そのカードを使用しただけで、翠原光世の体が吹き飛ばされていきます。咄嗟に腰に下げている二本目の刀を地面へと突き刺すことでそのまま崖下まで落とされることは無かったようですが……少し離れた場所にいる私にもその衝撃が伝わります。
「【騎神への凱歌】の効果により、私はスペルを一ターン内に同名の物を二枚以上使用出来ない制限が解除されるよ」
「ルール改変効果……!?」
「そ、イブぴを出す為の条件は同じ種別のカードを連続で使用し続けることだからね……さあ、止め所を見誤ると終わるよ?スペルカード【惑星楽章 土魔の前奏曲】を発動」
【
惑星楽章 土魔の前奏曲】
白 コスト:2 楽譜
互いのプレイヤーのターンカウンターを一つ増やす。
さらに、ターンカウンターを1消費することでこのスペルをA:1B:1のモンスターとして場に出すことが出来る。
茶色の音符が地面を軽く叩くと同時に、白い球体が地面から二つ飛び出し、レティシア・ブランと翠原光世の体に取り込まれます。
「このスペルを使用すると、互いのプレイヤーはターンカウンターを一つ増やすよーやれることが増えたよ、やったね光世ちゃん!!」
「手前よりも、そちらにメリットが大き過ぎる効果ですね」
「まあねー【狂月の葬送曲】からCカウンターを一つ取り除くよーさ、どんどん行こー【惑星楽章冥王の鎮魂歌】発動ー」
【
惑星楽章冥王の鎮魂歌】
白 コスト:5 楽譜
このターンに使用したスペルの枚数分、墓地からカードを手札に加える。
さらに、ターンカウンターを2消費することでこのスペルをA:3B:1のモンスターとして場に出すことが出来る。
「このターン使用したスペルの枚数分、墓地からカードを手札に加えるよー【冥王の鎮魂歌】も使用回数に含まれるので、三枚回収出来るねー……【水星の小夜曲】と【海王の幻想曲】、【土魔の前奏曲】を回収ー!【狂月の葬送曲】からCカウンターを一つ取り除くねー」
これで一気に手札が増えたレティシア・ブラン……ここで回収するために【土魔の前奏曲】をモンスターとして置かなかったわけですか。
「もう一度【土魔の前奏曲】を使用ー今度はターンカウンターを2消費してモンスターとして設置ーそして、これでターンカウンターが6になったので【海王の幻想曲】を使ってー二枚ドロー!!ターンカウンターを3消費して、モンスターとして置いて……それを【水星の小夜曲】で回収ーこの子もモンスターとして配置してー……もっかい【海王の幻想曲】で二枚ドロー!!」
「好き放題、わがまま放題ですね……自制を覚えては?」
「やだ、我慢は嫌ってほどしてきたからね」
流れるような連続スペルで合計四枚ドロー……手札がこれで五枚にまで増えました。
何よりも……これで【狂月の葬送曲】に乗せられているCカウンターが残り一つになりました。
「合計で四つのCカウンターを【狂月の葬送曲】から取り除くよーで、これでおしまいだ【惑星楽章火戦の交響曲】このターンに使用したスペルの枚数分だけ相手プレイヤーにダメージを与えるねー八点のダメージだよー」
【
惑星楽章火戦の交響曲】
白 コスト:3 楽譜
このターン中に使用したスペルの枚数分のダメージを相手プレイヤーに与える。このスペルの使用後、自分はアタックフェイズを行えない。
さらに、ターンカウンターを3消費することでこのスペルをA:3B:3のモンスターとして場に出すことが出来る。
赤色の音符が合計で八個、炎を纏いながら翠原光世に向けて空から降り注ぎます……彼のライフは8、このままならそのまま削り切られますが……
「チィ!!カウンタースペル【斬魔一閃】発動!!手札を任意の枚数破棄し、受けるダメージをその枚数分減らします!!この時にユニオンを捨てたなら、二枚分として加算!!」
【斬魔一閃】
緑・赤 コスト:2 スペル・守護
自分がダメージを受ける時に発動出来る。手札を任意の枚数破棄し、そのダメージを破棄した枚数分減らす。
ユニオンを捨てたならば、二枚分として数える。
翠原光世が苛立たしげに捨てた三枚のカード、それによって赤色の音符が六個受け止められますが……残った二つが彼にぶつかります。
光世 ライフ:8→6
「ふーん……ま、いいよ。【狂月の葬送曲】からCカウンターを一つ取り除いて……ターン終了ー」
「……手前のターン」
「さあ、お楽しみの時間だ。ターン開始時に【狂月の葬送曲】にCカウンターが一つも乗っていない時、この約定をひっくり返して"ギアスモンスター"扱いとして場に出すよ」
まず最初に響いたのは物悲しげなフルートの音色。そこに楽しげな打楽器の音、重厚な弦楽器の旋律が重なり……最後に美しいソプラノとテノールの歌声が加わります。
「約定開演恐怖をもたらす為に第五の契約がここに成立する。其は地の合わせ鏡!!信奉せよ、闘争の極みたる月光を!!戦慄するがいい
【統白神】の威光の前に!!!!」
統白神が戦場に足を踏み入れると同時にその姿が本来のモノへと回帰していきます。
全身鎧は白を基調としたもので、奴らしい飾り気の一切ない無骨なデザインです。一般人よりも体躯の大きな奴が一歩歩くだけで地面がその足跡の形に陥没し、見た目以上の質量をそなえていることが見て取れます。
しかし、特筆すべきはそれだけです。
見た目だけならば……よく似たモンスターもいることでしょう。天使たちを従える最強の武神がこのような没個性的な見た目なので……初見の方は(私も含めて)油断し、そして地に伏せていったのです。
『出番か』
「イブぴー、最後の締めよろしくねー」
「最後……?手前のターンは始まったばかりですよ」
「いや、終わりだよ。【統白神】が場に出た時、【統白神】以外の私の場のモンスターを全て破棄し、即座に私のアタックフェイズを行うよ」
「なっ!!?」
『闘争の時だ……』
統白神が拳を握り締め、そのまま地面を割れ砕きながら襲い掛かります。
咄嗟に【マスラオ】がその行く手を遮るように立ち塞がりますが……
「ま、【マスラオ】で防衛!!」
「残念だけど【統白神】の攻撃は貫通するよ」
ただ、無造作に振るわれた拳……統白神にしてみれば、邪魔な物を退けるための動きだったのでしょう。
その行動だけで【マスラオ】はその全身を、肉も骨も全て粉砕され、血の飛沫さえも消し飛ばされて……存在の痕跡を失ってしまいました。
光世 ライフ:6→-7