今ひとたび、英雄たらんことを   作:blue man

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魔界武術大会編のエピローグ的なもの


魔界総帥への一歩

亜神アスバールの復活と魔界統一の宣言。

それは、魔界武術大会の観客達を中心に魔界中へと拡散される事となる。

 

その宣言に、魔界に住む者達の反応は大きく二つに分かれた。

 

一つはデーモンを中心とした魔王派と言うべき者達。

レヴィアタンという旗印を失い、未だ姿を見せない魔王に縋るしか無かった彼らにとって、彼女の登場は苦いものとなる。

魔王軍が荒らしまわった魔界で、その利益を享受する彼等は、彼女を無視する事は出来ない。

しかし、魔王軍という存在がありながら、絶対の指導者が不在の現状では足並みが揃わず、ただ彼女の宣言を指を咥えて見るしかない状況にあった。

何より魔王の目的は世界の破壊。もとより君臨など目的としていないのだ。

 

対して、ダークエルフ、オークと言った他種族からは彼女は好意的に受け入れられる。

オークは言わずもがな、その力を武術大会において示した事で、元よりデーモン達によって頭を押さえ付けられているダークエルフは現状の勢力図を塗り替えられる可能性を歓迎した。

 

何より大きいのはダークエルフの女王ドロテアとオークの英雄であるアナトリアが支持を表明したこと。

 

かくして、亜神アスバールの狙い通りに、魔界統一への足固めに成功したのであった。

 

 

 

 

 

 

決勝戦を終え、アスバールと褪せ人は会場を後にする。

 

「ふぅ…久しぶりに表舞台に立つと緊張しちゃいますね」

 

目的を果たし、どこか気の抜けた様子のアスバールが微笑みかける。

信仰され、崇められる神が大衆の前で緊張などするだろうか。

 

「しますよ、何しろ今まで眠り続けていたのですから。それこそ、忘れ去られるまでに」

 

そう言って笑う彼女だが、魔界統一を宣言する姿は実に堂に入ったものであった。

多くの者が、彼女の言葉に真実味を見出したはずである。

 

「その為に武術大会を利用しましたからね。さて、そろそろヤハール達の所へ——」

 

そう言って、アスバールがヤハール達が運び込まれたであろう医務室へと足を向けようとした、その時である。

 

「——実に良い戦いだった。英雄王が武術大会に出ると聞いて来てみれば、異界の戦士とは、女神アイギスも味な真似をする」

 

不意に響く男の声。

静かに、しかし力強い声は通路を歩く褪せ人とアスバールへと向けられたもの。

褪せ人がその声の主へと振り返る。

 

「仲間に支えられ未来を歩む英雄と、歩みを止めずただ終わりに向かう英雄ッ! その熱き戦いに俺様は今、感動しているッッッ!!」

 

そこに居たのは、黄金に縁取られた鎧を身にまとう偉丈夫。

その力を感じさせる瞳で褪せ人を射抜き、雄叫びを上げる。

その背後には、申し訳なさげに眉根を下げる堕天使の姿もあった。

 

「あ、貴方は……!」

 

知り合いなのだろう。アスバールが、思わぬところで出会ったとばかりに目を丸くする。

 

「ふぅん、久しいなアスバール。封印が解けたようで何よりである。戦士の戦いに余計な企てを持ち込んだのは気に入らんが、俺様にこの男と出会わせた事で良しとしよう」

 

そんなアスバールに男は尊大に言い放つ。

一切隠すつもりのない神気に、この男もまた、亜神であると訴えかける。

そして、何よりもその気配が物語っている。恐らく、この男はこの世界で己が出会った誰よりも——

 

「褪せ人といったか、此度のチャンピオンよ」

 

男が再びアスバールから褪せ人へと向き直る。

その目は煌々と輝き、口元に笑みが浮かんでいる。

これ以上なく、上機嫌であると、言葉なく主張していた。

 

