「た、助かりましたわ…」
迫りくる冒険者と魔法剣士との戦闘は左程苦も無く終わった。冒険者達の戦力がそう高くないのが大きかっただろう。冒険者を無力化してしまえば、後は消化試合。今は傷ついた者達をイリスが治療していた。
「あぁ、クソッ酷い目にあったぜ。それにしてもやっぱりヒーラーってのは良いな…何しろ金がかからない」
僅かに痛む体に悪態をつきながら、冒険者の男が話す。ヒーラーというのも、別に無尽蔵に回復を使い続けられるわけでは無いのだが。とはいえ、コストパフォーマンスは薬草などとは比べ物にはならないかと思い直す。
「ここで何があった」
褪せ人が、冒険者達に事の経緯を問う。少なくとも迷宮内に洗脳をするような敵は今のところ居なかったはず。
「私達は迷宮の調査でここまで来たのですが、頭の中に声が響いたのですわ。例えようのない強く、恐ろしい声が。それを聞いた途端、身体が言う事を聞いてくれなくなってしまい…」
迷宮内に響く声。魔法剣士の少女、シャルロット曰く、その声を聞き、身体の自由が奪われたらしい。そのような声が聞こえるか、背後のイリス達に確認を取る。
「いいえ、聞こえませんね…」
「特に魔力による影響も見られないようだ。少なくとも今は、大丈夫じゃないか」
イリスが首を振り、メフィストからも魔力的な干渉を否定される。ならば、ひと先ずは問題ないだろう。警戒はすべきだが。常にミケラのルーンを所持している自身はともかく背後の味方が洗脳されて背中から刺されるなど目も当てられない。
「とりあえず、この奥が怪しいわね。どうする?」
アブグルントが尋ねる。答えなど決まっていた。
「無論、退くつもりはない」
「そうよね。そうでなくちゃ困るわ」
分かり切った答えが返ってくると。満足げに頷く。
「俺達はここらで撤退する。正直、これ以上薬草を使うと赤字なんでな」
「私も、迷宮から出ることに致しますわ。何となく、また操られそうな予感がするので…」
そう言うと、シャルロット達は迷宮を後にする。不測の事態が考えられる以上、あまり大人数で突撃するのは憚られた。
「行くぞ」
迷宮の最奥へと一行は向かう。少なくとも、先程までのようにはいかないだろうと、そんな予感がした。
迷宮の最奥は、静けさに満ちていた。重苦しい空気は相変わらずだが、魔物の気配もありはしない。
「ふむ、ここが最奥なのは間違いない。封印された魔王が、あるいは居るはずなのだが…」
広い空間に、それらしきものは無い。ただただ静寂。手掛かりになりそうなものは無い。無駄足か、あるいは既に魔王は蘇っているのか。
「――魔王はもうここには居ませんよ」
背後から突如として声がかかる。その声の主へと褪せ人達が振り向く。迷宮の最奥での遭遇。間違いなくただ者ではない。
そこに居たのは一人の女。黒い法衣に身を包み、一対の巨大な白い翼を生やしたそれは、人間では無いだろう。何より、それから放たれる気配は尋常のものでは無かった。
「何でしょう…。あの方から、とても神聖で、強力な力を感じます…」
イリスが緊張した面持ちで目の前の女を見遣り、そう言う。強い神聖な気配、以前王子達が遭遇したという天使か、あるいは――。
「もはや封印された魔王の身は私の手の内にあります。封印の解除も、そう遠くないうちに終わります。」
女がこちらを見下ろしながらそう言う。その目はどこまでも此方を見下したもの。
「どうして…どうしてそのような事を!?魔王が蘇ったら、多くの人が犠牲になってしまうのですよ…?それなのに…」
「だからこそです。愚かなる人間よ。それこそが、私の目的」
イリスの悲痛な問いに、女はどこまでも酷薄に嗤う。
「目的、ね。聞かせてもらえるかしら?」
「愚かな人間だけでなく、虫けらのデーモンまで居るとは…。まぁ良いでしょう。人の、地上の滅びこそが我が目的。魔王の復活、そしてレヴィアタンの降臨を以てこの地上に生きる者を滅ぼすのです」
