青い空、綺麗な街並み、程よい騒音。足元に広がるのは真っ赤な液体。
人はそれを血液という。
「首、おいてけぇ!」
「ひぃっ!」
四の五も言わせず大太刀で首をチョンパすれば、あっという間に惨殺死体の出来上がり。3分クッキングにもならない時間で終了です。何せ今回私に喧嘩を打って来た海賊は弱かったので。
ブンっと刀を振って血を飛び散らせ、落ちてる首をぽいぽい拾う。多分本物の島津豊久ならばこんなことしないと思うが、中身は私なんで。精神的にもガワによってるせいで殺すことに躊躇いもないが、私なので。ちゃんと後で海兵に渡して賞金をもらっておこう。
本来の豊久なら頭は供養して体をぽいぽいするんだろうけど、証明のためには必要のは頭なんだ許せ。何せこのご時世、お金大事。フーシャ村に入ればおじいちゃんに養ってもらえるけど、いつも通りに知らない場所に飛ばされたので帰る家がない。
もっと言えば、コレが"いつ"なのかもわからないし、どれくらいで帰れるのかもわからないのだ。お金大事。他人の命で私は生きる。
今は慣れたこの行為だが、最初はかなり大変だった。
知らない場所に飛ばされて死にかけ、時には奴隷商に連れ去られ。今は成り変わり主になって難を逃れているが、うまく力が使えない人に成り代われば戦えないし、豊久になったところで刀を上手く扱えないうちはそりゃもう苦労した。一発で首チョンパってマジ難しいね。
ま、慣れたところでこの見かけのせいで喧嘩を打ってくる奴もいるわけで。
今はそんな奴らはお金にへーんしん。
あたりも平穏になるしゴミは減らせるし良いことをしたと思うようにしている。
てなわけで今日も今日とても換金しに行こうと海兵さん方を探すが誰一人いない。今までは一人くらいいたんだけどなぁと思いつつ、パイナップルによく似た少年に声かけるとここには海兵はいないと教えられたのである。
「なんでここにおらんと?」
「──ここは非加盟国だよい。だから、海賊しかいねぇ」
「非加盟国ぅ?なんじゃそんぎゃ」
パイナップル曰く、政府加盟国じゃない国には海軍基地?はなく、そんな国だからこそ海賊がわんさか略奪しに訪れるとか。捨て子も多いし人攫いも多いし、殺されるのも多い。つまりは暴力大国なわけ。
えぇ、じゃあこの首どうすれば?ナマモノだし腐る。お金に換えられないと困るんだけれども。
何分か悩んで、グゥと腹がなったので色々と諦めた。パイナップル少年に頼んで食べ物をくれそうなとこまで案内してもらい、悪さしていた海賊の首と等価交換で食料を手に入れたのである。やったね!
「……わいも食うか?情報料じゃ」
ホレと焼きたての肉を差し出すと一度こっちを見て困ったような顔をして、それでも鳴り響く腹に耐えきれずに受け取った。美味いよい!と独特の語尾をつけるパイナップルの頭を撫でて、ついでに今日の寝床も探してらうことにする。一日二日なら野宿でもいいんだが、最高半年海の上にいたこともあるから、事前にお家は作っておきたいのである。寝る場所大事。ちなみにその時は海賊王の船が家であった。勝手に帰って来たから、もう二度と行きたくない。多分船長も副船長も過保護だったからまたそっちに行ったらゲンコツじゃあすまない。だから意地でも行かないと意思を強気か持っておく。なんとかなーれ。
そんな非夢主思考をしながらもモグモグと肉を咀嚼し、たまに襲ってくる輩の首を刈り取る。殺しちゃダメとは言われてないし、殺しに来るんだから殺されたってしょうがないだろ。流石にルフィとかエースとかいるところで殺しちゃめっ!てされれば殺さないよ、多分。でもまぁもう論理は旅立ったから、ストッパーがいないと殺しちゃう。これもあれだな、そういう論理なし夢主や。げせぬ。
その後は近場にいたパイナップルくん以外の子供たちも恐れを知らないのか、それとも強者についた方がマシだと知っているからか私の後を追ってくるし、飛んだ首を拾って食べ物と交換してる図太い子もいる。でもさ、首を受け取る大人もにっこり笑うんじゃない。
え?困ってたから助かる?
お礼だと思ってうけとってくれ?
