TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
──白い外壁は変わらない美しさを保ち、植え込みもきちんと手入れされていてゴミ一つ、周りには落ちていません。
私が起こした事件以降、
漏れ聞こえる声は、昔と変わらない様子で……少し、安心しました。
「みな、元気そうですね」
「お前が本性を表してからも、ここの支部の人たちは……お前の事を信じていたであります。『何かの間違いだ』『何かに取り憑かれたんだ』」
「まあ、最初から取り憑いていましたけどね」
「お前は話の腰を折るのが、もしかして得意でありますか?」
身長差も有り、腰の辺りを何度もペシペシ叩かれてしまいます。
まあまあと、彼女を宥めていると……教会の扉が開きます。
「
「大丈夫だよ、お父さん。今日は調子が良いからね」
ヒュッと喉が鳴ります。
思わず、影に隠れようとして……首元が締まる感覚にその動きを止めてしまう。
扉から勢いよく出てくるのは、桃色の中に所々白が混じった頭髪の少年──
……ここに来たのは、
「あれ……?知らない人たちだ、お祈りに来た人かな?こんにちはー!」
ああ、見つかってしまった。
ぽてぽてとこちらに歩いてくる姿に後退りをしそうになりますが……ソコロワ嬢が服の端を掴んできます。
「無事かどうかをその目で確認するのが、今回の件に協力する対価であります」
「いやでも、無事なのは確認出来ましたし……」
「こうなる可能性があったのは分かっていた筈であります。腹をくくれ、誘黒神」
「…………」
認識阻害効果のあるメガネを掛けている今、私の事を
だから……後は初対面を装えば、私は彼と話したとしても……私が誘黒神、【ナイアルラト】であるとバレない筈。
「ここは
「いえ……通りがかっただけなのです」
「
あ…………そうですよね、お父さんの前でこの服装になった事ありましたよね……
目を見開き、お父さんが懐に手を入れたのが見えます。何らかのモンスター……恐らくは【メタトロン】を召喚しようとしているのでしょうね。
流石にそれはマズイので、敵意が無いと示す為に逃げることにしましょう。
「いえ、いえ!!本当に通りかがりです!お邪魔でしたね!帰ります!!!」
「は?ちょっ、待つであります!!?」
くるりと、回れ右をして走る私。
出会ってしまった時の対応とか色々考えていたのですが……なんかもう、色々吹き飛びました。人間、パニックになるとああなるのですね……まあ、私は人間ではありませんが。
走って、走って、走って……何も考えずに走った先にはカードショップのミラージュがあります。
……通い慣れた道だからこそ、無意識に移動してしまったのでしょうね。
軽く息を整え、外から中の様子を伺います。
何となく、彼らにはまだ会いづらい。
「やっと追いついたであります……突然走るなであります!!そのハラキリダイナマイトは一定時間、小官と離れていると起爆するでありますよ!!」
「それは聞いていませんね……!?」
「言ってないでありますからな」
しれっと、命が危なかった事に背筋が寒くなります……多分、首が千切れても死なない気はしますが。
そのまま、ミラージュの店内へと入れば……どこか軽薄な、しかし馴染み深い声が聞こえてきます。
「HAHAHA、やあユギトくん!お勤めご苦労さまでした?」
「どうも、アポロさん……まだお勤めの最中ですよ」
違和感しかない、ゴツイ首輪を見せれば……肩を竦めて、二歩程アポロさんが下がります。失礼な、まだ爆発しませんよ。
「まだとか言ってるのはダメだと思うなぁ……」
「サラッと、読心術を使わないで下さい……新技、覚えたのですか?」
「いいや?昔から出来た得意技だよ!