アブグルントの問いに女が答える。その目的は、人間にとって許容することの出来ないもの。
「レヴィアタンだと…?あんなものを蘇らせるつもりなのか?」
メフィストが声を上げる。レヴィアタン、新たな存在の名に、心当たりがあるようだった。聞くべきことが増えたが、その前にやることがある。
武器を構え、女の方へと歩みを進める。もはや問答は不要。叶うならば、魔王の所在を聞き出したいが、それは望むべくもない。その目的が相容れない以上、始末するべきだろう。
「お前は…そうか、あの愚かな妹が呼び出した戦士ですか」
もはやその言葉に答えることは無い。黒い、死蝋で塗り固められた大剣を握る。それは、黒き剣に仕えた英雄たちの得物、その一つ。その剣もまた、聖なる力を持つだけでなく死の力を宿すもの。
褪せ人がその剣を掲げ、力を開放する。死蝋の、死の炎が刀身に宿り、刃となって放たれる。それは、真っ直ぐに目の前の女へと向かう。しかし、突如として現れた黒い影にその刃は防がれた。
「この私に刃を向けるなど、不敬極まる。ですが丁度いい。封印されていたガリウスも、何もしていなかったというわけでは無かったようです。その副産物の力、貴方で試させてもらいましょう」
黒い影が形を成す。禍々しい気配と共に立ち上がったそれは、黒い人型。黒い翼と剣を携え、圧倒的な存在感が辺りを包み込む。
「そうですね――魔王の影、とでも名付けましょうか」
封印されていた魔王の力の残滓が、褪せ人へと意識を向ける。これまで戦ったいずれの魔物達よりも強烈な視線。決して一筋縄ではいかないだろう。褪せ人が武器を構える。
「不味いのです…!褪せ人、我々も援護を…!」
「勿論、それだけでは終わりませんよ。さぁ、天使達よ、わが声に応えなさい」
ポーラの焦りの混じった声に、嘲笑混じりに女が口を開く。その声に応えるようにして、光の扉から天使たちが舞い降りる。
「天使…!?そんな、どうして…」
「主の声に応えることに、何の疑問を持つというのです?」
地上を襲う天使、それを召喚する存在。そのような事ができる者の正体に、もはや疑う余地も無かった。
「冥土の土産に教えてあげましょう。我が名はケラウノス。死んで平伏しなさい。私こそが『神』です」
神の言葉に、天使と魔王が武器を構える。褪せ人達もまた、それに応えるように戦意を滾らせた。
「お前たちは周囲の天使を相手にしろ。あの影は私がやる」
「構わないけど、大丈夫かい?」
メフィストが褪せ人へと声を掛ける。天使達の相手をするのは構わない。だが、あの影は尋常なものでは無いだろう。勝てるのかと、そう問う。
「最終的に魔王を殺すのだ。影で死ぬようでは話にならんだろう」
「おぉ…!良いですねっ!それでこそですよ!頑張りましょうねっ!」
「ふふ、少しは折れるかと思ったのだけれど。そうよね、それでこそよね」
「あの…もう少し緊張感とか…」
常と変わらぬ褪せ人のそれに満足げな悪魔と妖怪。一応は絶体絶命の局面でいつもの三人は余裕だった。若干その事に悔しさを覚えつつイリスが自身を中心に守護の結界を発動する。
「この結界内であれば、皆さんをお守りできます!都度回復の支援も行いますので、極力離れず戦闘を…!」
「す、凄いのです!これなら、私も…!」
実際、彼女の支援は驚異的なものだった。結界の加護により生半可な攻撃は通らず、その上で傷ついても回復の支援が来る。彼女のそばに居れば、倒れることのない軍勢が出来上がる。
「ふむ、これは中々。やはり王国の力は侮れないな」
メフィストがイリスの結界に感心の声を上げる。そして、彼女もまた、自身の力を開放し、迫りくる天使達へと振るった。
――ヴァルプルギスの夜
彼女の振るう二又の魔槍から魔力が迸る。闇の魔力が、天使達を貫いた。