じゃあもらっときますよ、アザース。
「こっちだよい!ここなら最近じじぃが死んだから空き家になってるはずだよい!」
「ほぅ、じゃあおいが住んでも問題なか」
案内された場所は立派、とは言えないが雨風防げるような民家である。若干人が住んでいた形跡もあるし、生活するには困らないだろう。
一旦家が決まれば次は食い扶持をどうにかしなければならない。海兵がいないだけで、この街?でも通貨が必要なのは当たり前だ。残っていたナマモノが腐らないうちに現金に変えなければ。
んーんー唸っていれば首斬りサムライの噂を聞いたであろう人相の悪い大人がゾロゾロと集まって来て、ヤッタ臨時収入!と喜んだんだけれどもただの悪い海賊に困っていた町人達だった。早まって首チョンパしなくてよかったー。
私は彼らに頼まれてこの街の港に辿り着いてしまう海賊を狩ることとなった。勿論略奪してくる奴ら限定で、物資の補給に来た奴らには手は出さない。後者は街の人間からすれば良い取引相手なのだから。
それでもいけ好かない海賊はいるもので、今日も今日とて首が飛ぶ。綺麗にスパッと着られるとなんとも気持ちがいい。
いらない体で硝石でも作れば?海賊も海軍も銃使うんだからいい取引相手になるんじゃないと助言したら作ることに決定したらしい。ま、失敗して死なないように注意しなよとしか言えん。
「豊久!今日こそ稽古つけてくれよい!」
「嫌じゃ、そげん暇じゃなか」
「どうせ首切ってるだけじゃねぇか!おれも強くなりたいんだよい!」
「知らん!自分でいけんかせんか!」
残念ながら成り変わり島津豊久だから刀が使えるだけで、誰かに教える脳など私にはない。
何故が私に懐いてしまったパイナップルを交わしながら命乞いする海賊の首を切り飛ばす。今回の海賊はなかなか宝を溜め込んでいたようで、街の住人がどんどん宝を船から奪っていく。一応私が倒した事になるから一番に誰か欲しいのある?って聞いてくれるだけいい人達だと思う。後多分夢主補正で好かれてるんだとも思うけれど。ちくせう。わりと頭おかしい人間だと思うんだけどな、島津豊久。
「んあ、なんじゃこれ」
いつも通り宝箱、ではなく食糧庫を漁っていれば変な模様な果物を発見した。ぐるぐる模様の不味そうな果物、これはポイ。
「──これ、悪魔の実じゃ……」
「なんじゃ、ならいらん。もう食っちょる。わいの好きにせぇ」
「え、もらっていいのかよい?売れば、高いんじゃ」
「金はもういらん」
なんてったってもう家に収まり切ないくらい貢がれてますからね、街から。むしろパイナップルやその他少年達に代わり管理を任せてるくらいだし。多分盗まれてそうだけど。
「おれが能力者になったら……」
「あ?」
「一緒に──」
ぐわんと、視界が歪む。
少年が何か言いかけていた気がするが、全部聞き取る前に風景が変わる。
おぉ、なんという事でしょう。いつのまにかフーシャ村です!
「あー!ミルーこんなとこにいたー!」
「は、ミルー?このおっさんが?」
「んあ、おっさんじゃなか!────って、能力の一部だよ。まぁ、他人に見た目とか話し方が変わる」
「それはわかったけど、なんで血まみれなんだよ。怪我でもしてんのか?」
「返り血。首斬ってた」
「は?」
「ん?」
豊久から姿から戻すも血まみれなのは変わらず、エースとルフィにゴシゴシと血を拭われる。ついでに本当に怪我がないかを確認され、そのままダダンの元へと連れて行かれた。
ポイっと風呂場に放り込まれて、洗われて。ぬくぬくになったら布団に寝かしつけられてスヤァ。
起きた時に文句を言われたのだが、二ヶ月ほど行方不明になってたらしい。
あっちでは八ヶ月だったのに。なんで時間経過がこんなに違うんかね?別にいいけど。
そういや今回はなんのイベントで飛ばされたんだ?
あの街で誰かを救済してなのかもしれないし、あの街や硝石が重要な扱いになるとか?
まぁ、いいか。帰ってこれたんだし、もー知らなーい!
どんよりと曇った瞳には、俺が映っていた。
似ている。
けど、似てない。
弱いところも泣き虫なところも似てないはずなのに。
生まれも育ちも違うはずなのに、どうして似ているって思うんだろ。
見ててムカつく、そんなやつだったのに。
なのに、なんだよその能力。
それのせいで人に好かれるとか思ってんのかよ。
死んでも生き返ると、なんだそれ。
同じ日を繰り返すとかうそだろ。
俺が血で嫌われるのと逆に、無作為に好かれるとか。
そんなのってあるなのかよ。
ならおれは、お前がそう言ったようにおれは。
お前を人として愛すよ。
妹として、家族として。
だから、おれら兄弟にはいつまでも泣き虫でいりゃいい。
おれらが守ってやる。
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(この関係が、嘘でできたものだと思いたくないなぁ)