ふらりと姿を消すこともあるが、彼女はいつでも笑って帰ってくる。
誰も何があったかは聞かない。聞けない。
彼女があまりにも悲しく笑うから。
ある人は言う。
身体中な傷があるのだと。
ある人は言う。
夜、苦しそうに泣くのだと。
ある人は言う。
彼女の歌は、苦しみが詰まっていると。
ある人は言う。
過去に光を失った目をした彼女を見たのだと。
何処かの場所で、何処かの時代で。
彼女は確かに存在していた。
どんよりと瞳を曇らせて、何かに縋るように、助けを求めるように。
彼女は、ただ、そこに在る。
(イ"ィィィイイイ!おうちにかえりたいおぉおぉおお)
七歳になったある日、ルフィがゴムゴムの実を食べてしまった。まぁいつかこんな日が来るとはわかっていたから、別に驚きやしなかった。
しかしまぁあれだ。
「なんてこったぁ?」
私が海へ拉致られるとは、考えていなかった。ドユコト?
ザブンザブンとお船は揺れ、すでにフーシャ村は見えなくなっている。私いつ船乗ったんだろと首かげると、ドンっと背中へ衝撃が走る。
「ミルー!」
「……ウタ、ちゃん」
ニコニコお可愛いお顔で笑うのは我らがアイドルウタちゃん。頭上には何度か足を踏み入れた海賊船のジョリー・ロジャー。
うん、今までは一応断りがあったはずだ。一狩り行こうぜ!ならぬ一海行こうぜ!と。
なのに何故今回なかったのだろうか。はて?
コテンと再度首を傾げれば、ムギューっと力強く抱きしめられる。そしてその後私の身体は宙に浮く。
「こらウタ、ミルーが混乱しているじゃないか」
「あ、シャンクス!返してよ!私のミルーだよ!」
「"俺"のミルーだ」
「────?」
私、誰のものでもないが?
抱き抱えたのはこの船の船長であるシャンクスで、な?っと私に同意を求めてくる瞳の仄暗いこと。え、いつシャンクス夢ルートに入ったんですか、おやめ下さい。
ブンブン首を振って周りの大人に助けを求めるが、皆が皆目を逸らす。おいそれでも海賊か。幼女から目を離すな、ついでにあんたらのお頭の犯罪行為を止めろ。ロリコン拉致誘拐野郎になってるんだぞ。
誰も助けてくれない海の上、私はまさかこんな事になるなんてと頭を抱えるしかない。
こうなる未来があるなんて知らなかった。
私の知ってる漫画のシャンクスさんは大人でしたけど?ちゃんとした、子供を守れ大人でしたけど?
なのになぜ、ロリのコンになってるの?
こんなのってないよ!
「ミルー、どうかしたか?部屋が気に入らなかったか?」
「──?」
いや、そういう問題じゃなくて。てかなんで私の部屋作っとんねん。なんで貴方の海賊船に私の趣味趣向ぴったりあった小物がある部屋があるねん。
まさかこうなるとは、ユメユメの実の能力は恐ろしい。こんな事になるならあの時シャンクスを頼らなきゃよかったよマジで!
「ミルー」
まるで愛し恋人を眺めるような色づいたシャンクスから必死に目を逸らし、私はかつての過ちを嘆いた。
「──おうち、かえりたい」
これいうの、何回目やろ。
そう、あの時もそうだった。うっかり過去と思われ場所に飛ばされた時もそう思ったのだ。
瞬き一つで知らない場所に飛ばされて、周りでは凶暴な大人たちが命の取り合いをしていて。私は船の中、誰にも見つからない場所でグズグス泣いていた。戦闘の音が終わると今度は大勢の足音がこちらが向かって来たと思うと宙に浮かぶ私の身体。カチリと瞳と瞳が重なって、その男は私を自身の船に乗せたのである。
いやまぁなんというか、奴隷主ルートの強制イベントかなと思い込んでいたらなんか強面な方々にヨチヨチされ、気付けばその船がフーシャ村に着くまでという条件のもと下っ端になっていたのである。何が起こったっておもうだろ。安心していい、私もそう思った。
海賊でもいい奴もいるんだねと思いつつ名を名乗れば、名乗り返された名前。
何回聞いても海賊王でしたマル。
なんてこったい過去かよココ!まさかの海賊王夢主ルート?誰か望んだ!え、支部の夢主の皆様?しらねぇよ!
ヒンヒン泣きながら雑用をこなしているうちに出会ったのが、当時その船の下っ端であったシャンクスとバギーさん。
コ、コイツら知っとるぞ!たしかシャンクスの方はいい奴ではなかったか?と思って懐いたのか悪かったんだ。無知な私を許せ。まさか時を超えてヤンデレ系になるなんて思わなかったんだよマジで。だってただのお子ちゃまだったのよ?こうなるなら教えてといてほしかった!ヒンッ!
