夢主やめたい   作:燈葱

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急募、否定の仕方

 

 

「……しらないてんじょうだ」

 

 なんて有名なセリフを吐き出して、思うように身体が動かない私はキョロキョロと視線だけを動かした。

 今まで繰り返した中で気を失ったことは数回、気を失ったと見せかけ死んだのも数回。果たして今回はどっちなのだろう。意識を飛ばす前にエースは生きている聞いた気もするし、出来れば互いに生きて逢いたいものである。

 

「ん、んー」

 

 クラクラする頭で無理やり思考し、身体を動かす信号を飛ばしてもらう。やろうと思わなきゃやらないのはなかなか辛いものであるが、今はエースの生存確認が最優先なのだ。ピクピクする両腕で身体を起こし、点滴だと思われるもの引っこ抜きベッドから崩れ落ちる形で抜け出して。とりあえず這ってでもエースとルフィを探すぞと意気込んでいれば、目の前の扉が開いた。そしてそこにいたのは大男である。

 もう一度言おう、大男である。

 

「ぅえ?」

「──ッ!!? ロォォォォォオオオオ!ミルーが起きてるぅぅうううぅぅうう!」

「うっさ」

 

 てか何故名前を知っていらっしゃる?

 大男は私の脇の下に手を入れるとまるで猫を伸ばすように抱きかかえ?いや、抱いてはいないか。掲げて?ロー?と呼ばれた人の元へ走って向かい、とある部屋の扉を音を立てて開けた。そのせいでクラクラする頭は更にグラグラしてきたので、是非とも病人の扱いを学んでほしい。ちなみに扉は破壊された。

 

「ロー!みろ!ミルーだ!」

「なんで連れてきたんだコラさん!そいつ病人だぞ!」

「はっ!そうだった! 大丈夫か?痛いところはないか?苦しいところは?あ、腹は減ってたりしてないか、おにぎりもあるぞ?何か食べたいものはあるか?」

「とくに、なにも?」

 

 マジでなんなんですかね、この人。

 猫伸ばしからちゃんとした横抱きにされてしまったが、ぶっちゃけ言うと逃げたい。のに体が動かない。なんて地獄。知らない人間怖い。離してほしい。タッケテ。

 大男に抱きかかえられているせいで視線もいつもの倍はあるし、何気にがっちりホールドされてるから恐怖感がパナイ。視線を横にずらして目を合わせないようにしてみれば、今度は外科医とぱちりと視線が重なった。ということはここは外科医の船であり、私はそこで治療を受けたって事でよかろうか。

 

 ンニ"ィと小さく唸っていると外科医が大男から私を救い出し、備え付けであろう椅子に座らせてくれる……、と思いきやそのまま縦抱きされたままである。なんなのコイツ。コワ。

 訝しげな顔をしてあえればじぃっと首筋を見つめられ、何回斬ったと低い声で問われたのだが何でこの人斬ったことしってんの?怖いんだが。

 

「ナニヲオッシャッテ?」

「──人前で首掻っ切ろうとしたやつが今更取り繕うなよ」

「オゥ」

 

 どうやら既にやらかしていたから知っていたらしい。でもそれだとしても普通は何回も切れないのだからその質問はおかしいのではなかろうか?

 なんなのコイツらマジで恐ろしいんだが。助けを求める相手間違ったのか。と思考を飛ばしていればまたも部屋の扉(破壊済み)から乱入者が三名。シロクマ、キャスケット帽、ペンギン帽子が特徴のクルーが当たり前かのように私の名前を呼ぶし、一体どうなっているの状態である。タスケテ。

 

「キャプテン、ミルー起きたんだろ?」

「てかコラさん、動かしちゃダメでしょ。ミルーこれでも患者だぜ?」

「ほらミルー、こっちおいでぇ」

「え、コワ。オウチカエリタイ」

 

『ミルーが喋ったぁぁぁああ!』

 

「うるさ」

 

