黒髪で、ハチミツのようなキラキラした瞳をもつ少女だった。
海賊である俺たち恐れ泣いていたはずなに何故が懐いて、ニコニコと笑いたがらみんなの後を追う小さな少女だった。
「 」
彼女に名前を呼ばれだけで笑う奴もいれば、まるで自分の娘かのように可愛がる奴もいて。
海賊船だというのに、なんとも不思議な光景出会ったに違いない。
彼女を故郷まで送り届けるまでそんな日々が続くのも悪ないと思っていた矢先、彼女は消えた。
島に降りたわけでもなく、唐突に、船の上で、彼女は消えた。
それを偶然にもみてしまったアイツは、その日から彼女の姿を探している。
見つからないならばあの子の故郷に行くのだと。
彼女の姿を、ただ追い求めて。
「おれは鬼の子なんだ!」
「え、あ、うん?」
いきなり奇々外々なことを言い出したルフィのお友達、エースに私はどんな言葉を返すのが正解なのだろうか?
「えー、オニってことはエースは人外なの?」
「んなわけねぇだろ」
「え、じゃあ人の子なのでは?」
「そうじゃねぇ!おれは、その、海賊王の子供なんだよっ」
「へー、じゃあ人間の子供じゃん驚かせないでよ。牙生えてるとか皮膚が赤くなるとか期待しのに」
ちくせう。
この世に鬼といるのかと思ったじゃん、と言いつつサンドイッチをむしゃる。うまうま。
ワンピースの世界には人魚とかいるし、もしかしたらデビル系の生物がいるのかと思ったのだがそうではないらしい。全くもって面倒臭い言い回しをしてくれたものだ。
むしゃむしゃとパンを食べれいれば呆れた顔をしたエースがまだそこにいて、ついでに言えば私の答えに困ったのか眉を八の字にしながらぶつぶつ呟いている。
そいやエースって本編でチラチラ出て来たらしいよねと思いつつ食べかけのサンドイッチを分け与えれば、エースは戸惑いながらも隣に座ってそれを食べ始めた。
あ、もしかしてエースって結構それを悩んでいた感じですか?すいません、今私は自分の悩みでいっぱいいっぱいなんですよ。他人の悩みにまで構ってられないっていうか?
てかアレだ。海賊王、気のいいおっさんだったし。鬼とか政府の人間が後付けした呼び方なのでは?人間の思想の方が化け物じみて怖いよマジで。
どこぞのロリコンとか誘拐犯とかストーカー。ま、同一人物なんですけどね。私のせいなんですけどね。
とまぁエースとはこんな感じで出会い、そのついでのように歯かけのサボともであった。山賊ダダンに無理やり預けられた我が幼馴染殿の安否が不安だったのもあるが、ルフィは私の中じゃ天使、つまり癒し枠。だから無理矢理ゴムの両手でグルグルまきにされて連れてこられてたとして、恨んではいない。一応な。
ま、一緒にいると落ち着く存在なのでむぎゅむぎゅ。幼い日からの刷り込みって怖いよね。
多分この能力のせいで幼馴染主と認識されてる為でもあるが、そばにいると私の戦闘能力の成長も著しいしプラスとして受け取っておいてやる。
能力自体は嫌いだが、使える時に使って強くなっておかないといつか巻き込まれて殺されまくりそうなんだもの。イヤイヤだが使いこなしてやるんだコンチクショー。
ってなわけで知らぬ間にエース、サボ、ルフィ、私は盃を交わした四兄弟となったわけ。
精神的には姉なのだが、肉体的に人一番下だから妹の立場に落ち着いた。
はっ、まさかこれが兄妹主?そこに愛はあるんか?家族愛でお願いします。それしか認めない。
兄妹になってからは一緒にグレイ・ターミナルにのり込んでてんやわんやしつつ、兄妹だからいいか!ってことで能力を披露しつつ。
すごいすごいキャッキャとされたが、まぁ確かなに使い勝手はいいんだよねコレ。やろうと思えば見た目変えられるから、人相バレないし歳もバレないし。人でもなくなれるし?
ちなみに動物になって兄二人に撫で撫でされるのは至福のひととき。
ルフィ?あいつはダメだ、力強い。
「ミルー、ヨシヨシ」
「きゅー!」
「あ、ずりぃ!おれも!おりゃおりゃあ」
「きゅきゅー!」
兄はゴットハンド。
是非ともおにぃちゃんとよばせてくれ。
時折エースに襟巻きにされながら過ごし、サボの帽子なかなかに隠れて過ごし実に恵まれた日々であった。
たまにブルージャムどもにやられ怪我をしてくる三人に対して某魔法学校の魔法でえいっと治療し、ついでに誰かに成り変わりフルボッコだドン!
よくも私の家族に手を出したな、ハッピージャムジャムしてくれる!ムキー!
「本当お前の能力って使えるよなぁ、羨ましい」
「じゃあ代わってよ、強制イベント発生して死にかけるよ?てか死ぬよ?」
「それは嫌だ」
「ってミルーお前、死んだこと、あるのか?」
「あるが?」
だって、ねぇ?死なない夢主とかセオリーでっしゃろ?
って言ったら三人にヨシヨシされた。なんでいい子たち、しゅきぃ。
三人がお子様などもあり能力を分かりやすく説明してあげると、俺らが守ってやる!って。有難いけどさ、この感情にも夢主効果あるかもしれんと思うと悲しくもある。
なんて思ってたらそれが能力のせいだとしても、おれらは家族だぞ!頼れと。
え、いい子すぎん。感情操作しれてるかもしれんのに。泣けた。みんなしゅき。大好きぃ、むぎゅー。
ルフィでさえ私を妹扱いを始めた頃には私はもう絆されて、進んで妹枠に収まっていた。もしかしてって思いは消えないけど、私の能力を含めて愛してくれるって幸せやん?
