今ひとたび、英雄たらんことを   作:blue man

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夢の終わり

 褪せ人が石畳を歩く。薄暗い、廃墟立ち並ぶそこを青白い炎が照らしていた。

 崩れた廃墟を覗き込み、敵が居ないことを確認する。脇道があれば足を踏み入れ、丁寧に木箱や棚を物色する。

 いつも通りだ、何もおかしくはない。

 

「浮かない顔だな」

 

 木箱を漁り、大した収穫が無いことに小さく息を吐くと、不意にブライヴが声を掛けてくる。分かりづらいが、どうやら苦笑いを浮かべているようだった。

 褪せ人が立ち上がり、ブライヴへと向き直る。

 

「そう見えるか」

 

「ああ、珍しく心ここに在らずというか、気が抜けているように見える。何か気掛かりが?」

 

「……」

 

 ブライヴの言葉に褪せ人がしばし考え込む。

 胸の奥に、どうにも拭えないざらつきがあった。カーリアの城館に来てから、何かやらなければならないことを忘れている。

 褪せ人が顔を上げると、ブライヴに問い掛ける。

 

「私は何故、ここにいる」

 

「何? 話を聞いていなかったのか? ここ隠れ都に、秘宝を探しに来たのだろう」

 

 褪せ人の問いに呆れた様子でブライヴが返す。

 そうだ、再びラニに使命を与えられた。隠れ都の秘宝、その恩寵を確保せよと。

 その真意は分からない。もとより彼女は肝心な事を語らないし、褪せ人自身然程それを問題だとしていない。

 

 新たに課せられた使命、新たな旅路。それは間違いなく己が求めていたもの。

 しかし——

 

「……違う」

 

「何?」

 

 褪せ人の呟きに、ブライヴが訝しげに見つめる。

 一度言葉に出してしまえば、それは疑念ではなく確信へと変わった。

 

「ここは私の居場所ではない」

 

「おい、何処へ行くつもりだ!?」

 

 突如踵を返す褪せ人にブライヴが戸惑いの声を上げる。

 少しずつ、頭の中の靄が晴れていくようだった。自然、己の向かうべき場所が明らかになる。

 

「待て」

 

 迷う事なく歩みを進める褪せ人を、ブライヴが呼び止める。

 所詮は幻、耳を傾ける必要はなかったが、しかし褪せ人は足を止めて立ち止まる。

 

「どうしても、行くというのだな」

 

「……」

 

「……時々、俺も同じようになる事がある」

 

 褪せ人の決意が固いと見ると、ブライヴが静かに語り始める。

 それは、彼の抱える宿痾。抗えぬ運命であった。

 

「どうしようもなく、耐え難い衝動に駆られる事があるんだ。俺はラニの剣、ラニの牙。だというのに、恐ろしい何かが俺に語り掛けてくる」

 

「……」

 

 褪せ人はその結末を知っている。他ならぬ己の手で、哀れな影従の運命に終止符を打ったのだ。

 

「お前のその意思が、揺らがぬそれが羨ましいよ。ラニもきっと、そこが気に入ったのだろうな」

 

 眩しいものを見るかのようにブライヴが目を細める。

 目の前の半狼は夢の幻、記憶の再現。だが——

 

「行くといい、お前の運命はここにはない。お前の旅路に、幸あらんことを」

 

 その言葉に、褪せ人は歩みを進める。迷いはない、ただ定められた道へと突き進む。

 

「——ああ、願わくば……俺もお前のように在りたかった」

 

 不意に呟かれたそれに、褪せ人は何も言わなかった。

 ただ石畳を踏み締める。背後の声は、青白い炎の中に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 褪せ人が幻と相対する。

 周囲の状況から見るに、彼女達には手間を掛けさせてしまったのだろう。

 

「あの亜神は任せる」

 

「構いませんが……大丈夫ですか?」

 

「無論」

 

 へリューズの心配そうな声に褪せ人が淡々と返す。

 目の前の幻に彼女達が良いように翻弄されていたのは、知らないからだ。

 情報が足りない中、亜神に意識を割きながら何をしてくるか分からないあれを相手にする。

 数の差を活かしきれないのも無理はないだろう。或いは、損耗や犠牲を気にしなければ容易く倒せたのかもしれないが、それは酷な話だろう。

 

 そして今、その前提条件が崩れ去る。

 幻の手の内を褪せ人は知っている。当然、どうすれば良いのかも。

 

 褪せ人が聖印を握り締め、祈りを捧げる。

 黄金樹の英雄達が、かつてカーリアの王家との戦いで用いた、魔術に対する防護祈祷。

 

 青い光に包まれた褪せ人に、幻が僅かに眉根を寄せる。

 当然、相手もそれが何なのかを理解しているだろう。だからこそ、その手の内は縛られる。

 

