というわけで俺達は200万エリスという大金の暴力によって雪精の出現するあの山にやってきた…のだが…
「おい、ダクネスお前も逃げろ!」
「誰も見ていないとはいえ、騎士たる私がモンスターを背に逃げ惑うなど!」
「馬鹿野郎!早く来いって」
「黒より黒く…」
「おいめぐみん何詠唱してんだよ、長ったらしい詠唱の前に首チョンパされるぞ!てかアクア早く行きすぎだろ、何こういう時だけ逃げ足早いんだよ」
雪山にやってきて気持ちが高まったからかアクアは雪精を捕まえて瓶に詰めだした。こいつの場合冷たいシャワシャワのためだとか、夏を涼しく過ごすためとか言うのだろうが、雪精だって高額な報酬が出ることに変わりはない。まあ、もし集める暇があるというのなら少しぐらい集めても問題は…ない?
と思った自分がいました。案の定俺達に怒った冬将軍が出現して、ものすごいスピードで襲いかかってきている。やばい、このままでは首チョンパ不可避だ。この前みたいに雪精を離して怒りを鎮めれば良いのだが、肝心のアクアはもう見えないほどに遠くまで逃げている。その方は使えないとなると…
「おい、ダクネス。俺が冬将軍の気を引くからめぐみんを連れて逃げろ。多分アクアはこの先にいるはずだから雪精を全部離すように言ってくれ」
「何を言っているカズマ、その役目なら騎士である私が!」
「既に腐りきった頭も完全になくなってしまったのですか?この前だってどれだけ心配したと思ってるんですか」
「そんなこと言ってたら3人ともお陀仏だ、ダクネス早く」
使えそうな魔法は【狙撃】ぐらいか。それに遠く離れて隠密を使うという手もある……だがこれでは正直勝算なんてない。でも、めぐみんとダクネスが死ぬくらいなら、死ぬのは俺でいい。どうせアクアがエリス様を脅迫してまた生き返らせてくれるだろう。もし無理でもその時はその時、今度こそ美少女幼馴染のいる来世を楽しもうじゃないか。俺は覚悟を決めた…その時冬将軍の後ろから強い光が差してきた。
「光よ穿て、輝く聖槍、【シャイニングジャベリン】!」
女の人の声だろうか。何か詠唱のようなものが聞こえ、その瞬間冬将軍に眩しい光のような槍が降り注がれた。咄嗟に俺は頭を守るようにして隠れるために雪に埋もれた。めぐみんの方もダクネスが盾となって守られているようで安心した。ダクネス…は耐久力だけはあるしそれに…嬉しがってるからいいか。
「何だったんだ今の!」
凄まじい音が鳴り止み雪が舞った。俺は立ち上がってめぐみん達の所に駆け寄ろうとしたが…なんと冬将軍は生きてたのだ。
「おいおいおい嘘だろ!」
なんなんだよこの冬将軍。前回来た時もそうだったが化け物すぎるだろ!そんなに異世界から来た奴らによって抱かれた幻想が強いってことか?それに今の槍みたいな攻撃は何だったんだ。もう訳わかんねえよ。
「炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、【エクスプロージョン】!」
またさっきと同じ声で詠唱されるのが聞こえた。おいちょっと待て。今エクスプロージョンって言ったか?まさか…紅魔族?あんな常人離れした攻撃だ、それなら理由も頷ける。いやちょっとまて、今爆発って言ったよな?ヤバい、今度こそ吹き飛ばされる、早く隠れないと!
俺は死にものぐるいで雪に体を埋めた。その瞬間少しだけ見える雪の隙間から、冬将軍の頭にめがけて凄まじい爆発が襲う。
「やったか!?」
フラグを立ててる自覚はあった。だが目の前で繰り広げられる魔法の打ち込みに思わず口に出てしまった。しかし…
「ですよねぇ…!」
やっぱり冬将軍はまだ立っていた。それに頭は凄い爆発を受けたはずなのに綺麗に保たれたままだ。こいつ何で死なないんだよ!
「【アクセル】!」
今度はさっきと違う声―おそらく男の人の声が聞こえた。詠唱?にしては短いが、めぐみんも省略した詠唱で【エクスプロージョン】を使っていたしそういうものもあるのだろう。
「大丈夫ですか?早くこの中に入って下さい。【ゲート】!」
「あ…お、おう」
冬将軍と魔法に呆気に取られていて気づかなかったが気づけば白いローブを来た俺と同じくらいの年齢の男が目の前に立っていた。男はまた詠唱のようなものを唱え、光る環のようなものが出現した。正直考えればいきなり凄い魔法を使う奴が現れて、良くわからない環の中に入れというのだ。こんなの怪しすぎる。だが躊躇う余裕はなかった。
「おいダクネス、めぐみんを抱えて早くこれに入れ!」
「おうカズマ、今行く」
俺はダクネスにそう促し、思い切って目の前の環の中に入った。環の中はさっきと同じ雪山のようだ。冬将軍からは結構離れることができたのか。ダクネスが入ったあとに白いローブの男と、紫がかったショートヘアの女の人も環の中に入ってきた。2人が入ったあとに環はみるみるうちに消えていった。緊張の糸が吹っ切れたように俺は仰向けに倒れ込んだ。