「ミルゥゥウウウウウ!」
「ルフィィィィィイ!」
包帯だらけの我が兄は、それは元気な姿で私の目の前に現れてくれた。ので、助走をつけて走ってその頭に抱きついてやった。もう離さない。
「起ぎる゛の゛が遅い゛!」
「悪かったって!──でもよぉ、お前もやり過ぎだって言ったのにやめなかったじゃねェか!おれも怒ってるんだぞ!」
「二人が、怪我するのが、悪い!私悪くないっ。ンミ°ィィィィイイイ!」
「そんな怒んなよぉ。でもミルーもエースを助けにきてくれたんだよな、ありがとな」
「おにぃちゃん大好きぃぃぃい!」
語彙力?そんなモノ元からありませんでしたけど。私のHPはもうゼロなんです。少しくらいのキャラ崩壊は許してください。
そろそろユメヌシ扱いされすぎて、胃に穴が開くと嘆いていた時のルフィの復活はマジでありがたい。心の支え。ありがとう、そしてありがとう。もう二度と離さないぞ。お兄ちゃんはこっちだけで十分なんです。
エグエグ泣きながらルフィの顔面を放解放して、今度は腰に腕を回し纏わりつき怪我の様子を拝見。外科医は外科医なので、もう大丈夫なのだと思うが自分の目で見ないと妹は心配なのである。ペタペタ触って異常がないか確認していれば、ルフィはコテンと首を傾げた。
どうしたのかと聞けば、どうして人型なのか気になってるようなのだ。
「能力使いすぎて、小さきモノになれないんよ……。辛い」
「そっか。でもおれがいるから大丈夫だぞ!ちゃんとユメヌシ?から守ってやるからな!」
「おにぃちゃん、まじでおにいちゃん。私、ルフィの妹でよかった」
「おう!おれもミルーのにいちゃんでよかったぞ!」
尊い。ルフィが尊い。拝んどこ。
ルフィの胸モノに顔を埋めて久々の
「あ、お前等がおれ達を助けてくれたんだよな!ありがとな?」
「……医者だからな。それよりもお前ら、ひっつき過ぎだろ」
「んあ?」
「いくらなんでも、ひっつき過ぎだって言ってんだ!」
なんで怒り出すんですか外科医。そういう要素、入りませんて。
我ら兄妹ぞ?ひっつき虫なのはデフォだのだ!へけ!
「ミルー、お前もお前だ!麦わら屋の怪我は大抵治ったがまだ怪我人だぞ。負担を考えてやれ。抱きつきたいならこっちにもいるだろ兄が」
「いないが?」
「──兄ぃ?」
「残念なことに外科医達の頭はぱんぱかぱーんらしい。気にするなルフィ。私のおにぃちゃんは君等だけ!」
「そっか!」
「そうだ!」
納得するな!とツッコミが入ったが、私の兄はルフィとエースだけなので。今更それ以外は入りませんて。
能力の平穏の妨害を受けつつも、私は基本ルフィと一緒に行動。島中央にいるハンコックにも会いに行って、今度はちゃんと礼儀正しくご挨拶もさせていただいた。ルフィを連れてきて、エースを助けてることに協力してくれてありがとうございますと。
「して、ルフィの妹。ミルーと言ったな。お主はハートのクルーなのか?」
「──違いますネ」
「そうか、ならその装いはやめたほうがよかろう。好きな服を持っていくといい」
「ハンコックさん、とても素敵!」
何せ私のきてる服、ハートのクルーのツナギなので。だって着てた服は血まみれだしボロボロだし、流石に直せない状態だった為ポイっとしたってイッカクさんが言っていた。けどこの服のチョイスら酷い。でも他になかったのだから致し方ない。
これで身内扱いから抜けられるぜー!と張り切って衣類を貰い受けようとしたのだが、此処にも問題が発生。
ホラ、この世界の女性のプロポーションって素晴らしいじゃない。ボンキュボンなわけで。年相応なものを選ぶと胸部が緩く腰がキツく。もしくはビキニタイプだがサイズはなく。
お子様用を選ぼうとしても、元より量が少なく露出も多い。なんていう拷問。
「──これ、きてよ」
諦めてツナギ着てることにした。捲ればなんとかなるし。諦めも肝心よね。
大量のご飯をもらって
それはおれ達の役割だったのに!って叫ぶ帽子組の声など聞こえませんね。
ルフィが起きてからというもの外科医達とは距離がとれてとても嬉しい私であったが、何故かイッカクさんに呼び出されて構ってあげとて懇願されて大変困っているところです。
「ペンギン達はまぁいいから、せめてキャプテンとコラさんだけでも!お願い!」
「それは出来ぬお願いでして」
「料理で渡すだけでいいから!?ミルーと麦わらが仲良くしてるの見てキャプテンの舌打ちが酷いのよ!コラさんなんてジメジメしてキノコ生えそうで!私を助けると思ってお願いっ!」
「えぇー」
イッカクさんには大変世話になったしなぁ。
ルフィが目覚める前、何かと抱っこしてくる大男を避けるために自室に招いてもらったり、やたら膝上に乗せようとする外科医から離してもらえたりと。
イッカクさん、いい人。これ心理。
いやいやだが、渋々だがおにぎりの乗っているお盆をもらって素早く渡そうとしたけれど即座に捕獲。てか外科医の能力使われて逃げる暇なく。吸うな、吸うなよ。私は猫じゃない。生きてるし、首の傷を撫でるな。セクハラやぞそれ。え、そろそろ抜糸する?てか縫ってあったのこれ。それはまぁ、お世話になりまして。
「──お前は死ぬことに躊躇いないのか」
「何をおっしゃる?エースを助けられるなら、私の命なんて何度だって捨ててやるわ」
てか実際捨てましたし。
今回、エースは一度心臓止まったし今だに処置室にいるけれど、一応危険は脱したらしいし。頑張った甲斐あると思うんだ。だから首に斬り跡が残ろうが火傷痕やら銃痕が身体中に残ろうが、安いものである。
「死ぬのが怖いなんて、もうない捨てた感情ですし」
じゃなかったら繰り返せませんて。
私のそんな発言が気に食わなかった外科医の手の力が強まったが、いい加減離してくれ。ストレスが溜まる。おい大男、お前は嬉しそうに近寄ってくるな。ルフィは、ルフィはご飯に集中しないで私を助けようか?
