夢主やめたい   作:燈葱

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急募、かいほうの方法

 

 

 

 

「なぁーなぁー、ミルーは他に何に成れるんだ?」

「おっさんにも成れんなら、ばばぁにもなれんのか?」

「まぁ、なろうと思えばなれるよ。いろんな夢主に」

「そいや、ユメヌシってなんだ?」

「オタク女が時折通る道」

「おたくおんな?」

「世界は広いんだよ、エース。ルフィ」

 

 ま、ユメヌシ呼びかユメシュ呼びか色々あんだけど、私はユメヌシ派。

 何だそれ?と同じ方向に首を傾げている兄達を可愛く思いながら、私は試しにこんな感じと姿を変えてみる事にした。ここは一つ厨二ぽいのにしょ。

 

「えー、とこんな感じか?」

「おぉー!しんねぇやつだ!」

「どーゆー仕組みなんだよその悪魔の実」

 

 夢主設定1。

 容姿・抱きしめれば折れてしまいそうな細い体型。髪は星を散りばめたような夜空色。瞳は血のように赤いがそこに惹かれてしまう。

 性格・美しすぎるゆえに貴族層に貢物にされた悲しい過去をもつことから、つくり笑顔が上手くなった。

 セリフ・「私は自由がほしいの」

※だが幼児の姿

 

 うっ、古の傷にもろにくる。辛い。

 

「他は!他はなんかねぇのか!?」

「あー、じゃあこれとか?」

 

 夢主設定2。

 容姿・百人中百人が振り返るような美人。ポニーテルが似合う長身。切れ目の瞳に誰もが見惚れてしまう。だがしかし、男。

 性格・見た目とは逆に男優りで、女と間違われるとキレる。

 セリフ・「誰だ今、俺を女って言ったやつ!殴り殺す!」

※だが幼児の姿。

 

 痛い痛い痛い。肋骨折れる。何処ぞの六つ子の次男並に痛いよ助けて。

 自分で設定考えたけどもう精神的に死にそう。泡吐く。

 

「あとは!あとは!」

「次だ次!」

「ははん?さてはお前ら楽しんでるな?……なら今度は、こうだ!」

 

 ふわりと風とモヤを纏って今度はとあるキャラに姿を変える。

 某ショタロリが酷い目に遭う事で定評がある漫画の登場人物で、実に芳しい香りをもつ成れ果ての姫。

 人型に近いが褐色の肌と金色の瞳。白い毛並み耳のよう羽にもみえる。頭部にはティアラのように飾られた赤い角。

 白いふさふさの手は四本あり、各自に鋭い爪。下半身はふさふさで五本の尻尾を持つ。

 えぇ、私の推し。ファプタです。

 丸くなるフォルムとかマジかわよ。

 

「どうそす?どうそす?」

「──おまっ、上、着ろっ!」

「げふっ!」

「すげぇー!ふわふわだぞエース!」

 

 エースは思春期に入ったのか急いで上着を脱ぎ胸部丸出しの私にそれを着せ、ルフィは尻尾に沈んで楽しみはじめている。

 エースは目を逸らしながらもモフモフを体験し出すと、そのまま尻尾に沈んだ。

 

「──太陽の匂いがする」

「なんか、腹減る匂い」

「じゃあ、かりにいくそす」

 

 ブンっと尻尾を振り上げ二人を背中に乗せ、森の中へと向かっていく。そして目があったら即バトルの如し、私の倍はあるであろう牙の立派な猪を瞬殺してみた。

 なかなかやるでしょ?と胸を張っているとエースとルフィは私のふわふわの体を撫で回しながらすげぇすげぇと褒めてくれて、今日の晩御飯が豪華になることが確定した。

 何となくだが、成り代わると燃費悪いんだよねぇ。イメージ夢主だとそこまで腹減らないけど、キャラになると二人に負けず劣らず食べてしまうのだ。エンゲル係数がやばぁい。

 

 ダダンに猪の調理を任せながら、今度は三人でお遊びを混ぜたバトル開始。勿論ファプタの圧勝です。

 われ成れ果ての姫ぞ。まけぬ!