 魔術とはその多彩な攻め手と圧倒的な攻撃力こそ脅威であるが、雷や炎をはじめ、多彩な力を駆使する祈祷とは異なり、その属性は魔力に大きく依存する。

 

 当然、魔術にも例外はある。しかし、それは祈祷と比較すれば些か頼りない手数であると言わざるを得なかった。

 なまじ魔力防護の効果を知っているが故に、相手の選択は自然狭まる。

 

 幻を前に褪せ人が剣を構える。それは象徴、かつて赤髪の英雄が、妻からの贈り物に似せて造らせた伝説の剣。ある意味で暗月の大剣と対をなすものである。

 

 黄金律の象徴たる大剣を握り締め、敬礼の所作を取る。大剣が黄金に輝くと、その光を炸裂させた。

 溢れんばかりの光が剣身に宿る。褪せ人が剣を振るえば、その光が黄金の斬撃として放たれる。

 

「……!」

 

 幻がその斬撃に反応する。当然、ただ振るわれただけのそれに当たるような事はない。黄金の弧を潜るようにして前転、そしてそのまま駆け出した。

 構えるのは暗月の大剣。効果が薄いと分かっていてもそれを振おうと思ったのは何かの策か、或いは黄金律の大剣に対する意地か。

 

 肉薄し、互いに大剣を振るう。知っている太刀筋、攻め手。相手の思考が手に取るように分かった。当然だ、相手は己である。

 大剣を躱し、振るう。まるで事前に打ち合わせでもしていたのかと思う程に、その攻撃を互いに躱していく。

 月の下、青白い光と黄金が行き交うそれは、さながら剣舞のようであった。

 

「……こんな状況でなければ見惚れていたかも知れませんが」

 

 褪せ人の剣戟から視線を外し、剣を構えると、亜神ヒュープを見上げる。

 亜神ヒュープもまた、褪せ人の姿に動揺を隠せていなかった。

 

「私も貴方も、彼を侮っていたようですね」

 

「……どうやら、そのようだね」

 

 ヒュープは素直に認めた。ただの人間、かつて英雄王に己の夢が暴かれていたにも関わらず同じ醜態を晒している。

 

「続けますか?」

 

「無論だ、僕にも矜持はある」

 

 夢は破られ、手駒は居ない。戦う術のない彼に軍神の猛攻など耐えられるはずもない。しかし、それでもヒュープは続行の意思を示した。

 それは神としての矜持、今更戦わずして膝を屈するつもりはない。

 

「——それに、何も手がない訳ではない」

 

 そんなヒュープの言葉に呼応するように足元の水場がぼこぼこと泡立った。

 水場から生じた無数の泡が結合し、ぬめる音を立てながら歪な形を作り出す。

 そうして現れたのは、無数の泡が無理矢理に人の形を取ったような異形であった。

 

「貴方の信奉者の成れの果てですか」

 

「言葉を慎んでもらえるかな。彼らは僕の眷属、永遠の夢の賛同者だ」

 

 アランの言葉に、不愉快とばかりにヒュープが告げる。

 己の庇護する者達、それを侮辱することは罷り通らない。それはヒュープが曲がりなりにも神としての責務を果たさんとしている証明であった。

 

「さぁ、続けよう。夜明けは——夜と夢の終わりはすぐそこだ」

 

 言葉と同時に、泡沫の眷属達が水音を立てて動き出す。

 ヒュープの目に最早試すような余裕はない。ただ己の矜持を賭けて、戦いに臨まんとする一柱の神の姿があった。

 

 

 

 

 

 褪せ人と幻の戦いが続く。千日手と思われていた状況も、少しずつその均衡は崩れていった。

 

「……!」

 

 幻の攻撃、斬り払われる軌跡が白く凍り、空気すら軋ませた。しかし、その一撃を褪せ人は避けようともしない。

 暗月の大剣、魔力属性が主となる武器ではあるが、それでも決して無視していいものではない。

 そんな一撃を褪せ人が胴で受け止める。

 

「……」

 

 ミシミシと鎧が軋むような音と共に、冷気の魔力が褪せ人を侵す。

 臓腑にまで伝わってくる痛みを無視して褪せ人は隙だらけの幻へと黄金律の大剣を叩き込んだ。

 

「……ッ!」

 

 横薙ぎの一撃に幻がよろめく。その隙を見逃さずに連撃を加えていく。

 堪らず距離を取る幻に褪せ人は容赦なく距離を詰める。

 

「また無茶な動きばっかりして! もうっ!」

 

 褪せ人の背後でイリスが奇跡を放つ。放たれた奇跡が褪せ人を癒やし、傷を塞ぐ。後隙を狙っていては埒が開かない故に、相手の攻撃を無視して上から叩き込む必要があった。

 

 強引な正面突破、褪せ人一人ならばまず不可能であるが、イリスという癒やし手の最上位が居るからこそ実行できる手段である。

 

