ファントム・アーカイブ   作:名もなきWater

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SHOW TIME

 

 思い立ったが吉日、という言葉がある。

 アビドスの一件で先生こと雨宮蓮に目を付けた便利屋68は、シャーレのオフィスに訪れていた。

 しかし、一人の少女が彼女達の行く手を阻む。

 金色の瞳と青いワンピース。頭には蝶を模したカチューシャ。

 裏社会に精通している便利屋の面々ですら一度も見たことがない少女だった。

 

「なっ……先生がいないですって!?」

 

 便利屋68の社長、陸八魔アルの声がオフィスに響く。

 

「ええ。急な予定が入ったから留守を頼む、と。つまり出張です」

「出張……? じゃあ、先生は何処に?」

「それは……そういえば、どこに行くか聞いていませんでしたね。

 ですがご安心を、既にお土産は催促済みです。トリックスターたる彼のことですから、きっとユニークなお土産を用意してくださるでしょう」

「お土産……?」

「トリックスター……?」

「ユニーク……?」

「元の世界もそうでしたが、キヴォトスにも興味深いものが沢山あります。

 お土産はやはり銃でしょうか。いつまでもチェーンソーでは面白みに欠けますし、キヴォトスの生徒の皆さんも常備していますから。

 いえ、それとも戦車でしょうか。大は小を兼ねるとも言いますし。もしかしたら専用の戦車に魔改造してほしい、と依頼されるかもしれませんね」

 

 得意げな少女に対し、便利屋の面々は困惑を隠せない。

 先生は一人でキヴォトスに来たんじゃないの、とか。

 トリックスターとは何のことか、とか。

 銃とかチェーンソーとか戦車とか意味不明、とか。

 様々な疑問が脳裏に浮かんでは、口にする間もなく消えていく。

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。

 私はラヴェンツァ。貴方たちが先生と慕う彼の案内人……まあ、メイドのようなものでしょうか。

 以後、お見知りおきを」

 

 ◆

 

「まさかこの姿で、もう一度砂漠を走ることになるとはなー」

 

 砂にまみれた大地の中、煙を上げて爆走する車が一台。

 モルガナカー。『猫は乗り物に変身する』という大衆の認知を応用したモナの特技で、実はヘリにも変身できる。

 

『アビドス砂漠で、カイザーコーポレーションが何かを企んでいる』

 

 ゲヘナ学園の風紀委員長、空崎ヒナからその情報を得た俺達二人は、長期出張という名目で再びアビドスを訪れていた。

 生暖かいエアコンの風を浴びながら、ハンドル片手に自前のコーヒーの啜る。

 コーヒーの苦みと酸味が、鈍化した脳をクリアにする。今回のような長距離ドライブには欠かせない相棒だ。

 

「コーヒー片手に優雅にドライブか……なんつーか、蓮もオトナになったよな」

「……どうだろう。少しは真っ当な大人になれてたらいいが」

「や、そういう真面目な話じゃなくてな? 趣味が変わったというか、雰囲気が変わったというか……いや、元々こんな感じだった気もする」

「どっちだ……」

「まあつまり、ワガハイが言いたいのはな。こんな感じで生徒達とドライブすんのも楽しいだろうなって」

「ドライブか」

 

 モルガナカーの運転席で、こうやってハンドルを握っていると、懐かしい日々を思い出す。

 ……彼らは今、どこで何をしているだろうか。

 俺は今、彼らに相応しい人間になれているだろうか。

 

「……やれやれだ」 

 

 センチメンタルになりかけた気分を、コーヒーで覚ます。

 

「なにがやれやれだよ、カッコウつけやがって。会いたいなら会えばいいじゃねえか。

 いっそキヴォトスに呼んじまうか? 女の子もいっぱいいるし、リュージ辺りとか喜んで来そうだぜ?」

「どうなんだ、それは。年齢的に」

「元年上キラーのお前が言うなよ……。

 それにワガハイ、その辺のルールはよく分からんし興味もない。結局大事なのはお互いの気持ちだしな」

「それもそうか」

 

 他愛のない雑談をしながら車を走らせる。

 やがて、俺達は「その場所」に到着した。

 一言で言うと工場だった。

 しかし、ただの工場ではない。

 数キロに及ぶ有刺鉄線、外敵を拒むかのような巨大な壁。そして、俳諧する機械の兵士たち。

 

「……ふう」

 

 短く一呼吸。それだけでスイッチが切り替わる。

 キヴォトスの先生から、心を盗む怪盗へ。

 

