今ひとたび、英雄たらんことを   作:blue man

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おそらくエビ

褪せ人達が声の方へと向かうと、そこに居たのは魚人達とそれから逃げるようにして泳ぐ女の姿。

人間ではない。上半身こそ人間と同じだが、その下半身は魚の尾である。

そんな彼女は、泳ぎながら器用にも助けを求める声を上げ続けていた。

 

「あれは……魚人か」

 

「人魚ですね、私も実際に見るのは初めてですが」

 

魚人に追われる人魚。状況の把握が最優先だろう。助けを求められているとはいえ、迂闊に魚人に手を出す訳にもいかない。これから己達は深海の王と交渉しなければならないのだ。

万が一に目の前の魚人達がクラールフの手のものならば、その時点で交渉が不利になるのは目に見えている。

 

「脳筋かと思っていたが、多少は考える頭があるらしい。だが、今回は気にしなくて良いぞ」

 

逡巡する褪せ人に、背後からイヴリールの声が掛かる。

その口振りは、何かを知っているようだった。

 

「どういう事だ」

 

「おれ達の用があるのはそっちの人魚で、そしてあの人魚はクラールフの配下だ。だから素直に助けて構わん」

 

イヴリールがそう言うと、銃を構える。華奢な少女の身の丈にはまるで不釣り合いなそれを躊躇いなく魚人に向けて放った。

重い金属音と共に放たれた銃弾は、寸分の狂いなく魚人の一体の頭部を砕き、弾け飛ばした。

残された身体が力無く海面を漂い、海を赤く染める。

 

突如仲間を討たれた魚人達が、此方に気付き動揺を見せる。

 

「溺れる者共が何故ここに!?」

 

そんな魚人の叫びに、しかし返されたのは雷の槍だった。

凄まじい速さで飛来するそれが、魚人を穿つ。そして、伝播する雷撃が周囲の魚人達をも巻き込んだ。

 

「ぐあぁぁ!? クソッ、一度撤退する! 狙い撃ちにされるぞ!」

 

雷撃に晒されながらも、必死に叫ぶ魚人の一人。恐らくは率いている隊長格だろうその魚人の一言に一斉に魚人達が潜る。

二撃目の雷槍が水面で爆ぜるも、水中の魚人を捕える事は無かった。

 

「褪せ人君! 一体何が……」

 

遅れて来たタラニア達に、褪せ人が浜辺に上がって来た人魚を顎で指し示す。下半身を器用に動かしながら、彼女は褪せ人達の下までやってきた。

 

「た、助かりました〜! あの、私はハルフゥって言います! クラールフ様の——」

 

「——使いだろう。お前を待っていた」

 

「へ?」

 

ハルフゥと名乗った人魚はイヴリールの言葉に目を白黒させる。クラールフからは、ただ無人島に居る人間達を案内しろと言われただけ。そしてその事は彼らが知らないはずだった。

 

「この島はクラールフの管理下にある。あの亜神が居る所へ向かう為の海流があるからな。此処におれが来れば、奴は無視出来んと踏んだ」

 

イヴリールの言う準備とは、クラールフが海底への案内を差し向ける事を見越しての事だったらしい。千年も航海をしていれば、深海の王の考えもある程度は読めるらしい。

 

「さ、流石は渇いた地——じゃなくて地上の英雄様! それじゃあ人魚の秘術で海底へ——」

 

「——その前にやる事がある」

 

早速とばかりにハルフゥが何事かを言い終えるより先に、褪せ人が武器を構える。

その視線の先は、先程魚人が沈んでいった海面。

 

その海中より、複数の影が這い出るようにして浜辺へと現れた。

赤い甲殻に四本の節足。何より目を引くのは鋏だろうか。片方だけ異常に発達したそれは、その巨体と比しても不釣り合いだった。

新たな魔物。しかし、褪せ人はその魔物についてはよく知っていた。

 

「——蟹か」

 

「クラブウォリアー、海に棲息する魔物だね。硬い甲殻と見ての通り巨大な鋏が厄介な相手だ」

 

逃げた魚人達が差し向けた刺客だろう。クラブウォリアーも此方への敵意を隠すつもりはないようだ。

ガチガチと威嚇するように鋏を鳴らすクラブウォリアーを前に褪せ人が大槌を構える。

相手は蟹。——欲を言えば、あまり派手に傷付けたくはない。

 