まぁ、あれだ。この三人に限っては夢主になっても悪くない。だって家族主だからな!コレ重要!恋愛枠とかお呼びじゃねぇんだわ!
しかしまぁ、そんなウキウキキャッキャな日々は続かない。
グレイ・ターミナルに火が放たれたのだ。おいこら何してくれてねん。そこに住んでいた人間たちは必死に逃げまどい、私もエースとルフィとともにその炎に囲まれていた。
唯一ココにサボいないのが救いである。貴族である家族に連れて行かれてしまったが、怪我人が減るのは大変喜ばしい。
ケホケホ煙にむせるルフィを引きずって、ハンカチで口と鼻を覆いエースに続いて歩く。だというのに空気の読めないハッピージャムジャム達が邪魔してくるのでついに私はキレた。
ワタシ、ユメヌシ。ツヨイ。
流石に誰かに成り代わる瞬間を見られるわけにいかない故に、マジカルペンを構えてエースとルフィを逃がそうと思った。
でもエースは妹おいて逃げられるかよ!と逃げてくれなくて。大好きな兄弟守らせろよボケ!とかっこよく決めてたらダダンがきた。マジか。
あ、そこは決めさせてくれないんですね、サーセン。
せっかく啖呵を切ったのにダダン一家にワタシとルフィは抱えられ逃がされ、ダダンとエースだけその場に残る。
ふざけんな、ワタシ、ユメヌシやぞ!
って叫んだとて誰も下ろしてくれなかった。クソ野郎。
「エ"ース"ゥゥウゥウウ!」
やめてやめて、こんなトラウマ展開とか。この能力のせいじゃないよね?違うよね?そのせいでエースが死ぬとか、そんなことないよね?このくそ能力が影響するのは私だけだよね?周囲の環境とか、影響しないよね?過去とに飛んだり知らん場所に飛ばされるけど、こんなふうに地獄をつくらないよね?
イ"ィィィィイイイ!もし地獄を作る能力だった死んでやる!死ねなくとも死んでやるぅ!
その時の光景がトラウマに残るくらいに脳に記憶され、グレイ・ターミナルの火が消えつつあった時であえて私は泣き叫んでいた。
全くもって貧弱なこの体は、あの日から熱を出したのだ。エースとダダンを探しに行くって聞かないルフィを治してやることもできず、私はゼイゼイと息を吐く。
くそう、こんな時に限って能力使えないとか存在意義なくない?
「エースとダダンを探しに行く……!」
「怪我、治しにいくぅ、ぅえっぷ」
「無茶いうな!」
今行くと生き残りの処理に巻き込まれるとか言い出すし、なんなのこの世界。ワンピースやぞ?もっと幸せな世界じゃないんかい。私が知らないだけなんですかねぇ!
せめて貴族街に帰ったサボと連絡を取れればと思ったが、そう簡単な話ではなかったのである。
それから何日かたってようやく私の熱が下がり、ルフィにもチョチョイっと回復魔法かけてグレイ・ターミナルに向かうとするとエースとダダンが帰って来た。とりあえずよかった一息ついて、周りの目を気にせずに魔法を使う。
「ゼロレイ!」
え、ゼロレイは攻撃魔法?
知らんわ、そこはニュアンスニュアンス。だってゲームで回復もできたもん。
キラキラとエフィクト付きで怪我が治る様子にエースたちは驚いていたが、原理は知らないので詳しくは突っ込んでこないでください。でもまぁ、こんな時になって初めて悪魔の実食べててよかったと思ったわけですよ。
それでも二人が怪我をした事実は変わらないので仲良しツインでグズグズ泣いてエースに縋れば脳天パンチを喰らう。酷い。
でもエースがなんで逃げなかった理由を聞いて、私はまた泣き崩れた。
後ろに私たちがいたから逃げなかった、ってもう。私たちのこと大好きじゃん!私たちも好きだけどさ!アイチテル!
とりまエースも無事だったからまた四人でキャッキャできると思うやん。
なのに次はサボが死んだとか。え、何言ってんのって頭真っ白だよね。一人で海賊旗掲げて海に出て?この国に、世界に殺されるとか。誰も望んでねぇよそんなこと。
あまりにもショックな出来事で逆に私は涙が出なくて、ただただ後悔だけが残った。
イヤイヤいってたって私は能力者じゃん。
ならもっかいやり直そ。私夢主ぞ、できるだろ!
って思っても何故か過去に戻れなくて、力を使いこなせない自分を悔やんだ。
あれだな、いやいや言って能力から逃げまくったツケが今なんだよきっと。
もっとちゃんとこの能力に向き合ってればサボは死ななかったのに、助けられたのに。私はなんて馬鹿なんだろう。今更泣いても意味ないのに。
「──っサボぉぉおおおおっ」
もう二度とこんなこと起きないように。
もう二度と、兄弟を失わないように。
「もっと強くなりたいっ」
私は、この能力に目を向けよう。
補足
ユメイノ・ミルー
ルフィに強制的に山賊の元に連れて行かれた人。
この度能力を使いこなせないせいで兄が死んだ。と思い込んでる。
某魔法学校のマジカルペンを召喚し、動物主の姿となることを覚えた。
無作為にではなくそこそこ能力を制御できつつある。ので、自主的に夢主パワー使えたりなかったり。
能力の一部を分かりやすく説明し、そのせいで感情操作されてるかもと心配になるが、それでも愛してくれるって言ってくれた兄弟らぶ。
愛してるし愛されてる。
守るためなら、使いこなしてやる。もう失わない。失わせない。