今ひとたび、英雄たらんことを   作:blue man

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悪霊の迷宮

王都の一画、王城より程近い城下町の中にひっそりと佇む邸宅がある。

かつて王国が、領内を転々とする褪せ人を見かねて用意した拠点である。

 

もとよりこの男はそのようなものを必要としていない。

その気になれば、雨風を凌げる場所であればどこであっても暮らす事が出来るのだ。

 

しかし、王国としてはそうもいかない。

依頼をしたくともこの男は決まった場所には居ない。

特定の組織に所属するのを嫌うため、ギルド等にも当然所属しておらず、とにかく窓口が無いのである。

 

そういった背景から、王国の恩人にして女神の召喚者である褪せ人に用意したのがこの邸宅である。

要するに、『頼むから何もない時はここに居てくれ』という事になる。

 

そんな褪せ人の為の拠点ではあるが、実際のところ、持て余していた。

掘立て小屋だろうが何だろうが構わなかったのだが、あの王国のトップは偶々空き家だったからと無意味に大きな屋敷を用意させたのだ。

 

基本的には依頼を請け負っては魔物狩りに出掛け、この屋敷に戻ってもやる事と言えば武具の手入れと寝る事くらい。

偶に王国の者達が上がり込んで来ることもあるが、精々がその程度である。

 

そして、魔界武術大会を終え、依頼も目ぼしいものが見つからない褪せ人はこうして屋敷の中でひたすらに武具の手入れをしていたのだが。

 

「掃除が終わったわ! 次は何をすれば良いかしら?」

 

「お風呂沸かしたわよ! さっさと入っちゃって!」

 

「ご飯出来たわよ! 当然、ゆでエビもあるわ!」

 

これである。

どういう訳か屋敷にアスバールが転移門を作ったかと思えば、そこからヤハールが現れ、ひたすらに身の回りの世話を焼いてくるのだ。

それに加えて——

 

「褪せ人! ヤハールがやる事を探してますよ!」

 

「褪せ人! ヤハールがお風呂掃除してます! アタシも頑張りますよ!」

 

「褪せ人! その辺に生えてたすっぱい木の実食べます?」

 

——妖怪がうるさい。

ヤハールとの相性が異様に良いのか、カゴメが張り切るのだ。

常であれば最早慣れたもの。適当にいなしてやればそのうち勝手に満足してこの妖怪は他の連中の頑張りを見に何処かへ消えるのだが、ヤハールが居るとそうもいかない。

挙句に分体を使ってまでヤハールを応援する始末である。増えるな。

 

「そもそも何故ここに来る」

 

何故このデーモンは己の身の回りの世話まで焼いているのか。

この悪魔の主人はアスバールのはずである。

 

「勿論、お嬢……じゃなくてアスバール様の世話だってしてるわ!」

 

誇らしげに胸を張るヤハール。

この屋敷を毎日のように掃除した上でアスバールの身の回りの世話までこなしているのだという。

流石に亜神の守護者ということか。セーラにも負けず劣らずの従者であった。

だが、問題はそこではない。

 

「私の世話をする必要が無いだろう」

 

「だって貴方がアスバール様の封印を解いてくれたんでしょう? なら、私達の命の恩人、一生尽くしても返せない程の恩があるのよ!」

 

アスバールにしろ、ヤハールにしろ、ベルゼビュートの件を持ち出すのはやめて欲しかった。

偶然の産物でデーモンの一生を尽くされてはたまらない。

 

とは言え、彼女達の視点では向こう数百年はアスバールを救う為に命を使い潰す心積もりだったのだ。

たとえそれが偶然であったとしても、感謝してもしきれない恩を感じているのは事実。

 

「不要だ。そもそもアスバールから既に礼は貰っている」

 

しかし、褪せ人は不要であると断じる。既に報酬は受け取っているからだ。

その報酬である神の楔ですら、報酬にしては過剰である。

過剰な報酬に加え、従者を理由に転移門を作り、己の従者を絶えず通わせる。

外堀を埋めに掛かっている。アスバールの思惑が見え隠れしていた。

 

