TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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【ストーリーテラー】

──一つの悲劇を観た

(おか)の者に恋をし、声を捧げてまでその者の所へ向かい……気づいてもらえずに泡となって消えた女の物語。

 

──一つの悲劇を観た

寒さに震えながら、小さな火種を売る少女。しかし、誰もその手を取らず……やがて、火種の中で夢を幻視しながら凍え死ぬだけの物語。

 

 

──一つの悲劇を観た

ソレは鋭い牙と爪を持った捕食者(オオカミ)だった。飢えて飢えて、やっと食えたと思ったら腹を割かれ、石を詰め込まれてそのまま溺れ死ぬだけの悪役の物語。

 

 

チクタクチクタク──銀色の懐中時計を片手に、締め切りに追われて俺は走る。

チクタクチクタク──物語を集めて、女王陛下へと捧げるのが役目だった。

チクタクチクタク──

チクタクチクタク──

チクタクチクタク──

 

 

 

 

──女王が殺された。

 

 

 

下手人は黒の狂った狂信者、ティーカップを被り三日月のようにピカピカに光ったギロチンによって、永遠に眠った。

新しい王は美しい妖精たちの君主。

夏の日のように、熱に浮かれた国の人々は悲劇を愛していた女王の死を喜んでいた。

──俺を除いて。

 

 

 

俺が悲劇を与えなければ、女王陛下は悲劇の味を知らなかっただろう。

俺が悲劇以外も手に入れられたら、女王陛下は他の物語を知って、慈悲を覚えただろう。

俺が…………女王陛下に捧げる前に、悲劇を書き換えていたら、上手くいったのでは?

 

 

ならば……いつの日にか戻られるであろう女王陛下の為に俺は一つでも多く物語を(つづ)ろうか

狂った狂信者の皮を被り、白い毛皮を黒の衣服で覆い隠し、無能な頭を切り落として代わりに女王陛下から下賜(かし)された銀色の懐中時計を乗せて……そうだ、名も変えよう。

全ての悲劇を書き換える、偉大なる童話作家に相応しい名前……

 

 

 

物語を語る(騙る)

 

 

 

ストーリーテラー

 

 

 

ーーーーー

 

 

「俺のターン!!ドローだ!!」

 

 

ストーリーテラー 第四ターン

ライフ:10

手札:6 ターンカウンター:6

 

 

手札は……最悪(ブタ)だ。

デッキから落としたい奴らばかりが、死にたくないとでも言いたげに手札に集まって来ている。

基青神()】を早期に出す為に、モンスターとアーティファクトの比率は多めだし、何なら相手の効果へのカウンターはほぼ無い。【基青神()】を出して、【ジャバウォック】で叩き潰す。

シンプルイズベスト、小難しいギミックを入れても俺には扱い切れん。

 

 

「【物語の奴隷】の効果発動!デッキトップ五枚を確認し……【残り火の少女】を破棄し、その効果で場に出す!」

 

 

再び場に現れ、バスケットの中の小さな火種……燐寸(マッチ)を撒き散らして、辺り一面を火の海へと変えるのは足が炎に溶けている少女。

そう、そうして全て燃やしてしまえばお前はもう凍え死ぬことは無い。お前を見捨てた全てを燃やし、楽しげに炎と共に笑う姿は大円団といえるだろう。

 

 

「またですか……」

 

「そう嫌がるな!寒いよりはマシだろう?【残り火の少女】が自身の効果で場に出た時、デッキトップを破棄して墓地のカードを一枚回収する!」

 

 

落ちたカードは……生憎、デッキから破棄された時に出せる一枚じゃない。

だが、回収の方がメインだ。

 

 

「俺が回収するのは【哀音の嘆き(ナハトムジーク)】!」

 

「っ!またそのカードですか……」

 

「ククク……C(コントラクト)カウンターはこれでまた補充出来る。お前の動きは全て封じると言っただろう?」

 

「…………」

 

 

(だんま)りな奴の額から汗が垂れる。

このまま、攻撃すれば終わりだが……さあ、どう来る?