「機械の兵士、武装は銃のみ。

 ……オートマタってやつか。今までキヴォトスでは見なかったタイプの敵だ。

 こりゃアタリだな。嫌な予感がしてきたぜ……」

 

 どうやらゲヘナ学園の風紀委員会は情報収集にも長けているらしい。

 

『ヴイイイィィィーーーーン!!』

 

 

「!」

 

 突如、巨大な壁の向こうで大きな警報音が鳴り響いた。

 気づかれた――と思ったが、そうではなかった。

 異常があったのは工場の内部。ヘリの駆動音と地面の揺れ……おそらくは戦車のもの。

 

「警報……? だがワガハイ達じゃない。どういうことだ……?

 まさかワガハイ達以外にも侵入者が……?」

「……何があったかは、自分達の眼で確かめればいい。いくぞ、モナ」

「そうだな。くれぐれも慎重にな、ジョーカー」

 

 ◆

 

 工場の内部。見晴らしのいい広場で、四人の生徒が包囲されていた。

 地上は機械の鎧と銃を装備した歩兵、そしていくつかの戦車。上空には戦闘用のヘリ。もはや四人に逃げ場はなく、彼女たちの命運は一人の男の手に握られていた。

 

「ああ、そうだ」

 

 男は兵士たちを押しのけ、四人の前に姿を現す。

 男……なのかは本当のところ分からない。それらしい言葉遣いとスーツ姿から推測できるだけだ。

 機械の身体と、それらを覆い隠すかのように、サイズが合っていない黒のスーツ。

 明らかに人間とは思えない異様な姿……なのだが、四人の生徒は恰好そのものには驚いていない。

 キヴォトスにはこういう人間もいる。情報を密かに更新して、彼らの会話に耳を傾ける。

 

「私がカイザーPMCの代表取締役だ。

 カイザーコーポレーション、カイザーローン、カイザーコンストラクションの理事も務めている」

「それはどうでもいい」

 

 半ば自慢めいた男の語りを、銀髪の生徒が遮った。

 

「要は、あなたがアビドス高校を騙して搾取した張本人ってことでいい?」

「……くくっ、人聞きの悪い。まるで我々が不法な行為をしているかのような物言いだな。

 アビドス自治区の土地なら確かに買ったとも。合法的な取引によってな。記録も全て、しっかりと保存されている。

 本題に入りたまえ。わざわざそんなことを言うために来たわけではあるまい?」

「ん……なら、単刀直入に聞く。

 ここは、一体何?」

「……くくっ。何を言い出すかと思えば。自分達の周りをよく見ろ。

 無数の歩兵、ドローン、戦車、ヘリ。ここはカイザーPMC、すなわち軍事施設だ」

「そう。じゃあ聞き方を変える。この兵力は何のためのもの?

 私達の自治区を、武力で占拠するため。違う?」

「笑わせる。たった五人しかいない学校のために軍事施設を用意するとでも? 自惚れるのも大概にしておけ。

 この施設は、我々の目的を妨害された時に備えてのもの。

 君達程度、いつでも、どうとでもできるのだよ。こういうふうにな」

 

 男は懐から携帯端末を取り出し、どこかに電話をかけた。

 一言か二言のやり取りのうち、男は端末をスーツにしまって生徒達に向き直った。

 

「残念だ。どうやら君達の学校の信用は落ちてしまったそうだよ」

「!」

 

 四人の生徒に驚愕の色が走る。

 

「信用評価は最低ランクだそうだ。変動金利は3000%上昇。ざっと計算すると……来月以降の利子は、約9000万ほどか」

「9000万……!?」

「そんなお金、用意できるはずが……利子だけでも精一杯なのに……」

 

 一瞬で膨らんだ規格外の借金に、一人の生徒が弱音を吐いた。

 それを――ここぞとばかりに、男は言う。

 

「ならば――学校を辞めて去ったらどうだ?

 そもそもこれは、君達個人の借金ではない。学校が責任をとるべき問題だ。何故、君達自らが背負っている?」

「そ、そんなこと、できるはずないじゃないですか!」

「そうよ、私達の学校なんだから! 見捨てられるわけないでしょ!」

「ならばどうする? 他に何か良い手でも?

