TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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【オール・オア・ナッシング】

「お話……ですか」

 

「そ、お話。キミも私も相手を殺すに話をするくらいの理性はあるよね?未開の蛮族じゃないんだ、理性的に先ずは話し合おうよ」

 

 

……帰りたいですね、正直。

目の前の彼女の名乗りが本当ならば……彼女こそがレティシア・ブラン、神聖制約教団(ホーリーギアス)表の(・・)トップである教皇です。

彼女の保護者といえば……お父さんか統白神が浮かびます。どちらが来たとしても、面倒です。

 

 

「話を断るならこれ押すよ?」

 

 

私の内心を読み取ったのか、例の保護者を呼ぶ機械のボタンに指を掛けてきます……素直に、向こうの要求に乗るしかありませんね。

 

 

「分かりました、では、お話をしましょうか」

 

「そうこなくっちゃー♪じゃあ、早速だけどーユギト大司教、神聖制約教団(ウチ)に戻らないー?」

 

「戻るメリットが私にありませんね、ソレに戻れば、私が統白神(アイツ)の下に着くことが確定しますからね……」

 

 

統白神(アイツ)のことです……ことある毎に、私に戦いを挑んでくるでしょう。

はるか昔に……私が誘黒神の座に就いた直後、アレと戦ったことがあります。

黒い虫()の群れが奴を喰らい尽くそうとした時に……タダの拳の一撃で、霧散させたのです。

触れただけでそこから喰らいつく筈の黒い虫()……何度も殺到する群れを蹴散らしながら、統白神(アイツ)は笑っていました。

『触れた所から喰われるのならば、口の無い所を殴ればいいだけだ。そして、向き直られる前に、拳を引く……単純な問題だな、誘黒神』

理論は分かりますが、極小サイズの虫の一匹一匹の口の位置なんて把握出来る筈がない……でも、結果として統白神(アイツ)はソレが出来ていました。

ならばと、虫の向きをランダムにして襲い掛かりましたが……そちらの制御に気を取られて、群れ自体の密度と勢いが(げん)じてしまい、拳を振るった時の風圧で吹き飛ばされました。

……やっぱり統白神(アイツ)は嫌いです。だから、統白神(アイツ)の下に着くなんて、まっぴらごめんです。

 

 

「メリットならあるよー?神聖制約教団(ホーリーギアス)なら、キミをIGPから守ってあげられるよー」

 

「IGP……いえ、救黄神がそう簡単に諦めると思っているのですか?今も国に対して圧力を掛けて、私たちを捕まえようとしているでしょうし」

 

「元々、キミの犯した罪は誘黒神という存在が生きる為に(・・・・・)"サモンエナジー(・・・・・・・)"を奪った(・・・・)という見方が出来るし、死した自分のサモナーを蘇らせる為に"サモンエナジー"を集めていたのも民衆が大好きなお涙頂戴エピソードになる。守るべき民衆からの同情は救黄神の裁定への対抗策として使える(・・・)。生きる為だったという理由と理不尽に奪われた命を取り戻す為という理由。この二つによって情状酌量の余地を得てしまえば、キミが救黄神の出した神託(クエスト)達成に貢献したのも含めて、執行猶予がもぎ取れるよ」

 

 

一息に言葉を並び立てられ、反論に詰まってしまいます。

しかし……彼女の見立ては甘いです。

 

 

「救黄神を()めていますよ……あの神の下のIGPの方々になら、その理論は通るかもしれませんが救黄神には無駄です。救黄神にとって、最も優先されるのは自身の判断(・・・・・)です。罪は、どれだけの理由があろうとも罪とカウントします。戦争で一万人の敵兵を殺した英雄も、一万人の罪もない人々を殺した殺人鬼も、あの神の中では等しく人殺しとなります」

 

 

ここで息を吐き、少し痛み始めた喉への違和感を誤魔化すように首のチョーカーに触れます。

 

 

「……兎に角、神聖制約教団(ホーリーギアス)では私を守りきれません。なので、そちらに着くメリットはありません」

 

「そうだね、それならキミを守ることは出来ないかもね……でも、キミ以外は?」

 

 

チョーカーを弄っていた指が止まり、私が思わず出したその反応にレティシア・ブランが笑みを浮かべます。

 

 

「救黄神自らキミの配下の四人を裁くつもりじゃあないんだろう?なら、キミの配下の四人なら、私の先の理論を少し言い回しを変えてしまえば守れるよね?」

 

「それは……」

 

「それでも気に食わないのなら……うん、そうしよう!」

 

 

パチンと手を叩き、少女らしく楽しげに頬を緩ませるレティシア・ブラン……何故でしょう、ろくでもない予感しかしません。

 

 

「勝負しよっか。決勝トーナメントで私たちとキミたち……勝った方が相手の要求を飲むってことでいいよね」

 

「……そちらが勝てば、私はそちらの傘下に入ると?私たちが勝った時のメリットがありませんが?」

 

「だから、相手の要求を飲むにしたんだよ。状況は刻一刻と変わるからね、キミたちの要求はキミたちが勝った時に出せばいいよ。私たちの要求はキミを貰うことで確定で良い」

 

「…………」

 

……どうしましょうかね、これ。

あの子たちの実力は、この五年の間に上がっています。相手がお父さんたちだとしても、勝ちの目は充分にあります。

それに……負けた時のデメリットは私の身柄が向こうに行くだけ、あの子たちへの影響は無い。

なら……もう少し、譲歩を引き出しましょう。

 

 

「その勝負に乗る前に……私たちが勝とうが、負けようがどちらになったとしても、あの子たちの指名手配が解除されるようにしてもらえますか?」

 

「いいよ、約束しよう」

 

 

そう言って、自分の電子端末を操作していく彼女……数分にも満たない時間で、五年もの間彼らを縛っていた指名手配が解除されていきます。

 

 

「素直ですね……正直、その指名手配の解除と引き換えにこちらを脅して負けさせてくると思っていたのに」

 

「そんな必要は無いよ、キミはイブぴ(・・・・・・)に勝てない(・・・・・)

 

「イブぴ……随分と可愛らしい愛称を付けられてますね統白神(アイツ)。しかし、私が統白神(アイツ)に勝てないと?この五年で私たちは強くなっています」

 

「私たちじゃなくて、私以外(・・・)でしょ?キミ独りじゃあ……私たちには勝てないよ」

 

 

何かの含みを感じさせる言葉ですが……流石にカチンと来ますね。

 

 

「言ってくれますね……救黄神だけではなく、私のことも()めてます?」

 

()めるも何も、れっきとした事実でしょ?なんなら、今ここで"ギアスファイト"してみよっか。私は約定(クレスト)使わないし、そっちは使ってもいいよ」

 

 

そう言って、自分のデッキをテーブルに置く彼女は自身の勝ちを全く疑っておらず、あまつさえ私相手にハンデを付けるとまで言ってきました。

 

 

「…………後悔させてあげますよ」

 

 

私も【強壮なる使者(暗黒のファラオ)】と自分のデッキをテーブルに乗せ、"ギアスファイト"の準備を整えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、コレで終わりだね」

 

「…………」

 

 

惜敗(せきはい)とはどう足掻いても言えない盤面でした。

ラストアタックを受けたと同時に、力が抜けて手札がテーブルの上に広がります。

 

 

「ね、言ったでしょ?キミ独りでは(・・・・・・)私たちに(・・・・)勝てない(・・・・)

 

 

零れ落ちた手札の中の一枚……【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()歌姫(ディーヴァ)Miss.Z(ザドキエル)】のイラストが変わらない笑みを浮かべたまま、私を見返していました。

 

 

 

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