「行くぞ」

 

「何かテンション高いね?」

 

心なしか気合いの入った褪せ人の姿に、タラニアが首を傾げる。

すると思い出したようにへリューズが「あっ」と声を上げた。

 

「そういえば蟹、お好きなんでしたっけ?」

 

この男は海老と蟹が好きなのだった。今この瞬間、褪せ人は目の前のクラブウォリアーを完全に食材としてしか見ていない。

イヴリールがその様子を見て、口角を吊り上げる。

 

「確か王子が王国から料理人を連れてきていたな。天界の神御用達の凄腕だ」

 

——存分に狩り、殺したまえよ。

 

その一言が決定打であった。

褪せ人と王国の凄腕達の手によって、クラブウォリアー達の運命は決した。

 

 

 

 

「何をされているので?」

 

王国の面々がクラブウォリアーを回収する中、褪せ人が一体の個体を物色するのを見つけたへリューズが声をかける。

 

「やはり、あったか」

 

「それは……」

 

「蟹たまだ」

 

褪せ人が熱心に袋に集めていたのは蟹のタマゴ——いわゆる蟹たまであった。

狭間の地では蟹のタマゴとは芯から温まる滋養食であり、何より——とてもうまいのだ。恐らくこれも、とてもうまい。

興味深げなへリューズに、褪せ人がタマゴの入った袋を掲げながら口を開く。

 

「蟹は肉よりタマゴなのだ」

 

「そうなのですか? 私は身の方が好きなんですけど……」

 

「僕も普通に身の方が好きかな」

 

「……」

 

へリューズ、タラニアに否定され、褪せ人はフーロンの方へ視線を向けるが、彼女も無言でクラブウォリアーの方を指差していた。

アブグルントに聞いても無駄だろう。あの悪魔は食事という行為自体に関心が薄い。

 

褪せ人が静かに掲げていた袋を降ろす。

物の分からぬ者達だと、そう思いながらも僅かに肩を落とす褪せ人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

「えーそれでは! 皆さんを海底に案内しますね!」

 

予定外の騒動で腹を満たした褪せ人達は再びデッドマン号へと戻った。光の届かぬ深き海へ——ハルフゥの案内の下、船は静かに沈んでいく。

 

「……便利なものだな、これは」

 

褪せ人が興味深げに己の身体を見遣る。

 

今現在、褪せ人達は海中へと潜り、海流に乗って移動している最中である。

ハルフゥによってかけられた人魚の秘術が、水中での呼吸を可能としていた。

 

褪せ人が甲板で剣を振るう。

多少動きが鈍っているのを感じるものの、全く戦えないこともない。全身を水に包まれているにも関わらず、ここまで動けるというのは何とも不思議な感覚であった。

 

「今はこうして問題ないと思いますが、戦闘のように激しく動くと秘術でも呼吸が追いつかないかも知れませんので注意してくださいね」

 

ハルフゥの注意喚起の通り、完全に深海を克服出来たわけではない。

動きは鈍り、薄い呼吸は体力を削るだろう。もし深海で戦いが起きるような事があれば、その事は念頭に置いておかなければならない。

 

デッドマン号の甲板より、深海の景色を眺める。

薄暗く、音のない世界だった。陽の光が届かないそこは、しかし発光する生命の灯達で彩られている。

海底の植物が穏やかに揺れる様は、まるで風に揺れる草原のようだった。

 

地上とは異なる、静かで幻想的な世界。

狭間の地の、黄金樹から離れた地下世界を思い起こさせた。

 

「綺麗ですね……」

 

「あぁ、まさか深海にまで潜る事になるなんてね」

 

皆一様に、その神秘的な光景に目を奪われる。地上に生きる者達がこれを見る機会などまず訪れないだろう。

 

「うーん、見慣れてる私にはそこまでなんですけどね。やっぱり地上ですよ! 青い空、緑の木々に白い砂浜!」

 

そんな王国の者達に、ハルフゥは地上の美しさを熱弁する。

彼女にしてみれば、深海の光景など見慣れたもの。地上に憧れを抱く彼女にしてみれば一瞬とはいえ浜辺に上がって見た光景の方が余程胸を打つものだった。

 

