サニー号のコーティングは三日ほどかかるそうで、ルフィ達はその間生存サバイバルを開始することとなったそうな。ま、その間の話はお昼寝タイムで聞いてなかったから詳しくは知らない。
しかしまぁ、なんと云うか。一難去ってまた一難的な?目の前にはつい最近見たことのあるようなクマさんがいたのである。
「さがれ!!ルフィ!そいつは七武海の一人だ!」
お前、ゾロに免じてルフィ襲わない言ったのにクソやろう!嘘つきめ!
ルフィと一部のクルー以外はそいつがかなりヤバい敵だと認識していて、その攻撃、俗に云う衝撃波を喰らわないように避けて戦おうと身を正した。ルフィもみんなからクマさんがヤバいといわれてしまえば最初からクライマックスだぜ!の勢いだが、そう簡単に相手にできる奴ではない。私は必死にルフィの髪にへばりついていたが一瞬手を緩めた際に後方に飛ばされ、ころんと地面に墜落したのである。
私はいつも通り戦うつもりはないし、いそいそとチョッパーの帽子に飛び乗るとルフィ、ゾロ、サンジと戦いを観戦。息は切れているようだが、三人で戦えば勝利が見えてくるくらいでそれが妙に不気味でしかなかった。
あの時のクマって、もっと強かった気がする。そう思ったのは私だけじゃないだろう。
今私たちの前にいるのは、あの時のクマさんを模した何かに違いない。でもそれが分かったところでどうになる。
三人の戦いに入り込むようにチョッパーもクマさんにアタックし、それに続くのはフランキー。ロビンちゃんのサポートをへてブルックの攻撃からのウソップの爆破攻撃。それのおかげでクマの体が傾いたが、ナミちゃんが狙われて。うまい具合にそれを阻止したものの、攻撃しまくったせいでついにクマさんは暴走し出した。
「ヤケになったら勝負は終わりだ!」
そう最初に言い切りクマさんを蹴ったのはサンジ。からのゾロの九刀流。最後にルフィのギア3で決着がついた、はずだった。
みんなもうクタクタで、ルフィなんかも傷だらけで息も荒くて。休むのにもまず身を隠すさなければ、このままでは一網打尽にされてしまう。だからこの場から逃げ出すのが最優先だったのに──。
「まったく、てめェらやってくれるぜ!!!」
そんな声と共に空から現れたのは昔話に出てくる金太郎さんともう一匹のクマさん。はっきり言って今のルフィ達じゃ相手にできるわけがない。
マサカリを担いだ金太郎さんならぬ戦桃丸は新しくきたクマさんに容赦なく攻撃の指示を出すし、流石のルフィも一旦逃げることを選択した。
ルフィ、ゾロ、サンジは別れ、それぞれ他のメンバーを連れて行く。私もルフィの肩に乗ったものの、脳裏にちらちらと嫌なものが浮かんできて仕方がない。
それはエースのビブルカードだ。
チカチカと炎を出していたあのカードが、命を危険を知らせるものだとしった。多分それはこういった勝てない状況も含まれるのかもしれない。そう思うと、クルーを抱えてルフィは逃げ切れるのかと心配になるもので。
戦いたいわけではない。だってルフィは逃げる選択をしているし、何もしないのが正しいのだ。
でもここで捕まってしまえば、ルフィは無事でいられるのだろうか。
サボはいつの間にかいなくなって、エースは助けに行けないけど何処かで危険に晒されていて、ルフィにもし万が一があったら?
私は、どうやって、何に誰に縋っていきていけばいい。
「みんな!!三日後にサニー号で!」
「おう!!」
その三日後、会えない人がいたとしたら。私は、納得できるだろうか。
フランキーの元にクマさんが向かい、ルフィが戦桃丸に吹っ飛ばされて、遠くではゾロがこんな時に現れた海軍大将に狙われて。
「ゾロ!!!」
私は、何もしないことを選択し続けていいのだろうか。もしかして、それで家族を失うかもしれないのに?
「──あんたの出る幕かい、"冥王"レイリー!」
「若い芽を摘むんじゃない……、これから始まるのだよ!彼らの時代は……!」
「おっさーん!!!」
「レイリーさぁぁぁぁあん!」
ぐだぐだと思考を歪ませて助ける選択をしなかった私と、隠居生活をしていたのにゾロを助けてくれたレイリーさん。
何か会話をしているようだがそこまでは聞こえてこないけど、多分ルフィ達を逃がそうとしているのはわかった。ならば、そうならば。私もこれ以上ルフィを危険に晒したくはない。全く、心が弱いクズアマが私です。
「……ルフィ、ルフィ。約束その3だ」
「なに、言って──」
「私は無傷だし、顔バレしてないからね。逃げるまでの時間稼ぎにはなる」
「ミルーっ!」
「さっき会ったばかりのレイリーさんが助けてくれるのに、"妹"の私が"兄"を助けないのはねぇ。些か気分が悪いのよ」
へけ!
