TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
久しぶりに自由となった手を存分に動かし、背伸びをしたと同時に首元の異物感に眉をひそめてしまいます。
私の首にぐるりとまとわりつく、その機械仕掛けの首輪に触れれば、カチリと嫌な音が響きます。
「誘黒神、"ハラキリダイナマイト"を触り過ぎると爆発するでありますよ」
「ハラキリなのに、首を爆破させるのはおかしくないです?」
「ハラキリした後に首を落とすからセーフなのであります」
ぐうの音も出ませんね……ソコロワ嬢、見ない間に随分と強かになりました。
拘束着を脱ぐ事を許された私は、かつて纏っていた大司教としての服ではなく……誰かが、差し入れとして持ってきた私自身の私服を着ています。
野暮ったいだるだるの緑のパーカーと緩めの茶色のスウェットパンツ、オマケに認識阻害効果のあるメガネもセットでした。完璧に、"ミラージュ"に通っていた頃の私のコーデです。
「ソコロワ嬢、出来れば……誘黒神ではなく、ユギトと呼んで欲しいです。これが
「……考えておくであります」
ソコロワ嬢が先導し、私がその後をついて行く。これが外ならば、お巡りさんのお世話になっていたかもしれませんが……残念ながら、彼女自身がそのお巡りさんです。
刑務所内を迷いなく歩くソコロワ嬢について行き、とある部屋の前に着きました。
「ここが保管庫であります。実の所、お前自身である誘黒神のカードを処分しようと試みたのでありますが、尽く失敗に終わったであります」
「人が知らない間に酷い事してますね……!?」
「万が一、邪な考えを持った人物の手に渡ったら大変なことになるであります」
「……一応、使い手は選びますよ」
私自身──【
一つは黒の瑞神である四柱を倒して力を認めさせ、その上で私自身を
もう一つは……私が個人的に気に入る事。
前者はまだいませんし、後者については……該当者は今は
「お前のデッキはここにあるであります」
重く分厚い金属製の扉を私が押し開き、室内へと通されます。
保管庫内は換気口も無く、きちんと密閉された空間なのでしょう……微妙にカビ臭いですね。
ズラリと並べられた金属ラックから、ソコロワ嬢が脚立に乗りながら降ろしてくるのは金属製の箱です。
表面にIGPのエンブレムが刻まれたその箱を受け取り、ロックを解除した瞬間に光が放たれます。
次いで、軽い衝撃。何かにぶつかられ……そして、抱きしめられる感覚があります。
『うわーん!暗かったー!狭かったー!!迎えに来るなら早く来てよユーさん!!』
桃色の髪の後頭部が見え、聞こえてくるのは愛らしい少女の声……となると、この抱き締められている相手は
「ザドキエル……ですか?」
『そーだよ!みんなのアイドルのザドっちゃんだよ!!』
そう言って、彼女が顔を上げます。素顔を晒し、涙目で頬を膨らませるザドキエル……服装的には
疑問を抱くと同時に、再度箱が光ります。
ザドキエルのように誰かが飛びついて来るかと思い、身構えましたが……それは杞憂でした。箱のすぐ側……ザドキエルの背後に彼が実体化します。
フォーマルな黒のジャケットに似つかわしくない皮の手甲、道化師を模した黒の仮面で顔の上半分を隠しているその少年の姿を私は……カードイラストで既に目にしています。
『おいコラザドキエル。人様に迷惑掛けてんじゃねぇ……いきなりで困ってんだろうが』
『迷惑掛けてないもん!だって、ユーさんが早く迎えに来てくれないのが悪いんだもん!!』
『それでもだ。保護者として俺がお前を連れ帰るように言われる羽目になったんだぞ。ほら、早く帰んぞ』
『やー!!もうちょっと、こっちを堪能してたいの!ベリアルのいじわる!!』
『我が儘言うんじゃねぇ、殴るぞ』
「まあまあ……暴力に訴えるのはいけませんよ、ベリアル」
流石に目の前で暴力沙汰になるのは見たくありません。
