「ね、いいでしょ。ミルー、大好き」
「い、嫌ぁぁァァアアア!落ちついてぇぇえええ!」
「──ウタ!抜け駆けは狡いだろ!?」
「ックソが!」
うっかり赤髪海賊団に飛ばされたミルーです。只今貞操のピンチにより泣きそうなので助けてオニィチャン。
一室の隅で怯える私と親子揃って私の貞操を狙ってくるシャンクスとウタちゃん。ウタちゃんは味方だと思ってたのに、どうしてこうなったの?
だって今の私、"男主"なんだけど?
ドウシテ、ドウシテ?
「こんなのってないヨォォオオ!」
思い返せば三週間ほど前、この船に落ちてしまったのが運の尽き。
目の前で可憐に笑うウタちゃんに癒されたのは一瞬で、その直ぐ後ろから現れた男に私は恐怖した。何せ奴は幼い私を誘拐し、ついでに嫁にしようとした赤髪である。どう足掻いても恐怖でしかない。
爽やかに笑うその仮面を外してしまえば何時ぞやのロリコンの姿が見え隠れしてしてしまうもので、差し出された手を取ることなんて私にやできやしなかったのである。
「お前から帰って来てくれるなんてな!」
「帰ル、チガウ」
私のお家はここではない。との言葉は虚しく、何故か飛ぼうとしても反応しない箒はシャンクスの手によって海へと葬られた。逃げる手段を失った私は震える足でウタちゃんの後ろに隠れ、ヒンヒン泣き出したのである。
「オウチ、カエルゥ」
「え、もうここに住んじゃえばいいじゃん!私と一緒はイヤ?」
「……ウタちゃんは好きぃ(友達として)」
「おれもだろ?」
「ヒギャ!」
誰が能力に犯された人間を好きになるかと首を横に振るも、シャンクスの目がギラついていて拒否することを拒絶させれてしまうし。このままここにいれば貞操だけでなく人権もなくなるのではないかと考え、私は必死に思考を巡らせた。どうすれば私が私のままでいられるか、赤髪に手を出されないか考えて思い立ったのが男体化だったのだ。
流石のシャンクスも男には手は出さないだろうと思い姿を変えたけど、それを見ていたホンゴウさんにどんな仕組みだと詰め寄られたがそれは一旦置いとくとしよう。
私は私を守らなきゃならないので。貞操大事。
「これならば!まだ無事では!?」
「……」
「あ、無言が怖い」
「きゃー!ミルーが男になった!私と身長同じくらいじゃん!」
「ウタちゃんが癒し!」
キャッキャと腕を組んでくるウタちゃんに釣られてにへらと笑うが、何やらその時点で不穏な雰囲気は出ていたのだ。
気づいていなかった私が悪い。
男主としてウタちゃんに引っ付きながらシャンクスをかわし、ついでに四皇と呼ばれる奴らの船にいるのならばとチラチラっと彼らの技を盗み見る。
ベックマンさんは相変わらずシャンクスに呆れながらもお頭主義で助けてくれないし、敵を銃で殴ろうともするし。
ヤソップさんはウソップ同様の狙撃手だけど腕はウソップよりもはるかに上で、銃を教えようかと言われたので有り難く教わってはみた。が一般人並みに出来る、くらいにしかならなそう。ま、私がそこまで狙撃手になりたいと願ってないし、それはウソップの役割なので問題はなし。
ライムジュースさんはお空をぴょんぴょん飛ぶもんだから、教えてー!とお願いしたら教えてくれた。優しい兄ちゃんでは?シャンクスのとこにいるのに、私をお子様扱いしてくるとはいい人なのでは?いやいや、赤髪海賊団幹部やぞ、いい人の裏に何かあるはず、だ。
でもライムジュースさんのせいでオニィチャンが恋しくなった。帰りたい。
ルゥさんはウマウマなご飯を提供してくれるのだが、男の姿で良かったとため息を吐かれた。なんでも女の人が苦手らしい。つまりはルゥさんは私の味方なのでは?とウキウキしたのだが、お頭とくっついた時はセットでいてくれと頼まれた。絶望しかない。私はあの人とくっつく予定ないんだけどな、どんな認識されてんるんですかね?知りたくはない。
スネイクさんには何故か刀で戦えんだろ?と言われて戦闘訓練されるし、麦わらのとこの航海士ってどうよと聞かれたから美人とにっこりと答えておく。正直言って航海士としての腕は知らないので。多分、そこらの人よりは出来るんだと思うけど。
ガブさんは私が引っ付けばそのままシャンクスから隠してくれる天使だった。いい人や。なんかこう、飴と鞭?いや違うな、シャンクス過激派とそうではない人の差がはっきりしてるから、誰に匿って貰えばいいか分かりやすいわ。てことでガブさんはまとも認定しとこ。
パンチさんとウタちゃんと共に最高な音楽を楽しませてくれるし、ブルックに負けず劣らず。たまに一緒に歌おうぜ⭐︎ってされるのが苦痛だが、歌わないとハイライトのない目を向けてくるウタちゃんが怖いから歌うこともしばしば。この前は這い寄る神様の歌を歌っておいたよ。パンチさんに心の病気か疑われてホンゴウさん呼ばれたが、そういう歌ので。旧支配者のキャロルさんの歌ので。いあいあくとぅるー!