「見事な戦いだった。貴様のチームメイトの奮闘も実に素晴らしいものだったが、やはり最後の英雄王との一騎討ち! その想いを正面から受け止め打倒する様は、確かに! この俺様の心に響いたぞッ!!」

 

「あの、マレス様、対戦相手は英雄王ではなくその子孫である王子で——」

 

「ハーッハッハッハッ!!」

 

興奮したように一々叫ぶ目の前の亜神。

そしてどうやらこの男、王子の事を英雄王と勘違いしているらしい。

寿命の事を一切考慮に入れていないのは神らしい大雑把さである。

それとなく背後の堕天使が訂正しようとして、まるで話を聞いていなかった。

 

「何者だ、お前は」

 

「ハーッハッハッハッ! ……ん? 名乗りがまだだったか、俺様はマレス、戦神よ」

 

褪せ人に問われ、漸く自分が名乗っていないことに気付いたらしい。

男が名乗りを上げる。

 

戦神マレス、それが男の名であった。

 

「その戦神が何の用だ」

 

褪せ人が簡潔に問うと、マレスは懐から一通の書状を取り出すと、褪せ人へと突き出した。

 

「受け取るがいい」

 

封のされたそれをマレスから受け取り、その中身を確認する。

その内容を端的に言うならば、招待状であった。

 

「何だ、これは」

 

「招待状だ、来たるべき戦祭りへのな」

 

意図の読めない褪せ人に対して、口元を歪め、得意げにマレスが言い放つ。

戦祭り、その響きに褪せ人は何処か懐かしさを感じた。

とはいえ、目の前の戦神から手渡されたその招待状からは、面倒事の予感しかしないのだが。

 

「喜べ、貴様には資格がある。この俺様の祭りに参加するだけの資格がな。故に、貴様にくれてやる」

 

恐らくは名誉なことなのだろう。しかし、生憎と己の使命にはまるで関係のない事柄である。

故に、褪せ人はこの祭りに出るつもりなど無かった。

その意思を示そうと、褪せ人が口を開く。

 

「興味がな——」

 

「——うむ、うむ、うむッ! そうか、貴様も待ち遠しいかッ!!」

 

褪せ人の拒絶を遮り、一人納得したように雄叫びを上げる戦神。

褪せ人は今ので確信した。この男の中で既に物事は完結している。一切話を聞くつもりが無いのだと。

 

「——だが、今少し俺様に時間をくれ。ああ分かるとも、今すぐに戦いたいという貴様の言い分は痛い程に! だが、此度の戦祭りでは、そんな貴様が満足出来るものであると約束しようッ!」

 

一人話を進めるマレスがそう締めくくると、身を翻して去っていった。

最後に、申し訳なさそうに堕天使が褪せ人達に話しかける。

 

「すみません、悪い方では無いのですが、その、少しばかり話を聞かないお方で……」

 

「アレを少しばかりで片付けるのか」

 

「すみません……」

 

褪せ人の言葉に、縮こまる堕天使。随分と苦労しているようだった。

 

「ですが、マレス様ではありませんが、あの戦いは見事でした。あの方も戦神、素晴らしい戦いをした方には相応の報酬も用意されるでしょう。戦祭りの参加、どうか御一考ください」

 

そう言ってマレスを追いかけるようにして堕天使は走り去っていった。

好き放題言いたい事だけ言って去っていく。まるで嵐のような男だった。

 

「戦神マレス、戦いを好み、戦士を讃え、己に立ち向かう強者をこよなく愛する亜神。厄介なのに気に入られましたね」

 

アスバールからマレスについて説明が為される。

曰く、天空の神より力を受け継ぎ、しかし縛られる事を嫌いその名を捨てた戦神。

今を生きる亜神達の中でも特に力ある者の一人。

 

「とはいえ、先程の堕天使が言うようにマレスの加護は悪いものではありません。招待状は、とりあえず持っておいて損は無いと思いますよ」

 

