TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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ゆっくり初めて行きます


シーズン2ー世界大会編ー
【日本一決定戦】


ゆったりとしたソファが優しく体を受け止め、室内を適温に調整してくれているエアコンの風が頬に当たるのを感じます。

しかし、そんな快適に限りなく近い状態のこの部屋の中で……手に汗を握りながら、テレビの画面に釘付けになっていました。

 

 

『長く続いたこの日本一決定戦も遂に決勝戦となります』

 

 

アナウンサーの方の前口上を聞き流しつつ、決勝の舞台に立つ二人のサモナーの姿に……私は目を細めます。

 

 

五年前(・・・)の日本一決定戦にて、誘黒神の打倒を成し遂げた若き獅子!!龍騎を率いるは炎柳(エンリュウ)ゥゥ百火(ヒャッカ)ァァァ!!!!』

 

 

私の記憶の中の姿よりも、成長して少年から青年へと変わろうとしている彼の頬には深く刻まれた傷跡が有り、前は明るかった瞳も……よく言えば深みを増し、オブラートに包まずに言えば(よど)(にご)っていました。

あの頃の彼よりも、確実に強くなっているであろう百火(ヒャッカ)くん。しかし、中継で見る限り……彼のカード捌きは、苦しそうに見えました。

彼に何が起こったのかが気になる所ですが……彼の対戦相手の彼女(・・)の方がより変貌していて、痛ましい。

 

 

『対するは名門、私立帝傑(ていけつ)女学園の統一生徒会会長(・・)!!【氷の女帝(エンプレス)五月雨(サミダレ)ェェ水兎(ミト)ォォォ!!!!』

 

 

昔はリボンで結ばれていた髪はそのまま背に流されていて、彼女が動く度に軽やかにその動きに追従しています。

制服らしき衣装の左の二の腕の辺りには、古いリボンが結ばれていてそれだけが水兎(ミト)嬢の今の冷徹な雰囲気に似つかわしくありませんでした。

百火(ヒャッカ)くんに向けられている視線はまさに絶対零度。幼馴染(おさななじみ)に向けるにしては余りにも、冷たく敵意しか感じられない。

 

 

『灼熱の竜王が勝つか!それとも、永久凍土の主が勝つか!世紀の一戦が、今はじまろうとしています!!!』

 

「相性は五分五分。先に百火(ヒャッカ)くんが押し切るか、それを耐えて水兎(ミト)嬢が封殺するか……見ものですね」

 

「…………優義徒(ユギト)が負けたから、私はもう知らん」

 

「ジュンくん、拗ねてないでこっちに来て下さいよ。みんなで観戦しましょうよーねぇー?」

 

 

この大会の準決勝で百火(ヒャッカ)くんと戦ったのは……優義徒(ユギト)でした。

私と違い、髪を短めに整えている優義徒(ユギト)は……終始(ほが)らかにファイトを行っていました。

使用していたのは黒メインの多色混合デッキ。

私の【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)】に似た色構成ですが……個人主義なこちらと違って、向こうのテーマはカード間のシナジーが凄まじい。

百火(ヒャッカ)くんをジリジリと追いつめて行きましたが……彼の新しい切り札【龍騎炎熱(ドランバーニング)救世主ゴウエン】の登場で形勢逆転。

連携攻撃(ユニゾン)によって、繰り広げられる連続攻撃に防御が足りなくなり……そのまま、優義徒(ユギト)は倒されたのです。

……倒された後に、発狂して百火(ヒャッカ)くんの所に殴りこもうとするジュンくんを止めるのが大変でしたよ、ええ。

 

 

「……皇導(オウドウ)さん、床に……ずっと、座るのは……キツく、ないです?」

 

「キツくない」

 

鬼丸(オニマル)、もうほっとけよ。いつまでもウジウジ拗ねてやがる奴に構わなくていいって」

 

「誰がウジウジ拗ねているって!!?」

 

「お前だよ!!!」

 

 