モンスターは私が何を言ってるか理解してると分かるとよく話しかけてくれるようになった。ウンウン、言葉が伝わらないと大変なことあるよね?私なんか今その状況。どうしたらシャンクスは私の話を聞いてくれると思う?え?無理?無理かぁ、泣けてきたわ。
まぁそんな感じで昔からいるメンバーとわちゃわちゃしていれば、なんとなくだがシャンクス以外は居心地いいのではと思ってしまったのである。
その状況が"作り込まれている物"とは知らずに、シャンクスにさえ気をつけていればいいと思い込んでいたのが敗因だったのだと後から思わずにいられない。グスン。
その結果生まれてしまった隙がコレ。
悲報、私、ウタちゃんに襲われる。
なんでなの、ウタちゃん。私の中身女って知ってるじゃん。なのにセクシーなネグリジェで寝床に夜這いかけてくるのはいけないと思うの。私だから襲われないだけで、そこら辺の男どもだったら美味しくいただかれちゃうよ!?
「おおおおお落ち着いてぇ!ウタチャン!私!ミルー!女の子ォ!」
「今は男でしょ?既成事実作っちゃえばこっちのもんってみんな言ってたもん!だから、ね?」
「キセイジジツ!?や、やめ!イ、イギャァァァア!」
誰だウタちゃんにそんな事を教えたのはと半泣きになりながら部屋の隅にまで逃げるも、にっこりとウタちゃんは追ってくるし脱ごうとするし。大好きと迫ってくる彼女に心底恐怖して私は叫んだ。落ち着いてくれと。
するとすぐさま飛び出してきたのはシャンクスである。助けにきてくれたのかと思いきや、抜け駆けはずるいと言い出しやがる。
何こいつら。コワっ!
ヒンッ!誰でもいいから私を助けてと願いながら体を女のものに戻した。これで一旦安全だろう。
「あ!シャンクスのせいでミルーが元に戻っちゃったじゃん!私の計画が台無しだよ!あと少しでヤれたのに!」
「もとよりお前がミルー"との"子供を作る方が無理があるだろ?一時的な体の変化だ、精通だってまだかもしんねェだろ?」
「生々しい話をすんなァァアアア!?」
怖い。この親子怖い。どうしてこうなっちゃったの?教えてよ能力さん。誰がこんなことしろって言ったよ。私は言ってもいないし願ってもいないのだけど?ウギィ!
ヒンヒン半泣きになりながら部屋を抜け出せば、扉の前に集まっている幹部の面々。
もしや最初から仕組まれていたのではと思うしかない。
「い、いつからここに?」
「あー、ウタが入り込むとこからだな」
「最初からじゃん!助けてよホンゴウさん!?」
「助けただろ、お頭が」
「あれが?!助けたと!?嘘だろ!?」
「おれとしてはウタよりお頭とくっついてもらった方が五月蝿くなくていいんだがな」
「ンギィぃいい!ベックマンさんのアホォォオオ!」
おいそこ、頷いてんの見えてんぞ。あ、金銭のやり取りしてる。ってことは私で賭けてやがったな!?ちくせう!
あまりにも非道な仕打ちにグズグズないているとモンスターが慰めてくれた。私にはお前しかいない。大好き。
「でもよォ、実際悪くねェだろ?ウチも。みんなミルーには優しいぜ?」
「──はぁ?」
「居心地、いいだろ?」
にっこりと笑うヤソップさんとライムジュースさん。その言葉の意味をきちんと理解してしまうと、最初からそういう風に扱われていたのだと認識せざるを得ない。みんなが私に対して昔より大らかだったのは、シャンクスとウタちゃんが絡んでたからなんですね!?そういうことね!どっちかとくっつけようという魂胆だったわけねクソ野郎!