 

 

「さあ、アタックフェイズだ!」

 

「その前に【ネクロノミコン】を発動です!墓地から【Miss.Z(ザドキエル)】を場に出し、彼女の効果でゲーム外から二枚目の【亡き神への葬送】を手札に!」

 

「構わん通す!!【ジャバウォック】で【Mr.M(モルドレッド)】を攻撃!」

 

「ダメです!!【同族嫌悪(マグネティックフォース)】発動!!【Mr.M(モルドレッド)】と【Miss.Z(ザドキエル)】を破棄します!!黒・黄、黒・白の色をそれぞれ含むモンスターを一体ずつ破棄して下さい!!」

 

「それは通せんなぁ!!無効!!」

 

「(残り1!!)ならば【Mr.M(モルドレッド)】への攻撃を【Miss.Z(ザドキエル)】で防衛です!!」

 

 

燕尾服の騎士を突き飛ばし、代わりに化け物の口腔(こうくう)へと飛び込んだ歌姫。

痛ましげに表情を歪める【Mr.M(モルドレッド)】に、二体目の化け物が喰らいつく。

 

 

「二体目の【ジャバウォック】で【Mr.M(モルドレッド)】を攻撃!!」

 

「……通し、です」

 

 

バキリゴキリと残虐(ざんぎゃく)咀嚼(そしゃく)音を響かせ、腹が膨れたのかそのまま寝そべって姿を消す【ジャバウォック】

Mr.M(モルドレッド)】の攻撃封鎖が消え、三体目の【ジャバウォック】はもちろん、【基青神()】や【残り火の少女】、【赤狼の狩人】による攻撃が可能となる。

 

 

「そら!!【基青神()】で攻撃だ!!このまま素通しなら、俺の勝ちだ!!」

 

「墓地の【邪聖天の嫉妬(デモリエル・ヴァーチェ)レヴィアタン】の効果発動です!!手札の赤のカードである【Mr.K(カイエン)】を破棄して【レヴィアタン】の効果を無効にして場に出します!そして、攻撃してきた相手とバトルを行い、終了後にアタックフェイズを強制終了させます!!」

 

「その手札……握っているんだろう【誘黒神(シェード)(オブ)嘲笑(ナイアルラト)】を!!」

 

「っ!!(バレてる……)」

 

 

奴の視線が手札に落とされる……分かりやすい奴め。

【レヴィアタン】の効果を無効にしても、これでは奴のライフは削りきれん。

哀音の嘆き(ナハトムジーク)】でC(コントラクト)カウンターを補充しても、肝心の【基青神()】の効果が無効になってしまうから意味が無い。

故に……

 

 

通しだ(・・・)

 

「でしょうねぇ……!!」

 

 

基青神()】が振るうペン先を、一本の妖刀が受け止める。

その妖刀の先にあるのは、血に濡れて清浄から堕ちたる大蛇(だいじゃ)

そのまま【基青神()】の全身に絡みつき、火の海に身を投げて焼失していく。

 

 

「【基青神()】は破棄された時に【完全無欠のハッピーエンド(クルエルトゥルース)】として再設置される……アタックフェイズが終了したのでスペルカード【哀音の嘆き(ナハトムジーク)】を発動する。場の全てのモンスターの効果を無効にし、デッキから【焦燥の白兎】を回収。【完全無欠のハッピーエンド(クルエルトゥルース)】にC(コントラクト)カウンターを四つ乗せる。ターン終了だ」

 

「(今だ!!)ターン終了前にスペルカード【亡き神への葬送】を発動です!!墓地より舞い戻れ……取り憑き、喰らい、増え、育つ。巣食い蔓延(はびこ)れ【這いよる混沌(ナイアルラト)】!!!」

 

 

場違いな程に美しい、天上の歌姫の歌声……その歌声に導かれて場に集結するのは黒い虫たちの集合体──【這いよる混沌(ナイアルラト)

人の形に集まったその群れが、真赤な二つの光を人の頭部に当たる部分で光らせている。

 

 