「そっちがそうでも私が納得出来ないのよ! 何でも良いから私を使いなさい!」

 

「そうですよ! 褪せ人が命令しないと頑張れませんよ! さぁ、早く!」

 

褪せ人が拒絶してもなお納得しないヤハール。背後でカゴメがそれに追従する。

頑張る者の味方であるこの妖怪は、今は褪せ人の敵であった。

 

恩返しを求めていない褪せ人と、恩を返さねば気は済まないヤハール。平行線であった。

 

「あの、褪せ人、少しよろしいでしょうか」

 

そのやり取りを見かねたハルモニアが褪せ人へと耳打ちをする。

 

「頭でっかちのヤハールは単に礼を拒絶しても譲らないでしょう。此処は妥協点を提示した方がよろしいかと」

 

張り切ったヤハールが気になって褪せ人の所に来てみればこの有様である。

思い込みの激しい親友が空回りするのはどうにも見ていられなかった。それ故にハルモニアは褪せ人にそれとなく助言する。

 

とはいえ、妥協のラインなど褪せ人に分かるはずもない。

僅かに思考を巡らせていると、アブグルントがヤハールへと話し掛ける。

 

「ねぇ、本当に何でも良いの?」

 

「二言はないわ! 言われた事は何だってやってみせるわよ!」

 

それを聞いたアブグルントは薄い笑みを浮かべ、ヤハールへと耳打ちする。

碌でもないことを思い付いていたのは明らかであった。

 

「じゃあ——」

 

「んなぁっ!?」

 

何事かを耳打ちされたヤハールが思わず声を上げる。

そして、驚愕と羞恥の眼差しで褪せ人へと視線を行き来させた。

 

「な、な、何てこと提案するのよ!?」

 

「あら、出来ないの?」

 

挑発するようなアブグルントの言葉に、ヤハールは狼狽える。

そして、何処か覚悟を決めたように褪せ人を見て、口を開いた。

 

「ぐっ……男の人とはそういう経験は無いけど……良いわ! やって見せるわよ!」

 

「……? よくわかりませんが頑張ると言うことですか? 頑張れますね!? 頑張りましょう!!」

 

自分で言った手前、引くに引けなくなったヤハールがヤケになったように叫ぶ。

カゴメはアブグルントの囁いた内容が分からずとも、止めるつもりは無いようだ。

このまま放置しておくと面倒事にしかならないだろう。

愉快犯達の玩具になりかけているヤハールに疲れを覚えながら、褪せ人は口を挟むのであった。

 

 

 

 

 

「むぅー、そんなので良いの?」

 

正気を取り戻したヤハールと話し、最終的に褪せ人が邸宅に居る間、定期的に食事を作ってくれれば良いということになった。

ヤハールからしてみればその程度で良いのかと不満げではあったが、褪せ人にしてみればそれで十分であった。

 

「まぁ、分かったわ。私も別に迷惑かけたい訳じゃないし」

 

そう言うと、ヤハールは転移門の方へ歩いていく。アスバールの元へ帰るのだろう。

 

「また何かあれば来るわね」

 

「転移門はそのままのつもりか」

 

「アスバール様が定期的に会いに行くからそのままにしとけって」

 

王都のど真ん中に魔界行きの門が開いているのは気になったが、アスバールがそれを悪用する事は無いだろう。

いずれにせよ連絡の手段は必要ではあった。

 

ヤハールが去るのを見送り、褪せ人が椅子に深くもたれかかる。

狭間の地では経験した事のない疲れを感じていた。特にここのところはそんな事ばかりである。

 

アブグルントの観察するような視線に、やはりこの悪魔をどうにかしないといけないのではないかと考え、諦めた。

ラインの見極めが上手いのだろう。どうにも致命的に此方を怒らせるような真似だけはしないようだった。

 

「やあ、褪せ人くんは居るかい?」

 

