TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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【エボニーマスクス】

「──以上八名が日本代表"ライジング・サン"のメンバーとなる」

 

 

壇上(だんじょう)でそう締めくくったのは、土色とでも言うべきくらいに濃い色の茶髪の中年だ。

ユギト(アイツ)よりは薄い……それでもハッとするような赤い瞳が細められ、俺たち一人一人を値踏(ねぶ)みするように視線が向けられていく。

 

 

「二十年前の世界大会……この俺、森導(シンドウ)大地(ダイチ)は日本代表メンバーとして参加していたが、残念ながら決勝でフランス代表"la() Sainte(サント) Bible(ビィブル)"に負けた……以降の世界大会で、日本代表が決勝まで勝ち残ったことは無い」

 

 

無念そうに、中年──森導(シンドウ)監督(・・)が視線を少し伏せ……次の瞬間にはギラつく光を宿して俺らを見据(みすえ)えた。

 

 

「だが!今回の日本代表は違う……俺は感じている。お前らのポテンシャルは二十年前の俺らと同等……いや、それ以上かもしれない!」

 

 

俺の隣の水兎(ミト)から、俺に視線が移り……森導(シンドウ)監督が笑った。

 

 

「さっきの決勝戦……引き分け(・・・・)に終わったからな、本来ならば勝者が日本代表のリーダーになるんだが……」

 

「それなら、アタシは辞退するわ」

 

「ほう……理由を聞こう?」

 

「アタシにとって、勝利が全て。引き分けなんて負けと同じよ。だから、負けたアタシはリーダーに相応しくない」

 

 

森導(シンドウ)監督の言葉を水兎(ミト)が切り捨て……俺に宣戦布告をするかのように、敵意しかない視線を向けてくる。

 

 

次は勝つ(・・・・)。首を洗って待っていなさい、百火(ヒャッカ)

 

「良いぜ、お前とのファイトは久しぶりに燃える戦いだったんだ……何度だって、相手してやるよ。何なら、今からでもやるか?」

 

「良いわよ……今度こそ、魂の底まで凍てつかせてあげるわ」

 

 

一触即発。ずっと、歯ごたえの無い相手ばかりだった俺は今すぐにでも水兎(ミト)ともう一度"ギアスファイト"がしたい。

もう数秒もすれば互いに"ギアスディスク"を構えそうなその時、俺と水兎(ミト)それぞれの前に人が立つ。

 

 

炎柳(エンリュウ)くんだっけ?喧嘩はだめだよー?これから、僕たち仲間になるからねぇー」

 

水兎(ミト)ちゃんも落ち着くっぺ!まだ森導(シンドウ)監督のお話は途中だっぺよ!!」

 

 

俺の前には……記憶の中の桃色と同じ色の髪は短めに整えられ、どこか眠たそうに半開きな目の中で透明感のある深い緑色の瞳をとろんと蕩けさせたカソックを纏った青年──本物の(・・・)白掟(ハクジョウ)優義徒(ユギト)が立つ。

水兎(ミト)の方には、ここ数年で完全にトレードマークとなった小狐──【タマモノマエ】を肩に乗せ、発育の良い体を動く度にたゆんと揺らす緑色の髪の女の子──米子(コメコ)こと、米原(マイバラ)翠子(ミドリコ)が立つ、というかしがみついている。

 

 

「……久しぶりね、翠子(ミドリコ)さん。でも、離してもらえるかしら?流石に少し暑いわ」

 

「あぅぅ、ごめんだっぺ……水兎(ミト)ちゃん、久しぶりだっぺな」

 

 

小学校の卒業と同時に、水兎(ミト)の奴は全寮制の学校に行ったから……それ以来、約五年ぶりの再会だ。

積もる話もあるけれど……コホンと森導(シンドウ)監督が主張をする。

 

 

「それじゃあ、代表チームのリーダーは炎柳(エンリュウ)百火(ヒャッカ)で良いな。この後、代表発表の記者会見が有るが……先に、こっちを見るぞ」

 

 

そう言って、リモコンで何かを操作する森導(シンドウ)監督。直ぐに、背後のスクリーンに映像が映し出され……どこか見覚えのある五人組の姿と音声が流れ始める。

 

 

「ちょうどいいタイミングだったな、アメリカ代表発表の記者会見だ。メンバー的に……やはり"エボニーマスクス"が代表になったか」

 

「"エボニーマスクス"?」

 

 

俺が聞く前に、白掟(ハクジョウ)森導(シンドウ)監督に問い掛ける……ちらりと周りの様子を伺えば、俺と同じように知らないのは後は米子(コメコ)だけだったようだ。

…………恥、かかなくて良かったぜ。

 

 

「T.M.インダストリーがスポンサーの【ドレッドギアス】チームだ。大会荒らしで有名でな、アメリカで行われた過去五年の賞金が出る類の大会において、その八割の優勝を()(さら)っていく悪名高いチームさ……残り二割は、チーム戦の同時開催などで参加が不可能というだけだから、実質は十割だな」

 

『──それでは、大会に向けて意気込みを一人づつお願い出来ますか?』

 

『ああ、構わない。先ずは私からだな………………優義徒(ユギト)の仇は打つ!!!日本代表、死すべし!!!!』

 

 

五年経っても絵本の王子様みたいな整った容姿は衰えず、寧ろより生き生きとした様子で先陣を切っているのは──皇導(オウドウ)ジュンだ。

……凄まじい、言い掛かりに近い因縁をぶつけられている気がするのは気の所為か?

