魔法少女ってそういうこと? 作:どん女好?
「君、魔法少女になってみない?」
「……」
東京都港区のある細い路地。そこを歩いていた少年、
突如として目の前に現れた小さな生き物は一体何なのだ。その小さな羽で宙に浮いていることも謎だし、何よりそのあざとい顔が好みでは無い。もっとのぺーっとした……そう、ヌオーみたいな顔が良い。
「……疲れてんのかな」
千暁は目の前の存在を疲れから来る幻覚として処理した。一応横に避けてその場を去ろうとする。
「ちょっ、ちょっと待って!」
小さな生き物は焦ったように千暁の周囲をぐるぐると回る。幻覚のくせに動き回るなよ、と千暁は思った。
「君、今僕を見て幻覚だと思ったね? でも残念、僕は魔法界からのスカウトマン。ちゃんと実在するのさ」
「……はぁ」
魔法界からのスカウトマン。成程、魔法界っていう事務所からのスカウトなわけだ。随分と高度な技術を持っているらしい。こんなラジコンをスカウト寄越すとは。
千暁はこの胡散臭いラジコンの言うことを冗談九割で聞くことにした。最悪壊して逃げよう。傘を握る右手に意識を集中させる。
「んで、魔法少女だっけ? コスプレイヤーでも探してるのか? 生憎そういう趣味は無いんだけど」
「違うんだな〜これが。それじゃあ一般人の君にも分かりやすいように説明してあげよう!」
「は? うざ」
ラジコンがペラペラと説明を始める。実際説明は分かりやすく千暁はその話をすんなりと頭に入れることが出来た。
「ふーん。魔法界から凶暴な魔獣が逃げ出し、それを捕まえたいけどアンタらじゃここで上手く力を使えないから、代わりに現地の人間に協力してもらおうと。これで合ってる?」
「バッチリさ! 君頭良いね」
「……妙に上からくんだよなコイツ」
「どうかな、協力してくれない?」
「嫌だね」
即答である。魔獣を捕まえる、そんなワードを聞いて危険でないはずがない。仮にするとしてもそれなりの対価が無ければ話にならない。
「ちなみに報酬は何でも好きな願いを一つだけ叶えてあげるよ」
「……何でも?」
「あっ、世界征服とかそういう悪い願いは無しね。こちらが了承する範囲内で」
「別にそんなことは興味無いけど。……そうか、何でもね」
千暁は考え込む。もしもこのラジコンの言うことが本当だとしたら、彼のささやかな野望を叶えることが出来る絶好のチャンスだと言える。
「でも、俺はそんな魔獣と戦う力なんて無いぞ。体力テストだってそんなに成績良くないし」
「それについては問題無しさ。僕と契約すれば魔法少女としての力を君に与えることが出来るからね!」
「そこで魔法少女か……ていうか俺男だけど、何で魔法少女なんだ?」
「こっちの趣……それが掟だからね」
「おい今趣味って言いかけたろ。言いかけたよな?」
「それで契約するの? しないの?」
はぐらかされた。
しかし、この機会を逃すのは惜しい。それに、もし仮にこの話が全て嘘で魔獣が暴れていようがいまいが、この胡散臭い生き物に痛い目を見せてやればいいだけだ。
そして千暁は決断した。
「……よし、乗った」
「ご契約ありがとうございまーす! じゃあこの書類に色々記入してね」
「急にリアルだな……」
何処からともなく紙とペンが現れた。記入事項は名前と年齢、身長体重、好きな女の子のタイプ、そして叶えたい願いと変わったものだった。
「何この好きなタイプって。必要か?」
「その人のことを知るにはまず好きなタイプを聞かなくちゃ。常識じゃない?」
「魔法界の常識持ち込むなよ……全く」
千暁は一通りの記入を行う。名前は赤倉千暁、15歳、167cm、52kg、好きなタイプはロリ巨乳、願いは……。
書き終えた書類を渡すと、ラジコンがそれを受け取り確認する。
「……うん! 問題無し。じゃあ契約しまーす! お手を拝借」
「ほい」
互いに手を取り、契約の呪文を唱える。
「汝、赤倉千暁は魔法少女として魔獣と戦うことを誓うか」
「え? あっ、誓います」
すると手と手が光だし、やがてその光は千暁の身体を包み込む。
「よし、これで契約完了だね。君の中に魔力を流し込んだよ。これで君は魔獣と戦う力を手に入れたわけだ」
