ユーウェインの効果で引いたカードを確認した瞬間、思わず眉を顰めてしまう。
カードが実体化している現状でコレを用いれば……下手をすれば優義徒が死んでしまう。だが……引いてしまったということは、必要になる場面が来るのだろう。厄介だな。
「……アタックフェイズ!」
「その前に【アルデバラン】の効果発動だよ!【アルデバラン】の下に置かれている【星化生の幼生】をサモン!!【星化生の幼生】が場に出たからデッキから【星化生の黄魔蟻】を手札に加えるよ!!さーらーにー!!」
優義徒の傍で光を放っていた【星化生の標虫】の光が点滅し、それに導かれるように低い虫の羽音が辺りに満ちる。
「【星化生の標虫】は相手ターン中にぼくのモンスターがサモンされた時に、手札のモンスターを場に出せる!!さあ、出番だよ【黄魔蟻】!!」
【
星化生の黄魔蟻】
黒・白 コスト:5 星魔・使徒
A:3 B:3
このモンスターが場に出た時に発動出来る。自分の場のこのモンスター名を除くモンスターを全て手札に戻し、戻した枚数と同じ枚数の星化生モンスターを場に出す。
それは、羽アリに非常に似ていたが……どぎつい黄色と黒のストライプは蜂のソレであり、何よりも私が二、三人乗っても余裕な大きさは異常だ。
「【黄魔蟻】の効果発動!!この子以外のぼくのモンスター全てを手札に戻し、戻した枚数だけ手札から【星化生】モンスターを場に出す!!【星化生の幼生】【星化生の標虫】【星化生の双頭蟲】を手札に戻し、同じ子たちを場に出すよ!!」
「私のターンなのにこうも展開を行うとは……しかも【双頭蟲】の効果無効を解除するとは……流石だ優義徒!!!」
「………………」
この五年の間に格段に上達した優義徒の"ギアスファイト"の腕に素直に賞賛の言葉を投げるが……彼の様子がおかしい。
ほんの少し、太陽が雲に隠れたようなほんの一瞬の陰りが優義徒の澄んだエメラルドグリーンの瞳を濁らせ……次の瞬間には、夢幻だったかのように元の色へと戻る。
見間違えたのか……いや、私が優義徒のことに関して何かを見間違える筈がない。
「【星化生の標虫】の効果でデッキの上から五枚を見て……【暴君の即位】を【アルデバラン】の下に置くよ。さらに【星化生の幼生】の効果でデッキから二体目の【星化生の双頭蟲】を手札に加え【双頭蟲】の効果で今手札に加えた【双頭蟲】を場へ!!」
あまりにも悍ましい外見の、星を喰らう虫たちの大群。
【誘黒神】とはまた違う虫の群れは、一応は元所有者であった縁だろうか……
だが、まだ甘いな。
「フフン、二体の【双頭蟲】の効果でぼくの場の【星化生】モンスターたちのAとBは2上がってるからね……次のターンには総攻撃で終わりだよ!!」
「さて、そう上手くいくか……アタックフェイズ!!【ユーウェイン】で【星化生の幼生】を攻撃!!」
再び振るわれる鉄の爪が柔らかな虫の肉体を突き破り、異臭を纏った乳白色の中身を辺りへとぶちまける。
赤い血では無いことに不満を抱いているのか、苛立たしげに地面を切りつけてからこちらの場へと戻る。
「【騎士は消して引かず】があるので【ユーウェイン】は戦闘でダメージを受けない……そして、相手の場のモンスターを戦闘で破棄した時、手札のこのアーティファクトを捨てることで相手の場のモンスターを全て破棄する!!我に勝利を、敵対者に絶対の死を!!【絶命の剣】!!!!」
私の目の前に浮かぶのは黒曜石によって歪な形へと復元された大剣。両手で握れば、脈動が伝わるが……その呪いは、もはや私を脅かすものではない。
