TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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細かく撒いていた伏線を回収し始めます


「次のターンが来たら良いですけどね」

『いつもありがとう、■■ちゃん』

 

 

──アイツはよくそう言って私に笑いかけてくれた。

あの日もそう笑いかけてきて……病院に優義徒(ユギト)が搬送されたと聞いていても立ってもいられずに病院へと駆け込んだ。

優義徒(ユギト)がいるという病室に押しかけてでもその安否が知りたかった。

酷い火傷だった。

ほんの少しだけ見えた肌……というかアレはその下の肉が剥き出しの状態であった。包帯に包まれた全身がその状態なのは想像するに容易くて……薬とはまた違う異臭に吐き気が込み上げていた。

押しかけた病室から追い出される直前に響いた機械音は優義徒(ユギト)の心臓が止まった事を告げていた。

その後は……あまり良くは覚えていない。

何かに導かれるように燃えていた旧教会に向かって、()()()()()を拾い、そして裁刃徒(サバト)さんから死んだのは■■■■という事にして、優義徒(ユギト)はまだ生きているという事にして欲しいと言われた。

どうして?という疑問が浮かぶ前に、口は勝手に許可を出していた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

あの日に死んだと思った優義徒(ユギト)に面会出来たのはそれから数週間後だった。

包帯は所々は巻かれたままだったが、それでも前に見た時よりもずっと普通に見えた。

焼け落ちた為に短くなった髪を弄っていた優義徒(ユギト)と目が合う。

 

 

『おはようございます。寝起きで対応する無礼を許して下さい』

 

 

アイツの目の色は透き通るような緑色だった。今の()()の目のような血のような赤色じゃあない。

 

 

『まだ少し動きづらいですが、早くリハビリを終えてしまいたいですね。信徒の皆さんに心配を掛けてしまいます』

 

 

アイツは信徒なんて難しい言葉を使わない。学の無いアイツが使う言葉はもっと単純で、だが思いやりと優しさに満ちていた物だ。

 

 

『そういえば、()()()()()ですね?お名前を教えていただいてもよろしいですか?』

 

 

優義徒(ユギト)が私を忘れるわけがない。

偽物だ、目の前のコレはやっぱり偽物だ。

本物の優義徒(ユギト)はどこにいる?私の優義徒(ユギト)はどこだ?

 

 

ーーーーー

 

 

「【呪いの始まり(オブシディアン・ヘイトレッド)モルガーン】の効果発動!!」

 

 

【モルガーン】がその手に携えた杖を掲げると同時に辺り一帯に黒曜石が降り注ぎます。

その黒曜石の雨に触れた【マモン】と【ウリゾラス】がその身を全て石へと変えられてゆきます。

 

 

呪いの始まり(オブシディアン・ヘイトレッド)モルガーン】

白 コスト:8 英雄・黒曜石

A:1 B:6

 

このモンスターは黒曜(オブシディアン)カードとしても扱う。

黒曜騎士(オブシディアンナイト)モンスターが場に存在する場合にこのモンスターは色の制約を無視してサモン出来る。

このモンスターをサモンする時に自分の墓地のアーティファクトの数だけコストを下げても良い。

自分のターン中に手札を一枚破棄して発動出来る。互いの場のこのカード名以外の全てのモンスターを破棄し、その破棄したモンスターと同じステータスで尚且つ、分類:黒曜石を持つ黒曜(オブシディアン)トークンをそれぞれの場に出す。

 

 

「コスト:8以上のモンスターが場に出たのでC(コントラクト)カウンターを【強壮なる使者(暗黒のファラオ)】に乗せます」

 

「構わん!!私の手札を一枚破棄し、【モルガーン】以外の互いの場のモンスター全てを破棄する!その後、同じステータスを持つ黒曜(オブシディアン)トークンを互いの場に出す!!!」

 

 

そうして生まれたのは全身が黒曜石で出来た【マモン】に【ウリゾラス】……なるほど。

 

 

「モンスターを処理しつつ、黒曜騎士(オブシディアンナイト)モンスターを擬似的に横並びさせられる効果ですか。しかも、ターン一制限が無いとは……カード単体として見るならば厄介ですね」

 

 

【私心転心】の効果でターン終了時に戻るはずだった【マモン】は実質的にコントロールを永続で奪われました。

【ウリゾラス】の方も処理されましたが……

 

 

「……それで?貴方の手札はこれで0です。【マモン】の偽物と【モルガーン】で攻撃しても私のライフを削りきるには足りませんよ?」

 