ヤハールが去り、間を置かずしてタラニアがやってくる。

部屋の中にいる妖怪やデーモンを見回しながら、褪せ人を見つけると此方に歩み寄る。

 

「今日は留守じゃないみたいで良かった。王国から君を連れてくるように言われてね」

 

「何の用だ」

 

タラニアがどこかほっとしたようにそう言う。

そんなタラニアに対し、褪せ人が簡潔に用件を問うた。

 

「決まっている——仕事の時間さ」

 

 

 

 

 

 

 

王城の会議室に褪せ人達が連れられれば、そこには既に王子達を始めとした主だった面々が集められていた。

 

ミレイユ、イングリッドなどの王国の主力級達からイリスを始めとした癒し手、普段ならば研究室から出る事のないトリシャの姿まである。

 

王子が褪せ人の姿を認めると、口を開いた。

 

「よく来てくれた。今回の依頼については、彼女から説明がある」

 

そう言って王子が指し示す先に居たのは、帝国の軍師にして皇帝の右腕であるレオナ。

彼女がここに居るという事は、今回の依頼が帝国絡みであると見て良いだろう。

 

「まずは此度の救援要請に応じてくれた事、感謝を述べさせてもらう」

 

そう切り出したレオナの顔は幾らか憔悴しているように見えた。

皇帝の右腕である彼女がそれを隠し切る事が出来ない事態が起きているという証左である。

 

「貴公らに依頼したいのは、悪霊の迷宮にて消息を絶った我らが皇帝陛下の救出である」

 

王子達は既に聞いていたのだろう。特に顔色を変えず、レオナの続きを待っていた。

 

「褪せ人、貴公には既に話していたな。悪霊の迷宮に、我ら帝国軍が我らがアダマス様の精神体を探しに出兵していた事について」

 

「第一陣は失敗したか」

 

確か、帝国に褪せ人が向かった際はその軍の編成時を狙われていた筈。

その第一陣が失敗し、皇帝が再度兵を率いたといったところか。

 

「そうだ。ただ、本来ならば第二陣を陛下自らが先陣に立つ必要など無かった筈なのだ」

 

しかし、そうはならなかった。

皇帝自身の意思もあったが、それ以上にベラートの反乱が尾を引いていた。

白の王国時代からの血を引く貴族、それも伯爵が剣を向けたのだ。その影響は大きい。

皇帝の求心力に疑念を持たれるより先に、結果で信頼を取り戻す必要性が出たのだ。

アダマスの精神体の救出。この悲願を他ならぬ皇帝の手で叶えてしまえば、皇帝の地位は盤石となる。

皇帝は必要に迫られ、先陣を切ることとなったのだ。

 

「そんな陛下の率いる第二陣の消息が途絶えたのだ」

 

「そこで王国を頼ったという訳か」

 

「最早貴国の精鋭達を頼る他無いのだ。実に情けない話だが……」

 

この女軍師が憔悴している理由も分かるというものだった。

何せ国のトップが行方不明、そしてそれを他国に助けてもらおうと言うのだ。

その心労は筆舌にし難い。

 

「構わないさ、同盟国だからな。そこはお互い様といったところだろう」

 

レオナの絞り出すような声に、王子が優しげに返す。

この男がこういった話を断る事は無いだろう。何せ全てを救うと、本気で誓い、そこへ向けて邁進しているのだから。

ましてや、白の皇帝とは個人的な友誼を結んでいる。助けないという選択肢はありはしないだろう。

 

「まずは情報が欲しい、悪霊の迷宮について、知っている事を教えてくれ」

 

「……承知した。では、悪霊の迷宮、その表層で得られた情報を説明する」

 

王子の言葉に、気を取り直したレオナが資料を片手に説明を始める。

 

「この迷宮はかなり特殊な術が施されているようだ。端的に言うならば、『特定の条件に当てはまる兵種の力を奪い去る』といったところか」

 

「特定の条件、ですか」

 