 私だけなのでしょうか、状況が分からないのは。

 もしかしてこれが能力使いまくった影響?何もしてないのに好感度マックス的な?え、いや、怖いんだが。逃げ出したい。

 思わず外科医の衣類を握りしめてビクつき、オウチカエル、ルフィ、エース、オウチ、オニィチャン、エースと言葉を連なっていれば真顔でガン見してくる五名が目の前にいるし。能力さん、お願いだから能力引っ込めてと願ってしまうのは間違いでしょうか。いや間違え出ないはずだ。お願いだから好感度無理やりあげないでください、てかおにぃちゃんズの生存を確認させてくれないだろうか。こんな絡みはいらんのだから。

 

「……エースに、あいたい」

 

 陽キャが怖いストレスとやけに馴れ馴れしい輩たちへのストレスが合わさり、どうしようもないくらいに家族を求めてしまう。もとより私は兄二人の安否を確認したかったのだ、好感度を上げるためにここにきたのではないのだからいい加減にしてほしい。

 下唇を噛み締めていれば私の心情を察してくれたであろう外科医が漸く私を椅子へと降ろしてくれて、現状を詳しく教えてくれた。

 ルフィの容体は落ち着いているが過労とダメージの蓄積が酷くまだ目覚めておらず、エースは外傷こそ少なくみえるがまだ予断は許さない状況であるとのこと。

 

「……エース、助かる?」

「助けてやる。だからお前も大人しくしてろ。貧血に栄養失調、火傷や切り傷。数えられねェくらい、お前も怪我してるんだからな。絶対安静だわかったな」

「わかった」

「よし、いい子だ」

「──なんで外科医はナチュラルに私を子供扱いするんですかね、是非ともやめていただいても?」

 

 私子供じゃないし、そんな親しくないですよねとお願いしてみればピタリと動きを止める外科医一同。心なしか目つきも怖いんですが。

 能力さん、能力きって。今すぐきって。

 だから人型は嫌いなんだよ無差別テロ反対。何もしてないのに仲良くなるとか地雷です。

 

「ミルー、まさかおれ達を覚えてないの?」

「え、覚えてない?」

「え?」

「えって、え?」

 

 シロクマが心配そうに私を見てきて覚えてないのと聞いてきたが、何ありましたっけ?

 記憶飛ばす前に何かやっちゃった系でしょうか?なんて尋ねれば大男がいきなり泣き出すし、奴の情緒はどうなってんだ。縋られても怖いだけなんですが。

 

「おま、おまえ!お"れ"を"助げでぐれ"だだろ"ぉぉおおお"!?」

「すいません、聞き取れませんでした」

「ミ"ル"ー!!」

「こっわ」

 

 なんのこっちゃと首を傾げてみればいきなり腕捲りするやつと半裸になるやつがいて、ここの傷口治してくれただろうと叫ばれた。よく見てみれば確かに腕と腹に縫い跡らしきものはあるが、私は縫合できない人間なので間違いでは?

 

「嘘だろ!なんで覚えてないの!?おれ等は忘れたことねェのに!」

「お兄ちゃん悲しいっ!」

「え」

「リアルに引かないで」

「面倒」

 

 お兄ちゃんはエースとルフィなのでお間違えなのでは?

 なんでどうしてと凹んでいる帽子組とハワハワとしているクマ。それに大男と外科医なんて知り合いいたら濃すぎて忘れ等ないと思うのだが、やはり人違いで決定だろう。

 そう自己完結していると外科医がボソリと知ってていいはずのない情報を呟いたのである。

 

「お前、今回何度繰り返した?」

「──は?」

「戻ってんだろ何回も。その首の傷が何よりの証拠だ。普通の人間だったら死んでもおかしくねぇんだよ、その傷じゃな」

 

 つぅっと傷口を撫でられれば、いやでもその意味がわかってしまう。

 知ってるはずないのに。私だけしか知らないはずの死に戻りを、何故外科医が知っている。首の傷が普通じゃないとしてもそこに辿り着くはずがないのだ。だって普通は死んでやり直せるなんて考えやしないだろうし、考えても出来やしない。こんな事するのは一度体験させられた私か、繰り返した結果それを記憶している──。

 

「……あ」

 

 いた。

 そういえば、私の死に戻りを知るやつが二人ほど過去にいたはずだ。

 どっかの冬島で、なんでそうなったか分からずに、ただがむしゃらに正解を探し続け死に続けたの日々を、何故か忘れなかった奴が。

 

「──まさか」

「フッ、思い出したか」

「あの時の、」

「そうだ、おれ達は──」

「トラウマ製造機」

「──は?」

 

 あなたのトラウマは何処から?私は強制死に戻りから!