それを皮切りに、アブグルントやポーラも攻撃を始める。天使の数こそ多いが、彼女達なら問題はないだろう。
「こちらは任せたまえ。褪せ人、君の力を私に見せてくれ」
褪せ人もまた、魔王の影と対峙する。握る武器は黒鉄の大槌と大盾。相手の出方が分からない以上、受けに回る。魔王の影が動き出す。翼を広げ、一足飛びにこちらへと近づくとその黒い剣を振り下ろす。それを大盾で受け止める。重い一撃、しかし問題はない。受け止めたと同時に大槌のカウンター。打撃と黄金の衝撃波が魔王の影に襲い掛かる。確かな手応え、しかし足りない。その一撃を受けてなお魔王の影は呻くことなく剣を振るう。それは、大槌を振り上げた褪せ人を斬り裂いた。鎧越しに、確かな衝撃をその身に受ける。
「褪せ人様!?」
「問題ない。一撃受けただけだ」
間髪入れずに癒しの奇跡が飛んでくる。それだけで、負傷は露と消えた。いくら受けようと問題ない。
「少し強引に行く。回復を絶やすな、いけるか?」
「で、出来ますけど…一体何をするつもりで…」
大盾と大槌、それらを持ち替える。手に持つのは巨大な剣。先のサイクロプスとの戦いで使用した巨人砕きと同様に、何の特殊な力も持たない無骨な鉄塊。ひとの限界を超え、しかしそれ故に人外を屠り得るもの。それを二本、両手にそれぞれ握る。
魔王の影、その剣は重く鋭い。しかし一撃で結界下にいる褪せ人を屠るには遠いものだった。対する褪せ人もまた、盾で受け、大槌を振るうだけでは決め手に欠けると、そう感じた。故に防御を捨て、圧し潰す。魔王の影を前に、選んだ戦法がそれだった。狭間の地では二刀を持って戦いに臨むのならば、その見た目に反し、相手の攻撃を躱し、その隙に攻撃を挟む、繊細な動きを要求されただろう。だが、イリスの結界と回復があるならば、その必要もない。
褪せ人が両手のグレートソードを振るう。魔王の影が剣で受けようとするも、圧倒的な質量で叩き潰され、その剣は弾かれる。そしてもう一方の剣で無防備な胴を薙ぎ払う。相応の威力を以て振るわれるそれが、魔王の影を揺らめかせる。だが、いまだ健在。反撃とばかりに剣が振るわれる。それを褪せ人は躱すことも防ぐ事もなかった。剣をその身に受け、血しぶきが飛ぶも、攻撃の手は休めない。回復の奇跡が、その身を癒す。
もはや鉄塊の嵐と化した褪せ人を止められるものはいなかった。傷つき、癒され、そして剣を振るう。その繰り返しが続く。その足元に血溜まりが出来ようとも剣を振るう手は鈍る事すらない。傷つけどその身の傷が癒され続ける褪せ人とただその猛攻を受け続ける魔王の影。その勝敗は自明であった。
やがて、魔王の影が明滅する。限界が近いのだろう。しかし、生物とは異なる力の残滓はそれで動きが止まる事もない。なおも振るわれる剣を、褪せ人が大剣を振るう事で弾く。そして、その致命的な隙に、渾身の一撃を叩きこむ。前方に跳躍、そして回転するとその勢いのままグレートソードを魔王の影に叩きつけた。それはかつて、赤獅子の戦士たちが得意とした技。その一撃は、魔王の影を決定的に打ち滅ぼすとどめとなった。
魔王の影が霧散する。辺りを支配していた存在感が薄まり、やがて完全に消え失せた。
「何て無茶苦茶するんですか!?死んでしまいますよ!?」
「死ぬつもりはない」
「その見た目で説得力皆無ですからね!?うぅ…こんなことするの分かってたら絶対に止めたのに…」
泣き出しそうな声で頭を抱えるイリスを横目にケラウノスへと向き直る。周囲の天使も全滅したのだろう。メフィスト達もケラウノスへと対峙する。
「成程、流石に愚妹の悪あがきというわけですか。アレが滅ぼされるのは予想外でした。ですが――」
ケラウノスが語るのを聞かず、死蝋の斬撃を放つ。わざわざ御託を聞いてやる必要はなかった。油断しきったその身を斬り裂き、死の炎が身を焦がす。
「ぐぅっ!?この狂犬が、人の言葉も解しませんか…!」