振り下ろすと同時に砕け散り、黒曜石の破片が優義徒の場の【星化生】モンスターたちに突き刺さる。長い間共にあったことで、不本意ながら適応してしまった私とは違い、初見の奴らがその呪いを受けて無事で済むわけがない。
その身を黒曜石へと変えられていき、やがて風によって風化して消え去っていく。
「全滅……っ」
「さらに、手札から【黒曜の純化】を発動!!【ユーウェイン】を破棄し、それよりコストが2大きい【黒曜騎士】……【黒曜騎士ガウェインⅢ】を場に出す!!追撃だ【ガウェインⅢ】!!」
雄叫びを上げた【ユーウェイン】の全身が黒曜石の塊に覆われ、ソレを中から砕いて姿を見せるのは金髪を短く刈り込んだ騎士。
私の指示により、その手に握られた先端がギロチンのように湾曲した大剣を……優義徒に当たらないギリギリの所に振り下ろす。
口に出さなくても、私の考えを読み取る……流石は私の騎士たちだ。
優義徒 ライフ:10→6
「……んで………っ」
「これで私のターンは終了だ」
「なんで……当てないの?」
「当然だろう?当たれば、痛いし……私は優義徒に怪我をさせたくない」
「……【ガウェインⅢ】の効果使わなかったのもそれが理由?」
「そうだ」
流石に七点を叩き込めば……余波でも相当な物になる。私は優義徒を大事にしたいからな。
だが……私のその想いが、彼を深く傷つけてしまったのだと直ぐに気付かされた。
「唯純ちゃん、酷いなぁ。ぼくは真剣にやってるのに……手加減して、私を惨めにさせて楽しい?」
「優義」
「ああ、本当に私をイラつかせるのが上手いよね唯純ちゃんはさぁ……巫山戯んなよ!!いつからお前は私を見下せる立場になった?ええっ!!?」
変貌というにはあまりにも自然な姿。苛立ちを隠すのを止めた優義徒はきちんと整えられていたカソックの胸元を緩め、荒れる感情を解き放つ。
「私が上でお前が下なんだよ、唯純ちゃん!!それなのにさぁ、私のことを気遣う?お前如きが図に乗るんじゃあ無い!!!唯純ちゃんの癖に、生意気なんだよ!!!!」
そのまま荒々しく引かれるカード、見たことの無い優義徒の姿にいつの間にやら歓声は止まっていたが……その代わりに私の心臓の音が騒がしいくらいに鳴り響くのを感じる。
優義徒 第三ターン
ライフ:6
手札:5 ターンカウンター:4
「…………フフ」
「何がおかしいの?」
「違う、おかしいんじゃない……嬉しいんだ!!!!」
「はぁ?」
そうだ、嬉しくて嬉しくて堪らない……だって、そうだろう?
「お前の本音を私が引き出し、そしてぶつけられた!!世界で私が一番最初だろう!!?嬉しいに決まってるじゃあないか!!」
「ねぇ、ほんとそういう所!!!お前、そういう所マジでキモイ!!!私がこの体で初めて起きた時に意地悪言ってやったのに、何変な方向に振り切ってんのお前さぁ!!?」
「私は!!お前のことが大好きだからな!!!!」
大きく胸を張り、どこか毒気が抜けたような……呆れたような表情の優義徒を真正面から見る。
溜め息を吐かれるが……構わない。私はもう迷わない。私がやりたいように振る舞い……そして今度こそ、私は大事なものの為に動く。
「…………だったら、その大好きな私に負かされて!!泣きべそかいちゃいなよ!!【アルデバラン】の下に置かれている【暴君の即位】をゲームから取り除くことで、このモンスターは場に出せる!!」
風が吹き荒れる。
どこまでも冷たい風は刃のように鋭く……敵対者への殺意を形にしたようであった。
「星々を砕き、宇宙を統べるは黄衣の暴君!!この風を止められるものなら止めてみなよ!!さあ行け【星間の帝王ハストゥール】!!」