ユバに、アラバスタに。3年ぶりの雨が降った。
それはすなわちルフィ達がクロコダイルに勝ったことを示しているのかもしれない、なんて思ったり思ってなかったり。
結局のところ私は何にもしていないが、勝ったんならいいじゃないとルフィの頭の上で大きな欠伸をしたのである。
しかしながら戦いから三日も起きないのは私でも心配するわけで、ちょんちょんとルフィの頭を突いたり噛みついたり。ようやく起きたと思えば気品のかけらもない食べ方で次から次へと料理を腹の中へ納めていき、頬袋なんか作っちゃっていた。この食べ方も兄弟揃っておんなじだよなぁと、果物のもしゃもしゃ咀嚼して私はまた惰眠に徹するのである。
太陽が沈み月登り始めた頃、私はクワァっと大欠伸をして体を伸ばし、当たり前のようにルフィの麦わら帽に潜り込んだ。もうそろそろ出発なのはみんなの話を小耳に挟んで知っていたが、特に用意することもない。ならば悠々気ままにその時を待つだけ。カルガモ隊に揺られ砂漠を駆け抜け、まだ夜のうちに船に飛び乗って。ナミちゃんはビビちゃんと旅をしたいっぽいけど、それはなかなか難しい問題だ。何せ相手はお姫様、そう簡単に海賊になるわ!なんて言える相手ではない。
いつの間にやら配置されていた八隻の海軍から攻撃を受けつつ船を進め、一応ビビちゃんを迎えに行こうとするがなかなか上手くいかず。一度海であったオカマが助けてくれたからなんとか逃げ切れたけれど、それでも上手くいくかなんてわからない。
さてどうなるものかと一人他人事のように考えていれば、王国からの式典放送がチョロリと聞こえて。ルフィは船を下りてビビちゃんを探そうと言い出したけれど、そんな上手いはない話はないのである。
諦めて船を出そうとしたその時、遠くの岸からこちらに手を振る影をルフィが見つけたのは奇跡に近いだろう。
『私、一緒にはいけません!今まで本当にありがとう‼︎──冒険はまだしたいけど、やっぱりこの国を愛してるから!だから、いけません!私は、私はここに残るけど……!いつかまた会えたら‼︎もう一度仲間と呼んでくれますか‼︎?」
ビビちゃんはズビズビと鼻を啜りながらのある種の告白を放送越しでルフィ達へと伝えてきた。聞き方によっては海賊と繋がりがあるような放送でしかなく、ここでルフィが仲間だと叫べば海軍の手がアラバスタに向かうだろう。
だからこそルフィ達はその左手を高らかに天にかかあげた。言葉はなくとも仲間だと示して。
残念なことに私の左手に仲間の印はない。だって最初から"仲間"になっていないもの。
そういうのは、ユメヌシの仕事だからね。私は、そんなに誰かを思えるいい子じゃないのよ。
てなわけでビビちゃんはルフィの仲間にならなかったわけだが、ここで一人、紹介したい人がいます!
だぁれだ!
ででん!
正解は、知らん美人さんでした!パフパフ!
「そういう物騒なもの私に向けないで──って前にも言ったわよね?」
ナミちゃんやゾロが武器を構えると体から手が生えてきて、それをはたき落とす。彼女はずっとメリーにいたらしく、どうやらルフィが彼女に何かしでかしたから責任とって仲間にしてほしい、と。
「は!!?」
「いいんでない?ビビちゃん来なくて寂しかった穴埋め要員にしよ!」
「そういうことじゃないでしょ!?」
べしっと私を叩いのはナミちゃんです。
でもさぁ、ルフィが生かしていく場がない人ならばメリーに住まわせてあげないとかわいそうでしょ?命を拾ったのなら責任持ってあげないと、ペットとかそうじゃん。優しくしてあげなよ、みんなが。
彼女の名前はニコ・ロビン。つまりはロビンちゃん。
8歳で考古学者で賞金首。その後ずっと政府から身を隠しているとか、え、あなた夢主ですか?この実の能力と交換しません?