突然の攻撃に面食らい、しかしケラウノスは怒りの声を上げるだけだった。その身が炎に包まれていようとも、苦痛の表情はない。
「良いでしょう、貴方はいずれ、この私が手ずから葬ってあげます…!それまで精々、犬死にしないよう気を付けることですね…!」
そう言い残すと、ケラウノスの身体が光に包まれ、消える。逃がしたか。そもそも斬撃が効いているようにも見えなかったが。
「あれは精神体だね。恐らく本体は別の場所に居るのだろう」
メフィストがそう説明する。攻撃が効いていないのはそもそも本体では無かった故。随分と便利なものだと褪せ人は思う。
「女神様が人々を滅ぼすなんて…どうして…」
イリスのその呟きは、恐らくここに居る者達全員を代弁していた。
「これからどうするのかしら?」
「…まずは王国に戻る。今一度方針を定めなければならない」
アブグルントの問いに、褪せ人が答える。王国に報告すれば、何か分かることもあるだろう。メフィストからレヴィアタンについても聞く必要があった。
再び所在の分からなくなった魔王、そして女神。やることは山積みだった。
「魔王は居なかった。代わりに女神ケラウノスに接触した。魔王はケラウノスの手にあり、レヴィアタンの復活を企んでいる」
「は?」
王国に戻り、王子の執務室に招かれた褪せ人が報告をする。簡潔にまとめたつもりだったが、分かりにくかったらしい。
「簡潔すぎて逆に分からん…!だが、俺には分かるぞ、お前が色々端折った中に聞き捨てならない情報があるのが…!イリス、翻訳を頼む」
「は、はいっ!」
そして、改めてイリスの口から語られる。魔王の迷宮の最奥、そこに魔王は既に居らず、女神ケラウノスが待ち構えていたこと。女神ケラウノスの目的は地上の人類の滅亡。その為に魔王と、レヴィアタンなるものを利用しようとしていること。
「私が言った事と変わらんではないか」
「…いや、もう何も言わん。とりあえず、話は分かった。問題が山積みだな」
王子が椅子に深くもたれ掛かる。得られた情報は大きいが、問題もまた増えてしまった。整理が必要だった。
「ケラウノス様は伝承によると、アイギス様、アダマス様の姉。三姉妹の長姉にあたるお方です。何故、人類を滅ぼそうとしているのかまでは分かりませんが…」
アンナがケラウノスという存在について説明する。ケラウノスを名乗るあれが本物かどうかは分からないが、確かにあの気配は尋常なものでは無かった。
「最近の神獣達の復活も天使が関わっていたな。あれらもケラウノスによるものだろう」
褪せ人が魔界に居る間に対峙する事となった神獣達。それを蘇らせるように動いていたのは天使だった。あの強大な力をわざわざ目覚めさせていたのは地上を滅ぼす尖兵として利用するためだったという事だろうと王子は推測する。
「それで…レヴィアタンとは一体…」
「それについては、私から説明させてもらおう」
今まで黙っていたメフィストがレヴィアタンについて説明する。
曰く、終末の魔神。一度蘇れば、その強大な力は物質界を容易く滅ぼすことが出来るほどのもの。何より魔界の大地とは、封印されたレヴィアタンそのものである。動き出せば最後、魔界と物質界で暴虐の限りを尽くし、あらゆる生命が滅びへと向かう。
「何だそれは…魔王なんて目じゃないぞ…。そんなものを蘇らせるわけにはいかない」
「本来は、気にしなくて良かったのだがね。レヴィアタンの復活はデーモン達にとって悲願ではあるが、デーモンにその封印を解くことは出来ない。何よりその心臓はダークエルフ達によって秘匿、守護されている。だけど、女神が相手では分が悪い」
メフィストの語るそれは、人類には絶望的な内容。魔王の復活も問題だが、喫緊の課題としてはそちらの方が優先度が高い。
「あの、デーモンの悲願ってどういうことですか?聞いていると、魔界も無事では済まないはずですが…」
