TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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この時の為に、鬼丸(オニマル)は【餓鬼道】を使っていたのです


アンコール

崩れ落ち、散り散りになって消えていく【這いよる混沌(ナイアルラト)

その有様(ありさま)に、さっきまで大声で命乞いをしていたガキンチョも諦めたのか遂に何も言わなくなった。

 

 

「これで、おしまいだよ!!」

 

いいえ(・・・)終わりませんよ(・・・・・・・)

 

 

聞き慣れた声色、そして誰に対しても丁寧な口調……それは、白掟(ハクジョウ)様の物だ。

墓地を触り、そこから一枚のカードを取り出した彼が……耳元まで口角が裂けてしまいそうな凶悪な笑みを浮かべた。

 

 

「墓地のスペルカード【誘黒神(シェード)(オブ)嘲笑(ナイアルラト)】をゲームから取り除き、効果発動です!!」

 

 

誘黒神(シェード)(オブ)嘲笑(ナイアルラト)

黒 コスト:6 スペル・使徒・神器

 

自分の墓地からこのスペルをゲームから取り除いて発動することが出来る。その場合、発動後に自分の手札を全てゲームから取り除く。

このターンの間、自分のライフは0未満とならず、ゲームに敗北しない。

 

 

霧散した筈の黒い虫の群れ、幾重(いくえ)にも重なるその羽音だけが何時(いつ)までも残る。重なり続けるその音は、耳障りな高音になり……まるで、こちらを嘲笑う笑い声のようにも聞こえた。

 

 

「このスペルの効果により、私はこのターン敗北せず、ライフも0になりません……効果の適応後、私の手札は全てゲームから取り除かれます」

 

白掟(ハクジョウ)様……っすよね?」

 

「ええ、皆さんご存知のユギトですよ」

 

 

手札を勢い良く、空に向かってばら撒く白掟(ハクジョウ)様……虫に食われたように穴が空いて消えていくカードに目を細め、こちらに向き直ったその目は……いつものような真赤で、すこし怖い色の目だ。

 

 

「タクミくん、ジュンくん、鬼丸(オニマル)くん、レイカ嬢……貴方たちの尽力によって、私は戻ってこられました。深く感謝します」

 

「……なら、今のスペルカードはどういうことっすか?」

 

「あはは……それはですね」

 

 

少し照れくさそうに頬を()いてから……白掟(ハクジョウ)様の空気が変わる。

 

 

「私だって!!みんなと"ギアスファイト"したいです!!四対一とかそんな美味しいファイト、すっごい楽しそうじゃないですか!!!!」

 

「いや、これアンタを助ける為だったんすけど!!?楽しそうとかそういう問題じゃないんすけど、白掟(ハクジョウ)様!!!??」

 

「私を助ける為にめちゃくちゃ真剣に頑張ってくれてたんでしょう!?絶対、いつもよりみんな強いに決まってるじゃないですか!!やりたかったなー!!最初から私もこのファイトやりたかったなー!!!!」

 

 

駄々(だだ)をこねて、地面を何度も踏みつける白掟(ハクジョウ)様の姿は……なんというか、緊張感が削がれていく。

戻ってきたのは嬉しいけども……これでいいのか?

 

 

「まあでも、先延ばしにしてもアタシたちの勝ちは決まったようなモノっすよ。そっちの手札は0だし、場もガラガラ……カードの破棄が行えないから、スペルも使えないんすよ?」

 

「舐められたものですね……お前たち如き、その程度の制約を掛けられても倒すのは容易(たやす)いのですよ」

 

 

目を細め、冷たい声色でそう言い放つ白掟(ハクジョウ)様……あまりにもこちらを見下しているその言い方に、流石にカチンと来る。

 

 

「んだと……」

 

「なんて、冗談ですよ。笑って下さいよ、レイカ嬢」

 

「笑えねぇんすよ、白掟(ハクジョウ)様のその冗談!!アタックフェイズは継続中だ!!【エンマ】と【カイエン】で白掟(ハクジョウ)様を攻撃!!」

 

 

【エンマ】がバットのように構えた鉄骨、その先端辺りに【カイエン】が乗り……そのまま【エンマ】が鉄骨を振るう。

爆発的な加速を得て、一息に白掟(ハクジョウ)様の懐に入り込んだ【カイエン】の斬撃が袈裟(けさ)に入る。

 

 

ユギト ライフ:9→7→2

 

 

ぼたりと、地面に広がるのは赤い(・・)血溜まり。

傷口を片手で抑え、荒い息を吐く白掟(ハクジョウ)様は……それでも、笑っていた。

 

 

「ふ、ふふ……やっぱり、楽しいですね」

 

「……これでアタシはターン終了っす」

 

「では、私のターンですね……」

 

 

時間が巻き戻るように白掟(ハクジョウ)様の傷口が消えるけれども、流れた血はそのままだ。

赤い血溜まりの真ん中で……遠くを見るように、デッキの上に手を掛ける白掟(ハクジョウ)様。

 

 

「さあ……最後まで、足掻きましょうか。ドローです!!」

 

 

ユギト 第五ターン

ライフ:2

手札:1 ターンカウンター:9

 

 

そうして、勢い良く引いたカードに彼は目を細め……苦笑した。

 

 

「……やっぱり、引きが弱いですよねぇ私って」

 

 

そう笑いながら、墓地に手を掛けて白掟(ハクジョウ)様の悪足掻(わるあが)きが始まった。

 

 

「墓地の【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()FW(最終兵器)列車砲(ハイランドーラ)】の効果発動!D(デュアル)R(レゾナンス)を行います!!」

