TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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敗戦からの再起

──日本代表が宿泊しているホテルの一室はひたすらに重い空気が満ちていた。

俺と恐馬(キョウマ)が戻った時、室内にいたメンバーは何も喋らずにただ気まずそうにカードを弄ったり、窓の外を眺めていたりとしていた。

 

 

「…………悪い、俺たちがいれば」

 

「勝てた(・・・)?ふざけたこと言わないで百火(ヒャッカ)」

 

 

少なくとも俺が残っていれば、そうすればこの試合に勝ってそのまま決勝トーナメントに進めたかもしれない。

その後悔を口にしようとした瞬間、水兎(ミト)から絶対零度の視線を向けられた。

 

 

「翠子(ミドリコ)さんも……白掟(ハクジョウ)さんも、アンタたち二人の代わりとして立派に戦い抜いたわ。その二人を侮辱(ぶじょく)するつもり?」

 

「そんな訳ないだろう!!?」

 

「なら、アンタが口にするべきなのは謝罪じゃなくて感謝よ」

 

「……いいよ、最後に勝てなかった私(・)が悪いし」

 

 

むすっとした表情のまま外を見ていた優義徒(ユギト)が近づき……思いっきり、俺の額を指で突いてきた。

 

 

「痛ってぇ!?」

 

「でもさぁ、もう少し早く帰って来れないの炎柳(エンリュウ)くーん?お陰様で私の猫かぶり解く羽目になったし……あーもう!!唯純(イズミ)ちゃんに負けたの悔しい!!」

 

「八つ当たりで連打すんなよ!!痛い!!」

 

 

ムギャー!!と喚きながら俺の額を突きまくる優義徒(ユギト)から逃げた先には恐馬(キョウマ)が立っていて、俺はそのままその背に隠れた。

 

 

「恐馬(キョウマ)くんちょっと邪魔!!ソイツに八つ当たり出来ない!!」

 

「するな馬鹿」

 

「むー……ていうか、妹ちゃんが攫(さら)われなきゃこうなってなかったよね!!なんであの鳥にとっ捕まってるんだよ!!」

 

「その……朝に起きてから、身支度を整えていたら……お兄(に)ぃの声が聞こえた気がして……振り返ったら、急に眠たくなったのだわ」

 

 

何かが引っ掛かるような、そんな違和感を感じたけれど……分からない。

俺が首を傾げている間にも、会話は続いていく。

 

 

「その時に連れ去られたと……再三聞くが、どこか違和感は無いか鏡花(キョウカ)?」

 

「無いのだわ!!」

 

「なら良いが……少しでも変に感じたら直ぐに言うんだぞ」

 

「はーい!!」

 

「……そんなに大事な妹ちゃんなら、鍵掛けた部屋に閉じ込めたら?」

 

「それも一つの手か……」

 

「お外に出て、お兄(に)ぃとデート出来ないから嫌だわ」

 

「なら、やめておこう」

 

「ねぇ、私の知人たちみんな頭のネジ外れてない?もしかして、私だけ常識が違うの?」

 

「いや……今回は優義徒(ユギト)が正しいと思うぜ」

 

「今回"は"!?」

 

 

収拾がつかなくなってきた状況を、ほんわかとした声がおずおずと変えに来る。

 

 

「あのー……百火(ヒャッカ)くん、ずっと聞きたかったんだけども、その寝てる人誰だっぺ……?」

 

「え?ああ!」

 

 

あの鶏頭は直ぐに姿を消したけれども、俺とファイトをしていたウサギ頭の奴は気を失った状態で放置されていた。あのまま置いておくのもなんか気分が悪いからと連れて来てそのままだった。

 

 

「恐怖連合(ダークアライアンス)の奴だよ、俺が倒した」

 

「なんでそんなの連れ帰ってるのよ、バカ!!」

 

「しゃーねぇだろ!?気絶してるし、放置しとくのもなんか悪いじゃん!!」

 

「と、取り敢えず……息苦しそうなこの被り物は取るっぺな!!」

 

 

そう言って、米子(コメコ)がウサギの被り物を取った瞬間……小さな悲鳴が起こる。

寝ているテラは中身が……頭が付いていなかった(・・・・・・・・・・)。

 

 

ーーーーー

 

懐の電子端末の一つが着信音を響かせる。

試合には負けたが、まだ最後のチャンスが残っていることを日本代表の子供たちに伝えようと廊下を歩いていた矢先だ。

振動するソレを手に取れば、表向きに使っているモノとは別の電子端末だと直ぐに分かった。

 

 

「俺だ……ああ、お前か」

 

「仕方ないだろう、誘黒神のチームは強い……善戦した方だよ、彼らは」

 

「……大丈夫だ、アイツが視た(・・)なら絶対だ。もう、横槍は入れさせない……何かされそうになれば、次は俺が動く」

 

 

通話を切ってから、深く息を吐き終え……背後の気配に向けて殺気を飛ばす。

 

 

「誰だ」

 

「廊下で電話とはマナーが悪いな……森導(シンドウ)大地(ダイチ)」

 

 

振り返ると同時に、舌打ちをしたくなる衝動を抑える。

まさか、アイツらと同じホテル取ってたなんてな。

 

 

「急な電話だったんだ、仕方ないだろう……灰獄(カイゴク)裁刃徒(サバト)、いや今は白掟(ハクジョウ)か?」

 

「好きに呼べ……」

 

 

眉間に深く刻まれた皺(しわ)に、白髪混じりなった赤毛……老けたなぁコイツも。

 

 

「なら、昔みたいに灰獄(カイゴク)って呼ばせてもらうが……誉(ほま)れ高い神聖制約教団(ホーリーギアス)の大司教様が、わざわざマナー違反を指摘する為だけに俺を見ていたのか?暇だな、お前」

 

「…………通りがかっただけだ」

 

 

昔のアイツなら、これぐらいの煽(あお)りで直ぐに怒髪天(どはつてん)を衝(つ)いて、俺を燃やしに来ていた。

丸くなったなぁ……

 

 

「なら、俺はもう行かせてもらう」

 

「待て」

 

「なんだよ」

 

「……炎柳(エンリュウ)太陽(タイヨウ)が今、どこで何をしているか知っているか?」

 

「アイツが今何をして(・・・・・)いるかなんて(・・・・・・)知らないな(・・・・・)。なんで俺に聞く?」

 

「お前は、アイツの友人で……元チームメイトだろう」

 

「二十年前の話だろ……今のアイツの居場所なんて知らないな」

 

 

肩を竦(すく)め、アイツの質問に答えてやれば灰獄(カイゴク)の視線が険しさを増す。

 

 

「……変わったな。昔のお前は、仁義に厚い男だった筈だ」

 

「変わったのはお前もだろ、忍耐強くなったな……あの放火魔が」

 

「……色々、あったんだ」

 

「俺の方も色々あったな」

 

 

沈黙が降り、灰獄(カイゴク)が俺を背を向ける。

 

 

「時間を取らせたな」

 

「ほんとだわ、可愛いチームの子供たちが待っているからな……ああ、そうだ。お前に言いたいことが一個あるな」

 

 

灰獄(カイゴク)の足が止まり、怪訝(けげん)そうに振り返ってくる。

そこに、ニンマリと笑みを浮かべながら……ちょっとしたからかいを投げつけてやる。

 

 

「息子さんが公開プロポーズを受けたことに対して、コメントをどうぞ?」

 

「燃やすぞ貴様」

 

 

……コイツあんまり変わってないわ、やっぱり。

 

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