 キヴォトスの一生徒に過ぎない君達が、この莫大な借金問題を解決できると、本気で思っているのかね?」

「…………」

 

 男の表情こそ分からないが、下卑た笑みを浮かべていることは全員が理解できた。

 しかし、生徒達に反論はない。いや、できない。彼女達は、己を無力を噛みしめて立ち尽くすことしかできない。

 

「みんな、帰ろう」

 

 そんな中、一人の小柄な生徒が銃を下げ、仲間達に振り返って言った。

 銃口は小刻みに震えている。この場で誰より悔しいのは、他でもない彼女なのだ。

 それでも彼女は己を殺す。感情を殺す。年長者だから。リーダーだから。

 

 ここには、守るべき者がいるから。

 

「ホシノ先輩……?」

「……ここで言い争っても意味がない。弄ばれるだけだよ」

「……ほう。流石は副生徒会長、他の生徒よりも賢いようだな。

 ああ、そういえば思い出したよ。賢そうな君といた、あの全くもって馬鹿な生徒会長のこともな」

「――――」

 

 秒にも満たない僅かな間。狂ったほどの殺気が溢れ、そして静まる。

 

 ――落ち着け小鳥遊ホシノ。

 

 お前はこの子達のリーダーだ。

 この、大事な大事な後輩たちを、守りたい。守らなくちゃいけない。

 ダムは決壊しない。亀裂こそ入っているが、それを留めるだけの精神力が彼女にはあった。

 

「言いたいことはそれだけ? それじゃあ私達は――」

「お待ちください」

 

 ――それを、嘲笑うかのように。

 そいつは、姿を現した。

 

 一言で言うなら黒服。黒いスーツを身にまとった無機質なそれは、影のようにも見える。右目に当たる部分には大きな亀裂が入っており、体内から光が漏れている。

 

「……なんで。

 なんで、ここにいる」

 

 警鐘が鳴る。それは彼女だけではない。

 ――遠く離れて様子を見ている、俺自身にもだ。

 亀裂の奥にある光が、一瞬だけこちらを見た気がした。

 

「こんにちは、小鳥遊ホシノさん。そして、アビドスの生徒の皆さん。お元気そうで何よりです」

 

 丁寧かつ上機嫌な挨拶に、一同は面食らう。一名を除いて。

 

「……黒服。何故ここにいる。アビドスは一部例外を除きカイザーコーポレーションに一任する。以前、私と貴方でそう決めたはずだが?」

「クク……無論、覚えていますよ。

 ご安心を。今回用があるのは、アビドスではありませんので」

「何……?」

「全く、駄目じゃないですか。お客様にはちゃんとおもてなししないと。

 そうは思いませんか、アビドスの皆さん。そして――シャーレの先生?」

 

 黒服。そう呼ばれた存在が、空を仰いで俺を呼ぶ。

 隠れている場所はともかく、工場に来ていること自体はバレているらしい。

 

「シャーレの先生だと? 何を言っている……?」

「貴方には関係のないことです。

 それよりも……先生。生徒を想う貴方のことです。きっとどこかで見ているのでしょう?

 私は貴方の味方です。そしてきっと、同類だ。今回はそんな貴方に、挨拶をしなければと思った次第です。

 貴方風に言うなら、そう――SHOW TIME、といったところでしょうか」

 

 モナに目配せし、戦闘準備を行う。

 ……上空を旋回するヘリの配置を確認する。

 問題ない。ワイヤーを使えば、黒服と生徒達の間に割り込める。

 

「――小鳥遊ホシノさん」

 

 

 ぬらり、と。

 粘体が動いたかのように、黒服は少女を見る。

 瞬間、この場にいる全員に悪寒が走った。カイザーPMCの理事とて例外ではない。

 

「……何かな」

 

 かろうじて、絞り出すように、ホシノは黒服に問い返した。

 ニタリ、と亀裂の口が吊り上がる。

 

「一人、足りないのではないですか?」

「――は?」

 

 後輩が、守るべきものが傍にいることを失念していたのか、ホシノは乱暴に聞き返した。

 ――彼女の、銃を握る手に力が籠る。

 そして黒服は、逆鱗を撫でるように、その名前を告げた。

 

「アビドスには生徒会長がいましたよね?

 確か――「梔子ユメ」さん。彼女は今、お元気ですか?」

 

 ――リーダー、だって?

