TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
深く深く息を吐き、緊張の糸が切れました。
力が抜け、流れ出て冷えた血溜まりに尻もちを着くように座り込んでしまいます……これ、服がダメになりますね。
「……正直、こういう相手は苦手です」
こちらの行動に
殴打と銃撃により、オーバーキルされた基青神に視線を向ければ……辛うじて生きているようで、倒れ伏しながらも恨みの
「何故……殺さない」
「初めに言ったでしょう……私は誰の命も奪わないと」
……まあ、死ななかったら良いので死ぬ寸前までは容赦無く痛めつけますけどね。
私の言葉の裏を読み取ったようで、皮肉げに笑いながら基青神がゆっくりと体を起こし始めます。
「その結果、死なせてくれと相手が言ったとしてもか?」
「
「……バッドエンド製作機め」
「死なせないので、終わりません。エンドマークは付きませんよ」
何かを言いたげにしながらも、何も言ってはこない彼に……初めて口で勝てたと、内心ガッツポーズをしています。
「さて……私が勝ちましたが、報酬は何をいただきましょうか」
体を起こすことに失敗し、またベシャリと倒れる基青神とは対照的に……私は再び立ち上がり、彼の元へと足を向けます。
「食べて……しまいましょうか?」
「それは、ごめん
チクタクと、鳴り止まない室内の時計の音たちに重ねるように……虫の動く時の独特の、背筋を
倒れ伏す彼を取り囲むように這い寄る私たち。合図さえあればその私の群れはその食欲の
「というか、命を奪わないと言っていたのに、俺を食おうとするな」
「命を奪うのではなく頂くのでセーフです。私の中で生き続けるようなものですよ」
「影緑神みたいなことをお前までするな……くそ、ただでさえ死にかけているのに無駄に喋らせるんじゃあない。クソ虫め」
ゼイゼイと、彼の呼吸音が流石に怪しくなってきたのでこれ以上
群れが左右に分かれ、私が基青神の元へと歩く為の道を作ります。そして、倒れたままの彼に肩を貸し……立ち上がらせます。
「取り敢えず、治療をしましょう……私は出来ませんが、貴方の所のアヴァロニア氏なら癒せるのでは?」
「アイツらの
「……それでも、彼らは貴方の帰還を待っているのでは?」
「
それは、酷く寂しい物だと私は感じました。
情の感じられない、まさにビジネスライクの関係性。それが、彼らにとっては当たり前なのだとしても……
「……俺を、あそこに座らせろ」
ゆっくりと、基青神が指を刺した先にあるのは……初めに彼が腰掛けていた執筆用のデスクと肘掛け付きの椅子です。
正直、彼の言うことを聞く義理はありませんが……
……なるほど
「私に権能を、使ってますね?」
「使わんと……お前動かんだろう」
ため息と共に苦笑いが浮かんでしまいます。全くもって、その通りなので。
基青神を優しく、体に衝撃が与えられないように座らせれば……そのまま、机に打っ
「基青神」
「……俺に勝った報酬を欲しがってたな」
彼に先に話を振られ、私の舌が動きを止めます。
「一つ……俺が知っていることを教えてやる」
「……一つ、だけですか?」
「欲張るなクソガキめ…………教えてやろう。
「はぁ……?」
もう一つある……?それはそうでしょう、私たちがいる人間世界とモンスターたちの住む世界で、世界は二つあるのですから。
「ククク……お前がいると、治るもんも治らん。
基青神へと言葉の真意を問い掛ける前に……おへその裏が引っ張られるような感覚とともに、基青神の創り出した異界から追い出されてしまいました。
ーーーーー
誘黒神を強制的に、俺の世界から弾き飛ばし……いよいよ、消耗が洒落にならんレベルになっているのを自覚した。
自分の創り出した世界だ、自分に有利なように環境を整えることは
チクタクと規則正しく鳴り続ける時計の針。
俺を追い詰め、やがてはソレ無しでは落ち着かなくなってしまった忌々しい音だ。
その聞き慣れた音の中に……硬い床の上で、靴の
「誰だ……?」
のろのろと、なめくじにも笑われるような速度で頭を上げれば……
「女王、陛下……?」
深紅のドレスは
水色の髪は短く切り揃えられ、血の気の失せたような陶磁器に近い白い肌と夕焼けと同じ色の瞳のコントラストが美しい。
「何故……ああ、いや、もういい。戻ってこられたのなら……もういいのです」
体力の限界で、立ち上がることすら難しい体がもどかしい。
酷く熱を持って熱い体を、無理矢理に動かせば……バランスを激しく崩した体が周りの執筆済の原稿をなぎ倒してしまう。
だが、構うものか……原稿用紙の一枚を握り、這いずりながら……女王陛下の元へと
「読んで下さい……世界には、悲劇だけしかない訳では無いのです。喜劇が、幸福な結末がこんなにも溢れているのですよ……」
女王陛下は何も言って下さらない。
「悲劇を観るのは……もう、やめましょう。これからは、幸せな終わりを……俺が作り出した物語だけを観て下さい」
女王陛下は何も言って下さらない。
「陛下……だから、これからは」
『何故、アンタの作った退屈な物語を観なければならないの?』
息が止まった。
『アタシは、アタシが観たいモノだけを観るの。アンタの物語なんて要らない』
女王陛下を見上げる。
『だって……観たって、アタシはアンタの所へは戻らないもの』
ズタズタに引き裂かれたドレス、腹部に突き刺さった処刑人の剣。砕けて、素足を傷つけるだけ凶器となった
血や泥に
『これが、アンタが観ようとしなかった真実よ』
女王の体が弾け、吸盤だらけの赤黒い触手が俺を飲み込んだ。
違う、違う……こんなものが真実なわけが無い。
「いいや?コレがキミが行き着いた