 ずるいずるい言い出す二人には尻尾ふわふわの刑に処し、ケラケラ笑っておいた。

 そろそろご飯できる頃かななんて目を閉じて鼻をすんすんしていると、いきなりの浮遊感。またこれかとゲンナリしていると、ポシャンと私は水の中へ放り込まれたのである。私だから生き残れたが、他の能力者なら死ぬんだが?

 まったくもって、困った悪魔の実の能力だ。

 

「……あんまりだそす」

 

 ぷかぷかと海に浮かんでいれば視界の端に真っ赤な崖がめにはいった。そしてそこをよじ登る人間?も。

 何やってるんだと必死に尻尾を動かし近づいてみれば、それは私の視線に気づいたのかこちらはみたではないか。

 

「何だお前は!」

「そっちこそだれそす?のぼって、たのしいのか?」

 

 ペタペタと同じようによじ登りながら声を掛ければ、そいつは今からてんりゅうびと?とやらに喧嘩をうりに行くようで。

 なるほど、つまりこらは強制イベントが発生しているのだなと理解した。

 素手で登っているそいつを掴み背中に乗せ、ご飯が冷める前にかえるそす!っと崖を登り切り、わちゃわちゃしている人間達に突入。

 なんか首と鎖で繋がれている人間を発見しては鎖等々を引きちぎり、なんか人魚とか魚人。巨人っぽいのの鎖もポイポイ。

 お腹減ったなぁ、ちゃんとご飯残ってるかなぁと心配つつ拾っては投げ、攻撃してくるやつは爪で切り捨てをしているといつの間に辺りは火の海になってるし。

 

 うっわぁ、もう帰っていいかなぁ。

 

 なんて思っても帰れないのがデフォ。んな事私が一番わかってんだよ。

 ことの主犯であろう崖を登ってきた男を探してみれば、彼はいまだに鎖付きを解放するのに手間取ってるようだった。

 なので引きちぎってみたら爆発した。なんでや!さっきまでのは爆発しなかったじゃん!

 痛いと思っていてもファプタの回復力は凄まじいのですぐ治り、その後もポイポイっと首輪を外していく。

 

「お前、名前は!?」

「ファプタはファプタそす」

「人間、か?」

「しらんそす」

 

 何でいきなり名前聞いてくんだろ?なら最初から聞け。ってかこの見た目で人なわけないだろうが。

 そいつはフィッシュチップスみたいな名前をなのってたが、残念ながら私は覚える気は無いんだなぁ。

 エース、ルフィ、サボ。ついでにダダン。これだけ覚えていれば私の世界は完済するのですマル。

 お前のおかげで助かったとなんか腕を組まれたが、私からしてみればこれは夢主強制イベントの一貫だから別にやりたくてやったわけじゃないし。まぁ、いいか。私の成りじゃないから、今後変な奴らに絡まれないだろう、と思いたい。

 

「もうかえっていいそす?」

 

 多分こいつがいいって言えば帰れる気がすると答えを求めると、フィッシャーチップスはゴクリと頷き、私の視界はぐわんとゆれる。

 そうして遠くから我が兄弟達が私を呼ぶ声をきいて、やっと帰ってきたのだと息を吐いた。

 今回はいなくなってから一時間ほどらしく、狩ったお肉はちゃんと残っていた。やったね!

 

「なぁミルー、お前いつも突然消えるけど何処いってんだ?」

「私にもわからない!」

 

 燃費の悪い身体から本体に戻り肉を齧り、なんなんだろうねと首を傾げる。

 いくら夢主なれる能力だとして、これは乱雑すぎないか?

 まぁ名付けたのが私だし、もしかしたら他に名前のある悪魔の実で進化形態があるかもなんて。

 

 私も思考が夢主じみてきたな。ヤバーい!

 とりあえず痛い思いもしたくないし、この世界で生き残りたいし。

 私は最強!って思っとこ。

 

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