「でも、クラールフ様は地上は危険だから近寄るなと……」

 

「まぁ……世間知らずの人魚が歩くにはちょっと危ないかもね」

 

先とは打って変わって沈んだ声で話すハルフゥの姿に、しかしクラールフの言うことも分からなくはないとタラニアが口を開く。

人魚という珍しい、それも見目麗しい女が一人出歩くには少々地上は厳しいところではあるだろう。

 

「では、今回の交渉が上手くいった後に、王子とクラールフに自身を深海の大使として売り込めば良いのでは? 王国の庇護があるとなればクラールフも渋ることは無いでしょうから」

 

地上への憧れを捨てきれない少女に、へリューズがそう提案した。

今回の交渉、単に神の楔を受け取って終わり、ということにはならないだろう。

深海の亜神はクラールフだけではなく、そして間違いなく深海も神々の争いに巻き込まれていく。

そうなれば彼も深海の民を守る為にも魔王を討った王国の力は欲しているだろう。

今後、深海と王国が同盟を結ぶというのであれば、その大使としての役割をハルフゥに任せるというのは決して悪い提案では無いはずだった。

 

「おぉ、素晴らしいお考えです! 流石は冥界の神様!」

 

「この程度で持ち上げるものではありませんよ。生命ある者の憧れ、その背を押す事に何も特別な事は無いのですから」

 

「その発言がもう神様っぽい……! いや、神様です!」

 

へリューズの提案は、ハルフゥにとって非常に魅力的なものだったらしい。

嬉しさのあまり、表情だけでなく彼女の尾が甲板を叩いていた。

 

「そうとなれば、びたんびたんと案内しちゃいますよー!」

 

改めて気合いを入れ直すハルフゥと共に、デッドマン号はより深く海底へと沈んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海流に身を任せて進む事しばらく。薄暗い海の底が緩やかに光を取り戻し始めた。

ハルフゥが甲板より行き先を指し示す。その先には大小の建物。あれこそが深海の民の住まう街という事だろう。

そして、さらにその奥には石造りの巨大な建造物。

 

「あそこがクラールフ様の居る海底神殿です! あと少しですよー!」

 

ハルフゥが船を離れて泳ぎ出す。

褪せ人達もまた、船を降りて神殿へと向かう。

街の魚人達が怪訝な目で此方を見遣る。それも当然だろう、彼等にしてみれば、居るはずのない渇いた地の民がぞろぞろと海底を歩いているのだから。騒ぎにならないのはハルフゥの存在が大きかった。

 

「待たれよ、この先はクラールフ様のおわす神殿。故なき者を通すわけにはいかん」

 

海底神殿を目前に、衛兵のマーマンに呼び止められる。

ハルフゥが彼らに対して口を開いた。

 

「この方達はクラールフ様より案内するように言われた客人の方です。ご確認ください」

 

ハルフゥの言葉に、マーマンは一層鋭い視線を王子率いる王国一行へと向ける。

 

「海巫女殿……そうか、この者達が王国の……」

 

「はい! ですのでクラールフ様にお取次ぎを——」

 

「——尚のこと、認めるわけにはいかない」

 

衛兵のマーマンが槍を褪せ人達へと向ける。

 

「深海の民の問題は、深海の民だけで解決すべきだ。いくらクラールフ様がお認めになられようとも、渇いた地の者達の力を借りるなど……!」

 

「あ、あの! 何か勘違いをしてませんか!? この方達はただ……!」

 

予想外のマーマンの行動にハルフゥは必死に説得を試みる。

彼女は既に王国の者達の実力を見ている。どう見繕っても目の前のマーマンが勝てる相手ではない。

 

一触即発の気配に、褪せ人が武具を構える。深海での初戦闘、慣らしには丁度いいだろう。冷ややかな殺意が、兜の奥の瞳に宿る。

その背後で、イヴリールもまた銃を構えながら口を開いた。

 

「ふん、喧嘩を吹っかけたのはそちらだ。どうなっても後悔するなよ?」

 

「あわわ……! ま、待ってください! これは何かの行き違いで……!」

 