そう言われ、褪せ人は招待状を懐にしまう。

参加するかしないかはその時に決めれば良いだろう。

内心でそう結論付けると、再び褪せ人は歩き始める。

その背を見つめながら、アスバールは一人呟いた。

 

「終わりに向かう英雄、ですか」

 

恐らくは褪せ人を指した言葉。

あの亜神が褪せ人に何を見出したのかは分からない。

しかし、傍若無人に振る舞いながらも、その神としての有り様はどこまでも相応しいもの。

故に、何の意味もなくそう呼んだとは思えなかった。

 

「——終わらせませんよ、貴方の英雄譚はこれからですから」

 

密かな決意を秘めて、アスバールは褪せ人へ追いつくべく駆けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスバールの城館に戻った褪せ人達。アスバールの提案によって魔界武術大会での勝利を祝して、ささやかな宴が開かれていた。

 

「さぁ、どんどん食べなさい! おかわりはいっぱい用意してあるんだから!」

 

ヤハールが机に様々な料理を並べ立てる。

亜神にして元天界出身のアスバール仕込みの天界料理、竜人たるロタンの為の魔界料理、加えて最近は物質界の料理を勉強中の彼女は、デーモンにして三界の料理を作る事の出来る稀有な料理人としてその腕を遺憾無く発揮していた。

 

「褪せ人は食べてみて気に入ったものがあったら言ってね? 貴方には今回の武術大会だけじゃなくアスバール様を助けてもらった恩もあるんだから!」

 

「ゆでエビはあるか」

 

「ゆでエビね! 任せなさい、全力で茹でてあげるわ!」

 

気合いの入った彼女に、ものは試しとゆでエビを頼めばすぐに調理に取り掛かった。

カニも頼んでおくべきだったか。

そんな褪せ人を見て、ロタンが問い掛ける。

 

「エビ、好きなの?」

 

「防御力が上がるのだ」

 

「貴方も冗談を言うのね……」

 

褪せ人が簡潔に答えるも、ロタンはまるで信じていないらしい。

彼らしからぬ冗談だと目を丸くしていた。

狭間の地では必需品だったのだが。

 

「実際、極まった料理人の振舞う料理は戦士に力を与えると言いますから、無い話ではありませんね」

 

アスバールが取りなすように言う。

この世界では料理人が戦場に赴く事があるらしい。

兵士の士気に大いに関わるという事と、ある種その道を極めた者の振る舞う料理には、一時的に食した者の潜在能力を引き上げる力があるという。

 

王国にも幾人か所属していると聞き、大いに興味があるのだが、褪せ人は未だにその機会に恵まれていない。

 

「ちなみにアタシの得意料理は冷奴ですよ!」

 

カゴメが自身の得意料理について語り出すも、褪せ人にはまるで想像の出来ないものであった。白く、柔らかく、角ばった食べ物。東の国に由来する料理なのだという。

 

「私は……特に無いわね」

 

「そもそも私達に食事が必要ないからな。必要ならば下位のデーモンに作らせれば良い」

 

アブグルントやラピス達デーモンにしてみれば、ヤハールが変わりものなのだろう。食事も睡眠も然程重要でない彼女達には、そもそも料理するという考えが希薄である。

そんな事を話していれば、ヤハールが皿に茹でたエビを乗せて此方へとやってくる。

 

「ゆでエビよ! というか、もう少し凝ったものを要求してくれないと作り甲斐が無いんだけど?」

 

「ゆでカニを頼む」

 

「一緒じゃない!? あーもう、カニなんてあったかしら?」

 

何だかんだと言いながら厨房にカニを探しにいくヤハール。

それを見送りながら、ゆでエビを口に運ぶ。悪くない。

 

「そういえば、亜神様は随分と褪せ人を気に入っているみたいね。『私の英雄』だったかしら。私も呼び方を変えても?」

 

