TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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色んな人達が最後のアクセルを踏み始めました


「私が解決しましょう」

「……………」

 

なるほど……父がこの大会に参加したのはそういう事でしたか。どこから情報が漏れたのでしょうね?

あの人工島は"サモンエナジー"によって形作られています、つまりは島そのものが高密度の"サモンエナジー"の塊でもあるのです。

全国大会という華々しい舞台は闘争心を掻き立てる、あの島は一種の"サモンエナジー"の集積装置としての役割が有りましたが……本来ならばコスト:6以上のモンスターは実体化出来ないように配布された"ギアスディスク"に細工をしてあります。それ以上のコスト……正確には8以上のモンスターは()()()()()()()()()()()()()()()()

そんなモンスターが高密度の"サモンエナジー"を吸収して実体化すれば……今の私でも手こずるでしょうね。複数体出たらもうお手上げです。

……既に父の【ケルビム】は具現化していて、その力で熱帯雨林エリアを焼き払っています。"ギアスディスク"自前の物を使ったのでしょうかね?

しかし正気の沙汰とは思えませんね、あんな勢いで燃やしてしまえば関係の無い子達が巻き添えになります。私の計画を邪魔する為とはいえ……あそこまで堕ちるとは思いませんでしたよ。

観戦用のディスプレイの電源を落とし、薄ぼんやりとした様子の大会運営委員会の皆さんにお願い(命令)をします。

 

 

「大会はこのまま継続して下さい、大丈夫です。問題は私が解決しましょう」

 

 

気の抜けた返事に微笑みで返して部屋を後にします……島に向かう足は問題ありませんが、高密度の"サモンエナジー"の為に正確に父の所にまで跳ぶ事は難しいです。

大雑把に……最悪、島にさえたどり着ければ良いと意識を集中しようとした所に騒がしい足音が聞こえてきます。

曲がり角の向こうから姿が見えたのは殺気立ったIGPの捜査官らしき方達……すごく嫌な予感が

 

 

「目標を発見!!捕縛せよ!!!」

 

 

言葉と共に何本ものロープのような物が腕ごと、胴体へと巻き付きます。

電気か何かかピリピリとした痛みが走り、思わず表情を歪めると辺りを彼らに囲まれます。

 

 

「"白掟(ハクジョウ)優義徒(ユギト)"、連続サモナー襲撃事件の首謀者として逮捕する!」

 

「いきなり何なんですか……」

 

 

心当たりしかないその罪状に目元がヒクリと動きます。

しかしこのまま大人しく捕まるわけには行かないと口を開こうとした瞬間、ずいっと向けられた携帯端末が一つの動画を流し始めます。

雨の中"ギアスファイト"をする二人の男性……私とカタルさんだ。

 

 

『ええ、そうですよ!お父さんをあんなにしたのは私です』『"サモンエナジー"を集める為ですよ、アレは物を実体化……つまりは創造することに長けたエネルギーですからね。今度の全国大会でも沢山の強者(つわもの)サモナー達がいっぱいファイトをしてくれますからさらに集められる筈です』

 

 

ああ、ああ……なるほど、やらかしましたね私。

時折画面端に映る白手袋はカタルさんの水奇術(ウォーリュジョン)モンスター特有のデザイン……あの妙で今更な質問はこの発言を引き出す為でしたか。

口々に放たれる彼らの言葉が理解出来ずに耳障りな雑音となって鼓膜を震わせてきます。

ギチリと脳髄の軋む音と私を拘束するロープの締まる音が雑音と重なり、不快さに瞼を閉ざす。

軋む(ギチリ)軋む(ギチリ)軋む(ギチリ)……

声がうるさい、上手くいかない、もうちょっとなのに、なんで邪魔をするの?

私を連れて行こうとロープが引っ張られ、たたらを踏んでよろけた体がその場に崩れ落ちる。胸が……いや、掛けたままの総主教の印である"あの"ペンダントが酷く熱い。

軋む(ギチリ)歪む(ギシリ)止まる(もういい)……

そう、何故遠慮する必要があったのでしょうか?

あの子以外の人間は必要ない。まじめくん()は反抗したからお仕置きされてそのままだし、おじおばさん()はいっつもだんまりだし、にーちゃん()丸ちゃん()も疲れてるし、変態野郎()はまだ出て来れない……誰も私を止められない。

 

 

「白■優義徒(ユギト)!!何を■■■る、■抗■■■■!!」

 

『うるさい』

 

 

()を振り上げ、私の体を戒める道具を切り飛ばすと同時に人間達を弾き飛ばす。矮小な存在でもどうやらサモナーでは有るようです。()が触れた時に彼らの内から"サモンエナジー"を感じます。

ほんの少し、砂粒よりもごく僅かなソレでも今の私には必要な物です。()()()()()()に文字通りに搾ってやれば、恐怖の色に染まった"サモンエナジー"が染み渡ります。

すれ違う人間、立ち向かってくる人間、逃げて行く人間、全て全て全て等しく平らげていく。

力が入り過ぎて大きく弾いてしまった人間を追って行けばいつの間にかスタジアムの中へと入っていました。

雑音がまた鳴って、人間達の様々な視線が向けられる。

頭の奥の冷静な部分(人の心)はずっと警告を出しています。『やり過ぎだ』『優義徒(ユギト)に迷惑がかかる』と。

しかしそんな言葉も霞みがかって遠くなり、弱い者をなぶる楽しさに掻き消されます。

楽しい事は好きです、それはきっと誰もが同じ事でしょう。

父が削っていく"サモンエナジー"を少しでも補充しなければいけない、楽しい事をしてその目的も達成出来るならば一石二鳥で良い事づくめです。

()が幾度目かの飛翔を始める。

"サモンエナジー"を求めて観客席のサモナー達の影が貫かれると彼らの体からも私の()が飛び出していく。

悲鳴悲鳴悲鳴……それを見て恐怖に慄く人間達の声と苦悶の叫びが木霊してとても心地が良いです。

 

 

『ああ、でも…………昔よりも何だかモヤモヤした気持ちになります』

 

 

くらくらと視界も歪んできて心地よい感覚に水を指してくる。幸福の絶頂から気分は急降下で最悪です。

ため息が零れ落ち、そのまま後ろに倒れ込むように自らの影に身を落とします。

固い地面に当たる感覚は一切無く、何処までも暗く落ち着く空間に私はいました。

影を媒介とした長距離移動……やっぱり便利ですねこれ。

 

 

『"サモンエナジー"はこれぐらい有れば保つでしょう……早く父を止めなければ』

 

 

暗い空間を超えた先、閉じていた瞳を開けば視界に映るのは黒水晶に覆われた古城、そして

 

 

『え……?』

 

 

私を滅そうとする極光の輝きでした。

 

 

 




白は鎮静、人の心を凪いだ状態へと導く停滞


※尚、同格以上に対しては効果がない模様
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