TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
第二部も構想は出来ていますので、長い目で見守って下さい
『私が……至高の存在である私が』
言葉を言い終わる前に、顕現する私のもう一つの姿──【
重々しい音と、液体の詰まった何かが潰れたような……独特の音に目を伏せます。
■■■ EXTRA WIN
──"ギアスファイト"が終わったと同時に、モンスター達が姿を消していきます。
【
「…………これで何故か恨まれるのは私なんですよね。解せぬ」
そう呟き、借りていた仮面を脱いでレイカ嬢へと返そうと振り返ろうとした瞬間……ジュンくんからの四連戦、やすやすと勝てた戦いは一度もなく、なんなら情けで引き分けにしてもらった物もあります。酷く疲れた体は、意思に反して勝手に力が抜けて倒れそうになります。
「
ポスンとどこか情けない音が鳴ります。
振り返ろうとした勢いのままに倒れかけた体を、レイカ嬢はやすやすと支えてくれました。
「ちょっと……疲れちゃいましたよ。ありがとうございます、レイカ嬢」
「そりゃ疲れもするでしょ……なんか泣いちゃってましたし」
「泣いてません」
視界が滲んだ事はありますが、泣いてはいません……泣いたと認めそうにはなりましたけど、頬が濡れた感覚は無いのでセーフです。
「いやいや……完全にべそかいてたっすよ?」
「泣いてないったら、泣いてませんー」
「仲良いねぇ……うんうん、若者の青春って奴だねぇー」
のんびりとした声に思わずレイカ嬢と共に声の方向に振り返れば、アポロさんがニヤニヤと意味深に笑っています。
「青春って……そういう歳ではありませんよ私は」
「精神年齢的には青春出来る年齢だと思うよ?」
「
「今気づいたのかー……お兄さん、影薄いのかなぁ」
露骨にガクリと肩を落としているアポロさんですが、十分にキャラが濃いので影の薄さとは無縁だと私は個人的に思います。
……全てのモンスターが消え、
蜘蛛の巣の形のように石畳に亀裂が走り、凹んだその中心には
逃げられましたね……しかし、"ギアスファイト"で打倒したのでその力はかなり削りました。暫くは……少なくとも数年は暗躍する事はできないでしょう。
「……後始末をしないといけませんね」
「死ぬのは無しっすからね」
ジト目でそう釘を刺すレイカ嬢に苦笑で返します。
「…………悪役としては、締まりませんよねこれは」
ーーーーー
俺が目を覚ました時、石造りの牢獄は完全に姿を消していた。
夕焼けの真っ赤な空が真っ先に目に入り……次に目に入ったのはその空を眺めているアイツの背中だった。
「おはようございます、ヒャッカくん」
「
「起きてすぐにそれですか……二人はアポロ店長が先に連れていきましたよ。ここには私とキミの二人だけしかいませんよ」
そう言って、いつもみたいに笑っているアイツがこちらに手を差し出してくる。
「起きれますか?」
「……ありがと」
少し悩みながらも、その手を取って立ち上がる……アイツは自分を化け物だと言ったし、それっぽい振る舞いもしてきたけどもこういう所が妙に優しい。
「なぁ……お前、本当は誰なんだ?」
「それは、私の正体を知りたいということですか?」
微妙に食い違っている気はするけれども……アイツについて知る手掛かりになると思って俺は頷く。
「私は誘黒神、黒の勢力……つまりは黒の色を持つカード達で一番強い存在です」
「あの黒くてデカイのがお前って事か?」
「そうですね、アレは私の集合体です……ヒャッカくんは虫は平気ですか?」
「まあ、人並みに?」
アイツの質問の意図が分からなかったけど、直ぐに理解する事が出来た。
自分の指を噛み、そしてその傷口を俺に見せつけてくる。溢れ出るのは真っ赤な血じゃなくて、黒い液体……ではなく、極小サイズの虫だ。
あまりにも小さくて、正確な形は分からないし数も分からない……ただ、液体と見間違える程の数の虫がそこにいるというだけで、背筋がぞわぞわとし始める。
「これが私です。無数の虫の群れの集合体……それが、誘黒神の正体です。触れない方が良いですよ、何でも構わずに食べ尽くしちゃいますから」
「うわっ!?」
そーっと触れようとした瞬間に、そんな脅し文句が聞こえて思わず後ずさる俺。その様子が愉快なのかアイツはくすくすと笑う。
「危険な物に対する正常な反応です。ヒャッカくんは長生きするタイプですね」
「そういう危ないのは先に言えよ!!?」
「あはは……まあ、まだ触れてないからセーフですよセーフ」
