担いで走って。たまに逃がしてくれる白ひげたちの援護をする為に魔法ぶっ放して。
目の前が、頭が異常にくらくらするが立ち止まるわけにはいかない。
ルフィもエースが大怪我をしたせいかちょっとばっかり大人しくなったから運びやすいし、あと少しでなんとかなりそうだ。
何やら後方で新しい敵とやらが現れたらしく、そっちに多くの視線が向いたことでこちらは手薄になった。一応念のために"私"を一人白ひげのところに残しておいたし、怪我の応急処置くらいはできるだろう。ま、エースが死んだらおれのせいでって泣くから残しただけなので、残った"私"が自主的に白ひげの盾になることはないだろうけれど。これでなんかあったとしても私は善処しましたって胸を張ってエースに言える。
兎も角、白ひげが歴史だとが世界をひっくり返すとか、
てか海を凍らすでない。クソが、焼き払ってくれる。
「『フレイムブラスト』」
マジカルペンを何度か振って凍った海面を溶かす。こっちを見ている怒り顔のおっさんには中指立てで舌を出しておいた。ばぁかばぁか。
んなことをしていれば今度はマグマが飛んできて本当に私をイライラさせるのがお上手ね?
ロギア系は大太刀で首ぶったぎれないし、何か手はないかと何度も考えたことをまたしても考え始めるとピンときた。のでマジカルペンを構える。本来は魔法を封じるものだが、能力も魔法ぽいじゃん。できんじゃね?の勢いだ。
「判決を聞かせてあげよう。評決は後だ、覚悟はいいかい?『
ガチャンっと赤犬の首になんともファンシーな首輪が取り付けられる。当人もなんだこれはと驚いたようだが、それより驚くべきはその効果。思った通り、否、私がそう思ったからだろうけど、ちゃんと首輪は能力を封じ込めてくられらしい。はは、ざまぁ味噌漬け!
「よくお似合いですことよぉ!」
「っ小娘ェ!お前かァ!!」
今度からロギア系の的にオフヘしよ!くそウケンネ。
走って走って殲滅して。後方の騒ぎなんて気に留める暇などなく。
白ひげと海軍を相手にしてくれている黒ひげとやらに心の中で敬礼し、グラグラ揺れる地面を蹴り上げる。道中私たちを守らせてくれと言ってきた魚人に好きにしなと返したが、万が一の時は盾になってもらいたい。お前が死んでもエースは守るゆえ。
「ッ──」
「おまえさん、大丈夫か!?」
「問題っ、ない」
ちょっと血を流しすぎてクラクラしてるだけなので。
なんで今回はあんま怪我してないのに、今までの蓄積ダメージは残るかな?普通死に戻ったら消えるもんじゃないの?そこまで能力は有能じゃないって?
コイツが私を苦しめたい、と思ってるだけじゃねェ?絶対この能力はそんな意志を持って私を虐めて楽しんでいる気がする。じゃなきゃ今までの傷が前残りとかしないと思うもの。
まぁとりあえず、私の事は置いといて。船を探さなきゃ船を。
息を荒げながら目を凝らし海を眺め、漸く見つけることのできてたそれに安堵の息を漏らす。けれども私はここに残ってやることがあるので、任せるとしたら怪我人二人だけ。いい加減
てか、私ってオバブロすんのか?ここでしちゃヤバいの分かるから、ひとまずマジカルペンはしまっておくとしよう。
「……いた!バギーさん、バギーさん!うちの兄達をあの潜水艦に運んでください!」
「はぁ!?なんでおれがァ!?てかテメェは誰だよ!?」
「昔馴染みじゃないですが、バギーさん。小さい頃、よく手を繋いでくれたでしょ、ミルーです。ホラ早く、この二人を船に!」
覚えてなくてもしゃーないよなと半ば諦めが入りつつもバギーさんに頼めば、ミルー?と私の名前を呟いて目を見開いた。
そして舌打ちをして二人と、何故がルフィを抱えていた魚人まで運んでくれたのである。
「──後で話に来いよっ!」
「善処します」
つまりは考えてきますってこと。元日本人なので。
「外科医ー、二人を頼んだっ。蝶よりも花よりも丁重に扱って」
「っ!お前は来ないのかっ!?」
「アンタらを確実に逃さなきゃならないから行けない」
何を隠そう、その潜水艦は何度か沈められてるので。
私がそこに乗ったところでエースの治療を手伝えるわけでもないし、それならばエースが乗った船を逃すのが先決でしかない。
これでエースが助かる!と思った矢先に撃沈された瞬間は忘れたくても忘れられない。私じゃなかったらトラウマになるレベル。
故に海を凍らせて邪魔をしてきた奴は、まだまだ不慣れな某焔の大佐の指パッチンで対抗したが奴そのものを焼き払うには火が足りず。
「全く、厄介な能力持ってるんじゃねェの。お嬢ちゃん、なんの実の能力者だ?」
「ウッセ、ばぁか」
お前に言ったところで分からないだろうよ。ともう一度指パッチンからの、地面にドン。鋼のがよくする石壁を出したが、強度は多分低いと思われる。何せ私は心理を理解していないもので。
割と成り変わりしてなくてもやろうと思えばできるんだなと感慨深く感じていれば、今度は頭上から光線が降り注いだ。
「"八尺瓊勾玉"」
「っ次から次へとじゃばっかりウザイんだよっ!『プロテゴ・トタラム』!」
杖を向けたのは潜水艦が沈んだ方面で、そっちが守られていりゃそれでいい。二、三個体に風穴が空いたがエースが死ななきゃ擦り傷みたいなもんだし。
「『エピスキー』ッ、邪魔ばっかしやがってもう!」
杖を構えて死の呪文を唱えるも、言い間違えてしまうアブラカタブラ。なんでこんないいにくいんだこんちくしょう。これだからマジカルペンの方が使いやすいんだよ、カタカナ発音嫌い。
今度は間違えないようにと一旦頭で唱えて杖を構え、口を開いた瞬間にその声は聞こえた。
何度も何度も何十回も聞いてきた、その叫びはどうしようもなく私をイラつかせる。
「そこまでだァァ‼︎‼︎ もうやめましょうよ‼︎もうこれ以上戦うの!やめましょうよ‼︎ 命がも"ったいだいっ‼︎」
何を今更、そちら側からそれを言うのだと。
海賊王の子というだけに見せしめに、白ひげとの戦争の発端を作るためにエースを殺したくせに。人が死にすぎたらやめましょう?