 会いたくなかったわ。こんな再会はいらないのよ能力さん。あからさまにうわぁ、マジか。と眉間に皺を寄せると目の前にいた外科医は不機嫌そうな顔になるし、泣き喚いていた大男はトラウマ製造機とは?と悩み始めている。

 覚えていないわけではなかったが、思い出したくはない記憶だったには違いなく。けれどその経験があったから今回はこんなことが出来たわけで。

 複雑な思いでいっぱいです。

 

「ん、まぁ、お元気そうで、なりよりです」

「それ以外に言いたいことはないのか……?」

「えぇっと、いつエース達に会えますかね?」

「……女ヶ島に二人を匿ってもらう手筈になっている。会えるとしたらその時になるだろう。何せ怪我が怪我だ、今は面談拒絶にさせてもらおうか」

「そーですか」

 

 変な菌とか私が所持してたら大変だものね。オーケーオーケー、納得した。

 少しブスくれている外科医と落ち込んでいる帽子組プラスシロクマ。大男は何故か私に引っ付き始め"また繰り返したのか""平気か"と甲斐甲斐しく世話をしそうな雰囲気だが、是非ともご遠慮いただきたい。

 

 なんて私の気も知らず、いやってほどこの五人が絡んでくるんですが私をどうしたいんですかね能力さん。ユメヌシやるっていいましたが、それはこういう意味ではないです。最強つよつよはやったじゃないですか。愛されクルーとか嫌です。どうやっても愛されるならいきものわくで麦わらの一味にしてください。あそこなら頑張れる気がするんで。もう勘弁してください胃に穴が開く。

 

 体が思うように動かないがこいつ等を相手にするよりはマシと、小さきモノの姿で逃げようとしたのだが何故か変われないし。

 まかさ動物主はお呼びでない?そんなことってある?もしかしてちゃんとユメヌシやれって拒否されてんの?

 やーめーてーよーぉぉおおお!

 なんでそんな風に私のこといじめるの?エースの為ならなんでもするって言ったけどこれはないだろうに。あまりにも酷い。グスン。

 

「ミルー、運んでやろうか。ほら、抱っこしてやるから」

「いえ、結構です」

「遠慮すんなって」

「遠慮させろや」

 

 なんてやりとりはほぼ毎日。くそぅ、早く体力戻れ。能力の使いすぎなのか、私の足取りはいまだに子鹿並みである。

 ヒョイっと私を抱えるコラさんとやらはしょっちゅうドジるのに、何故か私を抱えている時だけはドジはないらしい。と唯一の女性クルーイッカクさんに教えてもらった。

 イッカクさんやその他クルー達も見知らぬ私を警戒しろやと思うやろ?これがしないんだな。外科医達の凄まじい刷り込みによる効果らしいく、なんでも私は彼らの恩人ポジにいるらしい。そのせいでもういつまでも此処にいていいんだよ?むしろ麦わらの一味じゃないの?じゃあハートの海賊団にはいりなよ!と大歓迎な雰囲気を出されてしまっているのだ。辛い。

 

 ユメヌシやるって腹括ったらすぐこれだよ。だからこの能力嫌い、もうユメヌシやめたい。やるとしたらルフィ達の妹主設定でよろしくお願いします。じゃないと吐血する。

 

 一方的に恩人ブーム、主に五人の妹ブームに胃を痛める最中、ようやく着いた女ヶ島。私はこれで解放されるとウキウキとした気分で上陸を果たしたのである。

 毎日エースとルフィの状況を聞いていたが、これで本当の兄弟に会えるのだストレスフリーになるに決まってる。はずだったのに。

 

「駄目だ、まだ起きてねェ」

「島着いたら会えると言ったのは外科医では?」

「会えるとは言ってねェだろ。目を覚まして身体に異常がないか確かめるまで、会わせることは出来ねェんだよ。医者としてな」

 