ジュンくんに油と火を注いで復活させたのは良いですが、レイカ嬢とジュンくんの言い争いでテレビの音が聞こえづらいです。

私と同じ意見を持ったようで、最近声変わりをして低くなった声と共にテレビのリモコンがジュンくんの頭部に向かって投げつけられます。

 

 

「二人とも(うるさ)いデシ!!テレビの音、聞こえない!!!」

 

「人の頭に物投げつけておいて、何がテレビの音が聞こえないだ!!」

 

「はっ!!タクミに言われてやんの!!だっせぇなぁジュン!!」

 

「貴様ら二人、目上の者に対する態度を正してくれる!!!そこに直れぇ!!!」

 

「もう座ってるデシ!!!!」

 

 

タクミくんも加わり、さらに騒々(そうぞう)しさが増してしまいました。

テレビの中で繰り広げられるファイトに集中したいのですが……横で行われている喧嘩が私の注意をさらっていきます。

………………

 

 

「三人とも、少し静かにしていて下さい」

 

 

影から私の触手(うで)を伸ばして、三人の手足を縛りあげ……強制的に距離を離します。

口を塞いでしまおうかとも思いましたが……お喋り出来ないのは寂しいので無しです。

 

 

「これ以上騒がしくするなら、もっと強く縛りますので」

 

「すんません、白掟(ハクジョウ)様……」

 

「名前、まだ慣れませんかレイカ嬢?私は白掟(ハクジョウ)の家の者ではありません」

 

「うっ……すんません、ユギト様」

 

 

この五年の間に"色々"ありましたが……まず始めに私がしたのは名前の呼び方です。

もう白掟(ハクジョウ)ではありませんし……どうせなら、付けてもらった名前で呼んでもらいたい。

 

 

「タクミくんも物を投げるのはいけませんよ、壊れたらどうするのです」

 

「ごめんなさい、ユギトサマ」

 

「……その投げつけられた私には(いたわ)りの言葉は無いのか?ん?」

 

「え、だってジュンくんの二重の意味の石頭ならリモコン当てられた程度では何とも無いでしょう?」

 

「きさ……!!ほん……っっ!!」

 

 

自由にさせていたら、間違いなくジュンくんは私に飛びかかって来たでしょうね……うん、縛って置いてよかったです。

怒りのままに地団駄を踏んでいた彼が、ぶすっとしたまま荒々しく座るので……地べたにまた座らせるのも悪いので、私の触手(うで)を椅子代わりにさせます。

彼ぐらいでしょうね……私の触手(うで)を当たり前のように椅子にするなんて。

 

 

『ここで百火(ヒャッカ)選手の"ギアスモンスター"【龍騎炎熱(ドランバーニング)救世主ゴウエン】が誓約(コントラクト)サモン!!そのまま他の龍騎炎熱(ドランバーニング)達との連携攻撃(ユニゾン)が始まる!!』

 

 

龍騎炎熱(ドランバーニング)救世主ゴウエン】

赤 コスト:4 炎・偽神

A:4 B:2

 

連携攻撃(ユニゾン):【龍騎炎熱(ドランバーニング)】または炎モンスターが相手モンスターを攻撃する時に、代わりにこのモンスターのA(アタック)にそのモンスターのA(アタック)を追加して攻撃を行う事が出来る。

このモンスターの攻撃は防衛されず、モンスターを攻撃した際にこのモンスターのA(アタック)が相手のモンスターのB(バイタル)を超えている分だけ相手のライフにダメージを与える。

一ターンに一度、このモンスターを破棄する事でD(デュアル)R(レゾナンス):炎熱(バーニング)モンスター×2を行う事が出来る。

 

 

竜の牙や爪を模した鎧は【クリカラ=カルラ】によく似ていて、握り締められている大剣はより複雑な機構を持ったモノに作り替えられています。

左目に縦に刻まれている深い傷跡、そして目の前の敵を見据えるその深紅の双眸(そうぼう)から……幾つもの戦いを乗り越えた古強者(ふるつわもの)貫禄(かんろく)が感じられます。

 

 

