「乗らん!」
「乗れ!」
「乗らんて!」
「麦わらクルーでもなけりゃ、二年暇してんだろ!?どう考えてもうちにくる流れだろうがっ!」
「いーやーだぁァァアアア!」
バーサス外科医なぅ。
何故ならば外科医が私をポーラータンク号に乗せようとしているからである。全くもって迷惑話だ。
ことの始まりはレイリーさんがルフィと二年間修行をしよう、と提案した事だった。
シャボンディ諸島でクマさんと戦桃丸に敗れ、エースを救出しに行くも自分の力不足を実感させられてしまったルフィはレイリーさんのその提案を受け入れた。よって新世界へ行くのを二年先延ばしにする事にしたのである。
そしてそれを散らばったメンバーに知らせるためにルフィとレイリーさん、ジンベエさんの三人でマリンフォードへ向かいわざわざ軍艦奪った上で周回。十六点鐘を行い自分が生きていることを皆に知らせ、わざわざ写真を撮られる事によって腕に刻んだ文字を世間に見せつけて二年後に会おうぜ!とお知らせをしたのだった。
もちろんこれはレイリーさんの案で、これを見た海軍や世間はこの戦争で亡くなった犠牲者への追悼だと思い込み、共に逃げたはずのエースを連れて行かなかったことにより死亡説を深めるだろうと。
尚且つ鐘を十六回鳴らす事により海軍へと新しい時代が来るぞと挑発。そこまですれば誰も本来の目的に気づくことはないとレイリーさんは予測したのである。
無論私は行かなかった。行くわけがない。
エースを殺そうと奴らに追悼なんてする必要なんてないと思っているし、言ったところで中指おっ立ててあっかんべーして挑発しだす未来しか見えない。ま、懸賞金が掛けられてしまったから大人しくしてなさいってレイリーさんから言われたのでお留守番してましたけど。
とまぁそんなことがありまして、一旦ジンベエさんは魚人島に帰り、レイリーさんとルフィは修行へ。エースは世間の様子を見ながら白ひげと合流する、てのが今後の計画だったわけ。私はほとぼりが覚めたらエースを白ひげのとこに送り届ける気満々だったのだが、ここで横槍を入れてきたのが外科医達、ハートの海賊団である。
そういやこの人たちなかなか島から出ていかないなぁと思っていたが、まさが私を連れ出す気だったと誰が思おうか。だぁれも思っちゃいなかった。奴ら以外は。
「うちに来れば基本海ん中だ、海兵に見つかる心配はねェ。身を隠すならもってこいだろ」
「そーだそーだ!」
「もっと言っちゃってキャプテン!」
「うわぁ」
さも当たり前のようにドヤ顔されれば、流石の私もドン引きである。
「いや、ミルーはおれをオヤジのとこに送っていってくれるみてェだし乗るのは無理だろ」
「それな」
私、エースを乗せて飛ぶ予定があるので。
ムリポムリポと首を横に振ったというのに、それでも外科医は諦めない。
「そもそもだ、火拳屋一人で戻ればいいだけの話だろ。わざわざミルーの手を借りるは必要性はねぇ」
「そう言われちゃそうが。今のおれには足がねェ」
以前エースが使っていたストライカーは壊されてしまってここにはないし、あったとしても使える状況ではない。何故ならばエースは一度死んだ判定を受けてしまったらしく、メラメラの実の能力が消えてしまったのである。
これに気づいた時のエースの顔はなんと表したらいいものか。長年付き合ってきた能力が無くなったことへの悲壮感。でも隣を見れば幼い頃から能力を消したいと騒いでた私がいるせいで公に悲しみを表せるはずもなく、生きているだけで儲けもんだから仕方がないと笑うだけ。
私のことなんて気にせず悔しがればいいのにと伝えたところで、また一から能力に頼らないような戦闘ができるように鍛え直すとけろりと言ってのけたのだ。
そういうとこかっこいいですね、おにぃちゃん!