どうやら、私の英雄という部分が気になっているらしい。

常の如く薄い笑みを浮かべ、しかし有無を言わさぬ圧力を感じさせながらアブグルントが問うてきた。

 

「好きに呼べ」

 

もとより褪せ人という名が既に蔑称である。

ならば今更どう呼ばれようとも関係が無かった。

 

「じゃあ……私の貴方?」

 

「それはやめろ」

 

「!?」

 

その呼ばれ方だけはあまり好きではなかった。

一瞬にして前言を翻した褪せ人にアブグルントが珍しく面食らう。

 

しばらくそうした雑談が続き、やがて話は今後の方針についてのものへと移っていった。

ヤハールの茹でたカニを堪能しながら、褪せ人が口を開く。

 

「今後はどうするつもりだ」

 

ひとまずの依頼は達成した。次が無ければひとまずは王国へと戻りたいところである。

 

アスバールの城館。

魔界の僻地にある此処は物質界の者達が拠点にするには些か不便に過ぎるのだ。

 

「そうですね……。暫くは足固めの期間にはなるでしょうね」

 

アスバールが少し考えるような素振りと共に、褪せ人へとそう返した。

動き出すにしても何にしても、今はまだ何もかもが足りない。

故にこそ、今後コンタクトを取ってくるであろう魔界の有力者達の協力を取り付ける事に力を入れなければならない。

 

「今回の宣言のお陰で、早速魔界の右下の領主から会談を設けたいという話が出ていますし」

 

「右下ってタケノコの名産地よね?」

 

アスバールの言葉にアブグルントが口を挟む。

ネヴィンが言っていた場所か。大々的に宣言した割には、動き出したのは小さな領地の領主のみ。

しかし、アスバールは問題無いと言う。

 

「実際、そう大きな領地ではありませんが、中々手堅く統治しているようです。侮れませんよ」

 

元々、ダークエルフとオークはともかく、デーモンからコンタクトを取ってくる事は期待していなかった。

それ故に、今回のデーモンの領主からの会談の申し出があった事は僥倖ではあった。

 

「いずれにせよ貴方の出番は少し先になりそうです。しばらくは王国に戻って頂きましょう」

 

そう言われ、アスバールの用いる転移門によって褪せ人達は王国へと帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

王国の執務室。

魔界武術大会で勝利を逃した王子は今、膨大な書類と死闘を繰り広げていた。

 

「ぐおぉ……落ち込む暇すら無い……!」

 

本当ならば、丸一日は落ち込んでいたいところではあるが、為政者である彼にそのように悠長に構えている暇はない。

国家元首である王子が戦場に赴くたびにこうして王子の決定が必要な書類は溜まっていく。

優秀な文官達のお陰で国としての運営自体は滞りなく為されているのだが、それでも王子の承認が必要な事項というのは多かった。

 

「それにしても、まさか神様とはな……」

 

気絶していた王子は、後に仲間達から聞かせられる形でアスバールの宣言の内容を知った。

曰く、大昔に封印された亜神。魔王軍によって荒らされた魔界を今一度統一する。

概ねそのような内容の宣言であった。

 

王子としては、魔界の情勢が安定する事自体は悪くないと考えている。

ラピスやアブグルント達を見ている限り、魔界のデーモン達とて一枚岩ではない。

 

何より、王子の目から見て、アスバールの統一は限りなく善性によるものであると判断していた。

こればかりは明確な根拠というものはない。王族として生まれた者の勘とでも言うべきものである。

 

「アイツが付いている以上、そう悪いものではないと思うんだが……」

 

アスバール自身の本心は未だ何とも言えないが、褪せ人の為人は分かるというもの。

あの男が是としている以上、少なくとも魔王との敵対は確実である。

あの男が目的に沿わない行動を取るとは思えないからだ。

 

一体どこの誰に取られたのかと気が動転したものだが、よもや神の下についているとは、それも随分と気に入られているようである。

デーモンに竜人、加えて魔界の神とは、あの男には魔界特効でもついているのだろうか。

 