時間が巻き戻るみたいに流れ落ちかけた虫たちは傷口から体内に戻り、傷口も消える。
……こうして見せられると、人間じゃないっていう自称が真実味を帯びてくる。
「……じゃあ、これからお前の事ナイアルラトって呼べば良いのか?」
「その名前は群れ全体の呼び名なのですよね……私自身に、名前はありません」
そう言って、真っ赤な目を細めて俺を真っ直ぐに見つめてくる。
「そうだ、実質的にはキミが勝者ですし……キミが私に名前を付けて下さいよヒャッカくん」
「俺が……?」
「はい」
静かに頷くアイツと目が合う。
……何度見ても、アイツの目を見ると寒気が走って気分が落ち着かなくなる。多分……俺はアイツが怖いのだと思う。
それでも……期待しているみたいなアイツの目から、視線は逸らさない。
俺はアイツの友達だ、友達だから……アイツの名前はアレに決まっている。
「……お前の名前は」
名前を言う直前、空から爆音と暴風が襲う。
思わず、空を見上げれば……一機のヘリコプターが俺たちの頭上でホバリングをしていた。
「…………時間切れ、ですね」
「対象を確認!!」
ロープが垂れてきたかと思えば、一斉に降りてくるのは……黒づくめの物々しい装備を纏った大人たち。
あっという間に数人がアイツを取り囲み、俺もまたアイツから引き剥がされた。
「もう大丈夫だ!おじさんたちが助けに来たぞ!!」
「離してくれよ!!アイツは、
力いっぱい暴れても、大人の男には勝てない。
どんどんとユギトから距離を離されていく……手を伸ばしても、もう届かない。
最後に見えたアイツの口の動き……それは
ありがとう
ーーーーー
IGPの……恐らくは救黄神の加護を受けている方たちなのでしょう。普通の人間よりも、私という存在への耐性が高いように見えます。
ヒャッカくんとの会話は、私なりのけじめです。落ち着いて、彼と話せる機会は当分……もしかしたら、生涯無いかもしれないので。
「誘黒神、抵抗は無駄だ。我々には救黄神様の加護がある……今の弱ったお前ならば我々だけでも打ち倒すことは出来る」
「見れば分かりますよ……それに抵抗はしません。死にたくないので」
ニコリと笑ってそう言いますが……向こうの反応は芳しくありません。
両の手を上げて降参のポーズを取りますが、それでも警戒され続けます。
どうしたものかとため息を吐きますと、ヘリコプターからまた何かが降り…いえ、
『
「おや、直接会うのは……いつ以来ですかね、救黄神」
『1004年245日8時間41分54秒以来です、誘黒神』
「…………そこまで正確に覚えているのは流石としか言えませんね」
落ちてきた物は一見、ただのブリキで出来たロボットのおもちゃにも見えます。しかし、そこから響く声は……男性とも女性とも言えない、どちらとも取れるものです。何よりも、隠しきれない神としての恐怖が目の前の存在の正体を如実に表しています。
「それで……わざわざ貴方が出てくる程でもありませんよ。私は、抵抗しませんし」
『……変わりましたね、誘黒神。その器が大層気に入ったようで』
「長く生きていれば変化が起こる事もありますよ。貴方は変わらないみたいですけどね」
『不変こそが救済に必要な物ですから……ですが、今の方が
IGPの方が救黄神に手を差し出し、その手をよちよちと登っていく救黄神。
肩に座り、私と目を合わせながら救黄神がようやく本題に入ります。
『誘黒神、そなたの行いは人の世を調停する者として見過ごせません……故に、
「…………勝手に人間世界に来て、調停する者を自称するのはいかがなものかと思いますよ、救黄神」
『調停し、罪の有る無しに関わらずに救う。それが
それを言われては、私としても強くは言えません……空を飛ぶ生物に空を飛ぶなと言うようなものですから。
「では、貴方が私に下す裁決を聞きましょうか……死ぬ以外ならば、今の私は受け入れますよ」
『今のそなたを殺傷し、また前のそなたに戻られる方がこちらとしても不都合です。故に、監獄への禁錮刑を
「……閉じ込めるだけで良いのですか?もっと痛めつけるとかそういう物を想像していたのですが」
『
救黄神がそう締めくくると、黄色い光の帯が何本も現れて……私の体に纒わりついていきます。全身はおろか、頭部も徐々に覆い隠していく強い光は酷い倦怠感をもたらします。
「……救黄神、最後にいいですか?」
『罰への異議は認めませんよ』
「違いますよ……私の名前、調書とかに書く時はちゃんと
ニコリと笑いながら、言い終えた瞬間に……黄色の光が視界を満たし、私は何も分からなくなりました。