TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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閑話3

ぼんやりと窓の外を眺めていれば、二羽の小鳥が木に止まっているのが見えた。

仲が良さそうな姿が憎たらしくて、ほんの少しだけ窓を開けて大きな声を出して驚かしてやれば……あっという間に飛び去っていく。

 

 

「ざまぁみろ」

 

 

意地悪な私の言葉が虚しく室内に響いて……人の気配を感じて、窓を閉める。

 

 

優義徒(ユギト)、何か大きな音がしたが……」

 

「お外を見てたら、大きな影がビュンって来て驚いちゃっただけだよ、お父さん」

 

 

ニッコリと馬鹿みたいに笑って見せれば、父は安心したように眉間の(しわ)(ゆる)めた。

馬鹿な父だ、私の事を昔の……幼児期ぐらいの情緒のままだと思っている。

そんなわけが無い。

一応は教育を受けてはいた、けれどもそれは狭い世界の中に押し込められたままで。

あの頃の私の世界は教会の中だけだった。唯一与えられた娯楽は【ドレッドギアス】のカードのみ。【這いよる混沌(ナイアルラト)】はその与えられたカードの中に紛れていた。

真っ黒な棒人間みたいな存在が枕元に立っていた時は……幼かったから、怯え泣いていた。そんな私の様子を見て、あの子は……身振り手振りで何とか泣き止ませようとしていた。

初めの頃は言葉を話せなかったけれども、私の言葉(づか)いを学習してそのままの口調で喋るようになったのは直ぐのことだ。

それから【這いよる混沌(ナイアルラト)】は私の秘密の友達になった。人じゃない、だけど私とずっと一緒にいてくれる友達。

成長していくにつれて、私にはこの教会の中から出て行きたいという欲求が生まれた。信者たちは何処から来ているのだろう?唯純(イズミ)が言う学校とはなんだろう?お父さんとお母さんが仕事で外に出て行くけれども、外とはなんだろう?

 

許されなかった(・・・・・・・)

 

外に行こうとすれば、やんわりと止められ……いつの頃からか、部屋にいる間は外から鍵を掛けられるようになっていた。

母が主体となって、私に外を見せないようにしていた……理由は分からない。

でも、このまま飼い殺しになるのが嫌で嫌で嫌だったけれども……その日が来てしまった。

 

 

「体調はどうだ?どこか違和感は無いか?」

 

「だいじょーぶ!火傷(・・)も何も無いからへーき!」

 

 

火傷という言葉で父の顔が曇る。

それはそうだ、私は一度、焼け死んだのだから。

その男性の事は、最初は父も誰なのかは分からなかったようで……行く宛てがないので止めて欲しいという言葉を素直に受け止めて、父はその男性──炎柳(エンリュウ)太陽(タイヨウ)を教会に招き入れた。

それからはあっという間だった。

その日の晩に、私は炎柳(エンリュウ)太陽(タイヨウ)に誘われて、地下の聖堂へと向かった。

ゆうこくしん?という存在を求めていた彼は、ゆうこくしんを誘き寄せる為にと……私を生きたまま燃やした。

熱くて熱くて息が出来なくて、火を振り払おうとする手も燃えていて、辺り一面が火の海だから……逃げ場もなかった。

苦しくて、痛いのか熱いのかすらもよく分からなくなって……助けを求めて何かを叫んだ私の手を【這いよる混沌(ナイアルラト)】が掴んだ瞬間に、全ての感覚が消えた。

熱くもない、苦しくもない、でも自由に動く事が出来なかった。

私は、私の中に居たけれども……勝手に動く口は、私じゃない言葉を吐いていた。

 

 

『ゆるさない、ぼくのともだちをよくもいじめたな!!!』

 

 

黒い影が荒れ狂った。

怒りのままに、笑い声を上げながら振るわれる暴力を炎柳(エンリュウ)太陽(タイヨウ)は何度か不自然な(・・・・)タイミングで避け続け、やがて父と母が地下聖堂に現れた。

そこからは三つ巴の戦い……最後に、母が一枚のカードを懐から出していた。

 

 

『全部全部、悪い冗談……これで貴方も(・・・・・・)時が来るまで(・・・・・・)お別れよ(・・・・)■■■■(ルシフェリオン)】』

 

 

閃光、そして嘘のように辺り一面の炎は消えていた。

父と私じゃない私は倒れていたし、炎柳(エンリュウ)太陽(タイヨウ)は消えていて……母は何事も無かったように、部屋から出ようとして最後に振り返って言っていた。

 

 

『じゃあね、灰獄(カイゴク)くん。キミ、プライベートだとつまらない人だったわ』

 

 

それから、起き上がった父は母は死んだものと思い込んでいたし私じゃない私──【ナイアルラト】は父に弄られて、記憶を消されて私の代わりに生活を始めてしまった。

ずっと、私はその姿を【ナイアルラト】の中から観続けていた。

彼の中から見る世界は……初めての外は、酷く汚れていた。

教会の人達よりも偉い筈なのに底意地が悪くて、金に汚く、色に目がないし、他者を(なぶり)るのを快楽に、成功者を蹴落として、嘘を吐いて……最低の人種ばかりが外には蔓延(まんえん)していた。

そんな汚い世界の中で、楽しそうに過ごしている【ナイアルラト】が理解出来なかった。

(しばら)くして、その【ナイアルラト】の世界に新しい存在が増えていった。

完全に良い人とは言えないけれども、悪意の中から抜け出そうともがく人達……転がり落ちて悪意の一つになりそうなその人達に手を差し伸ばして、救い出していた。

【ナイアルラト】はそんな彼らを利用して、壮大なごっこ遊び(・・・・・)を繰り広げ……そして、私の存在を思い出した彼は私をこの世界に産み直した。

 

 

「ねぇ、お父さん。今、ユギトたちはアメリカにいるんだってさ」

 

「アメリカ……不法入国か。奴ら、どこまで罪を重ねるつもりだ」

 

 

頭痛を堪えるように、額に手をやるお父さんの姿にこれっぽっちも罪悪感は湧かない。

父は何も知らなかった、でもそうだとしても私は許しはしない。

 

 

「でも、楽しそうだから良いと思うなぁー」

 

 

自分の子が焼け死んだというのに炎を好むのはきっと、父がその化身だからだ。何度生まれ変わったとしても、きっと父は炎と共にある。

なら、私は何だろうか?

本質的に私は嘘吐きだ。みんなが望むからと、意地悪な本性を隠して何も知らない、無垢な子供のままを演じている。

嘘吐き……あの【ルシフェリオン】も母も嘘吐きだから、そちらに私は似たんだろう。

 

 

「ユギトが楽しそうなら、ぼくは嬉しいよ」

 

 

嘘だ(・・)

 

 

「お父さん、大好きだよ」

 

 

嘘だ(・・)

 

 

「みんなみんな、大好き!!」

 

 

嘘だ(・・)

みんな嫌いだ、全て全て……台無しになって、壊れてしまえばいい。

懐のデッキ、異形の気味が悪い存在だらけの中のとびっきりの一枚が脈打つ。

 

 

 

 




これにて閑話は終わりです、次回からシーズン2の始まりです
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