レオナの説明に、ミレイユが怪訝な顔をする。

特定の兵種というのが何を指すのか、それが分からなければ何とも言えないといったところか。

 

「実際に確認されているのは、『癒し手の禁止』、『重装の禁止』、『射手の禁止』などだな。階層ごとに条件が変わるようだ」

 

「何というか、侵入者を拒む為というよりは……」

 

「やはりそう思うか。或いはこの迷宮を作った主は、別の目的があったのかも知れないが……」

 

王子の言葉に、レオナも同意を示す。条件を絞る事で術式の力を高める事自体はそう珍しくはない。

しかし、今回の迷宮では、その条件の指定方法がどうにも侵入者を拒む為のものとは思えなかったのだ。

 

それは最早知り得ない事であった。

今分かっているのは、ある意味で強大な魔物が居るよりも厄介な迷宮であるということだけ。

 

「いずれにせよ、今回の迷宮では特定の兵種に依存した作戦は望めない。奥に行くには、多様な兵種で固める必要が出てくるだろう」

 

「それで、彼女達を集めたということか」

 

この顔ぶれはつまり、各階層毎に戦えない者達が出ても対応出来るようにする為の面々であると、そういう事なのだろう。

 

「危険な任務になる。どうか、力を貸して欲しい」

 

「そういう事だ。受けてくれるな?」

 

真摯に頭を下げて頼むレオナに、王子が此方を見て問う。

 

「問題はない。受けよう」

 

「女神の救出、実にドラマチックで良いじゃないか。当然、僕も問題ないよ」

 

褪せ人が答え、タラニアもそれに追従する。

もとより危険は承知、否やは無かった。

 

「よし、これで戦力は揃った、早速だが——」

 

「あ、あの!」

 

王子が出発に向けての作戦会議をしようとしたところで、イリスが慌てたように手を挙げる。

 

「どうしたんだ? イリス」

 

王子がイリスへと発言を促した。

何処か心配そうに此方を見遣るイリスを疑問に思いながら、褪せ人は彼女の発言を待った。

 

「先程の条件を聞く限りですが……その、大体全部褪せ人様は当て嵌まってしまうのでは……」

 

「……」

 

レオナが例に出した『癒し手の禁止』『重装の禁止』『射手の禁止』。

その悉くが、褪せ人に当て嵌まっているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国の飛空船に乗り、王国の一行は悪霊の迷宮へと辿り着く。

辺りは薄暗く、しかし異様に広いその空間は、恐らくは魔力によって歪んでしまっているのだろう。

 

「ここからが第一階層になる」

 

「確か、『癒し手の禁止』だったか」

 

第一階層の入り口にまで案内される。

ここから先は癒し手達の力が奪われるのだという。

一見しても、その階層に大きな変化は無かった。

 

「間違いない。皇帝達は此処を通っている」

 

迷宮を先導し、皇帝の飼い犬たるキンドライヒが、その優れた嗅覚を使い、皇帝が間違いなくここを訪れた事を確認する。

それを受けて、一行は第一階層へと足を踏み入れた。

 

「うっ、これは……」

 

「大丈夫か? イリス」

 

「はい、ですが確かに、この階層では回復を行う事は出来ないみたいです」

 

足を踏み入れた途端にしゃがみ込んでしまったイリスへと王子が心配そうに声を掛ける。

入った途端に命を持っていくようなペナルティが無いのは確認済。しかし、歩くのも億劫になるほどの強い脱力感がイリスを襲っていた。

 

「褪せ人は……問題無さそうだな」

 

次いで王子が褪せ人の方を見遣る。

しかし、今のところ褪せ人に変わりはない。

褪せ人が試しにと回復の祈祷を使用する。

 

「……駄目だな。回復の祈祷を使おうとすると、力を削がれるようだ」

 

「お前の場合は動きを制限されるという事か」

 

