レイリーさんは流石と云うべきか、爆弾の仕掛けられている首輪と手錠をポポイと外した。いったい云う仕組みなのか、是非とも教えていただきたいものだ。
ついでにフランキーが探してきた鍵で他の奴隷達の手錠もはすざれ、今回の競りで売られたのモノはいなくなったわけである。
「悪かったなキミら……、見物の海賊だったか……。今のを難なく持ち堪えるとは半端者ではなさそうだな」
レイリーさん、是非とも我が兄弟であるルフィをもっとほめてくれ!他の海賊達ではなく、ルフィを!自慢させてくれ!
ハチの隣でピョンピョン跳ねて存在をアピールしてみるも、小さきモノが目立つことはなく。代わりに冥王シルバーズ・レイリーの存在の方が目立ってしまっている。この島ではコーティング屋のレイさんで通ってるらしいが、知ってる人は多いだろう。
レイリーさんはハチを担ぎ13番GRで落ち合おうとルフィ達に声をかけ、私はひっそりとハチの衣類に入り込む。多分ルフィたちは海軍に囲まれていたとてもここを抜け出せるだろうし、それなら私はレイリーさんのお話ししたいので。ごめんよ。
正面口には最悪の世代と呼ばれるルフィ達が先陣をきり、その合間を縫ってハチを担いだレイリーさんとフランキーが走り抜ける。割と揺れるが、気にしちゃいられない。我慢だ我慢。
と思っていたのだがヒョイっと体浮かび、いつの間にかレイリーさんの頭の上に私は鎮座した。
「君はここにいなさい」
「──うん」
私が私だと分かったかどうかは知らないが、レイリーさんは小さきモノの存在を見過ごさなかったようだ。流石ママン。そう言ったら多分怒られるだろうけれど。
戦闘に巻き込まれないように進んでいると何故かトビウオライダーズに助けられ、みんなでその場を離脱。あれ?これじゃぁレイリーさんと個別に話せなくない?って思ったのだが、案の定みんな一緒にぼったくりバーに到着してしまいました。計画ってうまく行かないものね。
ハチが大怪我をしていると思い込んでいるレイリーさんはシャーキーさんに頼んでベッドを用意してもらおうとしたが、怪我は治しといたよと頭の上で私は告げた。するとどうやってと問われたのでチョチョイのチョイでさー!と答えておいたが信じてもらえなかったようなのである。
ハチはいつの間にか用意されたベッドに寝かされ、簡単な診察を受けていく。そうしてやっと、私が嘘を言ってないと理解してくれたのだ。
「綺麗に傷口は塞がっている……。どうやって」
「よほど大きな怪我じゃなければ、回復させることは可能なので?」
「──キミは」
「あ、申し遅れました。ミルーです」
「……"ミルー"?」
「ミルーはおれのいもーとだぞ!」
シュタタッとルフィの頭の上に乗り、えっへんと胸を張る。
いつぞやの泣きむしミルーではないのだよ、レイリーさん。無理矢理強制的に場数を踏んだ故に、大抵の事では動じないようにされたブッ壊れ性能のミルーですよ!
といっても、この姿じゃわからないだろうけれど。ちゃんとした姿になったとしても、当時六歳だった私とは違うから、分かってもらえるかも分からないけれど。
先ほどと打って変わってシュンとしていればレイリーさんは私を両手で持ち上げ、懐かしそうな瞳で私を見つめた。
私だってわかるわけないはずなのなの、なんとなくお世話になった頃の優しいレイリーさんを感じるので思わずその手にスリスリしてしまった。
「おっさんすげぇな!ミルーは人に懐かねェのに!」
「──そうかい、それは光栄だね」
にっこり笑うレイリーさんは、小さな声で久しぶりだねと私に声をかけた。その口振から私があの時の幼女だと分かっているみたいだ。
嬉しさのあまり少しグズグズ泣いてしまったが、ハムスターの涙は少ないのできっとルフィにはバレなかっただろう。
にしてもなぜ、レイリーさんは分かったのだろうが?謎は増えるばかりだ。
その後はレイリーさんが海賊王の船に乗っていて、尚且つ副船長だったと云う事実を知ったルフィ達一味が慄き、ブルックはロジャーさんがルーキーだったと話すし。私としては是非ともブルックの話を深掘りしていただきたいところである。
しかしその話が広がることなく、話題はロジャー船長のことへと変わった。
私も処刑されたことは知ってはいたが自首によるものだとは初めて知ったし、病気を患っているのは察していたが余命判決を受けていたことには驚きしかない。身体も痛む中、あの人はそれでも海にいたのだなと誇らしくもある。最後までお供できなかったが、それでも下っ端としてよくしてもらった事実は消えないし、私からすればその経験は大切な思い出なのである。
「世界政府も海軍も……驚いただろう。他の海賊達への見せしめの為行った公開処刑の場が、ロジャーの死に際のたった一言で『大海賊時代』の幕開けの式典へと一変したのだからな……!」
グズグズ。
やばい、鼻水と涙が止まらない。
ちくせう。私にもまだ誰かを思う気持ちがあったのかと悔やまれる。
レイリーさんは話しながらも私の頭を撫でてくれるし、もうどうにでもしてくれとお腹を出して手の上で横たわった。そうするとうりゃうりゃとお腹を撫で回されるが、嫌ではない。
一応性別学的に女だけどいいのかって話だが、レイリーさんはママンなので。かなりお世話になった人からの可愛がりなど至福でしかないだろ?