…………嫌な予感がしますが、今は置いておきます。恐らくは、私ではどうしようも出来ない案件です。
そのまま、レジカウンターにいるアポロさんの元へと向かい……デッキケースから、デッキを取り出します。
「お借りしていたカード、タイミングが合わなかったので中々返せませんでしたが……お返ししますね」
「うーん律儀。外付けの良心回路のお陰で大分良い子ちゃんになったねぇ……」
デッキを受け取ったアポロさんが慣れた手つきでカードを並べていきます。
そうして、私の手元に残ったのは黒の汎用札と
……どう足掻いても、"ギアスファイト"をするにはデッキ枚数が足りませんね。
「アポロさん……」
「HAHAHA……代金がいるよ?」
アポロさんが右手の親指と中指で丸を描き……所謂、お金のジェスチャーを見せてきます。
……様々な物を没収されている今の私には、現金はもちろん持ち合わせていません。チラリと、助け舟を求めてソコロワ嬢の方に視線を向けますが……首を横に振られます。
「というか、今のキミならカードの生成出来るんじゃないの?その【
「……その手がありましたか」
指を鳴らし、私の影を
影から舞い上がる無数の黒い塵……
……いずれ辿る未来、そこで繋がる恐怖の縁。それを前借りにして……この場に呼び起こす。
脳裏に過ぎったのは二つのイメージ……空を駆ける詐欺師、未来を運ぶ白亜の列車。
それらを、一気に叩きつけてやれば……私の手に何枚かのカードが乗ります。
テキストとその名称を確認し……不具合が無さそうなので、安堵の息が漏れます。
「おー、上手く出来たみたいだね」
「ええ……疲れましたけどね」
「……どんなカードが作られたのか、ちょっと気になるであります」
興味津々の様子のソコロワ嬢にカードを差し出し、私自身は近くの椅子に腰掛けます……カードの生成は、ある程度の力があるモンスターならば行える行為です。
大抵は自分自身を作る程度ではありますが……一応、私も神を名乗らせていただいていますから、自分自身では無いカードを複数枚作る事が出来ます。
……まあ、それなりに負担はあります。
それでも、気絶したりする程度ではありません……一時間くらい走らされたくらいの疲労度ですね。
「……使いづらくないでありますか、このカード」
「ん?ああ……この子は元になったカードがその、大分ピーキーな子なので」
ソコロワ嬢が返してくれたカード達をデッキに戻し、再度アポロさんの方に向き直ります。
「さてもう一つ、まあこちらが本命なのですが……アポロさん、一つ予言をしてくれませんか?」
「ん?何の予言だい?」
「……
私がその名前を出すと、アポロさんが露骨に顔を顰めます。
「ええ……あの人探しているのかい?やめときなよ……ちょっと、私あの人に顔合わせづらいから予言したくないんだけど」
「マリリン・アヴァロニアを知ってるでありますか!!?」
「まあ、うん……あの人たちに昔、間接的に大迷惑掛けたからね私……大分気まずいね」
「気まずいって感情有ったのですね、貴方にも……」
「ユギトくん、私の事なんだと思ってるの?」
「昔は真面目、今は遊びにズブズブで悪い男が忘れられない、元神な現カードショップの店長さん」
「わー、こう言われると属性多いねー私」
「今なんかサラッととんでもないワード出てきたでありますが!?元神……!!?」
ソコロワ嬢は流石に聞き逃しませんでしたね……
「ユギトくん、キミまさか……」
「あはは……もちろんわざとですよ」
相手の規模が分かりませんからね……使えそうな戦力は、無理やりにでも引き込みます。悪役ですからね、これでも。
「もー……『予言しよう、キミのシナリオはこれから破綻するよ。■■■■■■■■』」
アポロさんがそう呟くと、どこからか紙が破けるような音が響きます……はて?
「じゃあ、仕方ないから改めて自己紹介しよう……私は【
ニコリと笑うアポロさんの背後に真赤な燃える星の姿が幻視されたのは、気のせいでは無いでしょう…………ちょっと、怒ってますよね、彼。
──やりやがった!やりやがったな、あのクソ虫!!俺が書いたシナリオを台無しにしやがった!!
こうなったら、リアルタイムで調整を……おい待て、予言するな!!原稿用紙が燃える!!物理的な意味で燃える!!
ちくしょうがあああああああああ!!!!ああ、もう知らん!!
……………本当にもう知らん、俺は寝る
ーーーーー
美幼女捜査官
悪役元大主教
カードショップ店長
???
以上が今回のPTの予定です