しかし、回復の祈祷は不発に終わる。

どうやら異界の住人である為か、若干作用する効果に違いがあるらしい。特定の効果を齎す行動、装備を禁じられたといったところか。

若干窮屈だが、これは寧ろ褪せ人にとって有利な仕様だろう。

条件に当て嵌まった時点で力を削がれるわけでは無いのならば、装備と行動を逐一変えてしまえばほぼ全ての階層で褪せ人が活動出来るという事なのだから。

 

「回復を縛れば何の問題も無いようだ」

 

「武術大会の時も思いましたが、味方になるとその対応の幅広さは心強いですね」

 

イングリッドが感心したような声を上げる。

敵に回ればどこまでも恐ろしい相手なのは先の武術大会で痛い程によく分かっていた。

しかし、味方になればその手札の多さは頼もしいことこの上ない。特にこの悪霊の迷宮においては相性が良かった。

 

「うっ……くぅ……」

 

「立てるか」

 

「すみません、今少しお待ちを——ってきゃあ!」

 

力を削がれ、立つ事すらままならないイリスを見かねて褪せ人が抱きかかえる。

思いもよらない行動にイリスは素っ頓狂な声を上げ、やがて羞恥から縮こまってしまった。

 

「あら、役得ね、聖女様?」

 

「うぅ……恥ずかしい……」

 

からかい混じりのアブグルントの言葉に、イリスがか細い声を返した。

長丁場が想定されるのだ。彼女を置いて行くという選択肢は無かった。

 

キンドライヒの先導の元、褪せ人達は迷宮を進んでいく。時折魔物が現れるも、王国軍の主力相手では何の障害にもなり得なかった。

問題なく第一階層が突破される。

 

「やっと息苦しさが無くなりましたね……」

 

第二階層に辿り着き、イリスがほっとしたような声を上げる。

ここからは回復の祈祷が使えるという事だろう。

 

第二階層は『射手の禁止』。

つまりは弓矢を使わなければ問題無いという事である。

王子達が迷宮を進んでいく。

 

「あれは、宝箱か」

 

「道のど真ん中だぞ? 何だってこんな——あっ、待て!」

 

不自然に配置された宝箱に一行が訝しむ中、褪せ人が前へ出る。

そして、レオナの静止を聞く事なく、褪せ人が宝箱を開けた。

 

宝箱の中には何もなく、代わりに見えたのは牙の生え揃った口内。ミミックと呼ばれる魔物である。

宝箱に擬態した魔物が大きく口を開くと、そのまま褪せ人の上半身を飲み込んでいく。

 

「褪せ人君!?」

 

「馬鹿、どう考えても罠だろう!?」

 

「何だってそう変なところで抜けてるんだ! 引っ張り出せ!」

 

慌てたように此方へ駆け寄ってくる面々。

しかし、ミミックに上半身を飲み込まれながらも、褪せ人が祈祷を発動させた。

黄金の衝撃波が褪せ人を中心に放たれる。

ミミックの体内で放たれたそれは、聖性の伴った爆発を生み、ミミックの体を四散させた。

 

飛び散る肉片が迷宮の壁を汚す。

そして、何事もなく褪せ人は立ち上がった。

 

「何だあれは」

 

「ミミック、宝箱に擬態する魔物だね。あんな風に、不用意に宝箱を開ける冒険者達を餌にしているのさ」

 

イリスの回復を受けながら、褪せ人がミミックについて問うた。その問いにトリシャが答える。

トリシャからミミックの説明を聞いた褪せ人の姿からは、普段動じる事のない褪せ人の静かな怒りを感じさせた。アブグルントが笑みを浮かべる。

 

「この迷宮、ミミックの溜まり場のようだ。今度からは不用意に宝箱を開けるんじゃないぞ」

 

「……この迷宮は嫌いだ」

 

レオナからの忠告を受け、褪せ人は再び歩き出した。

行動を縛られ、宝箱は擬態した魔物。

褪せ人はこの迷宮を好きになれそうには無かった。




絶対居るだろと最後まで宝箱に殴りかかったのが私です。
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