「あ、私はミルー。ピョン吉と呼んでください?」
本日は小さきモノ、アマガエルフォルムでお送りいたします。
「あら?可愛いお仲間さんだこと」
「!!?初見でそれか、なかなかやりおる!」
まさかシャベッターがないとは、ありがたい。
サンジが用意してくれたおやつをもぐもぐ食べていれば普通に話してくれるし、別に私の存在を気にしてなさそうでもある。
しかしまぁあれだな、おやつの時間にうまうましていたというのにいきなり船が落っこちてくると誰でもビビるよね。私だってビビるもの。
「何!?これ、何!?ねぇ、これ何!?」
「夢っ、そうさこれは夢‼︎」
「夢じゃなぁーい!まさか、こうなるパターンもあるのか!」
キャッキャと笑うのは私ただ一人。
いやだって、こうならずに空から帰れたパターンは知っているので。いやまぁ、また懐かしい思い出が降ってでてきたものだ。
私の記憶が間違っていないと示すようにナミちゃんがもっているログポースは空を指し、次に向かう島が決まった。あの時もんなわけないじゃん!って思ったけど雲の向こうにその国は今でもあるらしい。
ロビンちゃんが降ってきた遺体と船の外見からそれが二百年ほど前のものだと調べ上げ、いつの間にか泳げないくせに海に飛び込んだルフィは空島の地図を見つけ出しているし。統一感があるのかないのかわからない海賊船だと私はニンマリと笑う。
見てる分には面白いんだけどねぇ、海賊。なりたいとは思わないけど。
ま、結局のところ麦わらの一行は空島へ舵を取ることとなったのである。
「なーなー、ミルーも空島楽しみだよな!」
「そだね!楽しみだね!」
そりゃあ昔行きましたが、あの時はハイパービビって探検どころじゃなかったし。いつも半泣きで[[rb:レイリーさん>ママ]に抱っこしてもらってたのが懐かしいな、なんて。
そいやあの時は泣き虫って呼ばれてた気が……。う、思い出すと脳裏に赤髪がよぎって罪悪感が……。マジで勘弁してください。
「本当に楽しみ────」
今度こそ観光してやるぞ、って思ってたのに。
なんなんかな!?この能力!!?
「なんでいきなり"飛ぶ"かなぁ!??」
ここ数年、こんなことなかったじゃない!ちくせう!
とりあえず状況を確認しようとあたりを見渡そうとして、ふと自分の置かれている状況に気づいた。
なんで私、人型にもどっておる?飛ばされたと仮定して、初期以外は動物で飛ばされてたはずなのでは?
おっかしいな、能力のバグか?と思い姿を変えようとするも、変わらない。もう一度いうが、変わらない。
「クソガァぁァァアアア!」
あれか、私がユメヌシにならないから強制人型ですか?能力さんよぉ!!こんなのってないよ!
ひとまず顔を隠そうとお面を探すもそれもなく、あるのはほんのわずかなお金だけ。致し方なしに街の方に駆け出して、手持ちでオレンジ色のキャスケットを購入し深々と被る。今がいつでどこに飛ばされたかわからないが、街の雰囲気から察するにグランドラインのどっかの島に違いない。持参金が少ないから稼いでおきたいところだが、姿を変えられないため豊久になることは不可能。太刀のみの召喚は可。一体何がしたいのこの能力は!?クソ野郎!
てか今回は何をしなきゃ戻れないわけ?と街を練り歩いていればすぐに夜になってしまったし、本当に今回飛ばされた意図がわからない。一体どうしたものかと街外れでのんびりしていれば、まだ十歳前後であろうずんぐりむっくりした少年が一冊の本を読みながら座り込んでいた。
「ねー、少年。その手に持ってるものは、何?」
「は?」
「それだよそれ」
私が指を指したその先にある本のタイトルは『悪魔の実図鑑』。んなもんあるのかとおもったが、こうなったらとことん自分が食べた実のことを調べてやろうじゃないの。
「それ、みーせーて」
「いやだ」
いきなり走って逃げ出した少年を逃すまいと追いかけて、道中夕ご飯を買い込んで。追い込み漁的に少年をちょっとずつ逃げ場のないところに追い込んで。
ご飯と等価交換して本を貸してもらうことに成功。ただし読み切るのには時間がかかりそうでもある。
「読み切るまで貸してー?」
「なんでだよ!」
「ご飯はあげるからさぁ。あと働ける場所知らん?」
「なんでおれが!お前にんなこと教えなきゃなんねェんだよ!」
「ここで会ったよしみだろ?私は目的のために手段を選ばないタイプなんで諦めろ?」
いいでしょーと襟ぐり掴んで餌を与え、ついでにおりゃおりゃとボッサボサの頭を撫でくら回す。この世界の子供は子供扱いすると喜ぶんだよ、今までの経験上。そして能力これかテキメンだと知っているクソが。
案の定その子供はイヤイヤながらも私に飲み屋(っぽい娼館)の用心棒の仕事を紹介してくれたのである。まあ、すぐ飲んだくれの海賊に負けてどっかにいけばいいって言われたけど、売られた喧嘩は全部勝ってやった。仕事ゲットだぜ!ブイブイ!