 

「っ!ここでソレか!!」

 

「正真正銘、これが今の私(・・・)の最後の切り札です……【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()団長(イブニング)Mr.UNKNOWN(正体不明)】と【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()歌姫(ディーヴァ)Miss.Z(ザドキエル)】をゲームから取り除きます!!」

 

 

辺りが薄暗くなる。

どこからか照らされるスポットライトに照らされるのは、歌姫(ディーヴァ)である【Miss.Z(ザドキエル)

初めはゆっくりと……徐々に速度を上げて歌われるのは冒涜(ぼうとく)(とうと)魔性(ましょう)の賛美歌。

その歌声がクライマックスへと至った瞬間に……不意に途切れた。

それと同時に、スポットライトが消えて……暗闇と静寂が満ちる。

そこに……白掟(ハクジョウ)様の口上が響く。

 

 

今宵(こよい)星揃う時、仮初(かりそめ)を取り払うは痴れ者の使者」

 

 

耳の奥を舐めるような、気色(きしょく)の悪い粘着質な音が少しづつ……少しづつ、アタシと白掟(ハクジョウ)様を取り囲むように増えていく。

 

 

「虚無の彼方、異界の果て……窮極(きゅうきょく)の門の向こう側から来たれ」

 

 

急に、スポットライトが一つだけ点灯する。

その光の下に(たたず)むのは白掟(ハクジョウ)様によく似た容姿を灰色の仮面で隠した【Mr.UNKNOWN(正体不明)

その彼が……顔の上半分だけを隠していた仮面を取り外すと……そこには(・・・・)何も無かった(・・・・・・)

ポッカリと空いた空洞、そこから零れ落ちる無数の球体。極彩色に輝き続ける球体を【Mr.UNKNOWN(正体不明)】が掴み、握り潰せばその中からどう仕舞い込まれていたのか人の胴体程の太さの、赤黒い粘液に(まみ)れた触手が幾つも飛び出す。

その触手が【Mr.UNKNOWN(正体不明)】の身体を掴み、取り込み……やがて、下半身全てをその触手に置き換えたような化け物へと姿を変えた。

 

 

 

 

幽黒神(ヨグ=ソトース)

 

 

 

 

最後にその名を言い切ったと同時に……【Mr.UNKNOWN(正体不明)】……否【幽黒神(ヨグ=ソトース)】が悲鳴にも似た笑い声を上げた。

 

 

幽黒神(ヨグ=ソトース)

黒 コスト:10 レゾナンス・使者・神

A:8 B:8

 

このモンスターは【Mr.UNKNOWN(正体不明)】を使用したD(デュアル)R(レゾナンス)でのみ場に出せる。

自分と相手を合計し、八枚以上のカードがゲームから取り除かれている時にのみ、このモンスターは攻撃と防衛を行える。

一ターンに一度、自分または相手のゲームから取り除かれているカードを一枚選択して発動できる。そのカードを自分の手札に加え、黒を加える。

 

 

「なんだよ、そいつは……!!」

 

「何なんでしょうね……正直、私もよく分かりませんし理解したらダメだと思っています(なんか使えるなーと思って出してみたら……とんでもないのが出てきちゃったんですけど、どうしようこれ)」

 

 

ニコリといつものように笑いながら、白掟(ハクジョウ)様が動き始める。

 

 

「【幽黒神(ヨグ=ソトース)】の効果です!自分または相手のゲームから取り除かれているカードを一枚、私の手札に加えてそのカードの色に黒を加えます、私は【Mr.B(ベリアル)】を手札に加えます!(これで【カイエン】をアタックフェイズで倒してから【Mr.B(ベリアル)】を破棄して【亡き神との葬送】を引き込んで【誘黒神(ナイアルラト)】を消して大量展開で終わりですね!……なんか、忘れてる気がしますが大丈夫でしょう!!)」

 

 

ぬるりと触手の一つが動き、虚空から一枚のカードを取り出して白掟(ハクジョウ)様へと手渡した……このままじゃ【カイエン】が狙われてそのまま殺られる。

なにか無いかと場と手札を見渡して……鬼丸(オニマル)の置き土産であるそのアーティファクトに十三個の(・・・・)カウンター(・・・・・)が乗っているのが見えた。

 

 

「あ…………」

 

「どうしたのですレイカ嬢?」

 

「……あの、鬼丸(オニマル)が【一時(ライアーズ)()気まぐれ(エゴ)】を使う前に【衰退因子(ディケイド):餓鬼道】を使ってたんすけど……これ、カードが破棄される度にこの上に衰退カウンターを乗せるんすよ」

 

「はぁ……」

 

「で、このアーティファクトって衰退カウンターの数だけ、相手モンスターのA(アタック)を下げるんすよ」

 

「……………………………ぇ?」

 

「十三個、乗ってるから……【幽黒神(ヨグ=ソトース)】のA(アタック)は0っすね」

 

 

白掟(ハクジョウ)様の動きが面白いくらいに止まり、その笑顔が引き()る。

 

 

「……嘘ですよね?ここまでやって、これじゃあ出オチじゃないですかヤダー!!!」

 

 

…………この後白掟(ハクジョウ)様からターンを返されてから、キッチリ(・・・・)とライフを削りきってやった。

 

 

 

 

 




因みにラストドローは【紅煉散華(クリムゾン・ヘルファイアワークス)】でした……【カイエン】さえいなければ、【幽黒神(ヨグ=ソトース)】を炸裂させて勝ってました。無情。
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