

薄暗い森の奥の、(さび)れた古い教会……の前の広場。そこに複数人の男女の姿を確認出来たので……ホッと、胸を撫で下ろします。

 

 

「上手く行きましたね……皆さん、大丈夫でしたか?無事に帰って来られていますよね……?」

 

白掟(ハクジョウ)様!こっちは問題ないっす!!あ、カードありがとうございました!!返しますね!!」

 

 

一番に口を開いたのはレイカ嬢がこちらにカードを投げ渡してくるのを受け止めそのままデッキにカードを戻しますが……何故か、彼女の全身ずぶ濡れですね。顔面からお札の取れている鬼丸(オニマル)くんも濡れていますし……私が変な異界にしてしまったのでしょうか?

視線を動かせば、(ひたい)を赤くさせながらも、その患部(かんぶ)にタオルを当てているソコロワ嬢を見受けられます。

……その近くには、眠り続けているキョウカ嬢とその彼女を守るように抱き締めている恐馬(キョウマ)くんもいます。

ざっと見た感じではありますが……こちら側の人は全員無事なようですね。

対して、アヴァロニア氏はズタボロで妲己(ダジ)妖娘(ヤォニャン)は意識を失ったまま……どこからどう見ても、魔女会(フェアリーテイル)側が敗北している状態ですね。

 

 

「アヴァロニア氏、こちらの勝ちです。優義徒(ユギト)を返してもらいましょうか?」

 

「それを決めるのはあたしじゃなくて、テラちゃんよ……まあ、それじゃあ、納得しないわよねぇ【強壮なる使者(暗黒のファラオ)】」

 

「よくご存知で」

 

 

ニッコリと笑みを向ければ、げんなりとした表情を返されます……ひどいなぁ。

 

 

「良いわ、どうせテラちゃんはアジトに引きこもっているでしょうし……連れてってあげる。あの坊やについては、テラちゃんに直接言ってちょうだいな」

 

 

雑にそう言って、息を整えているアヴァロニア氏……見た目以上に、ダメージが深そうですね彼女(?)は。

……基青神は直接戦闘は不得手(ふえて)でしょうから、何かの細工をされる前に今すぐ乗り込んでしまいましょう。

早く、あの子を助けたい所ですし……ん?

 

 

「何か、音が」

 

 

すぐ近くで時計の針が動くような音が聞こえました。

こんな所に時計なんて無い筈なのに……どこから聞こえたのかと意識を周りに向けた瞬間

 

 

爆音と、衝撃……一瞬だけ感じた首の強烈な灼熱(しゃくねつ)感と共に……意識が途切れました。

 

 

 

 

 

 




章の表向きのラスボスを二連続でやる主人公がいるらしいんですよ
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