 

 

皇導(オウドウ)ジュン、"エボニーマスクス"のエースだ。一番目立っているし、顔も整っている故に一番ファンが多い。性格はアレだが……ファイトスタイルは、堅実かつ攻撃的。確実にアドを稼ぎつつ、隙を見せた瞬間に一気に勝負を付けに来る」

 

『騎士サマ言うに事欠(ことか)いてソレデシか!?ボクサマたち国の代表なんだから、自覚持てよ馬鹿!!!』

 

 

皇導(オウドウ)の頭をどこからか取り出したハリセンで全力スマッシュしているのは……蛇を模した仮面を被った、俺より歳下っぽい少年。黒髪の長髪はあまり手入れをされてないのか、若干傷んでるように見える。

 

 

「彼は惹琴(マネゴト)タクミ……T.M.インダストリーの社長兼"エボニーマスクス"のメンバーだ。使用デッキは全色入りのハイランダー……正気の沙汰じゃないが、毎回内容を少しづつ変えているらしい。若くして社長にまでなっている事もあり、一番頭が回るのは彼だろう」

 

『えっと……では、気を取り直して一言コメントを……』

 

『………………』

 

『あの……?』

 

『…………がんばり、ます』

 

 

室内だというのに深々とフードを被っていて、長袖に加えて皮手袋まで付けて一切肌を露出させていないガタイの良い男が……心配になるくらいの間を開けてから、ようやく一言だけ喋る。

……声は聞いたことあるけど、どこだったか。

 

 

「あの不審者スタイルの彼は神牙(ジンガ)鬼丸(オニマル)。"エボニーマスクス"が大会荒らしをしている中で、夜や建物内での大会にだけ出場しているのが彼だ。ロック+デッキ破壊という対策が必須な戦術を使ってくるが、彼にばかり気を取られていると他のメンバーにやられてしまう。非常に厄介な存在だ」

 

『次はアタシだね。やるからには狙うは優勝!!全員ぶち抜いてやるよ!!』

 

 

レザー素材の無骨な衣装、さらにドクロの仮面を斜めに頭に被っている姿と快活に笑い、向けられているであろうカメラに向かって指をビシッと指している姿。

威圧感とどこか茶目っ気を感じさせる見た目のギャップは……ちょっと可愛いと思う。

 

 

『…………チッ』

 

『何舌打ちしてんだよ鬼丸(オニマル)。腹でも痛いのか?』

 

『なんでも……ない』

 

「"エボニーマスクス"の紅一点、駆魔(カルマ)レイカ。低ステータス低コストのモンスターによる速攻戦術が持ち味で、後攻一ターン目からワンターンキルを狙ってくる……こちらも手強いサモナーだ」

 

 

どいつもこいつも強いのは分かるけども……俺が一番興味を持っているのは最後の一人、つまりは

 

 

『最後は私ですね……そうですね、一番対戦を楽しみにしているのは日本代表です。彼らとは……きっと、楽しい時間が過ごせると思います』

 

 

桃色の、一部の髪が白くなっている長髪は、三つ編みにされて肩の方から前に流さるている。人当たりのいい笑みを浮かべ、掛けられている昔よりもレンズのかなり薄い銀縁のメガネの向こう……血よりも赤い深紅の瞳と目が合う。

 

 

「……誘黒神、今はユギトと名乗っている"エボニーマスクス"のリーダーだ。IGPの収容施設からの脱獄、さらにその収容される理由となった五年前の全国大会における暴走により……今も、指名手配されている一番の危険人物だ」

 

 

……危険人物と言われて、カチンとは来たけども完全に否定は出来ない。

アイツのやってきたことは……客観的に見れば、悪事ばかりだからだ。

 

 

D(デュアル)R(レゾナンス)を核にした戦術と【邪聖天(デモリエル)】モンスターを核とした戦術の二つを切り替えて使ってくるが……どちらも最終的には【誘黒神(ナイアルラト)】が出てくる」

 

『でも……あるチームにだけは、楽しむよりも勝つ事を優先して望みたいですね』

 

 

大きなベルトみたいなチョーカーを片手で弄り、ユギトが静かな──まるで感情を抑えているかのような声色を出す。

 

 

『フランス代表、神聖制約教団(ホーリーギアス)選抜チーム"la() Sainte(サント) Bible(ビィブル)"……個人的な因縁も有るので、負けたくありませんね』

 

 

真っ赤な、背筋を寒気が走るような気味の悪い色の瞳が画面越しに……真っ直ぐにここでは無いどこかを睨んでいるような気がした。

 

 




〜オマケの小噺〜

ユギト「では、これから活動する中でチーム名を決めないといけませんが……案がある方はいますか?」
レイカ「"(ぶっ)()()()(エー)()"!!」
タクミ「どこの暴走族の名前デシか!!?」
ジュン「"優義徒(ユギト)護り隊"!!」
タクミ「個人名出すなよ!!」
ユギト「えー……"私と愉快な仲間たち"」
タクミ「愉快なのは分かるけれど、流石にその名前は締まらないデシよユギトサマ!」
レイカ「否定ばっかしてアンタは何か案は無いのかいタクミ!!」
ジュン「そうだそうだ!貴様も何か案を出せ!即座に却下してくれる!!」
タクミ「……"仮面軍団"?」
ジュン「付けるが流石にどストレート過ぎるわ!!」
レイカ「軍団って、五人しかいねぇじゃん!!」

──その後、黒に関連する言葉を入れたいという意見に纏まり、辞書を各自で眺めて"エボニーマスクス"に決まったという

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