TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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タイトルはネタなのに、話はシリアス……に見せ掛けて、何かがおかしいです


ゴーイング☆マイウェイ

生暖かい潮風が頬を撫でていきます。

ラ・リィアー島の全てを見渡せる観光スポットであるD1高台から見下ろした世界は……夜の闇の中に街の灯(あか)りがキラキラとしていて、とてもキレイだと思えました。

 

 

「…………」

 

 

手の中のデッキ、その一番上に置かれている【Miss.Z(ザドキエル)】のカードは何も言わず、ただイラストに描かれている笑みを浮かべたままでした。

……気付いてはいます。

この島に来た辺りから【Miss.Z(ザドキエル)】はおろか【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)】の皆の姿も声も聞こえなくなってしまった。

正確には、私のデッキの(・・・・・・)子たちと繋がりが(・・・・・・・・)途切れてしまった(・・・・・・・・)。

故に、他の方が自分のモンスターと触れ合ったり話している姿は見ることが出来る…………酷く、羨(うらや)ましくて寂しさを覚えてしまいます。

 

 

「何故……ですか?」

 

 

呟いた言葉に答える者はいない……筈でした。

 

 

「教えて差し上げますよ、誘黒神」

 

「誰です?」

 

 

涼やかなその声に振り返れば……腰に二本の刀を下げ、白を基調とした袴姿の……まるで侍のような印象の、メガネを掛けた男性が自然な佇(たたず)まいでそこに居ました。

気配を感じ取れませんでしたが、何者でしょう?

私の警戒を解かせる為に……素らしいその鋭い目つきを和らげ、代わりに微笑みながら、彼が私に一歩近づきます。

 

 

「怪しい者ではありません……鬼丸(オニマル)がいつもお世話になっております」

 

「誰なのかと聞いているのですよ、後……あまり近づかないで下さい」

 

「これは失礼を……一方的にこちらが貴方の事を知っていた為に、親近感を覚えていた弊害(へいがい)ですね」

 

 

足を止め、メガネの鼻当てを中指で軽く押し上げながら男性が言葉を紡ぎます。

 

 

「自己紹介から始めないといけませんね。手前は翠原(アキハラ)光世(ミツヨ)……婿養子(むこようし)となる前の姓は神牙(ジンガ)となります」

 

 

ーーーーー

 

「神牙(ジンガ)、お前兄がいたのか」

 

「はい」

 

 

無事に予選を突破した記念に開かれたパーティーという名の呑み会。ユギトは後で来るとのことで、先に他の三人で始めることとしたのだ。

会場は宿泊しているホテルの一室、まあ私(とユギト)の部屋だ。未成年の惹琴(マネゴト)と次の日にツーリングをする予定の駆魔(カルマ)は飲まないので、実質は私と神牙(ジンガ)のサシ飲みだな。

 

 

「オニサマのお兄さん……となると、やっぱりめちゃくちゃデカイデシ?」

 

「いや……光世(ミツヨ)兄ちゃんは俺より細かった」

 

 

酒精(アルコール)によって、いつもよりも饒舌(じょうぜつ)な様子の神牙(ジンガ)が杯にまた酒を注ぎ、懐かしむように目を細める。

 

 

「力は弱かったけど、すごく足が速かった。頭も良くて……よく分からない話をよくしていたな」

 

「よく分からない話?」

 

「うんまい」

 

「いや、今はその話の方が気になるから、飲むの一回止まりな鬼丸(オニマル)」

 

「んー」

 

 

グビグビと酒を飲み干す神牙(ジンガ)の頭を軽く駆魔(カルマ)が叩き、話の続きを促(うなが)す。

しかしアレ、何杯目だ?転がっている空き瓶は五本を超えているが……まあ、ユギトの持ち込んだ酒だから良いだろう。後で補填(ほてん)はするし。

 

 

