『つぎはおにーさんだね!おにーさんはどんなふうにあそんでくれるかなー?』
ケラケラと笑う目の前の奴の中身は……前までの奴とは違う。
比較的、理性的だった奴よりも……もっと感情の振り幅が激しい。
そのくせ、カード捌きは前までの奴と遜色がない。
……ターンカウンター及び、場と墓地のカードは引き継がれている。【レヴィアタン】を【誘黒神】の効果で取り除かなかったのは、自分のカードだからだろう……だがそのお陰で、場に赤のカードが無い奴はこれでアタックフェイズを行えない。
『じゃ、ぼくのターン!カウンターブースト!!』
ナイアルラト 第三ターン
ライフ:9
手札:9 ターンカウンター:6
【誘黒神】になった為に、【強壮なる使者】の効果は消え失せているが……奴の手札は潤沢。
どう来る……?
『【No.6】のこーか!デッキのうえのカードをこのこにかさねて……このぼくもつよいけどさ、もっともっとつよくしたいよねぇ!!』
その言葉と共に、鉄のような臭いと何かが焦げたような臭いの混ざった異臭が鼻腔を襲う。
不快極まる臭いに眉を顰めていれば、何がおかしいのか奴の嗤い声が響く。
『とりつき、くらい、ふえ、そだつ。それこそがこのぼく【這いよる混沌】さ!!!』
【
這いよる混沌】
黒・赤 コスト:6 虫・瑞神
A:0 B:1
このモンスターが場に出た時、自分または相手の場のモンスターから一体を選択する。
そのモンスターをこのモンスターの下に重ねる。
このモンスターのステータスと効果に、このカードの下に重ねられたカードの物を全て加える。
一ターンに一度、発動出来る。自分または相手の場のモンスターから一体を選択し、このモンスターの下に重ねる。
奴の影から文字通りに飛び出してくる黒い虫の群れ。
それらが【誘黒神】に取り込まれていく。
『【這いよる混沌】のでたときのこーか!ぼくかおにーさんのばのモンスターをえらんで、【這いよる混沌】のしたにかさねるよ!』
抵抗するように明滅する【誘黒神】の赤い光の真横に、全く同じ色の光が生まれる。
【誘黒神】の人型の頭部にあるので、まるで人の目のようにも見える二つの赤い光……その内の、新しく生まれた光がより強く輝き始める。
『【這いよる混沌】はかさなっているカードのちからをすべて、てにいれる!さあ、そっちのへびちゃんもとりこんであげるよ!!【這いよる混沌】のこーか!【レヴィアタン】を【這いよる混沌】のしたにかさねる!!』
宣言と共に【誘黒神】──否【這いよる混沌】がその無数の虫によって形作られた腕を【レヴィアタン】に向かって伸ばす。
……冗談じゃない。この効果を通せば、A:18で耐性持ちな化け物が生まれる。
しかも、私の場はがら空きになってしまう……切りどころだな。
「手札の【黒曜騎士ユーウェインVI】を破棄し、スペルカード【騎士よ刃となれ】を発動する!!」
【
騎士よ刃となれ】
黄 コスト:4 騎士・スペル
自分の手札から騎士カードを一枚破棄して発動する。
自分の場のモンスターはこのターン、相手の効果を受けない。
黒曜石で作られた剣が雨のように降り注ぎ、幾つも積み重なったソレらが壁のように【レヴィアタン】を守る。
「このターン、私の場のモンスターは相手の効果を受けない!!」
『ざんねんでしたー!【這いよる混沌】は【誘黒神】のこーかも、もってるんだよ?1ターンに1ど、あいてがはつどーしたこーかをむこうにするよ!』
「分かっているわ!!破棄された【ユーウェインVI】の効果発動!!デッキから【ユーウェインVI】よりコストの1大きい【黒曜騎士ベディヴィアⅧ】を場に出す!」
【
黒曜騎士ベディヴィア
Ⅷ】
黄・黒 コスト:3 騎士
A:3 B:3
このモンスターは自分の場に黒曜騎士モンスターがいるならば場に出せない。
このモンスターが場に出た時に発動する。相手は手札を一枚選んで破棄しなければならない。
このモンスターが破棄された時、手札またはデッキからこのモンスターよりコストが2大きいまたは1小さい黒曜騎士モンスター一体を場に出す。
このモンスターはデッキに一枚しか入れられない。
片眼鏡を掛け、金髪をオールバックにしている神経質そうな騎士──【ベディヴィアⅧ】が左手に短槍を携えて場に出てくる。
地面に得物である短槍を突き刺してから、左手で片眼鏡の位置を直しているのは……その右腕が失われている為だろう。
「【ベディヴィアⅧ】の効果!このモンスターが場に出た時、相手は自らの手札を一枚選んで破棄しなければならない!」
『えー……やだなぁ、それぇ』
「やだでも捨てろ!」
『ぶー……』
唇を突き出し、文句を言いながらも手札を捨てる奴……だが【レヴィアタン】は守りきれなかった。
黒曜石の剣の壁を易々と打ち砕き、その腕を【レヴィアタン】へと振り下ろした【這いよる混沌】が【レヴィアタン】を取り込んで、蛇のような尾を黒い虫の群れで再現する。
『アタックフェーズ!【這いよる混沌】でおにーさんをこーげき!』
「【ベディヴィアⅧ】で防衛!!」
『あっはは!そんなよわよわさん、いちげきでふっとばしちゃうよ!!』
宣言の通りに蛇のような尾で【ベディヴィアⅧ】をなぎ払い、吹っ飛ばす【這いよる混沌】
だが、【黒曜騎士】はこの程度では終わらない。
「【ベディヴィアⅧ】が破棄されたので、それよりコストが2大きい【黒曜騎士モルドレッドⅩ】をデッキから場に出す!!その効果で、デッキから【黒曜神の神託】を手札に!」
やさぐれた不良騎士──【モルドレッドⅩ】が細剣を腰に下げたまま場に降り立つ。
……主人の危機だというのにやる気ないなお前。
『んー……まあいいや【Mr.UNKNOWN】でおにーさんをこーげき!【Mr.UNKNOWN】はぼうえーされないからね!』
真正面から駆け抜けてくる【Mr.UNKNOWN】を【モルドレッドⅩ】は無視し、素通りさせる。
そのまま、私の鳩尾に重い拳を叩き込み……どこかすっきりした様子で帰っていく【Mr.UNKNOWN】
ジュン ライフ:10→6
「ぐぅっ……絶対、私怨込めているだろうお前……」
『なんのこと?ぼくはこれでターンしゅうりょーだよ!』
【Mr.UNKNOWN】が奴の言葉に同調するように暗い目のまま、うんうんと頷いている……ソレを横の【Miss.Z】は呆れた様子で見ているな。