もう嫌、おうちに帰して。
そう思うこと幾星霜。いまだに白ひげの船から出られないミルーです。
エースを送ってきただけだから、速攻ルフィの元へ帰れると思っていたのが間違いだった。思わぬ足止めをくらってしまい私は、なかなかモビーディックから逃げ出せない。いい意味ではここの末っ子であるエースを助けた事による感謝からの好意を、その一方でストーカー的粘着質な視線を向けられているのが今の状態で。
しかもその筆頭は一番隊隊長不死鳥マルコ。感謝しつつ粘着するってドユコト?一番厄介じゃん。
どうやら豊久と関係していたであろうパイナップルな彼は、私がエースにひたすらくっ付いていれば近づいてくることそうそうない。ただ感謝してますよとニコニコ笑ってるだけ。なのに私からエースから離れたその瞬間に忍び寄ってくる。這いよる混沌並みに気付けばそこにいるマルコさん。怖くて泣きそうです。一体私が何をした!何もしてないだろきっと!ヒンッ!
「……あの、その」
「……、いつからだ」
「はい?」
「いつからの関係なんだよぃ」
もはや疑問形ですらない。
さっきまでのニコニコどこいった?目のハイライトよ、帰っておいで。
壁ドンまではいかないがジワジワ隅に追い込まれ、見上げた顔には影がかかる。ああ駄目だ。私のなけなしの第六感が危険視号を出しまくっている。
きっとここで私です⭐︎なんて言った暁には碌な事になる気がしない。それは絶対駄目な情報。与えるわけにはいかない。
でもさ、いい加減気になってくるじゃ。
ここまで気にされるのってなんでって。聞いた方が対処できんじゃね?とも思ってしまうこともあり。
覚悟を決めて、私は言葉を紡いだのだ。紡いでしまったのだ。
「──マルコさんこそ、どいった、ご関係で?」
「質問を質問で返すのか」
え、質問ですらなかったと思ったのですが?違いました?
え?私には質問する権利ないと?コッワ。睨んでます?私、睨まれてます?どないしろと。
こんな時に限って誰も近くにいなくて、エースの姿なんてあるわけなくて。聞かなきゃよかったなんて後悔してもすでに遅く。開いてしまった口をこれ以上開けてしまわないようにギュッと下唇を噛み締める。
さて、この微妙な雰囲気をどうしたものか。もう聞いてごめんなさいと頭を下げて逃げ出すべきかとも考えて。見上げていた視線をそっとずらす。するとマルコは大きく、わざとらしくため息を吐いて頭を抱えた。
「──家族に」
「はぁ」
「家族に、なりたかったんだよい」
「はい?」
家族とは、一般的に同じ家に住むもの。配偶者及び血縁関係にある人をさす言葉であったはず。白ひげのところではクルーは家族とされていたが、つまりはここのクルーにしたかったと言うことでしょうか。
コテンと首を傾げてみると、マルコは指の隙間から光のない目で私をじっと見つめてさらに口を開いたのである。
「あの人は俺が小させェ時にれお世話になった人で、なんちゃねェ顔で救い上げてくれたんだ。ただ生きているだけの日々から生き方をお支えてくれた人で、強さを見せつけ守ってくれた人だ。相手が誰であろうと自分の敵だと判断した奴らには容赦なく躊躇いなく。それでいて身内と判断した奴らには一際優しかった。クソみてェな世界が、あの人が来てから一変してどれだけの連中が救われたことか。一方的に奪われる側だったおれ達が、島津のお陰でまともに生きられるようにもなったしな。あの人が言った通り首のなくなった死体で作った火薬はそりゃよく売れたし、あとあと島全体が潤ったのは言うまでもねェ。あの人があの島にいる間は死ぬ奴が少なかった、知り合いの死体を捨てにいかなくても済んだ。金も必要以上に求めなけりゃ自分一人の食いもんしか求めねェ。助けてくれと願えば見返りを求めず人を叩き切ってくれた。多い分は他に与え、安心さえも与え。見た目に反して"良い人"すぎたんだ島津は。だからそばにいたかった、捨てられるのが怖かった。悪魔の実をもらった時はそりゃ喜んださ。なんらかの力さえありゃ、無条件にあの人の側に居られるもんだと思ってたんでな。あの島に一生住み着く気なんてなかった。だからクソみてェなあの島を一緒に出て、旅でもして。あの人の人生の一部になれりゃァいいと思ってだんだよい、おれはな。いきなり消えていなくなっちまったが。だから探してんだ消えたあの人を。オヤジに拾ってもらって、息子にしてもらっても尚、あの人の背中を嫌でも思い出しちまう。置いてかれた虚しさを、側に入れなかった悔しさを。このまま手の届かないとこにいるんだと思ってだよこっちは。なのにこうも簡単に現れた。お前が連れてきた。おれが兄と呼びたかったあの人を。なぁ、なんでお前はあの人を知ってる。名前を呼んでる。お前は、あの人のなんなんだ」
「ピェ」
おっも。重い。あまりにも重い!そして長い。いきなり語り出すのやめて?