嗚呼もう腹たったから敬意なんて捨てて今度から呼び捨てで呼んでやる!お前ら最初から分かっててやりやがったな!裏切りものめ!
「ルフィのところもいいが、
私の事を疑う
事実だが、男女ともに貞操を賭けてまでいたいとは思わないんだよなぁ!?
「おれ達海賊は欲しいもんは奪うたちでな。それに強ェミルーなら他の奴らも大歓迎らしいぞ?」
チラチラと手配書をちらつかせるシャンクスに腹を立てながらも拳を床を叩きつけ、今日からはもう誰も信じないぞと誓った。てか大歓迎ってシャンクスの圧のせいなのでは?きっと気に入らないクルーもいるはずだよ。ロックスターとかロックスターとかロックスターとか。あの人私のこと睨んできてよく怒られるやん。チクセウ。
その日から私はここの住人は誰も信じないと覚悟を決めて皆に接することにしたのである。特にシャンクスとウタちゃんは危険人物なので必要以上に近付かない、相手によって性別を変える、で対応していたのだがあの親子は『性別?関係なくない?』とか言い出したの流石に引いた。薔薇も百合もお呼びでないんだが?
そう考えて食費が掛かろうとも関係ないじゃん!と小さきモノになった際にはスネイクに捕まえやすいなと海楼石入りの檻を見せつけられたので逃げた。もう二度とハムスターにはならない。いっそのこと豊久やファプタの成り変わり主で過ごしてやろうかと思ったがそれはそれで某不死鳥の二の舞になる可能性があったのでやめて、下っ端がファプタの手配書持ってファプタたんはぁはぁしてたのを知ってしまった身としては顔真っ青です。流石が赤髪クルーやで。
まぁしかし、警戒心バリバリに過ごしていたら見聞色の覇気?とやらが身に危険が迫る時にチラッと未来を見せてくれるようになったのは有難い。やったね!これで貞操は守られた!だけど襲ってくる率高いだが?いい加減にしろ。
ついでに私がマリンフォードで刀に力を込めて使ってたのは武装色の覇気だともベックマンさんに教えてもらった。いつの間に使えていたモノだけど、それらはそういったものなんだって。シャンクスには覇王色の覇気ってのがあるらしいのだけどそれは相手を睨んだだけで威圧するモノらしく、よぉく考えてみるとそれ使えてたなと思い至った。でもこれは使える人間が少ないらしいので全力でお口にチャックしておくのである。イー!
「って、やっぱりウチに馴染んでんじゃねェか」
「馴染みたくはないんだが?いい加減お家帰りたい」
「……でも帰ろうとしない、よな?」
「帰れないんだよ、能力的に」
えぇ、何度か小舟を拝借して逃走を図りましたがいつのまにか身体だけ船に戻ってるんですよね?なぜでしょう。そんな能力あったのね能力さん。いらんわ。
能力さん的にこの船でなんかさせたいことがあんだろうなと半ば諦め気味にルーキーVSベックマンさんの戦いを遠目で眺め、わー左腕が飛んだァ!ともう一人の赤髪にドンマーイと叫んでおいた。私も君も、相手が悪かったんだよきっと。互いに頑張って生きよ?
「……そーいやさ、」
「なんだ」
「別に気にしてはいなかったし、気になってもいなかったんだけどね。やっぱりシャンクスもアレ、あるの?」
「アレ?」
「そう、アレ」
なんだっけなぁ、ファントム何とか。幻肢痛だったっけ?
