『じゃあねーぼくのターン!!【強壮なる使者】のこーかで、デッキから【唄うように繰り返して】をてふだにくわえるよ!そして、カウンターブースト!!』
ナイアルラト 第二ターン
ライフ:9
手札:6 ターンカウンター:4
約定:【強壮なる使者】 Cカウンター:1
『【No.6】のこーかで、またカードをこのこにかさねるね!そしてー……おいで!【Miss.Z】!!』
キレイな歌声を響かせてから、薄い水色のドレスを纏った少女──歌姫Miss.Z】がおしゃまにドレスの裾を軽く持ち上げて、一礼する。
ユギトサマの方をチラリと見てから、こっちに両手を合わせてごめんと言いたげな動きをしている彼女は……多分だけど【Mr.UNKNOWN】と違って、意思がある。
『【Miss.Z】のこーかで、ゲームがいから【亡き神への葬送】をてふだにくわえるよ!そして、そのままはっつどー!!』
【Miss.Z】が唄うのはとても穏やかなメロディ。
子守唄のようにも聞こえるその歌に惹かれるように、黒い光が集まって人型となる……ソレ──【Mr.UNKNOWN】は【Miss.Z】の手を取って、手の甲にキスをする。
『【Mr.UNKNOWN】のこーかはむこうになってるね!そして、キミはコスト:8になってる【Mr.UNKNOWN】のコストとおなじくらいのコストになるようにモンスターをぼちからばに出していいよ!』
「……なら、コスト:6の【ガラハドⅩⅢ】を場に出すデシ」
黒い水晶で作られた物々しい鎧を纏った小柄な騎士──【ガラハドⅩⅢ】がその手に持った大きな円錐のような槍の石突で地面を突く。
『かっこいーきしさんだー!よーし、こっちももっとがんばろー!【Miss.Z】のこーかで、コスト:8以上のモンスターはばにでたときにはきされるね!そのあと、もっかいばにだすよ!こんどははきされなくなったじょうたいでね!』
「ブリンク効果……しかも、効果が無効になる訳じゃないから、フルスペックの【Mr.UNKNOWN】が出てくるデシか!!」
『そのとーり!【Mr.UNKNOWN】のこーか!てふだのみせあいだよ!!』
「僕サマが見せるのは【極彩色の未来】……コスト:4デシ」
『またぼくのかちー!コスト:8の【邪聖天の色欲アスモデウス】をみせちゃうよー!カードを2まいひいてー……デッキから【邪聖天の憤怒サタン】をてふだにくわえるよ!あ、そーだ【強壮なる使者】にCカウンターのせるのわすれてたや……2このせるね!』
アレだけ動き回っているのに、手札は減るどころか増えている。
Cカウンターも着実に増やして……前に僕サマと"ギアスファイト"をした時はやっぱり本気じゃなかった。
それが悔しくて……でも、今は本気のユギトサマと戦えるのが嬉しくて……笑みが溢れる。
一瞬だけども見れたテキストによれば……【Miss.Z】の効果による破棄無効状態はこのターンの間しか、継続しない。
なら……プランは決めた。
次のユギトサマのターンで、僕は負ける。
『アタックフェーズ!【Mr.UNKNOWN】でちびちゃんにこうげきー!』
自らの影に入り、姿を晦ませる【Mr.UNKNOWN】
背後に人の気配を感じて、振り返ろうとした僕の頭に……【Mr.UNKNOWN】が無造作に振るった裏拳が叩き込まれた。
タクミ ライフ:10→6
ぐわんと揺れる視界、鋭く痛む側頭部と鈍く痛む頭の中が気持ち悪い……でも、立てない程じゃない。
「惹琴!!?無事かっ!?無理に立つな、ダメそうなら直ぐに変われ!!」
「デッカイ声が頭に響いて、余計辛くなるデシ!!騎士サマ、直ぐに出番回すからウォームアップするデシよ!!僕サマが……このターンで神様のお膳立てをしてやるデシ!!」
チラリと視界の端に映るみんなは……仮面を付けてないから、心配そうな表情が丸見えだ。
……正直に言えば今ので大分、体の方はダメージを受けている。気持ち悪さが止まらなくて……気を抜けば、吐きそうだ。
