『──さあ、各会場で行われている本戦リーグも残すは二戦!!決勝トーナメントに駒を進めるのは果たして、どのチームなのでしょうか!!!』
最初に選手たちを面白おかしく紹介していた方とは違う実況者の方、その前口上がどこか遠い世界の出来事のように感じられます。
対峙する向こうのメンバーは、優義徒、水兎嬢、米原嬢……あの金髪の方と青みがかった黒髪の方。
百火くんが居ないのは……予想外ですね。
「あの炎坊主いねぇな……」
「アイツが日本代表の二枚看板の一つなのに……向こうは何を考えているデシ?」
「……こちらを嘗めている、ということでも無いのでしょう。向こうも渋い顔してますし」
「どちらにせよ、我々のやることは変わらん。勝つぞ」
ジュンくんがそう締めくくり、トップバッターの鬼丸くんが頷いてステージへと向かいます。
向こうからは……水兎嬢が出て来ました。
『本戦リーグBブロック第五試合一戦目!!アメリカ代表"エボニーマスクス"からは菌類たちの主!!神牙鬼丸!!対する日本代表"ライジング・サン"からは氷の女帝五月雨水兎!!妖精が支配する凍土を菌類たちが覆い尽くすのか!それとも絶対零度の息吹が全てを凍てつかせるのか!!』
「先ずは一勝……もぎ取らせてもらうわ」
「…………そのまま、返そう」
「「"ギアスファイト"レディセット!!!」」
神牙鬼丸 【衰退と崩壊の終末論】
VS
五月雨水兎 【無窮の蒼哀】
「「スタートアップ!!!」」
先行は……鬼丸くんですね。
水兎嬢の【凍土の魔女フリージア】は鬼丸くんの天敵とも言えるカードです。水兎嬢の"ギアスモンスター"は……その【フリージア】ではなく、彼女の新エースである【蒼氷雪の妖精女王ティターニア】のようですね。
汎用性は高いですし、対戦相手がウチのメンバーの誰か分からない状況ならば間違いではない選択です。
鬼丸くんの"ギアスモンスター"は五年前から変わらずに【衰退の起源菌類オニテング】のままです。変える理由もありませんし……なんだかんだで、あのモンスターのことを彼は気に入っているようなのです。
「俺のターン……ドローをせずにカウンターブースト」
鬼丸 第一ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:2
残りデッキ枚数:44
「……アーティファクト【猛毒菌類ベニテングタケ】と【衰退因子:餓鬼道】を、設置……ターン、終了」
「(ターンカウンターを増やした時にデッキを削ってくるカードとカードが破棄される度にアタシの場のモンスターのAを減らすカード。アグロ対策の時間稼ぎってことね……上等よ)アタシのターン、ドロー」
水兎 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:1
残りデッキ枚数:43
「ターンカウンターが、増えたので……【ベニテングタケ】の、効果で……相手の、デッキの上の……カードを一枚、破棄し……カードが破棄された、ので【餓鬼道】に衰退カウンターを……乗せる。そして、その枚数分だけ……相手の場の、モンスターの……Aを、下げる」
「構わないわ、アタシは【蒼氷雪の妖精】をサモン!」
【
蒼氷雪の妖精】
青 コスト:1 妖精・雪・氷
A:1 B:1
氷壁:一ターンに一度、プレイヤーまたは自分モンスターがダメージを受ける時に、任意の枚数だけ自分のデッキのカードを上から破棄する事で、その枚数分ダメージを減らす。
氷の結晶を表す六花模様、それが分裂して小さな六人の妖精へと姿を変えます。
氷壁……一ターンに一度だけのダメージをデッキ破棄へと移し替える置換効果。鬼丸くんのデッキはダメージを与えての勝利は奥の手ですし、現状はその効果は腐っていますが……はてさて。
「スペルカード【澪冷零隸】発動」
【
澪冷零隸】
青 コスト:1 スペル・氷・虚無
自分の場のモンスターから一体選び、一ダメージを与える。その後、自分の墓地のカードを一枚手札に加えることが出来る。
このカード名のカードが四枚以上墓地に存在するならば、自分は自分の墓地からスペルカードを使用することが出来る。墓地から使用したスペルカードは使用後にデッキの一番下に置く。
水兎嬢の使ったスペルから四条の閃光が走り、六人の妖精へと迫ります。しかし、六人が協力して貼った氷の壁がその光を打ち消します。