 ぐぬぬ、言ってることは間違ってないから余計に辛い。

 下唇を噛んでウギッていればシロクマにモフるか聞かれるし、帽子ツインはお菓子食うかと言い寄ってくるし。本当にやめろください。

 ちょ、おいこら。大男。私を抱えるな。抱っこするな。それは兄である二人の特権なんだぞ。頭を撫でるなって何回言えばわかるんだクソやろう。こいつは私を猫かなんかと勘違いしてるんじゃあるまいか?いい加減しろ。

 

「イ"ィィィィイイイ!」

「落ち着け落ち着け!ほら、おかきでも食うか?」

「いらんて!はーなーしーてぇ!」

「嫌がってるじゃろ、いい加減離してやらんか……」

 

 必死に足掻いていると助けてくれるのは決まって魚人さんことジンベエさん。ルフィを運んでくれた人?魚?でもある。ハートのクルーの印象があまりにも強すぎて存在が消えかけているが、この人はいつも私に助け舟を出してくれるいいおっさんだ。もっと言えばエース話もしてくれるので嫌いじゃない。

 

「ジンベエさん、ジンベエさん。私ルフィ目覚めるまでジンベエさんの隣にいる」

「好きにすりゃいい」

 

 マジおっさん最高。

 ついでにエースのお話ししましょ、そうしましょ。

 いそいそとジンベエさんの隣を陣取って離れなければ、必要以上に奴らに絡まれることはないと私は学んだのである!

 

 ただし!隙を見せると!すぐ絡まれるけど!

 

 この能力マジで嫌い!

 

 




ユメイノ・ミルー
ぶっ倒れる前の記憶は曖昧なぅ。能力使いすぎて体が限界を超えたとおもっていたら、知らぬ間に愛されて主ブームされて胃に穴空きそう。表情筋はまだ死んでいる。
ロー、ペンギン、シャチ、ベポには妹扱いされてるレベルで可愛がられている。何故ならば彼らは泣き虫ミルーを知っているから。
頑張って生きてて(泣かないで)偉いな!ヨシヨシしてやるよ!お兄ちゃんが!って思われてる。
コラソン(ロシナンテ)のみいっぱいお世話したい。むしろ育てたいし守りたい。離れたら死にそうだから連れて帰りたいと少し狂った感情を持たれている。何故ならば彼の為に死に戻ったと思われてるので。
つまりは完璧ユメヌシにされている。かわいそ。

本物のおにーちゃんず
まだ目覚めていない。目覚めた暁にはミルーを助けてあげて。

ハートのクルー
キャプテンとコラさんの恩人と聞いている。耳がタコになるほど『すごく頑張って泣きながらおれ達を助けてくれ小さな女の子』的な事を聞かされてるから、血まみれて現れたミルーをみても、お兄ちゃん助けるために頑張ったんだね!すごいね!と小さい子を見る目で見られている。
実際にワンピの世界観からすればミルーは小さいので、多分ルフィと同い年と思われてないかもしれない。

ロー
完璧に兄ブームしてる奴。
麦わら屋が兄?そうなのか、まぁ俺も兄さまだかな。
泣き虫ミルーを知る一人なので、一緒に住んでいた頃は二人で寝てたし鬱ってたミルーを膝に乗せてご飯も食べさせていた。なので麦わらクルーじゃないなら連れて帰る気満々。
おれは麦わら屋より秘密知ってるぞ、フフン!ってマウント取り出すかもしれない。がエースには勝てない。

シャチ・ペンギン・ベポ
ローと同じく自分は兄だと思い込んでいる。何故ならば泣き虫ミルーを知っているし、泣いてた時はよく抱っこしてあやしてたので。お菓子は常備しているし、隙あらばかまい倒そうとしているシスコン予備軍。

コラさん(ロシナンテ)
海軍は休職中。ヤバい兄ちゃんには死んだと思われているのでローと一緒にいる。目的は妥当ドフィ。
ただ海軍だとミルーにバレるとゴミを見るまで見られる未来があるかもしれない。その場合はドMになるか、なんでそんなこと言うんだ!ミルーはそんなこと言わない!な妄想型ヤンデレになるか。シャンクスの次に癖を歪まされちゃった可哀想な人。
ちなみに今はヤンデレ崇拝型と無害型を行ったり来たりしている。つまりはすでにヤンデレてる。
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