らしくないこと言ってんなとは私でもわかる。でもまぁあれだ、"私は最強ユメヌシ"って願えば、たぶんルフィたちを逃すくらいどうってことはないはず。だと思いたい。
「三日後、サニー号で!」
ぴょんっとルフィから飛び降りて、久しくとっていなかった人型をとる。狐のお面で顔が出てないからモーマンタイ。海軍大将レベルじゃ豊久知ってそうだし、ファプタも知ってる人?サカナ?多いっぽいし。今回はこれで行くしかない。
だってあの二人以外、そこまで体使いこなせてないんだよなぁ。使い勝手がいいんだもんと他の人になる努力を疎かにしていた私が悪い。へけ!
「っまかせた!ウソップ、ブルック!!ゾロ連れて逃げろー! 全員逃げる事だけ考えろ!今のおれたちじゃあこいつらには勝てねぇ!」
「って事で、オニィチャンを追われては困るんでねっ」
ルフィが走り出したのを確認して、地面を蹴り上げ宙を舞う。そしてブンっと対面していた戦桃丸に大太刀を振り下ろした。いきなりあわれた人間に若干驚いたようだが、あっさりと避けてしまう辺り戦闘能力は高いんだろう。
「だれだっ!お前は!」
「名乗るほどのモンじゃないんでねっ!」
私は最強、私は最強、私は最強。
痛い、心がやられる。辛い。厨二病の黒歴史が襲ってくる。でもまぁ、ここで負けてちゃいけんのはわかるんです。
「金太郎は、黙っとれ!」
再び振り回したのは大太刀、ではなくて鉄バット。当たれば球がちょー良く飛ぶ奴。
真面目に戦え?いや、最強ユメヌシ設定が生きるだけで、巫山戯戦い方でも充分にやれるんですって。
「ドッカーン!」
「ゲフッ」
ほれみろ、クリーンヒットやん。あのでっかい金太郎が後方のマングローブまで飛んでったやろ。これがクソ悪魔の実パワーなんだって。今まで頑張って修業してきた人たちに失礼だよね。うん知ってる。
だからこの能力嫌いなんだよ!躊躇いもなくなるからな!
飛んでいった方向へ私も駆け足で向かい、いっそのこトドメを指しとこうと大太刀へ武器を変更。口から血を吐いている戦桃丸さんの頭上にに軽やかに飛び、そのまま首にむかって刃を振り下ろした。
「首ぃ、置いてけぇ!」
つまりは死ねと。
あーぁ、殺しちゃったぁ。おにぃちゃんに怒られるわぁ。とか思っていたら瀕死くらいでギリギリ生きていた戦桃丸はマサカリでそれを受け止まるし、はっきりいって腹が立つ。なんなんこいつ、私の家族害そうとしてなんでまだ生きようとするん。さっさと死ね。
てか能力さんよ、せっかくつよつよユメヌシやってやってんだから一撃で殺せる腕力をくれ。
え?戦うことも必要?んなモンいらねぇわっ!
「こんっの!」
「うるせェ!そのマサカリ砕くぞおかっぱァ!」
両手でバッドを振るかの如く大太刀を振り、ガギンと金属がぶつかる音ともに砕けるマサカリ。そうそう、最強設定ってそういうもの言うのですよ能力さん。さっさとぶち殺そ?
よしもう一発、次こそ仕留めるぞ!と意気込んで大太刀を構えたというのに、戦桃丸の視線ははるか後方を向いていて。
「てめェ、味方に何やってんだくま公ォ!!」
「え、何々!仲間割れェ!ウケンネ!」
正しく書き表すのならば。
『えww何々wwww仲間割れェwwwwウケンネwwwww』である。戦闘する時テンションがおかしい?多分それは能力の仕様です。どんまい、私。
しかし確かに戦桃丸の言うことも確かだ。お前なにしてんの?肉球で弾かれたブルックはいきなり消えてしまったし、その次はサンジにウソップ。肉球に触れるたびにルフィの仲間が消えていく。
「ックソが!」
一旦クマさんのとこへ行こうと足を向けたが、目の前にいる戦桃丸をそのままにしとくのはそれはそれで腹が立つ。故に──。
「『ステューピファイ』」
とりあえず麻痺っけ。あっちしとめたら首チョンパしにきてやっからな!
白目剥いて戦桃丸が倒れ込んだのを確認し、そのままダッシュでクマさんの元へ。これ以上麦わらのクルーは消させませんよ!と意気込んで飛び蹴りを喰らわせ、その勢いで首チョンパしちまおうと大太刀を取り出そうとするも、何故か出てこない。
え、こんなとこで能力バグですか?マジでやめてくれません?
んじゃしゃあないから何処ぞのワンパンヒーローの如くワンパンで潰してやらぁ!と構えるも、スッと体から力が抜けた。
「は?」
「……旅行するなら、何処へ行きたい?」
「はぁ?」
なにとち狂ったことを?
なんて思いつつ、旅行行くとしたら戦いなんて無縁な平和でのどかなところかな。って思った私がいけなかったのでしょうか?
「ミルー!」
ぷにっと何かが私のやわやわな拳にあったと同時に飛んでく体。
もしや能力さん、意図的に能力消したなぁ!?私に何かさせるつもりで、意図的に、戦わせるのやめたなぁ!!?
「くそっがぁぁぁああ!」
もう、この能力大嫌いっ!