え、トラ男はいい奴だから大丈夫!って。ルフィにいい奴でも私にとっては危険なんだよな。なんだろこの既視感。あ、あれだ。私の苦手とするシャンクを誇るルフィの行動と一緒。
そゆとこあるよね、知ってる。ルフィにとってはいい人だもんね。諦める。
ルフィが目覚めたからといってそんな変わらなかった私の日常は、それから二日後に終わる事となる。
それは勿論、エースが目覚めたからだ。
目覚めたと連絡が来た時はルフィ共に喜びまくって、すぐにでもエースの元へ向かおうとして外科医に怒られ。ソワソワと待つ事小一時間。
包帯まみれのエースが出てきた時、ルフィは泣いて喜び抱きついていた。
「エ゛ェェェェス゛ゥゥウ!」
「──おぅ、迷惑かけたな」
ギャン泣きするルフィとそれを宥めるエースを眺め、私はどうしようもなく溢れ出る涙を止める術を知らなくて。
漸くなのだ、漸くあの日以降生きているエースを見ることができたのだ。これが嬉しくないわけがない。
「ミルー」
そう私を呼ぶ声に反応して瞬きをし、ルフィを抱き抱えているエースに向かって走り出して抱きつく。と見せかけて渾身の頭突きを喰らわせた。
「ミルー!!?」
「こんっの、馬鹿野郎が!!何が愛してくれてありがとうだ!嫌ってほど私等に愛されてんのが分からんのか!ばぁか!ほれみろこの首の傷を!愛がいきすぎて一生残る傷つくってやったかんな!これを見るたび私の愛を思い出せ!?お礼は寿命で死ぬことだから!精々幸せになってからくたばりやがりください!また勝手に、どっか行って、死のうとしても、約束破って殺戮大会開催してやるぅぅう!私に約束守らせたかったら一生側にいてよぉぉおおお!おにぃちゃんでしょぉおおおお!」
頭突きからルフィを巻き込んでの押し倒し。怪我人に考慮してポカポカ叩くだけにしたけれど、十七歳本気のギャン泣きをご堪能ください。
エグエグとえづきながらギャン泣きし、ぐりぐりと頭をエースの胸に押し付ける。包帯がずれようが涙で濡れようが知ったこっちゃない。もう私は限界マックスなのだ。
重なるストレスと安堵。生きた人間の温もりに私のなけなしの情緒は破裂した。頼むからもう目の前で死なないでくれ。
「エ゛ーズの゛ばぁがぁぁぁあ゛!」
「……本当に、悪かったなぁ」
「許ざな゛い゛っ」
「そうか、じゃあ許さなくてもいい。その分おれもお前等と一緒に生きるからよ」
「ぞう゛じで!」
生きて幸せになることが私への詫びなのです。精々頑張って幸せになってください。
ペショペショ泣いた私はそれからエースが外科医に診察される時間以外、軽鴨の親子の如くエースの側から離れることはなく、寝る時でさえ一緒に過ごした。何故ならば離れた瞬間に殺される体験をしてる故に。
ベタベタしすぎじゃないって言われようが、エースの体温感じてないと精神がやられるんだわ。これが。
「まだ体調は万全じゃないだろ?おれが変わるよ」
「いんにゃ、互いにくっついてた方が気が休まるんだわ。お気遣い感謝すんぜ」
私がうとうと船を漕ぎめエースにおんぶしてもらってると、大男は変わろうとしてくる。が、ルフィと違ってエースは私を離さないので安心。心休まるぅ、スヤァ。
起きた時も当たり前のように隣でお昼寝しててくれるので大変満足です。でも怪我人におんぶって……。少し反省しよ。
「火拳屋、まだ傷が痛むだろう。ミルーはこっちで見る」
「傷くらいなんだ。妹が甘えてくれてんだからそれくらいなんちゃねェさ」
エースの足の間でご飯を食べている時の会話である。頭撫でてくれるおにぃちゃん最高!安心安全にぱー。
「火拳っ、頼む、おれ等にも妹分を!」
「補給させてくれ!」
「頼むっ!」
「プハハ、悪ィな!ミルーはおれ等の妹なんでな!」
帽子組とクマにお菓子を片手に追われている時は抱えて逃げてくれるとか、お兄ちゃんは最高でしかない。エースしか勝たん。
一度エースはルフィと違って外科医から物理的に私を離してくれて助かるとお礼を言ったところ、私が人と関わるのを得意としてないからなと笑って答えてくれた。
本当に良く私のことを理解してくれていて、大変頼りになるおにぃちゃんに思わず涙が出た。
まじでエースしか勝たん。あいちてる!