 距離を詰める褪せ人に対して、幻が術を行使する。放つのは燻る怨霊、かつて蛇に呑まれた英雄達の残滓。

 それは褪せ人へと向かって飛んでいくと、その軌道上に激しい爆発を生じさせた。

 

 絶えず生じる爆発の連鎖、しかし褪せ人は足を止めない。

 構えるのは黄金の長柄斧。低く構え、その戦技を発動させる。自らを雷撃と化し、爆発の中へと飛び込んでいく。

 耳をつんざくような爆音の中で、褪せ人が飛び上がると、幻に向かって斧を振り下ろした。

 

「……!!」

 

 雷霆の如き一撃が幻を両断する。膝を突き、それでもなお幻は褪せ人への視線を外さなかったが、やがてゆっくりと倒れ伏した。

 倒れた拍子に、握られていた暗月の大剣が甲高い音を立てて石畳を転がる。

 

 徐々に霧散し、霧に溶けていく幻に背を向け、褪せ人は歩き出した。

 視線の向こうでは、アラン達の戦いもまた、終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 ヒュープの眷属、際限なく現れるそれらをアスバール達は次々と撃破していく。

 眷属達は倒れ伏すと、己の泡を弾けさせ、周囲に破片をばら撒いていく。

 厄介な性質ではあったが、その程度で押される程に彼女達は弱くはない。

 

 亜神ヒュープは己の負けを悟りながらも、絶えず己の権能を撒き散らす。

 眠りの権能、並の相手ならば即座に眠りに落ちるであろうそれに、しかし彼女達は対抗してみせた。

 

 徐々に数を減らしていく眷属達。彼女達がヒュープの下へ辿り着くのは最早時間の問題であった。

 

「——どうやら、終わりのようですね」

 

「……そうみたいだね」

 

 背後から不意に聞こえた声に、ヒュープが落ち着いた様子で向き直る。

 そこに居たのは、先程まで倒れ伏していたフーロンであった。

 キョンシーの自己修復によって立ち上がるまでに回復したのだろう。それでも腹部を押さえ、息も絶え絶えではあったが。

 そんなフーロンがヒュープに向けて小刀を構える。

 

「貴方だけはこの手で一発入れておかないと気が済まないので……覚悟しておいてください」

 

「はは、余程恨まれているらしい。人間というのはどうにも、難しいなぁ……」

 

 ヒュープが笑う。今回も失敗だったらしい。魔王という強大な相手に、無謀にも挑もうとした英雄王を生かそうと、夢に閉じ込めた時もそうだった。

 夢こそ絶対。そんなヒュープの価値観が、二度の敗北で揺らごうとしている。

 

 フーロンが小刀を手にヒュープへと飛びかかる。

 戦う術のないヒュープには、その一撃に対応することは出来なかった。一切の抵抗なく、刃がヒュープの胸へと突き刺さる。

 

「あぁ、これが目覚め、すべて忘れてしまうのか……」

 

 ヒュープの身体が泡立つように揺らぎ、銀砂のような光片となって霧に溶けていった。ヒュープの消滅を皮切りに眷属達もまた、その姿を崩していく。

 

「これで終わり……みたいですね」

 

 戦いが終わり、静寂が辺りを支配する。遠目に見える景色が徐々に霧に溶けていくのが見える。石畳が透け、空が色を失う。世界が薄紙を剥がすように形を失っていくのが分かった。

 

「夢の世界が崩れます。目覚めの時は近いでしょう」

 

 アランの言葉に、褪せ人が周囲へと目を向ける。

 記憶の中、既に捨て去った場所とはいえ、僅かな郷愁の念に駆られる。

 薄れゆく世界を少しでも目に収めておこうかと歩みを進める。

 

「——行くのだな、お前」

 

 そんな褪せ人に、背後から聞き覚えのある声が掛けられる。それが誰なのかは、振り向かずとも分かった。

 遠目から心配そうに此方へと駆け出すアスバール達を手で制しながら口を開く。

 

「ここはもう、私の居場所ではない」

 

「ふん、どうやらそうらしい。——あれらが、お前の今の居場所という事か」

 

 鼻を鳴らし、ラニが遠目にアスバール達を見遣る。

 彼女達は褪せ人と話す人形の魔女が何者なのかを知らない。褪せ人の手前向かってくる様子はないが、ただいつでも駆けつけられるように強く警戒しているようだった。

 

「私は私の道を征く。今も昔も、それは変わらない」

 

「勝手なものだ。私は……いや、それももう済んだ話か」

 

 ラニが何事か言葉を紡ごうとして、しかし静かに首を振った。

 ブライヴもそうだったが、どうにも夢の幻というには「らしい」反応だった。

 

「……さて、行くといい。私も、お前のつまらない枷になるつもりはない」

 