二人よりも年下だったから可愛がられた気はする。すんごくヨチヨチされた気もするけど、どちらかといえばバギーさんの方が構ってくれてたと思う。妹かな?ってくらいお手て繋いでくれましたけど。なんでこっちがヤベェ方向に変化するねん。一緒に過ごしたの半年程度よ?こっちに戻って来たら一カ月程度でしたけど。どうして時の流れが違うの?教えてよ悪魔の実!
旅路を途中脱落したのは悪かったと思う、きっとあの時の皆さんには心配かけたと思う。でもなぁ、なんでこうなってしまったんですかね?誰か教えて。
え、この悪魔の実のせいで性癖が歪んだ?私のせい?ちくせう。
さて、過去に飛んだ思考を今に戻してみれば私はいまだにシャンクスの腕の中。ちょこんと彼の人膝の上にお座りして、ウタちゃんにアーンをされている。ココだけ見れば美味しい場面なんだよな、かわい子ちゃんからのアーン。ただし這い寄るロリコンがいなければ。
いやいや、よく考えたらみれば私をあの時の私と思い込んでるのでは?ま、あってるんだけど、普通そう考えないよね?
チラッとそっちをみればにっこりと口元だけ笑った奴の顔があり、瞳の奥底はドロドロした何かを感じる。
あ、今それを聞いたらやばい気ですね。聞くのやめよ。
「──ウタちゃん、怒ってないの?」
「え、なにが?」
とりあえず此奴のことはひとまず置いといて、娘のウタちゃんに問いかける。そいやウタちゃん、楽譜破ってからプンスコプンやったやん。どしてこんな甘々なんですかね?
「……ゴードンさんから、聞いたの。だから、ありがとう」
「──うん」
なるほ、だから許してくださったんですね?よかった!私ウタちゃんスキー!だから君の父上をどうにかしてくれない?マジで、回される手がサワサワしてるんですよこの人。ヤバない?やばいよね?助けてくれる?え、家族になれるのが嬉しい?
いや、私承諾してないだってぇぇぇええ!
「──おうち、帰りたい」
私、7歳児なんですよ。おうち返してください。
頑張ってシャンのクスさんの方に視線を向けでお願いしてみたが、にっこり笑ってココが家だぞと言われましたけど。
いや、おうちはフーシャ村なんです。え、おじいちゃんから頼まれた?えぇ?確かに両親がお亡くなりになって二人暮らしですが、それとこれとは別ですよね?え?頼まれから?脅したんではなくて?え?え?
無理。泣こ。子供の特典使わせていただきます。
「イ"ィィィィイイイ!おうち、かえるぅぅぅぅううううう!」
7歳児の本気のギャン泣きを喰らうがいい!ふははは!
ま、効かなかったんですけどね。シャンクスには。
ただ常識のある乗組員の方が必死に説得してくれて、フーシャ村に帰れましたけど一旦は。なんか大人になったらこの船の乗せようって約束したって。
いや、私の意見聞いて?なんで乗組員で話し合いしてんの?私んなこと言ってない。
フーシャ村に返されてもなかなか離してくれないぷりてぃウタちゃんとヤバい人を剥がしてくれたのは我が幼馴染ルフィさん。マジで感謝。
なんかポカポカ私だけずるい怒っていらっしゃいますか、私のせいではないんだなこれが。
てか、オコのルフィかわゆ。ココに天使はいた。むぎゅー。
え、えぇ?
いや、幼馴染の七歳男子にそんな殺気だった目を向けないでいただけますかね?
え、マジでなんなの、どうしたらそうなるの?
私のこの能力のせいか、本当に癖歪ませてごめんなさい。
でも私は約束してないので、そちらの船には乗りませんからね!貞操大事!
設定補足
ユメイノ・ミルー
名前でた夢主。夢をみる、をもじった名前に運命を感じてしまって泣いた日もある。
うっかり海賊王の船にのってしまった結果、何故かヤバいやつを生み出してしまった。
だってアニメではまともな大人だったやん!
シャンクス
ロリコン認定された人。でも同じように歳をとっていればロリじゃない、て理論。でもない。
ニコニコ笑いながら後ろを突いてくる女の子を可愛がっていたら目の前で消えた。軽いトラウマ。その日から後を追うその子の姿が見えないの姿を追い求めて、ようやく彼女の故郷を発見。
そしたらそっくりな子がいた。
親戚かと思っていたら名前が一緒で、悪魔の実の影響でいなくなる時もあるとか?なるほど持って帰ろう。
大人げないヤバい人になる。
多分一番制御の効いてなかった時期に一緒にいるので、主人公の能力をもろにくらってる可哀想な人。カワイソ。一番の犠牲者。