ハルフゥがマーマンと王国の間で必死に止めようとするも、まるで話を聞いてもらえる気配はない。

戦闘は避けられない、そうハルフゥが諦めかけていたその時だった。

 

「——よせ、彼らは我の客人だ」

 

海底神殿の奥より現れたのはクラールフであった。自身の主人の登場に、槍を構えていたマーマンはすぐさま槍を捨てて跪く。

 

「クラールフ様……! ですが、我らはまだ……!」

 

「彼らの実力は我がよく知っている。後の事は我に任せよ」

 

衛兵のマーマンはクラールフの言葉を受けると、今度こそ海底神殿の入り口を開けた。

クラールフが王国へと視線を向けると、口を開く。

 

「すまなかったな、奥にて話をするとしよう」

 

クラールフの先導に従い、褪せ人達は静かに神殿の門へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

海底神殿の奥、席を設けられた王国一行に対してクラールフが謝罪を口にする。

 

「改めて、先程はすまなかった。今現在、この国は他の魚人の国との小競り合いの最中。それ故に少々気が立っているのだ」

 

「小競り合い?」

 

その言葉に、王子が疑問の声を上げる。

深海の王たるクラールフ。そんな彼に反旗を翻す存在が居るということに王子は僅かに目を細める。

 

「我とてこの広い深海の全てを治めているわけではない。当然、他の亜神達の庇護下にある者達も居る」

 

「つまり、他の海の亜神がクラールフに対して敵対しているという事か」

 

神の楔を巡る争い。それが既に深海まで波及しているということだろう。

王子はクラールフへと世界樹の魔物化についてと、天界の争いを止めるべく神の楔を探し求めている事を包み隠さずに話した。

事のあらましを聞いたクラールフが思案するように目を閉じる。

 

「成程、神の楔を作るにあたう神は最早おらぬ。こうなるのは必定か……」

 

そして、目を開けたクラールフは王子へと言葉を紡ぐ。

 

「確かに、この海底神殿には我がかつて生み出した神の楔が残されている」

 

「それを譲ってもらう事は出来ないだろうか」

 

天界の亜神達が争ってまで欲する神の楔。それを譲り受ける事が出来るかはかなり難しい話ではあった。

しかし、クラールフは僅かな逡巡の後に頷く。

 

「我は最早天界を追放された身、神の楔に未練はない。譲ってやる事もやぶさかではないが——条件がある」

 

「深海の戦いに助勢しろと、そういう事だな?」

 

王子の言葉に、クラールフは首肯する。

 

「然り、我は最早天界に興味などありはしない。この深海に住まう愛しき民達を守る事こそが、我の亜神としての最後の望みよ」

 

神の楔を使えば、海底神殿を中心に結界を張る事は容易だろう。だが、根本的な解決にはなりはしない。

そして、クラールフと敵対する亜神もまた、神の楔を持ち合わせているはず。ならば、その結果とて決して安全とは言い難い。

 

神の楔を手放す事で、魔王を討った英雄達を抱える王国と同盟を結ぶ。それは決して悪い選択肢では無かった。

 

「深海の争い、汝らの力を今こそ貸してはもらえぬだろうか」

 

クラールフの求めに、当然王子の答えは決まっていた。

 

「深海の争いは、俺達にとっても決して無視できるものではない。同盟については、此方としても望むところだ」

 

「……感謝する、渇いた地の王子よ」

 

こうして、王国は天界と深海、二つの戦場を進む事を余儀なくされた。

同盟の話が滞りなく進んだところで、クラールフは褪せ人へと視線を向ける。

 

「時に褪せ人よ、我の矛は持っているかね」

 

「……返すつもりはない」

 

クラールフの言葉に、褪せ人はかつての戦いで手に入れた海神の矛を取り出す。戦場にて打ち倒して手に入れたもの、今更返すつもりは毛頭なかった。

 

「くく、図々しいものだ。だが——それでこそ、我を討った戦士よ」

 

褪せ人の言葉に、苦笑する。追放された身とはいえ、人の身で己を打ち倒したのだ。その戦士から今更武器を返せなどと言うつもりはない。

差し出された矛に手を翳すと、すぐさま褪せ人へと手渡した。

 

「我の加護を与えた。深海で矛を振るうのであれば、その真価を発揮するだろう」

 