 ラニの言葉に褪せ人が歩き出す。訣別はとうの昔、彼の地で既に済ませていた。

 

「ふん——もうこんなことに付き合わせるんじゃないぞ」

 

 そんなラニの苦笑い混じりの言葉を最後に、視界が白く染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 褪せ人が目を開くと、そこは見覚えのない場所だった。

 辺り一面を色とりどりの花が咲き乱れている。空気は花の香りに満ち、風に乗って微細な光の粒が漂っていた。ところどころに青い木が生えており、物質界ではないのだろうと、褪せ人は漠然と考える。

 

「ん……ここは……」

 

 褪せ人の側、イリスがゆっくりと身を起こす。見れば、他の者達も目を覚ましつつあるようだった。

 

「やーっと目を覚ましましたね! 長かったぁ!」

 

「何だかとても頬が痛いのだけれど、何か知らない?」

 

「さぁ? めちゃくちゃ寝相悪かったんじゃないですか?」

 

「……」

 

 どうやら無事に戻っては来れたらしい。アブグルントが何やら言っているが、あまり気にする必要はないだろう。

 

「ここはオリュンポス第一層、亜神ヒュープの世界です」

 

「オリュンポス……」

 

「貴方達の住む物質界、世界を生み出す為の原初の実験場です」

 

 天界の深奥に位置する、古い実験場。アスバールの言葉を信じるならば、そこにいるのだという。

 

「……王国と合流する必要がある」

 

「そう、ですね。アランも色々と知っているみたいですし。出口を探さないと——」

 

「——その必要はないよ」

 

 出口を探そうと提案するアスバールに被せるように、声が掛けられる。

 その声に、全員が弾かれたように振り返った。

 

「——ヒュープ!?」

 

「あぁ、待ってくれ。もう戦う意志はないよ」

 

 警戒するアスバール達を前に、両手をあげて降参の意思を示す。

 ヒュープの身体は傷ひとつ付いてはいないが、その顔は憔悴し、弱っていることが分かった。

 

「地上まで案内しよう」

 

「……どういうつもりですか」

 

「……僕は負けた。理想の夢を見せて、それでも君達は拒絶した。偽りでは満足出来ない人の強欲さに、僕は負けたんだ」

 

 疑うアスバールに、ヒュープが語る。理想の夢を暴かれ、敗北したヒュープ。偽りでは満足出来ない人の強欲さ、その果てを見たくなったのだという。

 

「私の夢は全然理想じゃなかった気がするのだけれど……」

 

「今真面目な話してるから黙ってましょうねー」

 

 アブグルントがまた何か言っていたが、カゴメに窘められる。

 

「もうオリュンポス第一層が君達に牙を剥くことはない。それに、君達にも休息は必要だろう?」

 

「……」

 

 ヒュープにそう言われ、アスバールは押し黙る。実際、眠りの影響で酷く消耗していた。心と肉体の乖離が進んでいたのだろう。特に深く囚われていたフーロンは危険な状況だった。

 

「僕にだって矜持はある。もう君達に何かするつもりはないさ」

 

「信じても問題ないでしょう。彼が約束を違えるとは思えません」

 

 アランの言葉に、アスバールは褪せ人の方へと視線を向ける。それを受けて、褪せ人は無言で頷いた。

 

「分かりました。貴方を信じましょう」

 

 アスバールの言葉にヒュープは頷くと転移門を開く。

 褪せ人は弱ったフーロンを抱えると、そのまま転移門へと歩きだした。

 

「ところで、他の皆はどんな夢を見ていたのかしら?」

 

「えっとですねー、アスバールが——」

 

「——そ、そんなことより! 私は褪せ人の夢に出てきた女性の事を知りたいのですが!」

 

 カゴメの言葉を大きな声で掻き消しながらアスバールが口を開く。

 実際、他の者達もそこは気になるところではあった。褪せ人とあの魔女との関係、特にあの魔女が褪せ人を見る目は、彼女達からすればまるで——

 

「既に終わった話だ。もう会う事もない」

 

 褪せ人はそれだけ言うと再び歩き出す。抱えられたままのフーロンが何か物言いたげに褪せ人を見つめていたが、やがて諦めたように溜息をついた。

 

「話が終わってしまったわ。カゴメ、続きを話してちょうだい」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。カゴメ? 何か食べたいものとかありませんか? 今ならヤハールに頼んで——」

 

 騒がしい声と共に転移門を潜る褪せ人達をヒュープは見送る。

 そして、全員が潜ったのを確認すると、呟いた。

 

「さて、見せて貰おうか。偽りではない、強欲な人の在り方。現実で叶える夢の形を」

 

 偽りの夢は崩れ、現実だけが残った。

 けれど現実とは、夢よりも残酷で、美しいものである。

 ヒュープは崩れ落ちる転移門を、最後まで見つめていた。

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