TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
「──以上が、今回の事件の概要です教皇猊下」
息が詰まりそうな程に清浄なる空気……
「つまりはー……誘黒神の制御に失敗して、色々起きちゃってー
光の加減で淡く七色に染まる純白の髪を無造作に垂らし、豪奢な飾りにまみれたローブに皺が入るのを気にしていないようで……真っ直ぐに椅子には座らずに寝転んでいるような形になっている。
……この無作法極まる少女こそが
つまらさそうにこちらを見下ろし、古めかしい表紙の妙に薄い本を大事そうに抱えている彼女はその金色の瞳をニンマリと細める。
「あの
「…………」
総主教ではなく大司教……彼女の中では私の降格が決定づけられているのだろう。俯き、黙り込んだ私へと上から言葉が降り注ぐ。
「息子さん、調子どうー?"サモンエナジー"で体が作られた存在なんて珍しいからねーこっちとしても、興味津々なんだよー?」
「
「ふーん……ろくに教育を受けてないのに、地頭が良いんだねー
「それはどういう」
言葉を最後まで紡ぐ前に、扉が荒々しく開けられる。
滑らかな金糸の髪、彫りの深い顔立ち、大理石の如く白く鍛えられた長身……その身を包む衣服は恐らくはオートクチュールの品が良い黒のフルドレス、右腕の袖が歩く度に舞い続けているのは中身が無いからだ。
『おい、ソレが来ているならば何故余を呼ばぬ』
「あ、イブピおかえりー早かったねー」
『他の奴らはつまらん、早くそれと
教皇猊下にそのような言葉を掛ければ、本来ならば即座に首を落とされても仕方がない……だが、彼はそれが許される存在だ。
「統白神……様」
『早く立て、"
傍若無人の化身──統白神がこちらを見下ろす。
目の前の存在への畏怖……無条件でその言葉に従いそうな体と心を、魂が諌めていく。
「一つ……お聞かせください。
『ああ、それが白の……
「巫山戯るな!!!!!」
あの子は私の子だ。断じて、神の器となるべく産まれた子ではない。
怒りが溢れる。視界の端が赤く染まり、理性の抑制を振り切っていく。叩きつけるように"ギアスディスク"にカードを置けば……顕現するのは神に最も近いと称された機械天使の長──【メタトロン】。燃え盛る炎の翼は、私の感情と同期しているかのように普段よりも、赤く激しい熱を帯びている。
「あーあーキレてるよーイブピぶっちゃけ過ぎだよー」
『何故だ?聞かれたから答えてやっただけだが?』
「うーん。人の心が無い、流石のGODメンタル」
教皇が持っていた本を統白神に向かって投げつけると……失われていた右腕が戻り、逆に本がその体に溶け込むように消えていく。そして、統白神が一枚のカードを懐から取り出し、そこから白い光が溢れ出す。
そして
『まあまあ楽しめた、やはりお前は感情が振り切れていた方が面白い』
何かが燃えた臭い、壁には無数の亀裂が走り、床は砕けて無惨な有様だ。その破壊の痕跡の中心で私は倒れ伏し、統白神はそんな私の頭を踏みつけて満足げに笑っている。
「おの、れ……」
「イブピー流石に
『ふん……この程度で潰れるか、人間は』
ミシリと頭蓋が鳴り、痛みに呻き声が漏れる。
「でー、
『余はアレを気に入っている』
「分かってる分かってる、捨てはしないからそうやって威嚇しないでねー」
人を散々甚振っておいて、呑気な会話を繰り広げる教皇と統白神に殺意が湧く。だが、限界をとうに超えている体は指をピクリとも動かせない。
「まあ、誘黒神を結果的に鎮静させられたしー……破門にはしないであげるよ、
あっという間に元の地位に戻される私だが……今はそんな事はどうでもいい。
むしろ、こちらから辞めて
「自分から
ーーーーー
南米の熱帯雨林……動かずとも汗が吹き出るその不快な湿気と熱を超えた先にあるその遺跡の奥底でオレは再度、その
『二回も来るとは、さては自殺志願者ですニャー?』
「テメェをクップクさせルまではオレは何ドだってキてやルサ!!」
猫の頭に黒曜石の右足、そして辺りに漂うは呪いを帯びた黒曜の煙……赤の瑞神である【
『瑞神狩りの噂は耳にしたけど、口程にも無かったですニャ。その程度の実力でニャー達を狩ろうなんて……他の瑞神達は不甲斐ないとしか言えませんニャー』
「ソのフガイないレン中にテメェも入ルんだよなぁ」
『……図に乗るなよ、小僧』
猫の頭が蛇の頭に代わり、声質もまた切り替わる……【
「ノってねェヨ。一回目はヨウ子ミだ、瑞神のセイシツをミキワめねェとシぬからナ……こっからが本バンだ」
熱波に対抗するように、水気がオレの周りに満ちる……傍らには姿は見えないけれども、無数の気配が共にある。
「テメェが四柱目だ!オレの名は
そして、遺跡を大海で呑み込んでやった。
ーーーーー
それから春……卒業式を終えて、帰宅した俺は妙な寂しさを感じていた。
あれからアイツ……ユギトとは一度も会えていない。
「はぁ……」
「どうしたの
母ちゃんがいつものようにニコニコ笑いながら、話しかけてくる。
「別に、なんでもねぇし」
「あ、お母さん分かっちゃった!
「ばっ!!?ち、ちげぇし!!!」
「うふふ……もう恥ずかしがっちゃって、可愛いわねぇ」
ぽんぽんと頭を撫でてくる母ちゃんの手が照れくさくて、思わず振り払ってしまう。
そんなつもりじゃなかったけども……今更、訂正するのもバツが悪い。
「あらあら、反抗期かしら?お母さん、
「えっと、あの……ごめん」
「うふふ……きちんと謝れて偉いわね
気にしていないような母ちゃんの態度は……誰かにすごく似ている気がする。真っ白な髪を一つ結びにし、澄んだ緑色の目は垂れ目ですごく優しそうで……実際、母ちゃんはすごく優しい。
「
ジッとこちらを見つめる母ちゃんは、何があったのか言ってほしいみたいだけれども……何故だが、喋ってはいけない気がした。
「……大会、中止になったのが悔しいんだよ」
「そういえばそうだったわねぇ……そんなに長く引きずるなんて、ドレッドギアスがそんなに面白いの?」
「そりゃあ、もちろん!!」
「そんなに辛そうな顔しているのに、辞めたいと思ったことはないの?」
母ちゃんの言葉に、俺はなんの躊躇いも無く首を縦に振る。
「辛い事だって……色々あったけども、それ以上に友達が出来たり、成長出来たり……良い事もたくさんあったんだ!だから、俺はドレッドギアスが好きなんだ!」
「そう……ふふふ、お母さんも
ニコリと笑う母ちゃんの顔……その笑い方が誰に似ているかようやく分かった