「だが、次のターンには【モルドレッド(テン)】の封印が解除される……それでお前は終わりだ!!」

 

「次のターンが来たら良いですけどね」

 

「バトル!!【黒曜(オブシディアン)マモン】【モルガーン】行け!!」

 

 

にこりと微笑んでみせれば神経を逆撫でにしたようで荒々しいバトルの宣言が響きます。

現在のライフでは即死である【マモン】の攻撃は【ウリゾラス】で止めました。【モルガーン】が杖先から飛ばしてきた黒曜石の礫の方は自前の影の触手(うで)により弾きましたが、ダメージは受けています。

 

 

ユギト ライフ:5→4

 

 

「ターン終了だ!」

 

「それでは私のターン開始時に約定(クレスト)アビリティでデッキから【黎明暁月】を手札に加えます。そしてカウンターブースト」

 

 

ユギト 第二ターン

ライフ:4

手札:5 ターンカウンター:6

約定(クレスト)強壮なる使者(暗黒のファラオ)】CC:2

 

 

「盤面を更地にされましたが……黒相手に安易な破棄は逆効果になると思わなかったのですかね?約定(クレスト)アビリティにより、コストを2軽減して【神聖なる使徒(エンジェリル)カマエイドス】をサモンします」

 

 

大鎌が空から落ち、それを追い掛けるように煤けたローブに身を包んだ黒髪の青年──【カマエイドス】がつまらなさそうに現れます。

それと同時に白い羽根がゆっくりと降ってきます。

 

 

「さらにスペルカード【天翼再生(コーリング・エンジェル)】を発動します。【カマエイドス】のコストの4を半分にした数、次に出す天使モンスターのコストを下げます」

 

「お前の残りのコストは4……そこに軽減を入れればコスト:6のモンスターが出てくる……つまりは奴のお出ましか」

 

「ええ、察しが良いですね……天の威光示すは神の代理人……さあ頭を垂れて許しを乞いなさい!!来なさい、【神聖なる神使(ロードエンジェリル)ルシフェリオン】!!」

 

 

真打ち登場と言わんばかりに光と共に降り立つ【ルシフェリオン】ですが、今の姿の彼(?)に今は用はありません。

さっさと、本気の姿になってもらいましょう。

 

 

「スペルカード【黎明暁月】を発動します」

 

『もうこの姿の出番は終わりか契約者!!!??』

 

 

はい、残念ながら。

 

 

【黎明暁月】

黒 コスト:4 スペル

 

自分の場のモンスター二体まで破棄して発動する。

デッキからカードをこの効果で破棄したモンスターの数だけドローし、手札を一枚デッキの一番下に送る。

 

 

光の粒子となって消える【カマエイドス】と【ルシフェリオン】を見送り、カードを二枚引きますが……あまり引きは良くは無いです。まあでも盤面的にはもう詰ませたので関係ないでしょう。

 

 

「【カマエイドス】と【ルシフェリオン】を破棄してカードを二枚引き、手札を一枚デッキの下へ……さて【ルシフェリオン】が破棄されたので後はもうお察しですね」

 

 

降り注ぐのは極彩色に染まった光の柱……それと同時に地面が割れて、その巨大な亀裂から黒く染まったみすぼらしい翼をはためかせてソレが飛翔します。

 

 

「【ルシフェリオン】が破棄された時にライフを半分支払う事で【神聖なる僭神(エンジェリル・デミゴッド)ルシフェル】を場に出す事が出来ます……さらに、この時に私の場又は墓地に赤、青、緑、黄、白、黒のカードが存在するならばこのカードもまた場に出す事が出来ます」

 

 

並び立つのは全く同じ容姿の二体の天使……違うのは片方が色鮮やかな六対の翼を、もう片方が焼け焦げたようなみすぼらしい黒い翼を持つ事。

 

 

「【偽りの神聖なる邪聖天魔(エンジェリル・デモリエル)ルシファー】……!!」

 

「そう、貴方が偽物と断じた子です。ふふふ、現状ではこの子の方が六英雄の名に相応しい強さを誇ると思いますけどね」

 

 

【ルシフェル】の登場時効果による封印はコスト:7以下のモンスターが居ないので不発。

ですが、C(コントラクト)カウンターは一気に二個増えました。

 

 

ユギト ライフ:5→2

 

 