「【這いよる混沌(ナイアルラト)】のコスト:6以下となるようにモンスターを好きな数場に出して下さい」

 

「はっ!何をするかと思ったら……とんだ無駄撃ちだな!!コスト:5の【ジャバウォック】を場へ!その効果で【赤狼の狩人】を破棄して【這いよる混沌(ナイアルラト)】を破棄する!!」

 

「その前に、場に出た【這いよる混沌(ナイアルラト)】の効果です!【残りの少女】をこの子の下に重ねます!」

 

 

哀れな少女に取り憑き、人質にしようとしたのだろうが……無慈悲なる化け物にはそんな手は通用しない。

少女ごと【這いよる混沌(ナイアルラト)】を飲み込み、消化する【ジャバウォック】は満足そうに喉を鳴らしている。

 

 

「まあいい、必要な犠牲だ。まだ動くか?」

 

「ええ、スペルカード【星の智慧(闇をさまようもの)】を発動します。効果で、手札の【サタン】を場へ……場に出す時のコストとして、黒のカードである【無名の霧】を破棄します」

 

 

毒々しい霧を割いて場に現れるのは角が一本生えた馬の頭部を持った黒いライダースーツ姿の女……いや、シュールだな見た目。

その手に持った大鎌をくるりと振るい、地面に軽く裂け目を生み出してそこから、何かを引っ張り出す。

 

 

「【強壮なる使者(暗黒のファラオ)】にC(コントラクト)カウンターを乗せます。さらに【サタン】が場に出た時または攻撃時に、私のデッキからカードを一枚破棄して墓地からカードを一枚回収します。デッキから【邪聖天の暴食(デモリエル・テンパランス)ベルゼブブ】を破棄して、墓地から【Mr.B(ベリアル)】を回収します!……このターン終了時に【サタン】は破棄されます」

 

「もういいか?」

 

「はい」

 

「ならターン終了だ」

 

 

俺の宣言と同時に……馬頭の女が手をヒラヒラと気安く振りながら、自分で生み出した亀裂に飛び込んでいく。

無駄に墓地を肥やして……何が目的だ?

 

 

「それでは私のターン開始時に【強壮なる使者(暗黒のファラオ)】の効果で【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()詐術師(フィクサー)Mr.O(オニテング)】を手札へ」

 

「そういうことか……墓地を肥やしたのは、ソイツでの俺へのワンショット狙いか」

 

「…………」

 

 

奴の墓地は……現在12。

基青神()】は場に出た時に"ギアスモンスター"として扱われるが、B(バイタル)は4……後二枚墓地を稼がれれば、貫通してダメージが通る。【ジャバウォック】で防衛しても無駄だ。アイツのB(バイタル)も4だからな。

 

 

「だが!【完全無欠のハッピーエンド(クルエルトゥルース)】をひっくり返して【基青神()】を三度(みたび)場へ!四回の行動制限……それをくぐり抜けて、攻撃を届かせられるか!?」

 

届かせます(・・・・・)。ドローです!!」

 

ユギト 第五ターン

ライフ:2

手札:6 ターンカウンター:7

約定(クレスト):【強壮なる使者(暗黒のファラオ)C(コントラクト)カウンター:2

 

 

勢いよくカードを引き抜いた誘黒神。引いたカードを見た瞬間にその真赤な瞳に、ギラついた光が宿り……俺の背筋に怖気(おぞけ)が走った。

 

 

命さえ有るならば(・・・・・・・・)、何度だって私は挑めます」

 

 

ある意味での自暴自棄、しかし……何度でも傷を癒し、蘇って立ち続ける奴にとってはその言葉は奴自身の在り方を表す。

だが、何由来かも不明な不死性に頼ったその在り方は……(いびつ)であり、酷く不安定だ。

 

 

「そうして、一人立ち続けて何処へ向かう?そんなお前に、最後まで付き合える存在はいないぞ」

 

「付き合ってもらう必要はありませんよ……私が何とか(・・・・・)しますから(・・・・・)

 

 

奴の盤面は完全に空白……だが、奴自身の手札は潤沢。

奴だけの手札で、これから先も乗り越えていくつもりか?