「私達の肉体は仮初の器でしかないわ。肉体が滅んだところで精神体が無事ならいずれ新生する。デーモン達は、レヴィアタンが物質界を滅ぼした後の虚無の世界で、ただ絶対の種族として君臨する事を望んでいるのよ」
アンナの疑問に、アブグルントが答える。レヴィアタンの力を以てデーモンを除く全種族を滅ぼし、自分達だけの世界を作る。そのあまりにも傲慢な願いに、王子は眉を顰める。
「お前たちは、味方だと思っていいんだな?」
「ええ、デーモンだって一枚岩ではないもの。だってつまらないじゃない。デーモンだけの世界なんて。私は人間にとても友好的なの」
「せっかく物質界には私の知らないことで溢れているのだ。それを知らず、滅ぼされるなどあってはならない」
王子の確認に、アブグルントとメフィストが答える。それぞれ動機こそ違えど、人類の味方であることは共通していた。
「当面は、レヴィアタンの復活の阻止だろうか。魔界に行って、ダークエルフと接触したいところだが…」
「瘴気はどうする。行ったところで、あれでは並の兵士など数の足しにもなりはしないぞ」
魔界に行くにしても、瘴気対策という問題が立ちはだかる。すぐさまどうこうというわけにはいかなかった。
「王子、そろそろ本腰を入れて探すべきでは?」
「そうだな…」
「何の話だ」
アンナが王子へと提案する。その内容を問うべく、褪せ人が口を開いた。
「女神アイギス様の神器だ。この物質界のどこかに、封じられているらしいんだが…」
「現在、手掛かりもない状態で…」
女神アイギスの神器。かつて邪悪から人々を守るべく振るわれたそれは、地上のどこかに封じられているらしい。しかし、その所在は現在不明。その力を使えば、魔界の瘴気を払えるというのだが。
「まずは神器の捜索か…」
「帝国でも情報を当たってみよう。何か分かることもあるかもしれない」
「助かる」
王子にとってメフィストの申し出は素直にありがたいものだった。帝国の情報網なら、何かしら手掛かりが得られるかもしれない。
「さて、後は…」
「なら私は魔界へ行ってダークエルフと接触する」
「えっ」
他にやるべきことは何があったか、と王子がそう考えていたところで褪せ人が己の意思を伝える。ダークエルフと接触し、レヴィアタンの心臓の状況を確かめる。必要な事だろう。
「待て待て!駄目だそれは!」
「そ、そうです!禁止!禁止ですからっ!」
途端に王子とイリスが慌てて止めに入る。この男は一度そうと決めたら止まらない。また行方不明になられるなど堪らなかった。
「第一、褪せ人様にダークエルフと交渉する技能はお有りで?私にはダークエルフと戦闘になる褪せ人様の未来が見えるのですが…」
「………」
アンナが冷静に反論する。それは否定できない事実だった。周囲の者を見る。王子を魔界へ連れていくのは論外として、イリスも瘴気に耐えられないだろう。ならば、アブグルントという事になるが。
「デーモンにダークエルフが教えてくれると思う?」
一蹴される。悪くない案だと思ったのだが。
「あれっ、褪せ人?アタシは?頑張りますよっ!」
「あぁ、居たのか」
「酷っ!?」
今まで立て続けに明らかにされる情報の嵐に黙って彼女なりに考えていたカゴメが声を上げる。とはいえ、これも交渉には向かないだろう。明るく、友好的な関係は築きやすそうではあるがそれだけだ。
「とりあえず、お前向けの依頼を見繕うから、大人しくしておけ?な?」
「………」
王子にそう言われる。しかし、現状で出来ることがない以上、そうせざるを得なかった。周囲が安堵する中、ただ褪せ人だけが納得していなかった。
ここに来て漸く褪せ人が餅つきを覚えました。
最近は餅つき許してくれる敵なんてそういませんが…
ケラ様、王都奪還後にそれっぽい事言って全然出てきませんでしたが漸く出せました。