『しかぁし!!既に場に降り立つ水兎(ミト)選手の"ギアスモンスター"【蒼氷雪(アイスタルーシアン)()妖精女王(フェアリークイーン)ティターニア】の永久氷壁がその攻撃全てを止めていく!!』

 

 

蒼氷雪(アイスタルーシアン)()妖精女王(フェアリークイーン)ティターニア】

青 コスト:4 妖精・氷・偽神

A:0 B:5

 

永久氷壁:プレイヤーまたは自分モンスターがダメージを受ける時に、任意の枚数だけ自分のデッキのカードを上から破棄する事で、その枚数分ダメージを減らす。

自分がカードをドローする時に発動出来る。自分の墓地からスペルカードを一枚発動する。

一ターンに一度、このモンスターを破棄する事でD(デュアル)R(レゾナンス):氷雪(アイスタル)モンスター×凍土(アブソリューション)モンスターを行う事が出来る。

 

 

氷の結晶を模した錫杖(しゃくじょう)を持ち、繊細な模様が描かれたドレスには宝石が幾つも散りばめられていて非常に豪奢(ごうしゃ)な印象を受けます。

王冠には星のような光り方をする蒼玉(サファイア)が埋め込まれていて……その姿はまさに女王と呼ぶに相応しい。

 

 

『しかぁし!止まらない!止まらない!止まらなぁい!!!温存されていた連続攻撃を可能にするスペルが切られて龍騎炎熱(ドランバーニング)連携攻撃(ユニゾン)が止まらない!!!!』

 

「……このままだと、永久氷壁……で、デッキが……削り切られ、ますね」

 

「ある程度は妥協して受けるしか無いだろうな」

 

「いや、アイツにはあのカードがあるデシ」

 

 

タクミくんの言葉を裏付けるように、水兎(ミト)嬢が使ったスペルによって【凍土の魔女(アブソリューション・ウィッチ)フリージア】が場に出てきて互いの墓地のカードを全てデッキに戻していきます。

 

 

「あちゃあ……あの炎坊主にはこれはキツイなぁ」

 

「頼みのD(デュアル)R(レゾナンス)も墓地を一掃されては行えないしな……終わったな、アイツ」

 

「いいえ……百火(ヒャッカ)くんは分かっていた筈です。それに……彼の目は死んでいない」

 

 

(よど)みを焼き尽くすように、彼の瞳に火が宿る。楽しそうに、笑みを浮かべている彼の姿は非常に好ましいです。

 

 

「(あの笑い方……ユギト様の"ギアスファイト"してる時の笑い方そっくりだよなぁ……って、いけね)ハク……じゃなかった、ユギト様そろそろ時間っすよ。会見に出ねぇと」

 

「ええっ!?もうそんな時間ですか!!?もうちょっと!!もうちょっとだけ!!試合が終わるまで待って下さいよ!!」

 

「どうせ録画してるんだろ、後で見たら良いだろう」

 

「録画と(なま)じゃ違うんです!!お願いですから!!もうちょっとだけ!!」

 

「…………神牙(ジンガ)

 

「すんません、リーダー(・・・・)

 

 

鬼丸(オニマル)くんがひょいっと音がしそうな程に軽々と私の体を抱き上げます。

あああああ……テレビも消されちゃったじゃないですか……酷い、酷いですよ……

 

 

「ぐすん……私休みじゃダメなんですか……?ほぼほぼ、取り仕切ってるのジュンくんじゃないですかウチのチーム(・・・・・・)

 

「代表は貴様で出してるからな、黙って立ってるだけで良いんだからしゃんとしろユギト」

 

「はぁい……」

 

 

鬼丸(オニマル)くんに降ろしてもらい、とぼとぼと長い廊下を歩いていきます……気になるなぁ、やっぱり。

でも、出ないといけませんから……諦めましょう。

 

 

「……会見はいつもの通り、基本的な質疑応答はジュンくんに任せます」

 

「ああ、だが今回はアメリカ代表(・・・・・・)としての一言コメントも全員に来ると思う。一応、全員コメントは考えておけ」

 

 

 

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