「王子、少しよろしいでしょうか?」

 

執務室へとアンナが入ってくる。一瞬、膨大な書類に目を丸くするも、直ぐにいつもの調子に戻り、声を掛けてくる。

 

「その、来客が来ておりまして……」

 

「そうか……悪いんだが、今日は見ての通りなんだ。明日以降に来てもらうよう言ってくれないか?」

 

元々予定していたならばともかく、急な来客である。

流石の王子も、今回ばかりは会おうとは思えなかった。

 

「承知致しました。褪せ人様には明日来るようにと——」

 

「——すぐに会おう。アンナ、セーラに千年ワインを持ってくるように言ってくれ」

 

「はぁ……」

 

すぐさま発言を翻した王子にアンナが溜め息をつく。

どうにも褪せ人の事となると人が変わるのだ。

 

気持ちは分からなくもない。王国を救ってくれた英雄にして、女神アイギス直々に呼び出した異界の英雄。

対等に話せる男に飢えているのだろうが、些か執心が過ぎないかと思いながら、セーラの所へと向かうアンナであった。

 

 

 

 

 

「てっきり戻ってこないのかと思っていたぞ」

 

「単にアスバールからの依頼を優先するというだけだ。今のところ拠点を移すつもりはない」

 

すっかり機嫌を取り戻し、ワインを呷る王子に、褪せ人が静かに返す。

現状、王国を中心として事が動いているのだ。他に拠点を移す必要性は感じていなかった。

 

「魔界武術大会では手も足も出なかったな……」

 

「もとよりお前は為政者。そう易々と負けては私の立つ瀬が無かろう」

 

己と違って、この男は為政者としての立場もあるのだ。

それを考えれば、ただ戦う事しか出来ない己と渡り合っただけでも驚嘆すべき事である。

そして、ふと褪せ人が気になっていた事を問う。

 

「武術大会の人質とやらはどうなった」

 

「チヨメ達のお陰で皆無事だよ」

 

どうやら、問題は無かったらしい。

チヨメによって居場所が割れてしまえば、後は王国の手勢で問題なく奪還出来たようである。

 

一頻りの情報の擦り合わせを行い、王子が褪せ人へと問い掛ける。

 

「今後はどう動くつもりなんだ?」

 

「今までと変わらん。依頼を受けつつ、魔王達の情報を探る」

 

王子の問いに、褪せ人は簡潔に返す。

魔王とケラウノスの所在が分からない以上、情報収集に力を入れるより他はない。

褪せ人の方針は些かもブレてはいなかった。

それを受けて王子は一度頷くと、口を開いた。

 

「此方でも何かあれば知らせよう」

 

「了解した」

 

そう言って、立ち上がり、王城から去ろうとする褪せ人に王子は相変わらずだと笑う。

そして、褪せ人へ向けて声を掛けた。

 

「まぁそう急くな。仕事の話は置いておいてここからは個人的な話でもしようじゃないか」

 

「忙しいと聞いているが」

 

「……多分何とかなるさ」

 

褪せ人の指摘に微妙に目を泳がせる王子。明らかに何とかなる予定は無さそうであった。

そんな王子を見ながら、静かに溜め息をつきながら向き直る。

 

「……少しくらいならば、構わんが」

 

この後の予定は何もない。ならば少しくらい付き合っても良いだろう。

褪せ人が座り直せば、王子は機嫌良く口を開く。

 

「じゃあ、早速武術大会の事なんだが——」

 

王子が気になるのはやはり武術大会でのこと。

負けた身で、他ならぬ勝者から助言を聞く機会に恵まれるなど早々無いだろう。

王子が当時の攻防について思い出しながら一つ一つ問いかけては、褪せ人が淡々と答えていく。

 

そんな二人のやりとりは夜が明けるまで続き、王子はまた書類の山で地獄にのたうち回るのであった。

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