きっとあなたと出会った私はそんなこと考えなかったと思いますよ?えぇ、そうに決まってます。だって誰かを救おうとか思っての行動じゃないんで、きっと思い違いです。勘違いです。
って言えるわけないよねぇ!?知ってるぅ!!
怖い。怖いわぁ。思い込みもここまでくるとそれしか感想は出ませんて。
こりゃあ、突いちゃいけない事案だった。
「マ、マルコさんは、ここのクルーで、白ひげさんの家族なんです、よね?じゃあ、とよ、島津が見つかったら、ここを辞める、と言うことで?」
「あ゛?」
「ヒンッ」
「何言ってだお前ェは。島津をオヤジに紹介して兄にすんだよい。決まってんだろ」
「ファ」
どっかのお前をお兄ちゃんにするって言ってる総長みたいなこと言ってるこの人。やばい。もうどうにもならない系ですね、諦めます。コッワ。助けておにぃちゃん。私、こんな人のオニィチャンになりたくないよぉ。
泣くのを必死に耐えつつ鼻を啜っていると、何処からともなく現れたサッチさんがどうしたんだと間に入ってくれた。マジで神。あとで回復薬お渡ししておきますね。
「サッチ゛さん゛っ!マルコさん゛がっ!」
「……あー、マルコはたまにこーなるんだワ。島津が絡むと特に」
「ン゛!?」
「おれも昔から憧れの兄貴談話されたわ、ごめんなミルーちゃん。──ま、それは良いとして、今日なんか食いたいものあるか?ミルーちゃんが食いたいもの作ってやるぜ!」
「ン゛、オムライスでっ」
「あいよ!任せときな!──そいや、島津好きって割と多いから気ぃつけろよ!マルコよりヤベェのはいねェけど、島津気に入ってる奴は割といるんでな」
「なんでェ?」
「そりゃ、賞金稼ぎだが敵じゃなきゃただの気のいい強ェ奴だからな!オヤジもあってみてェっつってたし!ま、気が向いたらおれにも紹介してくれよ!」
「ミ°ッ!?」
なんで、どして。海賊狩りなのに海賊に好かれてんの島津。全くもって訳がわからないよ。
颯爽と現れたくせに、もうすでにいなくなってしまったサッチさん。どうしてマルコを連れて行ってくれないの?この状況どうしたらいいの?
「あ、あのー。とりあえず……」
大声でエースを召喚させていただきます。
「エェェェエエスゥゥウウウゥ!助けてェェェエ!」
もう嫌!エースからもう離れてやらないかんな!もしくは明日にでも帰ってやる!
と思っていましたが、エースが裏切り白ひげの船から出れたのはそれから半年後だった。ちくせい。
もう少しいろよ、な?っておにぃちゃんにお願いされたら妹は断れないの知ってるでしょ!?なんでちゃっかり新世界に連れてこうとしてんの、私はルフィと行くんだわ!
末っ子の妹はおれらの妹?いえいえ、私の兄はエースとルフィなんで!妹扱いしないでいただいてもいいですかねぇ!?
「なぁ、ミルー。別にルフィんとこに属してる訳じゃねぇんだろ?ウチでもよくねェか?ほら、おれもいるしよォ」
「エースと一緒なのはそそる案件だけど!人いっぱいはいやなの!ルフィのとこ帰る!」
「そっか、気をつけて帰れよ?」
「ん!エースも、その、よろしく頼むよ?」
バレないように。案外わんさかいた島津過激勢にバレないようにマジで頼む。
私にエースに惜しまれつつ、モビーディック号のみなさんに惜しまれつつ箒に跨りその船を後にした。
これでルフィとレイリーさんのとこに帰れるぞと思っていたんだけど、能力ちゃんはいつだって私に厳しいらしい。
「はへぇ?」
いきなり猛スピードで飛んで、落下したと思ったら素敵なお嬢さんが目の前にいた。なんでぇ?
「ミルー!久しぶり!ウタだよ!」
ユメイノ・ミルー
人の姿。絶賛怯え中。だってそんなつもりなかったのに、勝手にオニィチャンにされかけてたから。
何浜何竺の総長みたいなこと言い出したマルコがマジで恐怖
マルコ
ちょっと病んでる。島津に夢見てるし、島津のせいで家族に憧れちゃった人。実のところ島津(ミルー)がオウチカエリタイ、兄弟に会いたいって無意識に言ってたことあり、故に家族になれば一緒にいれると思い込んでいる。白ひげと出会ってから息子になったけど、やっぱりオニィチャンが欲しい。多分心の憶測ではエースとミルーにムキぃ!ってしてる。
島津過激勢
どっかであってる人たち。ただし敵対しなかったり船の補充で来ただけの海賊だったから戦うことはなかった。でも戦う姿(首チョンパ)を見てることもあり、強い人だと知ってるし戦ってみたいなと思ってみたりいなかったり。多分マルコ同様に助けられたと思ってる人も一定数いる。
島津豊久(ミルー)
好き勝手にしてたはずなのに、勝手に救世主扱いされてたりする。なお本人は今の今まで知らなかった。
救われたと思ってる人には勿論海兵もいましたよ。