宥めるように、苦笑いを向けますが……ジロリと擬音が付きそうな目つきでこちらを睨んできます。
『アンタがそうやってザドキエルを甘やかすから、コイツが付け上がるんだろうが……そもそも、アンタだって暴力で今まで色々解決してただろうが。この間のガキ共との戦いとか最初から訳を話しとけよ』
「それは……はい、おっしゃる通りです」
そこからは……もう少し考えて行動しろ、味の濃い物ばかり食べるな、髪はちゃんと乾かせなどと、こんこんと詰められていました。
思わず正座で話を聞いている横では……
『あ!あの時のちびちゃん!ちょっと大きくなったみたいだね、私ザドキエル!ザドっちゃんって呼んでね!』
「ちびちゃんって小官の事でありますか!?そもそも、何故実体化しているであります!!?」
『可愛いー!ほっぺもちもちだー!』
「人の話を聞くであります!!」
ザドキエルがソコロワ嬢を軽々と持ち上げ……ようとし断念して膝をついて、その頬に頬擦りしていますね……
それからしばらくして、二人はカードに戻っていきましたが……私たちはそれなりに精神的に疲れました。
「お前の相手をする時くらい疲れたであります……」
「私、あんなに暴れた記憶無いですよ……?」
「全国大会での所業を忘れたでありますか?」
「いやあの本当にその件は、各方面にご迷惑を……」
それを出されると、私は平謝りするしかありません……頭を下げている私からはまたの冷たい視線を向けられているのでしょうね。
「…………デッキも回収したでありますから、これからの事について話す為に移動するであります。ここは
「静かだと思いますけど……」
私たち二人しかいません。話すのを止めてしまえば、後は衣擦れや呼吸の音しか聞こえてきません。ソコロワ嬢は何を言っているのでしょうか?
首を傾げる私に、ソコロワ嬢は微妙な表情を向けます。
「……やはり、そうでありますか」
「ソコロワ嬢?」
「何でもないであります。兎に角、移動するでありますよ」
私の手を掴み、足早に部屋を出ようとするソコロワ嬢に促されるままに私も部屋を出ます……何となく振り返りましたが、やはり部屋には
金属製の扉が閉まる、重々しい音がやけに耳の中で響きました。
ーーーーー
扉が閉まったと同時に、張り詰めていた精神が緩まって思わず深く息を吐いてしまう。
そんな私の様子を不思議そうに見てくる
あの部屋はある意味ではカードの墓場……犯罪者達に使われていたカードが押収されたまた放置されている。
カードのモンスター達にとっては、使い手が
故に、無理やりに自分のサモナーと離されている現状は……彼らにとっては苛立たしいものだ。
目を閉じれば、今でも思い出される……
『■■はどこだ』『■ちゃんに会わせて』『アイツは俺がいないとダメだ』『会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい』『許さない』『あ■■ああ■あ■■■■■■!!!!!』『險ア縺輔↑縺?◇陌夂┌逾』
様々なモンスター達の声が無限に響き渡る……自分に向けられているの物では無いとは分かっていても、気分が良いものではない。
……ある程度の力量があるサモナーは、モンスターの声が聞こえる事がある。IGPに所属しているサモナーは皆、その一定のラインを超えているので
金属の扉──防火扉を超えては声は聞こえない。しかし、それでも気分的には近寄りたくはない。
……そんなモンスター達の怨嗟の声を、誘黒神は意に返していない。聞こえていないというのが事実であれば……
「(誘黒神は
──それは、突然の襲来であった。
空中に突如として現れる浮遊要塞、そこから無数の光の槍が各色の領域に落とされ続ける。
槍に触れた物は封印され、その意思を奪われる。
誰かが言った、これは神の裁きだと……ならば、あの要塞こそが第七の神の領域なのだろうか
──フレーバーテキスト【虚無神殿ーゼロギアスー】より抜粋