でも、僕は今は仮面を付けている……青白いであろう顔色を見せなくて済むから、今はこの仮面に感謝したい。
『へー?やってみせてよ、ぼくをひきずりだせるものならさぁ!!これでターンしゅーりょーだよ!!』
「僕サマのターン、ドローフェイズの前にスペルカード【不平等への対価】発動デシ!」
【
不平等への対価】
青・黄 コスト:2 スペル
自分の手札の枚数が相手プレイヤーより少ない時に発動出来る。
相手の手札枚数から2を引いた数だけ、カードを引ける。
この効果で相手の手札枚数を上回った時、自分は手札を全て破棄する。
空から落ちてくる一枚の金券……それを引き裂けば、それは六枚のカードに化ける。
「僕サマの手札がそっちの手札より少ない時に発動出来るデシ!そっちの手札ー二枚、カードを引くデシ!そっちの手札は八枚だから……六枚ドローデシ!」
『むー……まあ、いいよ!』
「そして、改めてドローフェイズデシ!!カウンターブースト!!」
タクミ 第二ターン
ライフ:6
手札:7 ターンカウンター:4
赤:0 青:1 緑:0 黄:2 白:0 黒:0
大量ドローによって、手札は潤沢。
欲しかったカードも引けている……だから、一気に詰めていくだけ。
『【No.6】のこーかで、またカードをこのこにかさねるよ!これで3まい!!』
「先ずはスペルカード【尊きへの供物】発動デシ!」
【
尊きへの供物】
黒 コスト:3 スペル・犠牲
自分の場のモンスターから一体を選んで破棄する。次に出すそのモンスターと同じ色を持つモンスターのコストを、破棄したモンスターのコストだけ下げる。
【ガラハドⅩⅢ】が僕のの方を見て、一礼すると同時にその身を無数の黒い欠片に砕く。
その欠片は集まり、やがて……電車のレールへと形を変えた。
「【ガラハドⅩⅢ】が破棄されたので効果発動デシ!ゲーム外から【聖杯の奇跡:人命復活】を手札に加えるデシ!まだまだ行くデシ!スペルカード【黒天白夜】発動!【霊騎士】を破棄して【Mr.UNKNOWN】の効果を無効にし、手札の【極彩色の未来】を破棄するデシ!」
お膳立ては済んだ、さあ……緊急ダイヤだ!
流れるのはリズミカルな到着音を背景に、その巨大な列車が軋むレールを気にもせずに走り抜ける。
「誓約サモン!!定刻発車、六番線!!眼前の敵を全てなぎ倒せ!!【六限列車ハイランドーラ88】!!!!」
『そのこもコスト:8だから【Miss.Z】のこーかでだしいれするよ!【強壮なる使者】にCカウンターを2このっけるね!』
「【ハイランドーラ】の効果発動!手札を破棄して、墓地からカードを一枚手札に加える!【生贄の羊】を破棄して【ガラハドⅩⅢ】を手札に!手札からスペルカード【水奇術の複製術】を発動!!」
【
水奇術の複製術】
青・黒 コスト:1 スペル・奇術団
相手の墓地のスペル一枚を選択する。
そのスペルを相手は手札に加え、このカードの効果をそのスペルの効果と同じにする。
ユギトサマの周りを、突然水の幕が囲う。
鏡のようにユギトサマの全身を写し出し……消えたと同時に、一枚のカードがユギトサマの手札に加わる。
「相手の墓地のスペルを、相手の手札に加えさせてからそのスペルの効果をこのスペルが得るデシ!僕サマは【星の智慧】を選択!!そして、発動して【ガラハドⅩⅢ】をコスト:8扱いにして場へ!」
『……【Miss.Z】のこーかで、はきしてからまたばにもどしていいよ。【強壮なる使者】にCカウンターを2このせるよ』
「【ガラハドⅩⅢ】が破棄されたので……ゲーム外から【聖杯の奇跡:私心転心】を手札に!」
唇を突き出し、見るからに不服ですという態度を取るユギトサマ……【Miss.Z】の方は何度も歌わされて、ヘトヘトに疲れている。
「アタックフェイズデシ!【ハイランドーラ】で相手プレイヤーに攻撃時に効果発動!このモンスターのAを僕サマの墓地にある最も数の多い色と数の少ない色の差分だけ下げるデシ!その差は2なので【ハイランドーラ】のAは4デシ!!」