 

 ――知ったことか。

 

 半ば確信めいたその質問は、ホシノの正気を奪うには十分すぎるものだった。

 

「お前っ……!!」

 

 引き金は既に引かれていた。

 知性も計算もない、獣のごとき凶弾。感情だけの無鉄砲。およそホシノらしくない攻撃は、やはりというべきか、ある者によって止められていた。

 ある者――いや、人物と言えるのかは怪しい。

 敢えて言うならば、やはり影。黒服と同じような質感の人型の影が、銃弾を受け止めていた。

 

「あ――――」

 

 赤の他人――俺達からすれば、あれはただの影だ。銃弾を受け止める程度、キヴォトスではそう驚くことじゃない。難敵には違いないが、対処できる相手だ。

 だが、彼女からすれば違っていたようで。

 ホシノは、その影を見て言葉を失っていた。

 

「このキヴォトスでは、恐怖こそ重要なファクターなのです。恐怖に支配されること、恐怖に反転することを、我々ゲマトリアは「テラー」と呼んでいます。 

 この影は、その研究課程で生まれた副産物。先生に習うなら、シャドウと呼称するのがいいでしょう。

 さあ……小鳥遊ホシノさん。貴方にはこの影が、「誰」に見えますか?」

 

 ぼんやりとしていた輪郭が、明確に象られていく。

 少女だ。ホシノよりやや背が高い。

 ヘイロー。長髪。ホルスター。アタッシュケース。

 時間の経過とともに、影は少しずつ姿を変え、とある少女の姿へ近づいていく。

 

「……ぱい! ホシ……輩!」

「しっかり…………さい!」

 

 後輩たちが賢明に呼びかけているが、ホシノは微動だにしない。変態し続ける影に憑りつかれたかのように、目を離せないでいる。

 

「ジョーカー!」

「任せろ!」

 

 モナを右脇に抱え、上空のヘリ目掛けて左手からワイヤーを射出する。

 旋回するヘリにワイヤーを引っ掛け、支点とし、振り子の原理で急接近。

 タイミングを合わせてワイヤーを外し、更に空中でモナを投擲する。

 

 人間離れした動作。本来なら成功するはずもない無茶な挙動。

 

 しかし、それを可能にするのがこの怪盗姿。

 この服は反逆のイメージが形になったもの。心の持ちようと本人のイメージ次第で、あらゆる動きを可能にする。

 

「ユメ……せんぱ……」

 

 ホシノはうわ言のように、誰かの名前を呟く。それに反応するかのように、影はある人物を象っていく。

 ――その両者の間に、一際小さな影が着地する。

 

 

「威を示せ、ゾロ!」

 

 更にもう一つ。今度は巨大な影が顕現する。

 逞しく発達した胸板と両腕。紳士然としたスーツ。そしてレイピア。

 ゾロと呼ばれた影がレイピアを振るうと、虚空から刃が放たれた。

 風の刃は、女性を象っていた影を容赦なく切り刻む。

 

「――――!!!!」

 

 影は、声とも電子音とも取れる、まるでノイズのような絶叫を上げた。

 

「やめろ、ユメ先輩が――」

「違う、よく見ろ! あれはただの影、お前の心が作り出した幻だ!」

「っ――」

「確かホシノっつったな? お前があの影との間に何があったか聞くつもりはねえ。

 だが、今は現実を見ろ。お前の後ろには、守らなきゃいけねえものがあるはずだ」

「ぁ――――」

 

 ホシノの瞳に、徐々に生気が戻っていく。

 弱弱しい彼女の肩に、できる限りそっと、優しく手を置いた。

 

「……先生」

「下がっていろ。ここからは先は、大人の戦いだ」

 

 ホシノを下がらせ、その前に出る。

 モナの攻撃を受け、膝をつく影。

 状況を理解できず、狼狽えるカイザーの理事。

 

「ククッ……」

 

 そして――どこか楽し気に笑う黒服。

 

「いやはや、なんともまあ。恐れ入った、としか言えません。

 鮮やかな登場でした。流石は心の怪盗団の元リーダー。その実力は衰えていないようだ。

 そちらの猫のお方も、実に見事。外部の存在がこれほどの戦闘能力を有しているとは。やはり、貴方がたは特別だ。

 ところでいかがですか、私のSHOW TIMEは。副産物とはいえ、多少自信があったのですが」

「三流もいいところだ」

 

 吐き捨てるように言い放つ。

 何がSHOW TIMEだ。こんなもの、単に人の心を弄び傷つけただけだ。 

 

「ククッ、これは手厳しい。やはり本職にはお遊びにしか映りませんでしたね。いえ、それとも副産物というのが減点だったのでしょうか」

「挨拶とやらは終わりか? 用がないなら生徒達を引き取らせてもらうが」

「――そんなわけがないだろう」

 

 黒服ではなく、第三者の声が割って入った。カイザーコーポレーションとやらの理事だ。

 