褪せ人が矛を受け取り、懐へとしまう。

今後深海での戦いは避けられない。クラールフの加護は、今後間違いなく役立つだろう。

 

神の楔を手に入れ、深海の王との同盟を結ぶ事に成功した王子達はその場を後にする。

目指すは天界、神々の争いを止めるべく王子達は地上へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

再び海流に乗り、地上を目指すデッドマン号。

 

「順調だね。この調子で天界まで行けると良いんだけど」

 

タラニアの言うように、今回は極めて順調に事が進んだ。妨害という妨害も、最初の魚人達くらいのものである。

 

「何か……物足りませんね!?」

 

「そうよね、ちょっとつまらないわ」

 

「……そこの人外達の言うことは無視で良いと思いますよ」

 

艱難辛苦を求める妖怪と悪魔の言葉に、フーロンが呆れた視線を隠さない。

順風満帆、良いではないかそれで。自分達は遊びに来たのではないのだから。

 

そんな会話が甲板で繰り広げられる中、深海の景色を眺めていたへリューズが何かに気付く。

 

「おや? 何かが此方へと向かって来ているようですね……」

 

深海の暗がり故に未だ判然とはしないが、複数の影が此方へと向かってきている。

そんなへリューズの言葉に、褪せ人はじっとその影を観察する。

深海の静寂を破るように、水の流れがざわついた。

 

凄まじい速度で海流に乗るデッドマン号へと迫るそれが、近づくにつれその姿を露わにする。

 

「ソ、ソードギルマン!? こんなところにどうして……!?」

 

大使として王国に同行することになったハルフゥが驚きの声を上げる。

 

ソードギルマン。深海にて活動するギルマンの上位種であり、素早い動きと剣のような片腕で獲物を斬り裂く深海の戦士である。

そんなソードギルマンがデッドマン号に追いすがり、乗り込もうとしている。その目的は明白だった。

 

「おれ達を地上に返したくないらしい。どこのどいつか知らないが、デッドマン号に喧嘩を売るとはな」

 

イヴリールが銃を構え、褪せ人も先程クラールフより加護を与えられた矛を握る。

戦闘は避けられない。王国の一行が戦闘準備に取り掛かる中、一際大きな声が響き渡った。

 

「シャァァァァァァック!! テメェらが王国だなァ!? 喧嘩を売りに来たぜェェ!!」

 

ソードギルマンを押し分けるようにして一際巨大なギルマンが姿を現す。

黒い巨体に、その身の丈程の重厚な錨を携えたそれは、ソードギルマンと一線を画す。

その姿を見たハルフゥは青い顔で震え上がった。

 

「そんな、シャークギルマンまで!?」

 

「知っているのか」

 

「ギルマンの希少種、あまりにも凶暴で誰の命令も聞かないって……!」

 

シャークギルマンの戦士が甲板に降り立つ。

巨体相応の重量がデッドマン号を揺らす。そして、錨を振り回しながら高々に叫んだ。

 

「一番強え戦士を出しなァ! このオレサマがエラを引っ剥がしてやるぜェ!!」

 

その言葉に、褪せ人が前に出る。此処は、己が受け持つべきだろう。

 

「あれは私が相手をする」

 

「良いだろう、ソードギルマンどもはおれ達が受け持つ。噂に聞こえた異界の英雄の力、見せてみろ」

 

イヴリールはそう言うと、その場を離れる。

周囲でソードギルマン達との戦いが始まる中、褪せ人は大盾と矛を手にシャークギルマンと相対する。

 

「クククッ、テメェが一番強い戦士か!? いいね、クラールフのとこの雑魚よりは期待出来そうだ!」

 

嬉しそうに目を細めながらシャークギルマンが褪せ人を見る。

獰猛な視線に晒されながらも褪せ人は無言で武器を構えた。

 

「シャァァァァァック!! オレサマはシャークギルマンの戦士、スカー! 溺れる民の戦士サマよぉ、テメェの魂を見せてみな!!」

 

——怒りの鮫戦士、スカー

 

戦いを求める暴牙の咆哮が、異界の戦士へと向けられた。




深海で兆し出せるのでは?と考えましたが流石にライブ感が凄まじいので保留。
でも折角なのでナイトレイン要素もどこかで輸入したいところ。
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