ルーキーの叫び声を聞きつつ隣にいたホンゴウさんに聞いてみたら首を傾げられた。
「なんだそれ」
「えー、呼び方が違うのか?んーと、無くなった手足が痛むことなんだけど。割と失ったところが痛いっているって人はいるじゃん。それのこと」
「あー、それか。……たまに、鎮痛剤は飲んでるな」
ってことは一応あるんだ幻肢痛。なんでもさらりとかわすシャンクスの事だからないのかと思ってたが、やっぱり人間なんだねあの人も。変態だけど。
「にしてもよく知ってたな」
「んー?割と有名じゃない?アレって脳のバグなんでしょ、電波がピピピッと帰ってこないせいで痛むとか。脳が失ったものを認識できてないから痛むともいうよね。ま、鏡で対処できる場合もあるらしいし」
「──ほぅ、詳しく教えてくれねェか」
「こう、箱と鏡用意して、シャンクスなら右手を鏡に写して左側隠して。鏡に映った右手を脳が左手と認識できればいいんだっけ?あとは義手が動かせれば痛みが減るとかなんとか?そんなデータもあったようなないような?」
「詳しく載ってる文献はもってるか」
「持ってないなぁ。てか何処で覚えたんだっけ。うーん、記憶が曖昧すぎる」
あとでチョッパーに聞こう。
そう決めてホンゴウさんの方を向いていれば顎に手を当ててブツブツ言い出してるし、それが終わったと思えばすごくいい笑顔で私を医務室へ連行していくし。作ってみろと鏡の装置を作らされたんだが?
作った事ないしこれが正しいか分からないんだけどと断ったところで逃がしてくれないし、しぶしぶ作りましたけど。お小遣いもらえたしまぁいいか。
でもお小遣いもらっても使うとこないんですけどね!島に降ろしてもらえないんで!
「──よし、ミルー。おれと少しお話ししようか」
「え、何?え?え?」
「お前、叩けばなんかしら出てきそうだからな!」
「え、ドユコト?ホコリかな?」
いったい何を求められてるのか分からないまま、ホンゴウさんとは医術の話し合いがされる事となるのだが意味があったのか今だに謎だ。無駄に止血方法とか教えられたんだが、魔法で治したほうが早いのではと突っ込まなかったのは果たして正解だったのだろうか?
「心肺蘇生法方法はなんか知ってるか?」
「心臓マッサージ?アンパンマーチがいいんでしょ?」
「あんぱん、まん?」
「そぉおだ!おそれっ!ないでっ!みーんなのっ!ためにっ!」
「詳しく聞こうか」
「歌を?」
「歌を」
まさか赤髪海賊団の面々がアンパンマンマーチを歌うことになるとは、思ってやしなかった。無駄に声が良いウタちゃんが歌うと別モンに聞こえてくる不思議。
「あ」
アンパンマーチsong by赤髪海賊団をしていたら、不意に感じる浮遊感。からの落下。
私はぽふんとレイリーさんの元へ落ちたのであった。
まさかの帰還条件がアンパンマンだったかぁ。
まじか。
ユメイノ・オタクナンデモシラベル・ミルー
男主でも襲われることが判明して絶望した。もう赤髪海賊団には嫁・婿認定されてるから諦めろ。この度は前世の知識を披露してしまったこと気づいていない。ファントムペイン(幻肢痛)の歴史は前世でも19世紀に命名されたくらいで、鏡療法は1990年代にようやく研究の成果が出たもの。つまりはワンピ世界じゃまだ失ったとこがある痛い理由は分かってないし、本人の気のせいだと思われてた時代、なのかもしれない。
オタクって気になったものを調べる習慣あるよね?それのせい。多分あとでチョッパーかローに聞いて、あれ?まだ治療法ないの?ってなるかもしれない
赤髪海賊団
現れた時から囲い込みは開始してた。
昔はかわいそ。って思ってたし戦えない子供を乗せてもなぁ。って思ってた。けど頂上戦争で手配書出されてからは仲間にしよ!と積極的になる。だって強いしお頭褒めてるし、手配書集めまくってるし。うん、嫁。
男体化した際はあー、ウタに襲わせて傷物にしたくせに!といって取り込むつまりでもあった。ちなみにロックスターと新入り数名は最初こそ気に入らなかったが、幹部とまともにやり合ったる姿をみて若干尊敬し出していた。
シャンクス
男だろうと女だろうと獣だろうと関係ない。おれの嫁。ウタにはやらん
ウタ
男の子なら私と結婚できるね!しよ!女やめなよ!
ホンゴウ
無駄に医療知識のあるミルーを欲しがり始めるお頭過激勢。
鏡療法がシャンクスにも効いたのでにっこり。絶対にミルーを逃すなとシャンクスの圧をかけた。お頭の嫁でいい。おれの助手にする。欲しい。多分叩けばもっと知識出てくる。欲しい。ルフィのとかじゃなかったらすぐ奪いにいったんだがなぁ。欲しい。正しい圧迫止血しってる、欲しい。内臓見ても平気。欲しい。
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恋愛感情のないヤンデレ爆誕。逃げろ。