用心棒の仕事をしながら少年からパクった図鑑を読み、時折返せとやってくる少年を隣に座らせ食事をとる。なんか孤児っぽいしご飯与えときゃどうにかなるし、夜ずっといて眠くないのって聞いたら寝れないとの事。この世界にもいるのねそんな人がて呟いたらやけに食いついてきたから、三十年だか四十年寝ない人の話をしてやったら喜んでた。ウケんね。
それにこいつ、悪魔の実について詳しいのなんの。話してて有意義なんだわ。図鑑読むよりこれなーにー?って聞くと答えてくれるからかなり便利です。故にもっぱら仕事中はくっちゃべってる。
「少年少年、ちなみになんだけど姿が変えられたり色んなところに飛ばされたりする悪魔の実ってある?」
「あ?あー、別々にならあっけど、両方持つのはねェ」
「ないかー、ちくせう。じゃあ、相手の能力を消す実はある?」
「……それなら」
出会った頃から幾分か仲良くなった少年と肩を並べパンを齧り、ペラペラと図鑑を巡る。そうして少年がコレと指さしたのはヤミヤミの実という悪魔の実。名前からして厨二っぽいのを予想したが、まぁ、あらがち間違ってはいないだろう。
「なるほど、コレがあればこのくそ能力は消えるのか……素晴らしい!」
「お前、能力者なのか!?」
「一応ねー、クソみたいな能力なんだけど」
消したいんだよ、本当はな。
っても私はもうこの実食えないから、誰かに食ってもらうしかないけれど。誰か食べてくれそうな人いないものか。云々唸って少年を見て、適当に人間見繕って食わせるのってあり?ってイマジナリーエースに問いかけると、ダメって言われた。まぁ、そうですよね。
「どーしたのものか」
考えたところで、答えは見つからなからない。
それから数日間私は頭を悩ませながら図鑑を捲り、ほぼほぼ最後のページでそれを見つけた。なんとなく、自分の食べた実と似ている風貌をした実の名前は『カエカエの実』。何にでも姿を変えることのできる能力を持つという。マネマネの実と似た能力だが、カエカエはちゃんとしたイメージがなければ使えない。故に不恰好な姿になったりまるで似てないものになったりとまともに使えるようになる者が少ない故にハズレとされている。
とここまで読んでふと思ったのだが、この変えるとは人の感情だったり本来辿るべき道筋も含まれていらっしゃる?
ほら、ユメヌシが知らんうちに惚れられたり、救済したいと願って命すくった、り?それも、変えたことになってしまったりする?
「うそ、やろぉ?」
これか?私が食った実これか!?
「マジで消してぇェェエエ!いやダァァァアアア!」
変えたいんじゃないんです、強制的に変えさせられてるんです。マジで名前変更しよや。ユメヌシ生産の実。ユメユメの実でいいやん。イ"ィィィィイイイ!!
ジタバタと地面を転がっていれば仲良くなってしまった少年が冷たい目で見てくる。あまりにも酷い。
「そんなに嫌なら」
「ン"ンンン!」
「俺が見つけたら」
「イ"ィィィィイ"!」
「食って消してやろうか?」
「ミ°ィィィィイッ──まじで?」
お前いいやつかよ!なんで足に縋りついてみると、全力で違ぇ!と拒否られた。解せぬ。
「別にお前のためじゃねェよ!元からおれもヤミヤミの実を狙ってんだ!だからそのついでっつーだけだかんな、勘違いすんなっ!」
「……はっ!コレが、ツンデレ、ってこと?」
あまり可愛くない少年が、一瞬可愛く見えるマジック。
「実は君、見かけの割にいいやつだな……?」
「お前一言多いって言われねェか?」
「──いわれたことない!」
そこまで関わってないからな!人に!
とりま言ったことが無かったことにされないよう小指を絡ませ、日本人特有の歌を歌う。
「は、ゆび、きんのか……?」
「昔は切って贈ったららしいけど、今はしないよ!ハハっ!」
「むかし、は?えげつねェことしてやがる」
「よく修羅の国っていわれてる」
主に支部で。
るんるんと約束を交わし、今回はこの為に飛ばされたのではと考えがついた。ってことはいつか私、この能力消せんのね!いやっほー!
ニッコニコ笑っていると目の前がぐわんと歪みそろそろ帰る時間なんだなとわかった。私は自分のキャスケット帽を少年に深々と被せると、姿が消える瞬間が見られないように考慮する。流石に人が目の前で消えるのはいい気分じゃ無いとイマジナリーエースが言っているので。
さよならもバイバイもなく、一方的な約束がいつか果たされればいいなと考えて。まあ、無理でもヤミヤミの実さえあればどうにかなるってことはわかったから収穫はありってことにしておくとしよう。