閃光が解き放たれ、皇導さんが飲み込まれた。
数秒の照射……それだけで片膝を着き、うっすらと煙が衣服から立ち上っている姿は、彼が熱線を浴びせられたのだと直ぐに理解出来た。
……それでも皇導さんは意識を失うことはなく、こちらに視線を向ける。
「すまん……【ガラハド】は仕込んだ、後は手筈通りに」
「…………はい」
よろけながらも立ち上がり、自分の足で歩いていく皇導さんを見送り……俺が、あの人の前に立つ。
『つぎはおじちゃん?』
タクミが"おにーちゃん"で皇導さんが"おにーさん"は分かるが……俺は"おじちゃん"か。
タクミは見るからに子供だからまあ分かる。だが……皇導さんより華がないとはいえ、俺の方が皇導さんより歳下なんだけどなぁ……なんだかなぁ……いや、まあでも子供から見たら分からないのか……?でも、おじちゃんは無いだろう。流石にそれは無いだろう……訂正するのも、気にしているようにみられるから、しない方が……いや、でもこのファイト中ずっとあの人に……見た目だけは、大司教そっくりなあの人におじちゃんと言われ続けるのはやっぱり嫌だなぁ……あの人の方が俺より歳上なのにおじちゃん呼び……元に戻ったら、大司教のことをそう読んでみようか意趣返しに……いや、突然そんな呼び方されたら大司教も困るか…………我慢、するか。
「…………ああ」
『なんかあきてきたしーパッパっておわらせるね!カウンターブースト!!』
ナイアルラト 第四ターン
ライフ:9
手札:11 ターンカウンター:8
【這いよる混沌】が取り込んだ【列車砲】の効果で、サブプランである俺によるデッキ破壊による勝利は不可能に限りなく近い。
だから、当初の予定通りに動いて……駆魔があの【這いよる混沌】を倒し切る。
『……アタックフェーズ!【這いよる混沌】でおじちゃんをこーげき!』
「墓地の【ガラハドⅩⅢ】を……俺のデッキの、一番下に送り……効果発動。このターン、俺は……ダメージを、受けない」
『むー!まあいいや、これでターンしゅうりょー!』
振り下ろされる巨大な黒い人型の腕を、円錐形の槍を持った【ガラハドⅩⅢ】が受け止める。
ステータス差は絶望的、だがほんの一瞬だけ受け止めたことによって生まれたチャンスを、天才である騎士は掴み取った。
槍の持ち手に仕込まれた何かを押し込み、その槍の機構が動く。
槍先が中に押し込まれ、変形したその形は大砲。出現したトリガーを【ガラハドⅩⅢ】が引けば……密着した状態で放たれた砲撃が人型の腕をほんの僅かにズラして、攻撃を失敗させる。
直撃はしなかった……だが、それでも轟音と共に叩きつけられた腕の余波による風圧と大きく地面に残された亀裂に背筋が寒くなる……あんなの当たったら死ぬだろ、ダメージを受けないと言っても。
「……俺の、ターン。カウンターブースト」
鬼丸 第四ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:7
……俺がやるべきことは三つ。その内の一つの達成は【列車砲】の効果のお陰で容易い。
手札は……まあ、うん。動ける。取り敢えずは……圧縮していこう。
「【無限増殖ーグリーンハザードー】を、発動……手札を一枚、破棄する。宣言……するのは、アーティファクトだ」
『んー…………すきにしていいよー』
サーチは通された、当然のようにデッキトップ五枚は全てアーティファクト……その内の一枚は【無限湖の繁殖】だ。
『あ、やなやつだ』
「……アーティファクト扱いの【永劫に留める】の効果、発動……モンスターとして、場に出す」
オウムガイのような姿から展開され、邪悪な人型のモンスターへと戻る【永劫に留める】
粘着質な、気味の悪い咆哮をあげて大剣を構える姿はやる気満々のように見える。多分。
「【永劫に留める】のサモン時の、効果は……不発。さらに手札より、アーティファクト顕現。死骸の、群れ……衰退の、果て……滅亡から、始まる……汝の名は【無限湖の繁殖】」
ごぽりと、地面から染み出てくるのは腐った水……ある意味では栄養満点の濁りきった沼だ。
甘苦い、悪臭に限りなく近い異臭と肌が思わず粟立つ程の寒気が、霧と共に立ち込める。
「……止める、か?」
『んー……んー……(あきた、とめないとまずくない?【這いよる混沌】いるからだいじょーぶ!ねむたい、もしほかのずいしんがいたら?おなかすいた、あきた、だいじょーぶでしょ、もっとたのしーことしたい、止めた方が良いですよ、あきた、まあだいじょーぶか、おなかすいた、とめたほーがいいよ)……とめる!』
少しの間が空いてから【無限湖の繁殖】の侵食が止められる。
湧いていた沼の水は、あっさりと引いていき……最後に、抵抗のようにボコリと湧いた大きな泡が一つ潰れたのが見えた。
……やるべき事、後は二つだ。
「なら……アーティファクト【衰退因子:餓鬼道】を、発動し……【永劫に留める】を破棄して、スペルカード【一時の気まぐれ】を……発動」
【
一時の気まぐれ】
黒・白 コスト:3 スペル
自分の場のカードを一枚を破棄して発動する。
合計が破棄したカードのコスト以下になるように自分のデッキからカードを好きな枚数破棄し、その後に相手のデッキの上から破棄したカードのコストまでカードを破棄する。
【永劫に留める】が白と黒、二色の羽根が混じった暴風に巻き上げられてオウムガイの姿に戻る。
そして、白の羽根が俺のデッキに、黒の羽があの人のデッキへと降り注ぐ。
「先ずは……合計が【永劫に留める】の、コスト:8以下……となるように、俺のデッキから……カードを破棄する……コスト:4の【鬼源覚醒】と……コスト:1の【獄炎の調達屋】四枚を、破棄する」
駆魔から借りたコイツらは……オマケだ。一番落としたかったのは【鬼源覚醒】のカード。
これで……俺のやるべきこと、その二が終わる。
最後のやるべきことも……ついでに終わらせられるな。
「そして……相手のデッキの上の、カードを【永劫に留める】の……コスト分だけ、破棄する」
『え?【列車砲】のこーかでおじちゃんのライフけずれちゃうよ??』
「……問題、ない」
首を傾げながら、デッキの上のカードを落とすあの人……直後、その前に立つ【這いよる混沌】の砲門が光を貯め始める。
『【這いよる混沌】のこーか!おじちゃんに16のダメージだよ!!』
……無邪気に、俺に向かって効果の発動を宣言するあの人。
気づいていないな……コレで、駆魔にターンを渡せる。
【誘黒神】由来の無効を切らせた状態で。
鬼丸 ライフ:10→-6
プレイヤーチェンジ
神牙鬼丸→駆魔レイカ