光が収まり、中から千暁が姿を現す。彼は自らの身体に違和感を覚えていた。何だかいつもより視点が低い気がする。
下を向いてすぐに目に付いたのは豊かに実った双丘。
「……は?」
「どう? これで君も魔法少女さ!」
声もいつもと違った可愛らしいもの。千暁は自らの身体をあちこち触る。自分の身体とは思えない程に柔らかく、細い身体である。そして何よりもう一人の自分と言えるものが股から消え去っていた。
「お、女になってる……?」
「今の君は女の子さ!」
「……嘘」
「これが証拠」
ラジコンが魔法で取り出した手鏡を千暁に向ける。そこには自分の顔ではなく美少女の顔があった。服も学ランではなくアニメに出てきそうな赤いフリフリの衣装に変わっていた。
「えっ、かわよ。これが俺なのか?」
「そうとも。君の思い描いた理想のロリ巨乳そのものさ」
「……ラジコン」
「僕はラジコンじゃなくてロールっていう名前があるんだけど。で、何かな?」
「……ありがとう」
瞳から涙を流しながら、ラジコン……もといロールに握手を求める。
「よ、喜んでくれたみたいで良かったよ」
「お前良い奴だったんだな。疑って悪かったよ」
若干引き気味に返したロール。興味深そうに自身の胸や太ももを触り始めた千暁に少し呆れていた。
「……えっと、じゃあ魔獣を捕まえに行こうか」
「ちょっと待て、もうちょい堪能させろ」
「どうしよう、この子一人じゃ不安だな」
ロールの本音だった。この変態一人だけではもしかしたらやられてしまうかもしれない。仕方なく周囲の気配を探り、目当ての位置を補足するとパンツの中をまさぐる千暁に声をかけた。控えめに言って死んで欲しかった。
「少し離れた所にもう一人魔法少女がいるんだ。彼女と合流しよう」
「ん? おぉ、分かった」
「じゃあ転移の魔法で彼女がいる場所まで向かうよ。手を拭いてから僕に掴まって」
千暁は言われるがままにハンカチで手を拭くと、ロールに掴まり魔法の発動を待つ。
そして視界が眩い光に包まれた。
千暁が再び目を開ける。そこには一人の魔法少女がいた。見た目は大学生くらいだろうか? ポニーテールの濃い茶髪に大きな琥珀色の瞳が特徴的だった。背は高い方だろう。
「……む?」
そして最悪なのが、女性物のパンツを頭に被っていることだった。
千暁が徐ろにスマホを取りだす。
「もしもし警察ですか? 下着を被った変態がいます」
「ま、待て! 誤解だ!」
「どこがだよ!?」
千暁が警察に電話するのを止めようと下着を被った変態……もとい魔法少女は無駄に凛とした声で弁解を始める。弁解する余地などどこにも無いと言うのに。
「決して下着泥棒をしたわけではないぞ! これはれっきとした私のパンツだ!」
「変態には変わりねぇんだよバカが!」
「それ君が言えることかな……」
変態同士が言い争うという最悪の展開に頭を抱えてしまうロール。
「紹介が遅れた。私の名は
「おう自己紹介より先におめぇは頭のパンツ脱げや」
「それは出来ない。女になった今だから堂々と出来るが、女性物のパンツを被ることは私の長年の夢だったのだから」
「しかもこいつも男かよ気持ちわりぃな!」
「も、ということは君も男か。……ふん。ロリ巨乳とは、君も趣味が悪い」
「あ? んだとコラ。ロリ巨乳こそ至高だろうが」
「その小さな身体に見合わぬ豊満な胸、歪としか言いようがないな。見ろ、この私の高身長かつスレンダーなボディを。美しいだろう?」
「まな板には興味ないね」
「は?」
「あ?」
互いの思想がぶつかり合いバチバチと火花を散らす。
「ちょっと、二人とも喧嘩はやめてよ」
「……ふん、まぁいいさ。今は魔獣を捕獲することが優先だ。そこのキメラも協力するのだろう?」
「誰がキメラじゃいボゲェ」
「いいか、ロリとは未成熟な身体から成り立つ神秘なのだ。君のそれはロリと巨乳、相反する属性を混ぜ合わせたキメラでしかないんだよ」
「この胸にはなぁ! 世界中の男共の夢と希望が詰まってんだよ!」
「喧嘩すんなって言ってんだろうがぁ!」
千暁と光の言い争いはロールの怒声で幕を閉じた。
そして、三人はようやく魔獣のいる場所へと歩み始めたのだった。
自分より背の高い強そうな人がタイプですっ!