『てふだの【混織誘黒旅団の守護者Mr.B】を破棄してこーかはつどー!ゲームがいから【亡き神との送葬】をてふだにくわえて、このターンぼくのばのモンスターぜんぶとぼくはダメージをうけないし、こーかをうけないよ!』
「最後のスペルカードデシ!【聖杯の奇跡:人命復活】!そっちの墓地の【レヴィアタン】を僕サマの場で復活させるデシ!破棄対象は二回とも【ハイランドーラ】デシ!」
『……ほんとーに、Cカウンター8こいじょう、ためさせられちゃった!おにーちゃん、すごいね!!』
眩く輝く黄金色の盃から溢れ出るのはとろりとした、甘い匂いのする液体。
その芳香に誘われて、地面を砕きながら蘇るのは全身から赤い液体を垂れ流す、禍々しい大蛇。頭頂部から角のように生えた一本の刀で【ハイランドーラ】に何度も傷をつけようとしているが、効果が無いと分かると大人しくとぐろを巻いている。
「これで、僕サマのターンは終わりデシ」
『じゃあ、ぼくのターンだね!』
後先を考えない全力の回し……普段なら、こんなことは序盤に絶対にしない。
……でも、これは歪なチーム戦。後の三人に、全てを託して……彼らが少しでも楽になれたらそれでいい。
『【強壮なる使者】にCカウンターが8このってるから……こーかはつどーだよ!』
辺りを、カサカサと何かが動く音が覆い尽くしていく。
ユギトサマの背後に、少しづつ黒い塊が集まっていき……真っ黒な人のような形を作っていく。
『クレストコンプリート!けーやくにもとづいて、だいろくのきょうふがここにけんげん!!やっちゃえ!!【誘黒神】!!!』
弱々しく明滅する赤い光を頭部に宿した【誘黒神】……ユギトサマの本当の姿である神のカード、その力が自分に向かって使われると思うと、泣き叫びながら逃げ出したくなる。
でも、凍りついたように足は動かない……舌も、喉の奥にへばりついたように少しも動きやしない。
『【誘黒神】のこーか!Cカウンターを全てとりのぞいて、ばかぼちのカードをそのかずまでゲームからとりのぞくよ!かずは9こだから……えっと、これとこれと……あとはいっぱい!!』
【ハイランドーラ】と【ガラハドⅩⅢ】が、足元から忍び寄ってきた黒い虫の群れに食い尽くされる……墓地のカードも軒並みやられてしまった。
『そして、このこーかでとりのぞいたかずが8こいじょーならおにーちゃんはゲームにまける!えいやー!!』
どこか気の抜けるような声と共に、ユギトサマが手を振り下ろす。
その動きに連動するように【誘黒神】が僕に向けて腕を下ろし……思わず目を瞑ったら、横からすごい衝撃が僕を襲った。
惹琴タクミ EXTRA LOSE
プレイヤーチェンジ
惹琴タクミ→皇導ジュン
「大金星だ、惹琴!!後は任せて、休んでいろ!!」
目を開ければ、視界に入るのはオニサマ。
そして、僕がいたであろう辺りを潰した【誘黒神】の腕とソレに対して"ギアスディスク"を向けて睨みつけている騎士サマの姿だ。
「大丈夫、か?見て……いられなかった、から……横から、ぶつかって……しまった、すまん」
「車にぶつかったかと思ったデシ!助けは求めてないデシよ!!」
「……すまん」
「鬼丸に助けてもらったのに、その言い草はなんだいタクミ!!」
僕たちに駆け寄り、怒りながらも心配の色が隠せていないドクロサマの姿がボヤけて見えてくる。
「だって、一歩間違えたら……オニサマも巻き込まれてたかもしれないデシ。僕サマはもう負けたから良いけど……オニサマはまだ出番があるデシよ」
「分かっては、いるが……見て、いられなかった」
近くにいるオニサマの姿もボヤけてきて、視界の端が暗くなってきた。
ドクロサマみたいに怒ってもいいのに……オニサマは申し訳なさそうに眉を下げている。
「……なら、謝らなくて良いデシ。オニサマは、何も悪いことはしてないデシから」
急速に這い寄ってくる眠気。
オニサマとドクロサマが何かを必死に言ってるのが見えて…………そのまま、僕は意識を飛ばした。