海は広いな何処までも。
現在ビュンビュン空を飛んでいるミルーです。飛ぶってか、飛ばされている?クマさんの肉球でに当たった瞬間これですよ、ドユコト?
ちなみに飛ばされてる最中に体をハムスターやらトカゲやらに変えてもそのまま飛ばされてるし、カモメになって空を飛ぼう!と姿を変えたとて勢いに負けて飛ばされました。つまりこのまま何処かに落ちるまで私は飛ばされ続ける、と。クソやろう!
「ンイ"ィィィイィイイィ!」
悔しくて叫んだところで誰にもこの叫びは届かない。
一、二時間以上飛ばされて、ようやく落ちた先はフーシャ村に良く似たところだった。のどかで、特に目立った産業がなさそうな島の端の村。住民もそう多くなさそうで、みんなニコニコして過ごしている。人型ではなくハムスター姿で着陸したため、人目を避けて行動したせいかなかなか島の名前は分からないし、何処ら辺にある島か分からず。自分の所在を知るまで一日かかってしまった。平和な村すぎて狩れそうな海賊もいなくて、ここでひと稼ぎするのは不可能。手持ちがあまりないゆえに致し方なく飲み屋の食べ物を拝借させていただきましたが、非常事態なので許して欲しい。
んで、ようやく判明した事が私が飛ばされた島はシャボンディ諸島まで船で帰えるとすると単純計算で約一週間。こんな平穏を楽しんでます!って島から出る海賊船も商業船もなくて、あるとしたらこの村の反対方向にあるもうちょっと栄えた街からだそうな。
そっちに向かってめぼしい船を探したものだがなかなかなく、しょうがなく素行の悪そうな海賊船に隠れて密航。だがこの時点にすでに約束の三日が経っていたのである。
こりゃルフィ達に置いてかれたかもしれんと思いつつ、私仲間じゃなかったしそんときはそん時で考えようと半ば諦めモードになるしかない。
いまだにチリチリと焼けるエースのビブルカードにソワソワしていれば、乗っていた海賊船が海王類に襲われ沈没しちゃったし、こんなのってないよ!
沈没間際にカモメになってそれを飛ぶも、数日ぶっ通しで飛ぶことはできず島が見つかれば休み、なければ運良くぷかぷかと浮いていた瓦礫やどっかの船に紛れ込み体を休めて体力を回復させて。
一週間かけてようやくシャボンディ諸島に戻っだと思えば、何やら皆んなしてドンチャン騒ぎをしているではありませんか。
『白ひげ』だの『頂上戦争』だのわけのわからん話題で騒いでる海軍に遊んでていいのかよと思いつつもレイリーさんのいるであろうバーまで小さい体で走り抜け、ようやくそこに辿り着くもそこにレイリーさんの姿はなかった。代わりにいたのはシャッキーさんだけで、ピョンっとカウンターに飛び乗った私を見て目を見開いて驚いているようである。
「こんにちわ!ルフィ達はもう出ちゃいましたか?」
「──っ!」
「ん?あ、やっぱり置いてかれちゃった系?」
じゃあどうしようかなと首を傾げて知ればガシッと掴まれて、ルフィは今、マリンフォードにいるとつげられた。
いったい何故そんなところに?と首を傾げていればシャッキーさんは私に新聞を差し出したのだ。
「……モンキーちゃんは、お兄さんを助けにいったの」
「──は?」
新聞には私の良く知る人物が、エースが載っていて。そこには『公開処刑』と意味のわからない文字の羅列があった。日付はちょうど一週間前で、私が飛ばされてしまった日でもある。
でも今朝までエースのビブルカードは私の手の中にあったのだ、そんなわけない。あっていいはずがない。
「────っ!ない!なんでっ!」
大切にしまっておいたビブルカードは何処にもなくて、必死に"何か"を探し求める私の姿をシャッキーさんは憐れむように見ていた。そして──。
「火拳のエースは、死んだわ」
貴方のお兄さんでもあったのでしょう?
シャッキーさんのその言葉を、私が受け入れられるはずがなかった。
「嘘だ!そんなわけない!だってエースは強いもん!」
「……そうね、強かったかも知れない。でも死んだのよ」
「死んでないっ!」
「外の騒ぎを見た?亡くなったのは貴方のお兄さんと白ひげ。──海軍の勝利よ」
「そんな、そんなことっ」
あっていいはずがない。あっちゃいけない。
だって、エースは私の家族で、お兄ちゃんで。そんなことあり得るはずがない。
「嘘だっ!」
認めなくて必死に首を振ってシャッキーさんの言葉を無視していれば、電伝虫が目の前に置かれて。そこからは確かに白ひげの訃報と、エースの死。海軍の勝利といった信じられない言葉だけが紡がれていく。
「だって、う、そだぁ!そん、なこと──、あ"ぁぁぁああ"ぁああぁぁあ!!」
ぐわんと視界が歪み、動揺やら悲しみやら怒りやらでこの体を保てなくなり、私本来への姿へ変わる。声が枯れるほどに叫んだところでどうにもならないとわかっているのに、叫ばずにはいられなかった。
ルフィはエースを助けにいったのに、どうして私にはなにもできなかったのだろう。もっと早く事態を知ることもできたのではないだろうか。知らなくても良いと決めつけないで、ナミちゃんやロビンちゃんと同じように新聞を見ていれば変わっただろうに。周りの声を聞かないでここを目指さないで、道中の海賊達の話にも耳を傾けていれば。もっと早く、それこそ寝ないで飛び続ければエースを助けにいけたのでは。
エースは死んだ。私が知らないうちに。
エースは死んだ。私がいきているのに。
エースは死んだ。私はなにもできずに。
エースは死んだ。エースは死んだ。エースは死んだ。
エースには、もう会えない。
何度も繰り返される臨時ニュース。それと共に私の無力さが際立った。
どんなに強くなっても肝心な時にそばに居なければ守れない、戦えない。
律儀に約束を守っていても、その相手は知らぬ間に殺されてしまった。
敵は誰だ。誰が殺した。誰が私から家族を奪った。
奪われたくない。大切な家族だから。大切なお兄ちゃんだから。
私を、こんな私を妹と呼んで"愛してくれる"をエースを、奪わせやしない。
「──あ、は」
奪わせない。奪わせない。奪わせない。奪わせない。
奪わせてなんて、やるものか。
エースは生きるんだ。生きて幸せになるんだ。
エースとルフィと私で、またくだらない話をして。これから先も生きていくんだ。
許してなんかやらない。諦めてなんてやらない。
たとえ何度、
「──くそっ、たれがっ」
知らねェピエロのために何十回も繰り返した現実を、私は忘れてなどいない。辛く苦しい死ぬだけの毎日を、忘れられるはずがない。
あの時は知らぬ間に繰り返されていたが、今度は私のために繰り返せ。エースのために繰り返せ。
クソッタレな能力さんにこの身を受け渡してやるから、エースの助けるために
「っ!なにをする気っ!?」
カウンターに飛び乗ってナイフを手に入れて。
シャッキーさんの声など無視して首に刃を当てる。
「こんな世界っ、認めてやらないっ!」
エースを救うそのために。
ほら、これがお前の好きな"救済主"だろ?
「やめっ──」
「ッ!」
鋭い痛みと共に飛び散る紅。
これで死んだらルフィは怒るだろうななんて思いながらも、そうはならないと理解できてしまっている。
これは、私が初めて、意図的に、正しく能力を使ったに等しい。
なりたくないけど、ならなきゃ救えない。
ならば、私はそれを望んでやる。
「エ、……ス」
何度でも、助けに行くよ。