「【ルシファー】の効果発動です。私のライフを半分支払い、コスト:8のモンスターを私の手札または墓地から場に出します。墓地から【邪聖天の強欲(デモリエル・トレランス)マモン】を再度場へ」

 

『我が同胞よ、ワンスモアだ!!』

 

 

【ルシファー】が何も無い空間をねじ曲げるように腕を回すと、そこから【マモン】が初めから存在していたかのように現れます。

誘うように【ルシファー】の体をその白い狐の尾で触れて、しな垂れ掛かるように擦り寄りますが【ルシファー】は完全に相手にしていないようです。暫くすると、頬を膨らませてぷりぷりと怒りながら持ち場に戻っていきました。

……連続で捧げられるライフによる痛みに少し体が揺れますが問題はありません。

 

 

ユギト ライフ:2→1

 

 

 

「っ……【マモン】の登場時に捧げられる白のカードは【ルシファー】を選択しますが、私のライフが4以下なので【ルシファー】は場を離れません」

 

 

モンスターの数を上回り、向こうの手札は0。黒曜騎士(オブシディアンナイト)の防御札となる【ガラハドⅩⅢ(サーティーン)】も墓地に落ちていません……おしまいです。

 

 

「私はまだっ、届かないのか……っ!」

 

「アタックフェイズです。【マモン】【ルシフェル】【ルシファー】で攻撃です……()()()()()()()して下さい」

 

 

鏡写しのように争う本物の【マモン】と黒曜石で出来た【マモン】の争いは相打ちで終わりました。

【ルシフェル】の放った極彩色の光の槍を【モルガーン】が黒曜石で出来た壁で防ぎます……全身全霊をかけたのでしょう。完全に防ぎ切る事が出来ましたが、壁が崩れ去ると同時に【モルガーン】もまたそのまま崩れ落ちます。

そして、完全にフリーの【ルシファー】がその拳をジュンくんにぶつけました。

 

 

 

■■ ライフ:1→-3

 

 

 

ーーーーー

 

 

予め言っておいたお陰で、ジュンくんは深手を負ってはいますが死んではいません。

駆け寄ろうとするマイバラ嬢にジュンくんが手をかざすとその姿が消え去ります。

 

 

「この場所の支配者は貴方ですから、他者を移動させるなんてわけないですよね……トドメを刺される姿を見られたくなかった感じですか?」

 

「…………何故、優義徒(ユギト)なんだ。なんで……優義徒(ユギト)に取り憑いたんだお前は」

 

 

質問に質問で返すのを普段ならば注意したことでしょう。しかし、彼は意識を保てているのが不思議な程の傷を負っていますからね……()()ジュンくんと話すのもこれで最後でしょうから、許しましょう。

 

 

「私があの子に取り憑いた理由、ですか…………()()()()()()()()()()()ですよ」

 

「なに……?」

 

 

予想外だったのでしょう。焦点の合わない視線が私に向けられます。

土埃や血にまみれ、ボロボロの姿の彼は憐れみを誘う……手を下したのは私ですが、それでも良心は痛みます。それが彼が契約を破った事による自業自得だとしても。

 

 

「モンスターとしての私は優義徒(ユギト)の事を遊び相手として気に入っています。まあ、モンスターの自覚が無かった時は色々やっちゃいましたけど……それはノーカウントという事で」

 

 

二の句も告げず、訳が分からないという事を視線で伝えるジュンくんの近くまで歩み寄り、倒れ伏している彼の頭部に手を乗せます。

そして、ニッコリと昔のように笑いかけました。

 

 

「この身体は返せませんが…………優義徒(ユギト)の事、頼みますねジュンくん」

 

 

彼から"サモンエナジー"を搾り取り、それによる虚脱によってジュンくんは今度こそ意識を失いました。

……治療はしたい所ですが、"サモンエナジー"をこれ以上無駄遣いする訳にはいかないのでこのまま彼を放置する事しか出来ません。

遠くを見れば、お父さんとタクミくんによる戦いも終わったようでジャングルは消し炭になっていますが【ケルビム】の姿は見えません……アレで終わったと楽観は出来ないので、早くお父さんを見つけて拘束しなければいけませんね。

もう少しです、もう少しで終わります。

()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 




コソコソと裏話
初期案だと男装の麗人だったジュンくん、子供時代は女の子に間違われるくらい可愛らしかったので子供の頃の優義徒(ユギト)はジュンくんを女の子と思っていました。
ジュンくんの方も子供の頃は優義徒(ユギト)の事を女の子と思っていたというなんか面白いすれ違い。
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