「なんかスゴイ話聞いちゃったみたい……。当事者から聞くとまた別の話みたい」
「じゃあまるで、この海賊時代は意図してロジャーが作ったみてェだな」
「──そこはまだ、答えかねる……。ロジャーは死んだのだ。今の時代を作れるのは、今を生きてる人間だけだよ……!」
ヒンッ!
クリーンヒットです。今の時代じゃないとこに飛ばされる私は、生きているとは言えるのでしょうかね!オッウェー!
「イ"ィィィィ」
「ミルーは少しは落ち着きなさい」
「──ハイ」
「っミルーが!素直!?」
酷いよナミちゃん、私だって素直になる時はあるんだよ。私そんなにやらかしてないと思うんだけど?違うの?
その後もレイリーさんは赤髪ロリ……、シャンクスの話とかバギーの話をルフィ達にしてくれて。そんで持ってシャンクスが嬉しそうにルフィについて語っていたという。
「──それと、長年探していた人も見つかったと聞いていね。"二人"にあえて、本当に良かった」
「──二人って、ルフィと、誰だ?」
「そりゃ、この小さな子のことさ」
「それって?」
「ミルーちゃんの事か?」
「ンミ°ィィィィイイイ"!?」
やめて、みんなそんな目で見ないで。そしてレイリーさんはそう云うこと言わないで!
シャンクスとルフィの関係を知っている人はいるけど、私と彼奴の関係を知っているのはルフィだけなの!?
バタバタと必死にレイリーさんの手から逃れようとしてみるも、なぜか抜け出さない。力強く握られているわけではないのに、何故?
「シャンクスはいつかミルーが大人になったら迎えに行って船に乗せると約束したといっていたが?」
「いってない!約束してない!誘拐された!酷い!」
「だが君達は新世界にいくのだろう?いやでも会うぞ?」
「ンな!?オ、オウチニカエルー!!」
十七歳、本気の駄々開始です。
「おうち帰るもん!いやぁぁぁあ!フーシャ村帰るぅぅぅう!平穏!平穏が恋しぃ!ルフィ!ルフィ!おうちかえるー!ヒンッ!おうちがこいぃぃい!イ"ィィィィイイイ!」
「……ルフィ、シャンクスはミルーにいったい何をしたんだ?」
「うーん、らちかんきん?航海行く時は毎回攫ってたぞ!毎年誕生日に海楼石のプレゼントを送ってくるからミルーが処分すんの大変っていってたな!でも売ると金になるからまだ許せる、とか?まぁ、ミルーからむとシャンクスはヤベェ大人になるってレッド・フォース号のみんな言ってた!」
「──会えたら私の方からやめるように伝えておこう」
「多分やめねェと思うぞ?」
「それでも、ここまで泣かせていいものではないだろ」
シャンクス、怖い。
いやね、私の能力の犠牲者だってのは分かってんのよ。でもそれとこれは別。被害者だから加害者に何してもいいわけではないと思うの。本当のこの能力のそゆとこ嫌い。
グズグズ泣きながら暴れていれば、私を心配してくれたロビンちゃんがレイリーからこの身を受け取ってきかれてヨチヨチしてくれた。ナミちゃんもスンゴイ憐れんだ目で見てくるし、ウソップはシャンクスの所業にドン引き。あのゾロでさえマジか、と呟いているしそれほどのことなのである。
「オウチカエルー」
「ミルー、一人で村に帰ったらシャンクス達きた時もう逃げられねェぞ?」
「ルフィの帽子の中に帰るー」
「おう!」
ま、この帽子もシャンクスのだから場所としては安心できないんですけどね!
鼻水と涙をロビンちゃんに拭かれた後、私はルフィの頭の上にのる。そして泣いたせいで疲れたのか眠気が襲ってきたので、いったんスヤァとお昼寝タイムにうつらせていただいたのである!へけ!ちくせう!
いつもより多めの補足。
ユメイノ・ミルー
この度はレイリーさんことママンに再開できて嬉しいが、当時のことを聞いて泣く。レイリーがママンなロジャーはパパン。飛ばされて病んでる時期に優しいおじ様方にイイコイイコして貰えばそうなるしかない。
ちなみに厳しく教えてくれるのはレイリーさんだったが、怒った分甘やかしてくれるし膝上に乗せてご飯食べさせてくれた。甘やかしすぎパパンはロジャーだがグズグズ泣いてれば肩車して構ってくれるし、一人じゃならない時は一緒に冒険のお話ししながら寝てくれた。まだ早い!と周りに言われつつミルーに戦い方を教えようとしたのもロジャーである。シャンクスにたいしてトラウマしかない。逃げても逃げてもハイライトのない目で追われるので恐怖。それ故関わると超絶駄々っ子になるしかない。
オウチニカエルー!
レイリー
見聞色の覇気を使用してミルーはミルーであると認定。その姿から何らかの悪魔の実の能力者なんだろうな、とも理解。昔の見習いが将来船に乗せると約束した!とにっこりしていたら、実は一方的な約束だったと知る。
そして確かに執着はやばかったけどそうなったか、と反省。
麦わらの一味
ルフィがシャンクスと関わりがあったのは知っていたが、まさかミルーとも関係してたとは驚いた。そして噂に聞いてたシャンクスがミルーに対してクソやばい感情を抱いているのでは?と察する。正解。みんなそこそこミルーの方が好きなので、万が一であったら逃がしてあげようと決意した。