「貴様ら、ここをどこだと思っている。カイザーPMCの領地だぞ。これ以上の狼藉を、私が許すと思うのか!」

「こっちは生徒を守っただけだ」

「知ったことか! 先生とやら、貴様もアビドスと同罪だ。不法侵入及び借金の共有。覚悟しておくことだな、フハハハハハ!!」

「ククッ……楽しそうで何よりです。では、あとはお任せしますよ、理事」

「ふん……まあいいだろう。任せておくといい」

「ああ、それと。言い忘れていましたが……後始末は、よろしくお願いしますね」

「何……?」

 

 理事が振り返る……が、黒服は既にいなかった。目を離した一瞬の隙に、この場から離脱したようだ。

 残されたのはアビドスの生徒。カイザーPMCの面々。

 ジョーカー、モナ。

 そして――未だなお変化し続ける、一つの影。

 

「チッ……クリーンヒットしたはずだが、流石に一発じゃ倒れねえか。

 どうするジョーカー。周囲は兵士と戦車。上空はヘリ。敵は大型のシャドウもどきが一体。生徒を守りながらじゃちと厳しいぜ」

「ん、大丈夫」

 

 アビドスの生徒の一人……事前に見た資料によると、砂狼シロコ……が銃を構える。

 

「私達も戦える」

「はい、先生! 事情はよく分かりませんが、お手伝いします!」

「流石に、このままやられっぱなしってわけにはいかないわよね! 

「はい、ホシノ先輩の為にも!」

 

 アビドスの生徒達……ノノミ、セリカ、アヤネがシロコに続く。

 

「ん。あいつはホシノ先輩を泣かした。

 ……ただじゃおかない」

「うぇ!? い、いやだなー。おじさん、別に泣いてない、よ……」

 

 一筋の雫が頬を伝う。

 ホシノはそれを見られまいと顔を背け、強引に拭った。

 

「先輩……」

「……ん、分かった。ホシノ先輩は泣いてない」

「はい、私達は何も見ていません♪」

「もー、みんな意地悪だなぁ!」

 

 そんな生徒達のやり取りを尻目に、思わず笑みが零れた。

 

「……いいチームじゃねえか。ワガハイ達、いらん世話を焼いちまったかもな」

「かもな。俺達は俺達の仕事をこなそう」

「だな。大人の相手は同じ大人がしてやろうぜ。キヴォトス人じゃねえなら猶更な」

 

 俺とモナは、再び影へと注意を向ける。

 黒服の言葉から推測するに、あの影は対峙した人物の恐怖に反応するらしい。

 影は、先ほどの少女とは全くの別物に変化していた。

 背丈は人間の約二倍。黒い両翼、赤いタキシード、そして仮面。

 雨宮蓮にとって唯一無二とも言えるもの――アルセーヌの姿がそこにあった。

 

「成程な。最も恐怖するのは他者ではなく己自身。お前にとってはある意味、最強の敵かもな。

 ま、あいつが本当にジョーカーだったらの話だけど。外見を真似ただけの偽物なんざ、怖くもなんともねえぜ」

「違いない」

 

 自分の仮面に手を添える。

 いい加減物真似は見飽きた。ここらで一つ、本物を見せてやろう。

 

「先生」

 

 凛とした声に、視線だけ向ける。

 ホシノだ。手には一丁の銃と、全身を隠せるほどの大きな盾。髪は後ろで一つに束ねられており、表情にも余裕が見える。

 どうやら、吹っ切れたようだ。

 

「ありがとう。最後に貴方みたいな大人に会えて良かった。

 ここからは私達も戦う。全体の指揮をお願いしていいかな」

「任せろ。

 ――総員、戦闘準備! ノノミ、セリカは退路を確保! アヤネはナビゲートで二人の補佐を!

 ジョーカー、モナ、ホシノ、シロコ。この編成で敵性シャドウを討伐する!

 さあ――SHOW TIMEだ!」

 

 ◆

 





以下自分用メモ

アビドスとジョーカーの出会いを一から書いてたらきりがないのでバッサリ省略。
実際にプレイしてみて、黒服登場まで先生の必要性を感じなかった、というのもある。

・中ボス戦
・雑に導入に使われる便利屋勢
・ホシノのジョーカーに対する警戒を解く
・黒服初登場、テンション上がってジョーカーに接触
・「テラー」の伏線

ホシノとあろうものが目の前にユメ先輩が現れた程度でメンタル揺れるか? とも思ったが気にしない。
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