「先ずは【澪冷零隸】の効果で【蒼氷雪の妖精】に一ダメージを与えるわ。でも【蒼氷雪の妖精】の氷壁でダメージを無効にし、デッキの上のカードを一枚墓地へ……そして【澪冷零隸】の効果の解決に戻るわ。墓地から【蒼氷雪・罪悪を量る君主】を手札へ」
「【餓鬼道】に……衰退カウンターを、一つ……乗せる(墓地肥やしと回収……向こうからデッキを削ってくるのは有難いが、あの手のギミックには山札回復もセットなのが多い。早めに【地獄道】を設置してスペルを妨害して【天狗道】の起動を目指すのが丸いか?【澪冷零隸】を一枚、出来たら二枚はゲームから取り除きたいな……腰を据えての長期戦になりそうだが、出来たら相手が早々に諦めてくれたらいいな……ライトの光もちょっと肌に痛い)」
ふむ……なるほど、鬼丸くんのデッキ破壊を逆手に取った【澪冷零隸】の第二の効果発動を目指す形ですか。
発動条件を満たされてしまえば、鬼丸くんの勝利はかなり厳しくなりますね……彼の方もそれを理解していることでしょう。
「これでターン終了よ」
「……俺のターン、カウンターブースト」
鬼丸 第二ターン
ライフ:10
手札:3 ターンカウンター:4
残りデッキ枚数:44
衰退カウンター合計:2
「スペルカード……【無限増殖ーグリーンハザードー】を、発動。手札を一枚、破棄し……アーティファクトを、宣言。デッキトップ……五枚から、宣言した種別の、カードを……全て、手札に加え……残りを、全て……破棄する」
鬼丸くんの最強のドロソが来ました。もちろん、全てがアーティファクトなので手札は一気に五枚増えましたね。
「(お、良い引きだ。これなら向こうの動きを完全に止められるな、一勝いただきだ)……アーティファクト【衰退因子:地獄道】と【衰退因子:天道】と【衰退因子:畜生道】……発動」
【
衰退因子:地獄道】
緑・黒 コスト:1 衰退・アーティファクト
アーティファクトが発動される度にこのアーティファクトに衰退カウンターを乗せる。
場の衰退カウンターの数だけ、相手の手札のスペルのコストを増やす。
自分のライフが増えた時に発動する。自分の場の衰退カウンターを全て取り除く。
空から降り注ぐのはカラスの羽、そして血なまぐさい臭いが立ち込めます。
少し離れたこの場所でも眉を顰める臭いなのですから……発生源の近くであるアチラはもっとすごいことになっているでしょうね。
「【地獄道】は……アーティファクトが発動される度に、衰退カウンターを……乗せる。そして、場の……衰退カウンターの数だけ、相手の手札の……スペルのコストを、増やす」
「場の衰退カウンターの合計は4……こちらの動きはかなり制限されたけど、その【衰退因子】シリーズのデメリットによって、そっちも実質、行動に制限が掛かっている。やりづらいんじゃない?」
「……これで、関係無くなる。このカードの、コストは……場に、存在する【衰退因子】と、名の付く……アーティファクトの、数と……等しくなる……【崩壊因子:天狗道】発動」
【
崩壊因子:
天狗道】
緑・黒 コスト:? 衰退・神器・アーティファクト
このアーティファクトのコストは場に存在する【衰退因子】と名の付くアーティファクトの枚数と等しくなる。
場に存在する【衰退因子】アーティファクトの種類だけ、以下の効果を適応する。
一枚以上:自分の場の【衰退因子】アーティファクトは場を離れない。
三枚以上:自分は【衰退因子】アーティファクトの効果で衰退カウンターを取り除かなくても良い。
六枚以上:相手はターンカウンターを増やす代わりに、自身のターンカウンターを減らさなければならない。
酷く重たい空気……水気を孕んだ大気は、じとりと肌にまとわりついて不快な汗をかくことを要求してきます。
「【天狗道】の効果は……場の【衰退因子】アーティファクトの、種類だけ……増える。三枚以上、存在するから……【衰退因子】アーティファクトは……場を離れない効果と、自身の効果で……衰退カウンターを、取り除かなくても……良い、効果を……適応する」
【天狗道】発動の影響でしょうか、ステージを煌々と照らしていたライトの輝きが陰り、この会場内全体が薄暗くなりました。苦手な光が弱まった為でしょうか……被っていたフードを上げ、五年前から緑色となってしまった鬼丸くんの瞳が顕となります。
「これで、お前はもう……何も出来ない、しなくて……いい」