笑わせるな。お前らが始めたことだろ、何が犠牲を増やすなだ。死んで詫びろ。
バカじゃないですかって何。
じゃあなんだ、エースを助けるためにくり返した私の命も無駄だというのか。犠牲を払ってまでエースを取り戻そうとした数多の私は無駄死にだったと。
タンッ、と地面を蹴り上げて駆け抜けて。そんなことを叫んだ男の上に飛ぶ。
目的がどうとか私には関係ない。この場にある事実は、海軍がエースを殺そうとしたという事だけ。人の命を奪うためだけにこんな場を設けたくせに、仕事だからここにきたという妄言が通じると思うのか。戦争が勃発すれば嫌でも互いの正義のもと死人は増える。良くも悪くも敵も味方も、この状況を望んだのは、死ぬことを選んだのは
「バカじゃないですか‼︎?」
「死ね」
ブンっと力一杯大太刀を振り下げて、そいつの首元を狙う。
死ねばいいと思った。殺してやろうと思った。全ての始まりはお前らなのだから、死んじまえと躊躇いなく刀を振り下ろした。
それなのに──。
「もうやめとけミルー、これ以上は誰も望んじゃいない」
「……シャン、クス」
さも当たり前かのように私の刃を止めたのは、慈愛に満ちた瞳をしたシャンクスだった。
毎回今更きやがってって思うほどくるのが遅い。なのに、今回は来るのが早い。腹が立つ。
悠々と現れた四皇"赤髪のシャンクス"の出現に海軍も海賊達も声を上げ、あの白ひげでさえもシャンクスを見ている。私からしたら嫌な思い出しかないこの人は、それはまぁ、どちらも相手にしたくない人物なのだろう。
「何しにきたの」
「──この戦争を、終わらせにきた」
「あっそう」
私の頭を撫でようとするシャンクスの手から逃れ、失神した海兵へ目を向ける。よく見ればルフィと仲良くしてた奴のような気もするが、敵だから殺しても良さそうなのに。
「もうやめだ、ミルー」
目の前にいるその人がそれを許してくれない。
「──エースを殺されかけたのに殺すなと?手を出してきたのはアッチなのに」
「けどコレは、やりすぎじゃねェか?」
「なんで、私がやったといいきれる」
「おれがお前の実力を測り間違えるとでも?」
「ッチ」
おれには分かるって顔が腹ただしい。
本当は、何にもわかってくれてないくせに。慣れた手つきで頬を撫でるな、首元を見るな。
「にしてひでェ傷だな、ホンゴウ!」
「要らない。エースが死んだら治療する意味ないし。もう好きにしたらいい」
「つまり連れて帰っていいと!」
「なんでここに来たが忘れていらっしゃる?」
どうして、好きにしていいが、私の話になるの!?やっぱり頭イカれてんじゃないかなこの人!
深々と息を吐いてシャンクスの後ろに並んだクルーに目を向ければ、もう何年も会っていなくとも錚々たるメンバーである事くらい分かってしまう。いくら私が能力の使いまくっても相手にするのは酷というものだろう。それは本能でわかるし、多分能力さん的にはこの人達に勝たせてくれないだろうし。
あ、そんなことまで分かってしまう自分が嫌になってきた。
ならもう後始末は全部この人らに任せておけばいいか。私はエースのとこへ急ごう。まだ生死不明であることには変わらないのだから。
くるりと踵を返せば流石に今回は拉致してこないらしく、もう行くのかと声をかけられたのだが──。
「部屋ならもう完璧に用意してあるからな!先に乗り込んでてもいいぞ!」
「だから乗らんて。なんでアンタはそーなっちゃったかなぁ。バギーさんは普通なのに」
「……バギー?」
やっべ、声のトーン下がった。いきなりヤンデレオーラ出すでない。怖い。
てかこの場で世間話してる場合ではないのでは?海軍も白ひげ達も何がなんだが状態になってますやん。もう勘弁して。
シャンクスの出現でこの場にいるのが一気に嫌になった私は『アクシオ』で箒を呼び出して、それに跨いで体を浮かす。それを大変愉快な目で見ているシャンクス達にそれは何能力だとか聞かれたが、そんなことを聞く前にやることをやった方がいいではと思わずにいられない。
「やろうと思えば、なんでもできるクソ能力だよ。だから一掃しようとすれば今からでもできる。でもそうしたらシャンクス達と戦うことになりそうだからやめておく」
「そうしてもらえると助かる」
「んじゃ、私は行くので」
「────」
あとはそちらさんで、好きに落とし前をつけてくれ。
そういって箒をさらに浮かせ、私はエースを乗せた潜水艦を追ったのである。
追撃されなかったのはきっとシャンクスがいたからだと思うが、やっぱりシャンクス怖い。
『すぐに迎えに行く』とか、望んでないんでやめてください。