不可能だ(・・・・)

 

 

「【Mr.O(オニテング)】をサモンします」

 

「無効だ」

 

 

初手本命出しは防ぐに決まっている。

誘黒神とて防がれるのは分かっている筈だ……釣られたが、止めねば死ぬから必要経費だ。

 

 

「【Mr.O(オニテング)】を破棄し、さらにライフを1捧げて、スペルカード【ソウルサクリファイス】発動です」

 

「っ!?」

 

 

【ソウルサクリファイス】

黒 コスト:1 犠牲・スペル

 

自分の手札のモンスターを一体破棄して発動する。

破棄したモンスター以下のコストのカード一枚を手札に加える。

このスペル発動時に、追加で自分のライフを最大2まで支払える。

支払った場合、支払った数と同じ枚数だけデッキからカードをドロー出来る。

 

 

「通すのならば、私は【ネクロノミコン】を手札に加えますが……どうしますか?」

 

「少し待て」

 

 

博打に出たな……誘黒神のライフは風前の灯だ。多少減っても問題は無いのだろう。

【ネクロノミコン】を手札に加えられたとして、何が来る?やはり【Mr.O(オニテング)】か……?いや、違う。来るのは【Mr.K(カイエン)】だ。

同族嫌悪(マグネティックフォース)】が来るので無効から【Mr.B(ベリアル)】を切って、防御札を握りつつ【Mr.K(カイエン)】の効果も切ってくるだろう。【Mr.K(カイエン)】の効果で墓地からカードが回収されてさらに【基青神()】狙いの破棄が飛んでくる。そちらは流石に止めるが、回収されたカードが【無名の霧】ならばそこからまた展開が伸ばされ……くそ、考えるのが面倒になってきた。根本から止める!!

 

 

「無効だ!!」

 

「分かりました、それでは手札から【Mr.B(ベリアル)】を破棄して効果を発動します。このターン、私と私の場のカードはダメージを受けず、カード効果を受け付けません。さらに、ゲーム外から【亡き神との送葬】を手札に加えます」

 

「通……さない!止める!!」

 

「スペルカード【亡き神への葬送】を発動します!」

 

「っ……」

 

 

慣れないことに頭を動かし、面倒になって連続で通したのが仇となった。

ここで通せば【同族嫌悪(マグネティックフォース)】で【基青神()】が消されるのでC(コントラクト)カウンターを使用せざるを得ない。

止めれば……結局、C(コントラクト)カウンターを使い切るのにはかわらない。

明確なプレイミスだ、これは。

 

 

「長いファイトですからね……インドア派の貴方にはこの長期戦は(こた)えるでしょう?」

 

「この、クソ虫がぁ……調子に乗りやがって!!」

 

「……止めるのですか?止めないのですか?選んで下さい」

 

「止める……どちらにしろ、止めさせられるのだろう?」

 

 

答えは得意げな奴の笑みだ。腹が立つ。

 

 

「これで、ようやくですね……墓地の【列車砲(ハイランドーラ)】の効果を発動!!D(デュアル)R(レゾナンス)を行います!!」

 

 

場を照らすのは二本のスポットライト。

 

 

「【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()歌姫(ディーヴァ)Miss.Z(ザドキエル)】と【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()守護者(ガード)Mr.B(ベリアル)】をゲームから取り除きます!!」

 

 

片方には可愛らしい、天上の歌声を響かせる至高の歌姫。

もう片方には、舞台の上に立つのに慣れていないのか照れたように頬を()いている無愛想な守り手……その手には、愛用のハルバードではなく漆黒のエレキギターが抱えられている。

 

 

破天荒(ロックンロール)!今宵は浮世を忘れ歌い踊り、世界を回せ!!【未完成の三重奏(デュアルビート)Z(ザドキエル)B(ベリアル)】」

 

 

 

 

 

 

 




ストーリーテラーが【ストーリーテラー】となる前の姿は焦燥の白兎です。白いうさちゃんがクソ生意気なことをずっと言ってました。可愛いですね
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