「ま、おれの事情はさておき。ミルーはどうしたいんだ。一応そちらさんとも知り合いなんだろ?お前があっちで隠れててぇっつうならおれはそれでいいとも思うが、どうする?」
どうするって言われましても、私の答えは決まっているわけで。
ハートの帽子組はエースがそう言ってるんだからこっちにこいだの、外科医はウンウン頷いてるし。大男も苦労はさせないとか言ってやがりますし。
ま、ふわふわのシロクマがいるのは魅力的なんだけどね。
でもねぇ、そこがエースと彼らの違いだと思うの。私が認め、願っているおにぃちゃんと、能力で"兄"にされかけているものの差がよく分かる。
「……外科医達は私が嫌っていっても、そっちの船に乗るのが良いって思ってるんだよね?」
「そりゃそうだろ。麦わらの一味でもねェなら、うちはいい隠れ蓑だ。ま、二年後に返す予定もねェがな」
「いっそのことウチに入っちゃえばいいんだよ!」
「──うん、いかない。絶対無理!私、エースといる」
「なんで!?」
いやだって、そういうところが嫌でして。
「エースは私に選ばせてくれるけど、そっちは選ばせてくれないんでしょ?だから無理」
落語かなんかであるよね、本当の母親と偽物の母親。どっちかが本物か分からなければ腕を引っ張りあって本物なら痛がる子供を手を離すって。今の状況ってまさにコレなのでは。
外科医側はわたしが嫌だっていっても無理やり連れ出すっていうけど、エースはあくまで私の意見を尊重してくれてるわけよ。自分のことなんて二の次で。
エースもルフィも、状況によっては私の意見を無視することはそりゃあるよ。でも大抵は私がやりたくないならしなくていいのスタンスは守ってくれてる。じゃなきゃここまで旅してきませんて。
「無理強いされるのは、いやなので」
そりゃもう能力さんにしてやられてますから。
そこまで言えば外科医達は渋々?いやいや?諦めて、はくれてなさそうだけど大男が説得してくれたらしく、しゃあなしにここを発つ事に決めたらしい。
「──これはおれのビブルカードだ、渡しておく」
「渡されてもいかないと思うけど」
「そうかもしれない。けど、何かあれば力になるから」
差し出されたその紙はかつてエースにもらったものよりも小さい。
小さく名前が書かれているが、そこに書いてある名前はロシナンテ。大男はコラさんでロシナンテ?って名前なの?どう略せばコラさんになるのか若干気になるのだが。
「ロシーって呼んでくれてもいいぜ!」
「え、まぁ、機会があれば」
あ、コイツやばい方面に振り切ってるやつや。口も目も笑ってるのに眼光開いてる。つまりはシャンクス系。なんかすいません。もう関わらないでいただいてもよろしいでしょうか。なんで今まで気づかなかったんだろな。そこまで余裕がなかったからか。うん、気をつけよ。
そそくさと後ろに下がってエースの背に隠れ、じゃあねと当たわりなく手を振る。
私、警戒してませんからとアピールするのを忘れない。あからさまに警戒してるとやばくなる人を知ってますので。その人シャンクスっていうんですけどね。
ものすごい顔をしてポーラータンク号に乗った外科医と、少し寂しそうに手を振ってくれたイッカクさん。ほんのちょびっと寂しい気がするのは、イッカクさんがいい人だったからかもしれない。
私って女性に弱いので。だってみんな可愛くて美人でいい匂いするんだもん。流石ワンピ世界。サンジの気持ち、よく分かる。今度話し相手になってもらおう。
なんて考えつつポーラータンク号が潜っていくのを見送って、ルフィとレイリーさんには後からそっちに行くねと約束して。
私とエースは白ひげの元へ向かう手筈を整えた。
「箒でずっと飛んでるとお尻痛くなるのでクッションは必須!そしていい加減脱ぎたいこのツナギ脱ぎたいけど、島には寄れないよなぁ」
「あんま賑わってないとこに降りりゃ平気だろ」
「そっかな?じゃあ、行きますかー」
エースが所持している白ひげのビブルカード片手に地面を蹴り上げ空へ飛ぶ。二週間ちょっとお世話になった女ヶ島ともこれでサヨナラだ。
「いざ参らん、白ひげ海賊団ー!」
「新世界に戻ってなきゃいいけどなァ」
「え、今そゆこという?」
流石にレッドラインは箒で越えられないと思いますけど?