「えー……なんだったっけな。今どきやり方が古臭い?だから盾にされる?もっと効率良くしろ……って、よく父さんたちと喧嘩してたな」

 

「確かにその言葉だけじゃ、分からないデシが……喧嘩してたってことは、今は仲直りしたんデシ?」

 

「いや、光世(ミツヨ)兄ちゃんは出ていった。俺が小学生になった時くらいの頃かな……」

 

「喧嘩の果てに家出か……」

 

「婿養子(むこようし)って言ってたかな……出て行く前に、光世(ミツヨ)兄ちゃんとなんか話したけど……忘れた」

 

「アンタが小学生ってことは……十五年前ってことになるね」

 

「そんなになるのか……実感が湧かないな」

 

「身内だろう……」

 

 

酒が入ってるとはいえ、あっけらかんとした神牙(ジンガ)の態度に思わず呆れが出てしまう。

だが、それに対して神牙(ジンガ)は自信ありげに口元を歪めてから、また杯に口を付ける。

 

 

「元気でやってるよ光世(ミツヨ)兄ちゃんは……だって、俺の兄ちゃんなんだから」

 

 

ーーーーー

 

 

「神牙(ジンガ)……なるほど、鬼丸(オニマル)くんの身内の方でしたか」

 

「初めにその趣旨(しゅし)の言葉を出しましたが……お気づきになられなかったようですね」

 

 

見た目は殆ど似つかない彼ですが……無理やりに鬼丸(オニマル)くんとの共通点を見出そうとするならば……髪色が同じ黒に近い深緑色という点でしょうか?

見た目以外にも、言動も似ていません。慇懃(いんぎん)無礼(ぶれい)という印象を強く与える皮肉混じりな言葉づかいは、間違っても鬼丸(オニマル)くんからは出て来ないでしょう。

 

 

「それで、その鬼丸(オニマル)くんのお兄さんが何のご用でしょうか?」

 

「通りがかったら、悩んでいた様子で思わず……という建前では納得しないでしょうね」

 

 

口元に手を当て、小さく笑う翠原(アキハラ)光世(ミツヨ)に……私の中の警戒度がまた一段階引き上げられます。

 

 

「手前たち(・・)と共に来ていただけませんか?我々ならば、貴方のその不調を癒(いや)す術(すべ)を持っております」

 

「……最近になって、ついにモテ期到来なのですかね」

 

 

レティシア・ブランもですし、何故そんなに私が欲しいのですか……?

そう考えている間に、止めたのにまた一歩近づいてきた翠原(アキハラ)光世(ミツヨ)に影から伸ばした触手(うで)を突きつけます。

 

 

「二度目の警告です、近づかないで下さい」

 

「おやおや……まるで、弱った姿を見せまいと威嚇(いかく)する野生動物のようですね。ああ……まるでではなく、そのままでしたね誘黒神」

 

 

にこやかに、しかし棘(とげ)のある言葉で私を煽(あお)る翠原(アキハラ)光世(ミツヨ)に苛(いら)つきが止まりません。

 

 

「初対面の相手に無礼ですね……鬼丸(オニマル)くんとは大違いです」

 

「鬼丸(オニマル)と手前は違う道を選んだので……さて、誘黒神。手前の誘いに乗って下さいませんか?」

 

「答えはもち「NOだ。下がれ、下郎」ろ……ん?」

 

 

私の言葉を遮(さえぎ)るように、忌々(いまいま)しい大嫌いな奴の声が重なります。

高台の街側──つまりは崖となっている側から一つの影が跳び、私の目の前に着地します。

 

 

「誘黒神、暇だ。戦え」

 

「なんで崖登りしてるんですか統白神!!?」

 

「余が進む先が道だ。あの程度では余の行く手を遮(さえき)ることは出来ん」

 

 

どこか誇らしげに鼻を鳴らし、腕を組む(右手は無いのに……)統白神の登場に辺りには微妙な空気が流れ始めました。

 

 

 

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